いよいよサービス開始!
有力インテグレーターが大解剖
VMware Cloud on AWSのすべて

「VMware Cloud on AWS(VMC on AWS)」のAWS東京リージョンでのサービス提供が2018年11月12日から開始された。VMware vSphere上のシステムをAmazon Web Services(AWS)のグローバルインフラ環境上に展開でき、仮想化基盤の制限によってクラウド化を断念していたシステムを持つ企業にとっては、まさに渡りに船となる。だが、国内リリース前ということもあり、なかなか見えてこない部分もある。果たして、どんなサービスで、どんな利用方法が可能なのか──。本連載では、システムインテグレーター、そして、クラウドサービス事業者として多くの企業のIT活用を支援している伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のキーパーソンたちに様々な話を聞いた。
第3回注目の「VMware Hybrid Cloud Extension」を徹底検証
実際の顧客の利用シーンを想定して
より実践的な検証作業を実施

オンプレミス環境とVMware Cloud on AWS(VMC on AWS)の
シームレスな通信を実現

──オンプレミス環境で運用しているVMwareシステムの円滑なクラウド化、そしてハイブリッドクラウド化への道を開くサービスとして注目を集めているVMC on AWSですが、中でも注目の技術である「VMware Hybrid Cloud Extension(HCX)」について教えてください。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドサービス本部 クラウドサービス企画開発部 ハイブリッドクラウド企画課 エキスパートエンジニア 水上 貴博氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
クラウドサービス本部
クラウドサービス企画開発部
ハイブリッドクラウド企画課
エキスパートエンジニア
水上 貴博
水上氏
 VMware HCXは、オンプレミス環境とVMC on AWS のシームレスなハイブリッドクラウド環境を可能にする技術です。VMC on AWSのサービスに内包されており、ユーザーは追加の費用負担なく利用することができます。VMware HCXにより、オンプレミス環境とVMC on AWSの間で仮想マシンのマイグレーションを行えるわけですが、それを柔軟かつ迅速にしているのが「L2延伸機能」と「WAN最適化機能」です。

 まず、L2延伸機能は、その名の通りオンプレミス環境のネットワークをそのままクラウド環境へと伸ばす技術です。オンプレミス環境もVMC on AWS環境も同じネットワークセグメントとして扱えるため、マイグレーションに伴うIPアドレスの変更が不要となり、仮想マシンを稼働させたままライブマイグレーションすることが可能になります。ほかにもIPアドレスの変更に伴うシステムの設定変更やテストも不要になることから、移行時の工数を大幅に削減できます。

 もう1つのWAN最適化ですが、こちらはオンプレミス環境とVMC on AWS環境の間の通信を最大で約90%圧縮する技術です。従来、拠点をまたいでライブマイグレーションを行う際、VMwareにはCross vCenter vMotionという機能がありますが、この機能を利用するためには、拠点間のネットワーク帯域が250Mbps以上であることが条件となっていました。それに対しHCXは、重複排除などによるデータサイズの圧縮によって、拠点間ネットワークに対する負担を軽減。帯域が100Mbpsで済む仕様となっています。

 加えて、Cross vCenter vMotionではオンプレミス環境とクラウド環境、それぞれのvSphereがバージョン6.0以上で、かつ互換性を持たなければならなかったのに対して、HCXではオンプレミス環境のvSphereのバージョンは5.5以上であればよく、これらの条件の緩和によって、従来はクラウド化が難しかったシステムを容易にマイグレーションできるようになっています。

一般的なL2延伸の課題を容易にクリアできることを確認


伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドサービス本部 クラウドサービス企画開発部 クラウド基盤技術課 エキスパートエンジニア 川村 篤史氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
クラウドサービス本部
クラウドサービス企画開発部
クラウド基盤技術課
エキスパートエンジニア
川村 篤史
川村氏
 そのほかL2延伸については、一般にMTU(Maximum Transmission Unit)のサイズが懸念ポイントとなるため、その検証も行いました。

 MTUとは、1回のデータ転送で扱えるIPデータグラムの最大値のことで、例えばインターネット通信の環境においては1500ByteがMTUサイズとなります。通常、L2延伸の技術では、標準の通信パケットに制御用のヘッダを追加するため、MTUサイズが1500Byteを超えてしまいます。そこで、例えばパケットを分割して送信したり、ヘッダの追加分を見込んで端末やサーバー側のMTUサイズを1500Byteより小さい値にしたり、もしくはWANに9000Byteといったサイズを扱えるような回線を利用したりといった工夫が必要で、これらが拠点をまたがるL2延伸実現のネックとなってきました。

 一方、HCXはこのような手間をかけずともL2延伸を行うことが可能。お客様は今使っている仮想マシンのMTUサイズやWAN回線のことを気にかける必要が一切ありません。このようなHCXの先進性を確認できたことも、我々の検証における大きな成果だと捉えています。

──さらに移行するシステムの種類などに応じて、柔軟に移行方法を選択できるそうですね。
川村氏
 大きく3つのアプローチがあります。1つ目はライブマイグレーション。既に水上が述べた通り、仮想マシンを起動させたまま無停止でデータとメモリの内容を移行するというものです。ただし、HCXでは、必ず1台ずつマイグレーションしていかなければならないという仕様上の制限があり、仮に100台のVMがあれば、それを1台ずつ、順次移行していくというかたちになります。

