バブル期並みの人手不足感を解消する対策とは?

今、人手不足感がバブル期並みに高まっている。その解消には、従来の「何とかして人手を確保する」というその場しのぎのやり方ではなく、「人手不足を解消する対策」の実行が企業には求められる。リクルートワークス研究所の石原直子氏に、具体的に企業が取るべき対策について聞いた。

就業者数全体は増えているが若年労働者が減少

株式会社リクルート
リクルートワークス研究所
人事研究センター長
Works編集長
主幹研究員
石原 直子

2018年10月の有効求人倍率は1.62倍、完全失業率は2.4%と人手不足感がバブル期並みに高まっている。「現在の人手不足の特徴は次の四つにまとめることができます」と、リクルートワークス研究所の石原直子氏は指摘する。

一つめは現在の人手不足も過去と同様に、乖離は大きいものの景況感に連動して起きていること。二つめは人手不足感から高齢者、主婦など従来就業していなかった人を活用する企業が増えたことで、就業者数全体は増えていること。三つめは若年労働者の減少から、企業の人手不足感はさらに強まり、特に飲食・小売りなどのサービス業で顕著なこと。そして四つめは、先端IT人材の深刻な不足だ。「特にAI、ビッグデータや情報セキュリティ人材の不足が顕著です」と石原氏は話す。

こうしたマクロレベルでの人手不足は、企業においては提示できる条件で人を集められない、そもそも求めるスペックを持った人材が労働市場に見当たらない、といった形で出現する。「人手不足の解消には、労働条件の改善、社内人材の能力開発やテクノロジーの導入による生産性向上、求める人材の自社での育成、別の働き手の開拓といった方法が考えられます」と石原氏は説明する。

人手不足解消には従来とは別の働き手の開拓も必要

労働条件の改善は人手不足を乗り越える最もシンプルな方法だ。だが、賃金を上げたり休日を増やしたりするにはコストがかかる。それを捻出するには、価格を上げたり営業時間を減らしたりするなど、顧客に転嫁することに踏み込まざるを得ないという面もある。

能力開発による生産性向上やテクノロジーの導入は、「人手を使わない」という発想の転換をするということである。無駄な仕事を探して減らし、必要な仕事をより早く進められるような改善をすること、機械にできることは機械に任せ、人は人にしかできないことをやるようにしていくこと、こうしたことを今以上に徹底していく必要がある。「さらに、求める能力を持った人自体が市場に存在しない、という場合には、必要な人材は自社で育てるとの割り切りが必要になります」と石原氏は指摘する。

別の働き手とは、これまで労働市場に参加していなかった女性や高齢者、外国人、それに35歳以上の中高年フリーターなどが考えられる。女性や高齢者の市場参入は、徐々に増えている。さらなる呼び込みには国家政策的な対応も必要になる。

「従来通りただ人手を確保するというやり方は、もはや通用しません。人手不足の解消に向け、テクノロジーの導入や今までとは違う働き手の開拓など発想の転換が大事です」と石原氏は提言する。企業には余力のあるうちに方針転換をすることが、緊急に求められている。

「別の働き手の開拓」を支援するサービス

今までとは違う別の働き手の開拓については、外部人材を活用するという手もある。最近では、派遣会社でもフルタイムの事務派遣だけでなく、働き方や働く人の幅広い提案を行っている。今回はリクルートグループの派遣会社であるリクルートスタッフィング、スタッフサービス、テクノ・サービスの提案事例を紹介する。

リクルートスタッフィング/スタッフサービス


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時短×専門スキルの新しい働き方「ZIP WORK」

「時短」と聞くと“育児”そして定型的な業務をイメージされる方が多いのではないだろうか。リクルートグループが現在推進している「ZIP WORK」は、そのイメージを覆す新しいスタイルだ。ZIP WORKとは①時短であること②専門性が高いこと③報酬が高いことと定義している。雇用形態に限定しているわけではないが、まずは就業規則に縛られず企業が取り入れやすい人材派遣から進めており、リクルートスタッフィングとスタッフサービスの2社で提案を進めている。

これまでの人材派遣とは違い、業務指示は行うものの、一定の業務範囲内で自律的・能動的に業務を進められる人材の活用をイメージしている。当初はリクルートグループの社内で試験的に導入をスタートし、2017年4月より本格的に他企業で展開。現在の累計導入社数は2社合わせて250社近くに上り、就業者数は400名を超えている。内部統制や法務、財務分析に人事制度設計など専門性の高い、様々な職種で受け入れが進んでいる。

カスタマーが時短を希望する理由も様々で、育児はもちろんWワークや介護、起業準備や勉強、中には代表取締役として会社を経営する傍ら、活躍されている人もいる。当初は大手企業が中心だったが、近年では中小企業で導入が進んでおり、働き方を柔軟にすることで女性や高齢者を受け入れやすくしている。労働人口の減少が進む一方、こういったZIP WORKのニーズは増加していくのではないだろうか。

スタッフサービス/リクルートスタッフィング


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若年者のポテンシャルを最大限活かす「ミラエール」「キャリアウィンク」

現在の人手不足の特徴の一つでもある、若年労働者の減少に対し、スタッフサービスとリクルートスタッフィングが新たに提案をしているのが、若年層を対象にした「無期雇用派遣サービス」である。スタッフサービスでは「ミラエール」、リクルートスタッフィングでは「キャリアウィンク」という名前でサービスを展開している。

仕事への意欲やポテンシャルに長けているにもかかわらず、職種や雇用形態のミスマッチにより社会人としてのスキルや経験を十分に積むことができずにいる若年層が一定数存在することに着目。そのような人材を派遣会社で無期雇用し、事務職として企業に派遣する。派遣先企業と協同して活躍できる人材へと育成している。無期雇用社員の採用時には、仕事への意欲・ポテンシャル・人柄など基準を設定し、派遣会社が選考している。就業前にはビジネススクールでパソコン研修やビジネスマナー研修なども提供しており、派遣会社が人材の育成を担うことが企業のメリットにもつながっている。

現在の導入社数は2社合わせて1600社、就業者数は5200名を超えている。フレッシュな人材を安定的に確保できることから、活用企業が年々増加している。

テクノ・サービス


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「ローカル」と「グローバル」に着目し、ものづくり人材を活用

テクノロジー導入による生産性向上を進めることは必要だが、その間も製造現場を止めることはできない。自動車、電機、食品などの製造分野ではまだまだ人手不足が続いている。テクノ・サービスでは製造業の様々な領域へ人材を派遣している。カスタマーとクライアントへのサービスの密度を高めるため、全国46都道府県に拠点を展開している。登録スタッフは全国で約49万人と業界トップクラスだ。

テクノ・サービスでは人材を確保するため、「ローカル」と「グローバル」に着目している。「ローカル」では、地域密着を掲げ、無期雇用派遣社員の採用を行っている。カスタマーにとっては地元で安定して就業可能、クライアントにとっては労働者派遣法による就業期間の制限を受けないため、長期での派遣利用が可能となる。「グローバル」では、現在全国で約800名の外国人派遣スタッフが就業している。全拠点で展開をしているが、約5000名の登録実績もあり、主要拠点には多言語対応可能な従業員が常駐、迅速できめ細かいフォロー体制で企業からのニーズも増えてきている。