エグゼクティブ対談 日立製作所 × ヴイエムウェア

2社の協業で生み出された
高信頼プラットフォーム
金融・公共・交通システムはどう変わるのか?

金融・公共・交通といったミッションクリティカルなシステム領域でも、クラウドやオープン環境との柔軟な連携が不可欠な時代となっている。そこで日立製作所とヴイエムウェアは10年以上にわたる協業の成果として、オープン環境における基幹システムの長期安定稼働を実現する「高信頼プラットフォームソリューション」を開発した。その導入メリットと今後の可能性について、日立製作所のITプロダクツ統括本部本部長 中野 俊夫氏と、ヴイエムウェア代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏に話を聞いた。

デジタライゼーションの潮流が社会インフラ領域にも拡大

──社会全般でのデジタル化が進展する今、金融・公共・交通といった社会インフラを担う企業や組織は、IT基盤でどのような課題を抱えているのでしょうか。
株式会社 日立製作所  システム&サービスビジネス サービス&プラットフォームビジネスユニット ITプロダクツ統括本部 統括本部長 中野 俊夫氏
株式会社 日立製作所
システム&サービスビジネス
サービス&プラットフォームビジネスユニット
ITプロダクツ統括本部
統括本部長
中野 俊夫
中野氏 ミッションクリティカル領域のITインフラには“システムを止めてはならない”という命題があります。そのため社会インフラ分野のお客様は、これまで基幹システムにメインフレームやUNIXといった、堅牢性・可用性に優れたハイエンドのITインフラを活用してきました。しかし、近年のデジタル化・IoT化の進展により、クラウドやオープンな技術を活用した新しいビジネス・サービスの創出が不可欠な時代となっています。

 また、投資対効果の面でも、よりコストを重視したアプローチが求められているため、止めてはならない高信頼のシステムを、いかにオープンなシステム環境で構築・運用できるかが、社会インフラを担うお客様の共通の課題として浮上しています。



ヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏
ヴイエムウェア株式会社
代表取締役社長
ジョン・ロバートソン
ロバートソン氏
 クラウドやモバイルの台頭に加え、FinTechなどのデジタルトランスフォーメーションも加速しています。こうした時代では、金融・公共・交通などの基幹システムもオープンシステムと容易に接続できなければ、アジリティ(俊敏性)のあるサービスやビジネスを生み出すことはできません。多様なニーズを持ち始めたお客様に対応するには、サイロ化された既存システムよりもオープンシステムのほうが、リーチが広がり、コスト面でも有利です。また、メインフレームやUNIXといったシステムを維持し続けるための人材確保やノウハウ継承も、年々難しい状況になっています。

信頼性と堅牢性に優れたオープンプラットフォームを提供

──そうしたミッションクリティカル領域の課題解決に向け、日立とヴイエムウェアでは長年にわたる協業成果の第1弾として、新たなソリューションを発表されました。どのような特徴を持ったソリューションなのでしょうか。
中野氏 グローバルスタンダードな仮想化ソフトウエアである「VMware vSphere」を日立独自の機能で高信頼化し、日立のオープンサーバー「RV3000」および日立独自のOS信頼性強化技術と組み合わせて提供する「高信頼プラットフォームソリューション」を共同開発しました。このソリューションは、ミッションクリティカル領域で求められる堅牢性・可用性をオープンなシステム環境で実現するもので、両社の協業体制のもと、ハードウエアだけでなくvSphereの最長10年にわたる長期サポートも提供し、基幹システムの安定稼働と迅速な問題解決を支援します。

ロバートソン氏
 このソリューションによって、先に挙げた既存システムの維持コストや人材確保の問題、クラウドやオープンシステムとの容易な接続といった要件を、すべて解決することができます。信頼性を何よりも重視する金融・公共・交通などのお客様にも、基幹システムのインフラとして安心してお使いいただけるプラットフォームです。

中野氏 例えばRV3000ではヴイエムウェアの協力のもと、PCIカードを閉塞しシステムダウンを回避させるなどのvSphereの高信頼化を支援する独自機能を開発し、万一問題が発生しても障害を局所化して、長期にわたって安定稼働できる仕掛けを実装しています。両社のエンジニアが互いに議論を戦わせながら、それぞれの強みや技術をハイブリッドさせたことで、オープンシステム上で今までにない高信頼性を実現することができました。