 2つ目はバルクマイグレーション。こちらは技術的には、vSphere Replicationが利用されており、約1分程度の仮想マシンの停止は伴うものの、一定数以上の仮想マシン群を一括で移行するのに適しています。具体的には、対象となる仮想マシンを起動したまま、それらの仮想マシンのデータをまとめてレプリケーション。すべてのコピーが完了したら、オンプレミス側の仮想マシンを停止させて、レプリケーションの差分を転送。その上でクラウド側の仮想マシンを起動させるという手順となっています。

 そして3つ目がHCXに新たに追加された「VMware Cloud Motion with vSphere Replication」。これはまさに、ライブマイグレーションとバルクマイグレーションのメリットを兼備したものだといえます。最初にバルクマイグレーションの要領で複数台の仮想マシンのデータをレプリケーションし、完了後に仮想マシンのメモリ内容だけを送ってVMware vSphere vMotionを実行するという方法です。これにより、大量の仮想マシンを無停止で移行することが可能となります。

Tech Previewの新機能や企業の基幹システムを想定した実践的検証を実施

──2018年11月12日には、いよいよ東京リージョンにおけるVMC on AWSの提供が開始されました。東京リージョンでは、どのような検証を行っていますか。
川村氏
 もともとCTCは、当社の神戸データセンターをお客様のオンプレミス環境に見立て、VMC on AWSの米国オレゴンリージョンと接続し、様々な検証を行ってきたことは既に述べましたが(第2回参照)、東京リージョンのサービス開始に伴い、お客様が実際に使われる環境と近い形で検証ができるようになりました。最初に検証を進めているのが、前述でも出てきた「VMware Cloud Motion with vSphere Replication」です。こちらの機能はTech Preview版だったため、すぐに利用できるという状態ではありませんでしたが、VMware社へ利用申請を行い、やっと検証ができるようになりました。

──検証作業の成果についてご紹介ください。
水上氏
 単に画一的な検証を行うのではなく、実際にお客様の基幹システムを想定し、サイズや稼働アプリケーションなど、様々な種類の仮想マシンを用意して実際に検証を行いました。中にはSAP HANAが動作している数百ギガといったサイズのマシンなども含まれています。データの中身についても、WAN最適化機能における重複排除が効きやすいもの、逆に効きにくいものなどを用意してデータについてもバリエーションを持たせています。これら多様な仮想マシンを使って、ライブマイグレーション、バルクマイグレーション、さらにCloud Motionという3つの方法で検証を行いましたが、いずれも想定通りの正常な動作が得られることが確認できました。

 特にCloud Motionは、ライブマイグレーションとバルクマイグレーションを連動する処理であることを理解すること、そして、大規模環境を想定した100VM(実効容量:1.6TB)の一括無停止移行を初期同期から移行まで約7時間20分という短時間で神戸DCからVMC on AWS東京リージョンにリフトアンドシフトできることを確認しました。これにより、HCXを用いた3つの移行方法の使い分け、推奨ケースというのが見えてきました。

 まだ東京リージョンの検証は始まったばかりですが、オンプレミスや、AWSの連係部分を中心にディープに行っていく予定です。また、市場でも注目が集まっているAmazon RDS on VMwareについても検証を計画中です。

──最後に今後の展望をお聞かせください。
水上氏
 一連の検証を通してCTCは、VMware HCX、そしてVMC on AWSについて豊富な知見と、より実践的なノウハウを獲得できたものと考えています。これこそが我々の大きな強み。その強みを生かしながら、お客様にとって最適なVMC on AWS、VMware HCXの活用をご提案していきます。
  • 仮想化環境を効率よく実行するためには、最新のインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーやインテル® Optane Solid-State Driveの活用が有効です。

    インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーとIntel® Optane® DC Persistent MemoryをVMware vSANのNVMe SSDに適用した場合、最新のベンチマークにおいて、従来に比べて13倍の性能、もしくは10倍の価格性能を達成しています(詳細構成は下記)。

    インテル® では、効率的なクラウド運用を実現するために、ソリューションを実現するパートナー企業との、検証や最適化作業を進めています。
ベンチマークの詳細構成
The vSAN 13x performance increase and 10x price/performance improvement claims are based on the following citation and configuration:

Source: The Evaluator Group, August 2018. Report to be publicly available by September 1, 2018.
Baseline configuration: Four-node cluster, based on four Intel® Server Boards S2600WTT, each with 2x Intel® Xeon® processors E5-2699 v4 (22 cores @ 2.2 GHz with Intel® Hyper-Threading Technology); tested with 256 GB DRAM, priced for comparison at 512 GB DRAM; 1x Intel® SSD DC S3700-400; 4x Seagate 1 TB HDD; VSAN 6.5; IOmark-VM-HC validated configuration. Performance: 88 IOmark-VM-HC. Price/performance: $1,862/IOmark-VM-HC.
Select Solution-compliant configuration: Four-node cluster, based on four Intel® Server Systems R2208WF, each with 2x Intel® Xeon® Gold 6154 (18 cores @ 3.0 GHz with Intel® Hyper-Threading Technology); tested with 256 GB DRAM, priced for comparison with 2x Intel® Xeon® Platinum 8168 (24 cores @ 2.7 GHz) at 768 GB DRAM; Intel® Ethernet Converged Network Adapter X540 AT2; 2x Intel® Optane SSD DC P4800X Series; 4x Intel® SSD DC P4500 Series 4TB. VSAN 6.7. Configuration not IOmark VM-HC validated. Performance: 1,152 IOmark-VMs (Note: Measured as a storage system, not hyper-converged). Price/performance: $230/IOmark-VM (Note: Measured as a storage system, not hyper-converged).
お問い合わせ
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 URL:http://www.ctc-g.co.jp
E-mail:business-on-it@ctc-g.co.jp