
自動車産業は100年に一度の変革期の中にある。自動化、電動化、シェアリングといった次世代車の新機軸は、クルマをネットワークに常時接続し、より高度な情報活用が可能になることを前提にしている。
デンソーテンには、時代に先駆けてクルマのコネクティッド事業に取り組んできた実績がある。
実ビジネスでの豊富な実績に裏打ちされた同社のコネクティッド技術の数々は、次世代車の高付加価値化に大いに貢献することだろう。

デンソーテン
VICT技術本部
フリートサービス技術室長
重松 智史氏
先取りする
先進的車載ビジネスを
実践

デンソーテンでは、情報・通信技術を核とした「Vehicle-ICT」を軸に、あらゆるクルマがネットワークにつながる時代の到来を見据えたコネクティッド事業に取り組んでいる(図1)。コンシューマーにとって同社はカーナビメーカーとしてのイメージが強いかもしれないが、車両の制御に関わる電子デバイスの開発や、通信技術を活用した安全運転支援システムを提供するなど、総合カーエレクトロニクスメーカーとして事業を展開している。
自動運転、シェアリング、電動化。次世代車を彩るこれらの変革は、クルマをネットワークにつなげ、サイバー空間と現実空間の情報をフル活用することを大前提にして進められている。こうした次世代車実現の起点となるコネクティッド技術を提供する企業として、デンソーテンには、類をみない二つのアドバンテージがある。一つは、次世代車に求められる知見をコネクティッド技術の先行市場で蓄積し続けてきたこと。もう一つは、イノベーションの創出に適した事業体制と資本構成を持つことである。

先行市場
タクシー業界に
寄り添う実績

「あまり意識されてはいませんが、タクシーはそもそも、60年前からコネクティッドが前提とされてきました。今後、世界中のクルマがネットワークにつながります。そこで実現される情報活用やサービス提供のひな型は、すでにタクシー業界で多く蓄積されているのです」とデンソーテンVICT技術本部の重松智史氏は語る。
単にクルマをネットワークにつなぐだけでは、新たな付加価値を持つ機能やサービスは生まれない。同社の強みは、次世代車のニーズを先取りするタクシーのコネクティッド化に寄り添ってきた経験と実績にある。
同社は、前身である神戸工業時代の1954年にタクシー用FM無線機を製品化。1981年には分散配置したサインポストが発する電波でクルマの位置を特定するAVM(Automatic Vehicle Monitoring)システム、2003年のデジタル無線の制度化後、システムのIT化を加速、2015年にはクラウド型タクシー配車システムの提供を開始している。同社がこの市場に向けて開発・提供してきた技術や製品は、車載に特化したデータ収集や無線通信、ドライバーに情報を確実に伝えるHMI(Human Machine Interface)、データから有益な情報を抽出する情報システム、さらにはそれを活用したサービスまで多岐にわたる。
また、デンソーテンの事業体制はイノベーションの創出が求められる分野でこそ強みが際立つ。資本構成もクルマの大変革に貢献する同社を支える構えだ。
次世代車の実現では、通信、センシング、制御、HMI、クラウドなど多分野の高度な要素技術を擦り合わせてシステム開発を進める必要がある。デンソーテンには、コネクティッド事業を担うVICT事業の他にも、カーナビなどを扱うCI事業、エンジン制御ECUなどのAE事業があり、それらの中で次世代車の構成に欠かせない多様な要素技術を保有。各部門の技術者が、常に密接に対話しながら将来システムの開発に取り組んでいる。さらに、車両の制御技術でリードするデンソーを親会社に持ち、次世代車の開発を加速するトヨタ自動車、クラウド基盤と高度な通信技術を持つ富士通と資本関係にある点も、他社にはない優位性である。