安全性・信頼性重視の次世代NORフラッシュ メモリを開発

サイプレス セミコンダクタは、新しい「Semper NORフラッシュメモリ」を開発した。チップに信頼性と安全性を組み込むことで、エラーが起きてもフェイルセーフシステムを確立する、次世代のクルマ向けNORフラッシュのプラットフォームとなる。

 「Semper NORフラッシュメモリ」は、車載向けのNORフラッシュを展開していく上での1つのプラットフォームになる。サイプレスは、このSemperをこれからのクルマ市場、産業向け、そして5G通信市場に向けていく。車載向けでは、ADAS(先進ドライバー支援システム)やクラスタ(ダッシュボード)、コネクテッドカーなどの新しい応用が始まっている。産業向けでは、IoTを使ったインダストリ4.0や予知保全のようなシステムを実現できる。そして5G通信は、コネクテッドカーやインダストリ4.0に基づくスマート工場などの応用としてNORフラッシュを組み込んでいくことができる。
サイプレスが得意なアプリケーションは車載だ。15年以上車載用にNORフラッシュメモリを提供してきた経験がある。サイプレスは車載用NORフラッシュメモリでトップの65%(サイプレス社調べ)という市場シェアを握っているのだ。かつてのクルマにはカーナビゲーションシステムがメインであり、基本的にはプログラムコードの格納用であったため、エンジン制御用や車両系・車体系のマイコンにはフラッシュ内蔵マイコンで十分だった。しかし、カーナビ用にはマイコンに内蔵しているフラッシュの容量が足りないことが多く、外付けにNORを使ってきた。

次世代NORフラッシュの決定版プラットフォーム

 今後の次世代NORフラッシュに対する要求の1つは、機能安全規格ISO26262に準拠した製品を出すことである。もしNORフラッシュがISO26262に準拠していれば、顧客は安全性を重視したシステムをより作りやすくなる。しかも、高耐久性や長期のデータ保持が同時にも要求される用途であってもメモリ領域を自由に設定できるEnduraFlex機能により、デザインを簡素化できる。さらに大容量で高性能な仕様もある。
 機能安全に関しては、ISO26262機能安全仕様のASIL-Bに標準的に準拠しており、オプションでASIL-Dにも対応する。故障モードの潜在的原因の診断機能もある(図1)。この診断機能は、データの完全性をチェックする。ECC(誤り検出訂正)機能では、1ビットエラーの訂正、2ビットエラーの検出ができる。データCRC(巡回冗長検査:Cyclic Redundancy Check)機能は、データを保持している間の不具合を検出する。またインタフェースCRCも備え、メモリインタフェースの不具合も検出できる。いずれの場合もフラグを立てて、不具合を知らせる。

図1 Semper NORフラッシュの診断機能
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品田 唱秋 氏
品田 唱秋 氏
サイプレス セミコンダクタ
MPDマーケティング本部

「メモリ領域内のエラーだけにとどまりません。例えば、NORメモリを立ち上げる時に正常にブートできたかどうかをチェックするSafeBoot機能では、エラーが起きた場合にフラグを立てて報告します。さらにプログラムや消去および不具合時、組み込み動作やデータCRCのエラーも同様です。また、書き込んでいる最中にエラーが起きると、従来は修復できませんでしたが、Semper NORフラッシュではコンフィギュレーションレジスタをホストがプログラムできるようにSPIからリブートできるようになっています」と、サイプレス セミコンダクタ MPDマーケティング本部の品田唱秋氏は強調する。

EnduraFlex機能でメモリ領域をカスタマイズ

 メモリ領域をユーザーの希望する大きさに自由に定義できるEnduraFlexという機能も有している。これは、例えば512Mビット以内の部分でなら100万回も書き換えるような用途と、長期間保存しなければならない用途などによって、メモリ領域を自由に最大5種類まで分割できる。つまりユーザーが自分でメモリのパーティションを区切ることができるという訳だ。
 この設定は、チップ内にあるポインタで5つに分割できる。このポインタはアドレス領域を設定することでパーティションを付けることができる。それらの設定はOTP(One time program)領域で行う。

高速シリアルインタフェースで400MB/sも可能

浜崎 光男 氏
浜崎 光男 氏
サイプレス セミコンダクタ
MPDマーケティング本部
部長

 サイプレス セミコンダクタMPDマーケティング本部の部長を務める浜崎光男氏は「性能的には、HyperBusインタフェースにも対応しており、最大400MB/sが可能です。また、シリアルデータの転送には、SPIインタフェースだけではなく、信号線を4本まで増やしたクワッドSPIと×8のオクタルSPIも使えます。オクタルSPIも400MB/sと高速ですので、起動時のインスタントオンを実現します」という。
 Semper NORフラッシュは従来の同社の65nmプロセス製品の333MB/sと比べ、HyperBusインタフェースの性能は20%向上しており、スタンバイ電流は65nmの25µAから今回は45nmに56%削減され、ディープパワーダウンモードでは、8µAから1.3µAへと低減している。
 基本アーキテクチャーは図2に示すように、NORフラッシュメモリセルアレイに加え、ArmのCortex-M0マイコンで機能安全やセキュリティ機能を制御する。インタフェースはシリアルインタフェースを4個並列にしたクアッドSPIと8個並列のオクタルSPI、HyperBusインタフェースも持つ。これからは、8ビット並列のHyperBusやオクタルSPIが業界標準になっていくだろう。車載応用では、外部端子を減らすため、配線本数の削減は必須だ。このためシリアルインタフェースで配線本数(ピン数)を減らす方向に進むに違いない。

図2 基本回路をプラットフォーム化 ユーザーの要求によって使わない回路も出てくる
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 このNORフラッシュは、45nmプロセスを使い、セル部分は2ビット/セル構成であるMirrorBit技術を使っている。メモリ容量は、512Mビットから1Gビットのチップを設計している。最初の出荷は、512Mビットと1Gビット品からまず市場へ出していく。
 既に512Mビット品を主要顧客向けにサンプル出荷しており、規格準拠品のサンプル出荷は2018年第4四半期を予定している。24ボールBGAと16ピンSOIC、8端子のWSONパッケージでの量産開始は2019年第1四半期を予定している。
 クルマ仕様でのNORフラッシュの最大のメリットは不揮発性であることから、システムのコードの格納に使用し即時の立ち上がりができるほかに、ADASシステムではデータの格納にも使える。図3にADASに応用した例を示す通り、イメージセンサからの入力したデータをセンサフュージョンで処理し、NORフラッシュに保存し、さらにそのデータをホストプロセッサで処理する場合のデータメモリにもなる。5GやLTE通信モデムの、例えばSDR(ソフトウエア無線:Software-defined radio)の方式を格納しておくこともできる。

図3 ADASシステムのソリューションの例
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 これからのクルマでは、ダッシュボードパネルは全面的に液晶画面になり、制御用や演算用のCPUプロセッサに、グラフィックスを描くためのGPUに加え、アイコンや簡単なグラフィックスを格納しておくためのNORフラッシュも必要になる。メモリとのやり取りを高速化したい場合は、HyperRAMをキャッシュメモリとして用いることもできる。
 クルマ用のNORフラッシュメモリはこれまで、125℃の高温にも対応できていた。そのため、ADASや液晶ダッシュボードのような新しいシステムに対しても障壁は低く、これまでの延長で信頼性試験や環境試験などにも対応できるという。2016年から2022年にかけて、年平均成長率22%で成長していくとみられ、市場の期待は大きい。

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