ビジネスイノベーションを支えるOne Cloud(Vol.1 フルMVNO)クラウド、ネットワーク、セキュリティを1つの統合的なクラウド環境で提供するという新コンセプト。それがIIJの「One Cloud」です。

必要に応じてSIMの中断/再開を柔軟に管理 企業のモバイル通信を変革するフルMVNOの真価とは

インターネットイニシアティブ(IIJ)はクラウド、ネットワーク、セキュリティを1つのプラットフォームで提供し、企業のビジネス変革を支援する「One Cloud」を、全社を挙げて推進している。このたび、その一環として、新たに「フルMVNO(Mobile Virtual Network Operator)」による法人向けモバイル通信サービスを開始。柔軟なオペレーションやネットワーク、自由度の高いSIMの提供などが可能になるとの期待が集まる。フルMVNOで何が変わるのか見ていこう。

加入者管理機能や料金体系の自由度が高まるフルMVNO

IIJ MVNO事業部 副事業部長 安東 宏二 氏
IIJ MVNO事業部
副事業部長
安東 宏二 氏
 IIJがMVNOとしてモバイルサービスの提供を開始したのは2008年。その後、スマートデバイスのビジネス利用やIoTの急拡大などを受けて、企業のモバイル通信に対するニーズは格段に広がった。こうした企業ニーズの変化を受け、IIJでは満を持して2018年3月、NTTドコモ回線の卸を受けて3G/LTE網を利用する「フルMVNO」のサービスを国内で初めて開始した。

 「満を持して」と言うのも、IIJではMNO(移動体通信事業者)であるNTTドコモとの2年間に及ぶ協議と1年7カ月の設備構築を合わせると、フルMVNOのサービス開始に至るまで4年近く取り組んできた経緯があるからだ。IIJ MVNO事業部副事業部長の安東宏二氏は「当社が得意とするインターネット技術とモバイル通信技術は通信手順も異なります。通信機器メーカーの協力を得ながら自前の加入者管理装置などの設備を開発し、これまでのライトMVNOではできなかった、新たなサービス提供に取り組んできました」と振り返る。

 フルMVNOは、大まかに言って2つの要素がある。1つ目は、MNOのコアネットワークの一部に自前設備として、SIMカードを管理する加入者管理機能(3GのHLR/LTEのHSS)を自社で運用できること。2つ目は独自にSIMカードを調達でき、様々なサービスが提供できるようになることだ。

 加入者管理機能を自社で運用することにより、何が変わるのだろうか。従来のMVNO(フルMVNOとの対比で「ライトMVNO」と呼ぶ)では、MNOが加入者管理機能を運用していた。このためライトMVNOの事業者は、MNOの仕様に基づいてSIMの開通時から課金するなど、MNOの料金体系内でサービスを提供するしかなかった。これに対して、「フルMVNOでは加入者管理機能を自社で運用するため、SIMの利用/中断や料金プラン設定の自由度が高くなります」と安東氏は利点を強調する(図1)。 ■図1 ライトMVNOに比べ、自由度が高いフルMVNO  また、SIMについては、MNOから貸与されるライトMVNOと異なり、フルMVNOでは独自にSIMを調達できる。「標準やマイクロなどのサイズに対応するマルチFF SIMカードに加え、今後はデバイスに組み込むチップ型SIMや書き換えが可能なeSIMなど個別の要件に応じたSIMの提供が可能になり、様々なサービスが考えられます」とIIJ サービスプロダクト事業部 営業推進部 ネットワークサービス課課長の竹内信雅氏は期待する。

モバイルの閉域接続でクラウドやネットワークの課題を解決

IIJ サービスプロダクト事業部 営業推進部 ネットワークサービス課 課長 竹内 信雅 氏
IIJ サービスプロダクト事業部
営業推進部 ネットワークサービス課
課長
竹内 信雅 氏
 IIJでは、システムクラウド(IIJ GIO)、ネットワーククラウド(IIJ Omnibus)、セキュリティ(wizSafe)を1つのプラットフォームで提供し、企業のビジネスイノベーションを支援する「One Cloud」を進めている。フルMVNOサービスについても、One Cloudのプラットフォームの1つとして位置付けており、これまでの課題を解決すると見込んでいる。

 例えば、企業の拠点からIIJ GIOやMicrosoft Azure、AWSといったクラウドサービスへ安全に接続するには、有線のWANを利用するのが一般的。だが、「有線を開設するまでもない小規模拠点や、建設現場の事務所などではモバイル通信のニーズが高くなっています」(安東氏)。