日立とVMwareの深い信頼が、かつてないサービスを生み出した

──10年間の長期サポートも、ユーザーにとっては非常に心強いですね。
ヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏
ロバートソン氏
 実は当社にとって、vSphereの10年にわたる長期サポートは非常に大きなチャレンジでした。グローバル市場でも過去に類を見ないケースです。それは、社会イノベーション事業を推し進め、ミッションクリティカル領域のお客様を多く持つ日立の“カスタマーファースト”の想いを、米国VMware CEO(最高経営責任者)のPat Gelsingerが受け止めた決断でもあったのです。「日立がそこまでやるなら、長年信頼関係を築いてきたVMwareとしてもぜひ応援したい」と、彼から直々にGOサインが出たのです。
株式会社 日立製作所  システム&サービスビジネス サービス&プラットフォームビジネスユニット ITプロダクツ統括本部 統括本部長 中野 俊夫氏
中野氏
 ヴイエムウェアには非常に重要な決断をしてもらい、感謝しています。日立では十数年前からvSphereをはじめとしたVMware製品をワンストップサポートである「日立サポート360」で提供してきているのですが、実は日立がこれまで受けてきたVMware製品に関する問い合わせやトラブルの9割以上は日立だけで解決してきています。VMware認定技術者も日立グループ内で数百人規模を擁しており、これまでもそういった実績とノウハウ、サポート体制はありました。今回ミッションクリティカルなお客様向けに、両社のサポート体制を強化することにしました。例えば、米国VMware本社に日立のエンジニアが常駐する、特別エスカレーション体制を整備しています。日立だけでは解決できない問題でも、VMwareから特別に提供いただく技術的な情報に基づき、より深く調査を行い、より迅速な原因究明と問題解決へとつなげることができます。
──両社には、非常に深い協業の歴史と信頼関係があるということですね。
中野氏
 先ほども申し上げたように、日立とヴイエムウェアとのお付き合いが始まったのは十数年も前からになります。その間、様々な協業を重ねてきましたが、5年ほど前、ある大手金融機関の基幹システムで、日立とヴイエムウェアが担当したオープン環境への移行プロジェクトがありました。そこで両社のエンジニアが一体となって仕事を進める中で、お客様を大切にする姿勢や技術品質を上げるための努力、コミュニティーや社会貢献への想いといった企業文化が非常に似ていることに改めて気付いたのです。そこから、いつか一緒に新しい技術を使って社会インフラを支える高信頼なソリューションをつくれないかという今回のアイデアが生まれました。

中野 俊夫氏 ジョン・ロバートソン氏
ロバートソン氏
 そして本格的なソリューション開発に着手したのが2年ほど前になります。vSphereやサーバーで求められる新たな高信頼化技術の検討、サポート体制の構築に加え、ミッションクリティカルシステムの様々な障害パターンを想定したテスト環境も米国のラボ内につくり、実システムを使ったPoC(概念実証)を半年以上にわたって行いました。そこで両社のエンジニアや、ディスク、ネットワークなどコンポーネントベンダーも交えて検証した障害対策の成果が、このソリューションには存分に生かされています。

幅広い事業領域でのデジタライゼーションに貢献していく

──「高信頼プラットフォームソリューション」を活用することで、今後、ユーザー企業はどのようなビジネスイノベーションを実現できるのでしょうか。
中野氏
 例えば金融システムの勘定系基盤を本ソリューションでオープン化すれば、既にVMwareで仮想化が進んでいる情報系基盤と一体化した運用管理が実現します。ブロックチェーンやFinTechといったシステムも、クラウドなどの分散環境で容易に連携できるようになります。デジタルビジネスの拡大やIT投資の最適化に対応する、次世代金融システムの完成形に近づけることができるでしょう。

 公共分野では、官公庁や自治体システムのオープン化はもちろんですが、ITとOT(制御技術)の融合が進み、業務の効率化やサービス向上、安全性確保などでAIやビッグデータの利活用ニーズが拡大している鉄道、電力、水、都市、アーバンといった領域でも、本ソリューションの活用効果が期待できると思います。

ロバートソン氏
 これまでミッションクリティカルな社会インフラ領域は、ヴイエムウェアが未開拓の市場でした。しかし今回のソリューション開発で、我々の仮想化テクノロジーやノウハウを、より広範囲なビジネスイノベーションに生かすことができると考えています。

 本ソリューションはサーバーの仮想化からスタートしましたが、今後ネットワークやストレージにも仮想化の範囲を広げることで、お客様データセンターのモダナイゼーション(近代化)にも貢献できるでしょう。そして堅牢性と柔軟性を併せ持つシステム化のニーズは、日本だけでなくグローバルにも拡大していくはずです。将来的にはほかのベンダーも巻き込んだエコシステムを構築し、日立と共にこの流れを世界に広げていきたいですね。

中野氏
 「高信頼プラットフォームソリューション」は、VMwareというグローバルスタンダードな仮想化ソフトウエアを使い、ミッションクリティカルなシステム領域に踏み込んだ両社の大きなチャレンジとなります。基幹システムの信頼性を担保しつつ、デジタライゼーションの潮流の中で新たなビジネスやサービスを創造したいというお客様の期待に応えるため、これからも日立とヴイエムウェアは相互に技術を磨き上げながら、強固なアライアンスのもと、お客様への貢献を果たしていきます。ぜひご期待ください。
中野 俊夫氏 ジョン・ロバートソン氏
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