自治体のIT利用に新たな可能性をひらく LGWAN経由のパブリッククラウド活用

庁内システムの運用管理負荷の軽減や、より俊敏な新サービスの立ち上げなどを念頭に、自治体でも、外部のパブリッククラウドサービスを活用したいというニーズは存在している。しかし、実際に着手するには、セキュリティ上の側面などから難しい点もあった。そこで日立の提供する「地域IoT連携クラウドサービス」では、LGWAN(Local Government Wide Area Network : 総合行政ネットワーク)経由による外部サービスとの接続をサポート。自治体のIT利用に新たな価値としてパブリッククラウドの活用を可能にしている。

セキュリティを担保しつつ保有データのオープン化を実現

株式会社 日立製作所 公共システム事業部 全国公共システム第一本部 自治体ソリューション推進部 担当部長 馬場 宗之 氏

株式会社 日立製作所
公共システム事業部
全国公共システム第一本部
自治体ソリューション推進部 担当部長
馬場 宗之 氏

ここ数年、全国の自治体では、マイナンバー制度の施行を背景に総務省の提言に沿う形で、「自治体情報システム強靱性向上モデル」と「自治体情報セキュリティクラウド」への対応を主眼に情報セキュリティ対策の強化に取り組んできた。
 その一方で、政府が主導する「Society5.0」(※)や各自治体における「自治体SDGs(Sustainable Development Goals)」に向けて、2017年度に「官民データ活用推進基本法」が施行された。これを受け、自治体、公共機関、民間企業が保有する様々なデータの連携・分析による、施策立案や新たなサービス、ビジネス創出に有効活用していくことが求められ、自治体の対応としても重要なテーマとなっている。
 「要するに、強固なネットワークセキュリティを担保しながら、いかに保有するデータのオープン化を図り、民間による利活用を促進していくかという、システム的には相反する課題が突きつけられているわけです」と日立の馬場宗之氏は語る。

自治体の可能性を広げるパブリッククラウド利用

こうした要請に応えるソリューションとして2018年8月に日立がリリースしたのが「地域IoT連携クラウドサービス」である。日立では、多岐にわたる事業領域に向けて、データを価値の源泉としたデジタルイノベーションの創出を支える「Lumada」の整備を進めているが、地域IoT連携クラウドサービスはまさに、その自治体への展開におけるソリューションでありユースケースと位置づけられている。
 同サービスでは、インターネット環境とは分離された自治体内のLGWAN系業務システム環境を介して、自治体内データの外部連携をセキュアに実現する。LGWAN-ASPとして、民間の事業者が提供する様々なクラウドサービスの利用を可能にしている。
 自治体では、地域IoT連携クラウドサービスを通じて外部のメジャーパブリッククラウドサービスを活用し、オープンデータを公開する。これにより、クラウドサービスをベースとした官民データ活用を図る基盤構築を進めることができるわけだ。
 「さらに将来的な視野で捉えれば、単にオープンデータの公開基盤としてだけではなく、例えば現在自治体がオンプレミス環境で運用しているシステムを、そうした外部サービスのIaaS、PaaS基盤上に移行し、クラウド化を図るといった可能性もひらけてくるのです」と馬場氏は言う。
 改めて強調するまでもなく、システムをクラウドに移行することでは多くのメリットがもたらされる。例えば、運用管理はクラウドサービスのプロバイダに委ねられ、サーバーやストレージなどの資産を抱えることなく、料金契約のサービスとしてシステムを利用できる。利用の繁閑状況に応じて、システムリソースを柔軟に拡張/縮退するという運用も可能だ。
 「地域IoT連携クラウドサービスは、特定のAPIによって外部サービスと接続することでLGWANとの接続に必要な厳密なセキュリティ上の要件をクリアしました。慎重な設計や検証が必要となりますが、LGWAN系の業務システムをパブリッククラウド上に展開することも期待できるわけです」と馬場氏は説明する。

地域IoT連携クラウドサービスを活用した外部クラウドサービスの利用例
民間クラウドサービスの活用モデルの例。LGWAN接続に必要な要件をクリアした上で柔軟な外部クラウドサービスの活用が可能になる
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デジタル技術活用サービスの検証環境として期待

株式会社 日立製作所 公共システム営業統括本部 第三営業本部 地域ビジネス推進センタ ソリューション営業G 主任 笹森 照代 氏

株式会社 日立製作所
公共システム営業統括本部 第三営業本部
地域ビジネス推進センタ
ソリューション営業G 主任
笹森 照代 氏

では、パブリッククラウドの基盤上での運用が想定される自治体のシステムには、どのようなものがあるだろうか。まずは、総務事務系システムや勤怠システムなど、現在オンプレミス環境で運用されている内部システムが有力な候補となる。
 「そのほか、地域社会の課題解決の支援を念頭に日立が提供している、『地域デジタルソリューション』のシステムをクラウド基盤に構築・運用していただくというのも効果的だと考えています」と語るのは日立の笹森照代氏だ。
 この地域デジタルソリューションは、「インフラ・防災・環境」「健康・医療・介護」「移動」という3つの分野を対象とするシステム群で構成されている。例えば環境に関してはエネルギーデータの収集・可視化・分析を支援するツール「EcoAssist-Enterprise-Light」、健康・医療・介護については、自治体や介護事業者が保有するデータを関係者間でセキュアに共有する「地域包括ケアICTソリューション」、そして移動分野においては自治体が運営するバスの運行にかかわる最適化などを支援する「交通データ利活用サービス」といったソリューションがラインアップされている。
 一方で、IoTやAIなどの先進デジタル技術を活用した住民向けの新サービスの提供、また庁内業務のさらなる効率化に向けた変革も今日の自治体には求められている。「そうしたデジタル技術を活用したサービス・システムを考案した際には、実際にPoC(Proof of Concept)などを実施する検証環境が必要です。そこに地域IoT連携クラウドサービス経由でパブリッククラウドサービスを利用することも有効なアプローチとなるでしょう」と笹森氏は語る。
 今回紹介した日立の地域IoT連携クラウドサービスは、2013年度に実施された総務省の開発実証事業において構築され、LGWAN-ASPのサービスとして登録されたものである。以降、日立では継続的に試行運転を行い、自治体へと提供していく。
「そうした意味では、このサービスに実装される技術、あるいはデータの扱いなどセキュリティについての考え方といったものは、自治体には安心してご導入いただけるものと思います」(馬場氏)。
 パブリッククラウドサービスの活用を含めて、自治体のIT利用に新たな可能性をひらく、地域IoT連携クラウドサービスの今後の動向が大いに注目される。

※日本政府が掲げる新たな社会像であり、その実現に向けた取り組みのこと。AIやIoT、ロボットなどの革新的な科学技術を用いて、社会の様々なデータを活用することで、経済の発展と社会課題の解決を両立し、人間中心の豊かな社会をめざす。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の新たな社会として位置づけられている


【お問い合わせ】
株式会社 日立製作所 公共システム営業統括本部
・地域IoT連携クラウドサービス
http://www.hitachi.co.jp/app/chiiki_iot/

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