 モバイル通信によるクラウド利用が広がる一方、懸念もある。モバイル端末を用いてクラウドとデータをやり取りする際、インターネット側からマルウェアなどに感染するリスクもあるからだ。こうした懸念を払拭するのが閉域接続だ。モバイル通信とIIJが提供する閉域接続ゲートウェイを組み合わせることで、インターネットを経由せずに閉域ネットワークのままクラウドへ接続できる。IIJはクラウドへの閉域接続を含め、安全なモバイル通信のインテグレーションをトータルに提供できることも強みだ。

SIMライフサイクル管理でモバイル通信コストを軽減

 近年は企業の拠点間、拠点とクラウド間の通信に加え、センサーや監視カメラなど大量のデバイスを分散配置するIoTの利用拡大が進んでいる。「IoTデバイスからクラウドヘ情報を送る方法として、モバイル通信へのニーズも高まっています。IoTではデバイスの数だけSIMが必要になり、通信コストがかかっていましたが、フルMVNOがこれまでの課題を解決します」と竹内氏は述べる。

 IIJでは2018年3月からフルMVNOによる法人向けモバイル通信サービス「IIJモバイル/タイプI」の提供を開始した。特徴の1つは、SIMのライフサイクル管理が行えることだ。ライトMVNOでは開通処理をしたSIMが企業に納品され、その状態を変えることはできない。例えば、農作物の水管理にIoTセンサーとSIMを利用する場合、ライトMVNOでは農作物の収穫後もSIMが開通状態のため通信料金がかかる。フルMVNOのIIJモバイル/タイプIであれば水管理が不要な農作物の収穫後はSIMの利用を中断(サスペンド)でき、SIMの効率的な管理による通信コストの軽減も可能だ(図2)。 ■図2 SIMの中断/再開を企業が制御できるライフサイクル管理  SIMライフサイクル管理は、(1)一時的にSIMを開通し、製品の出荷前検査などが行える「テスト」、(2)機器の電源を入れて最初に電波を発したタイミングや、企業の管理者の操作により、SIMをアクティブにした時点から月額料金が課金される「SIMの開通」、(3)SIMを利用しない場合は、中断することで不要な通信を制限し通信料金を軽減できる「サスペンド」といったように、SIMの回線状態を企業が制御できる。こうしたSIMの回線の確認や中断/再開の切り替えなどは専用の管理ポータル「IIJサービスオンライン」で操作できる。

 IIJモバイル/タイプIのライフサイクル管理を利用して、SIMの通信コストを最適化する例もある。ある企業ではクレジットカードの加盟店向けにカード認証機器を製造し、機器の出荷前に一時的にSIMを開通して検査を実施している。そして、「出荷後、加盟店の利用開始とともに通信料が課金されます。メーカーが機器を在庫として抱えているときにはSIMの通信費が軽減されることが評価されました」と竹内氏。サスペンド時には月額30円/回線の費用で済む。

 また、IoTデバイスなどのレンタル会社も、デバイスを貸し出していないときにはSIMをサスペンドにすることで、通信料金を節約。SIMライフサイクル管理の専用ページのほか、APIを公開しており、レンタルのシステムとSIMライフサイクル管理を連携したアプリケーションの開発も可能だ。

チップ型SIMなどでフルMVNOの利用拡大を目指す

 モバイル通信サービスでは下り方向の通信の利用が多い。これに対して監視カメラなどIoTデバイスでは上り方向で大量のデータ通信が行われる。そこでIIJモバイルサービス/タイプⅠでは、上り方向で大容量・高速通信が可能な「上り優先オプション」を用意した。最短1カ月から利用でき、有線の敷設が難しい工事現場の監視カメラや、イベントの映像転送などの用途にも適しているという。

 フルMVNOの今後の取り組みとして、安東氏は国際ローミングを挙げる。「現在は国際ローミングを中継するモバイル事業者と接続していますが、今後は海外のモバイル事業者と直接接続することも検討していきます」と話す。国際ネットワークでは、6月を目途にIIJのモバイルネットワークと海外(アジア、欧州、北米など)のNMO網との閉域接続が可能になる予定だ。これまで、国内ではモバイルからインターネットを経由せずにお客様の社内やクラウドに閉域接続可能だったが、海外からも同様に閉域接続できるようになり、国内からも海外からも同じセキュリティポリシーを適用することも可能となる。

 また、IoTデバイスに適した、耐久性の高いSIMの開発も今後のテーマだ。デバイスに組み込むチップ型SIMなど、SIMベンダーなどと協業しながら開発を進めていくという。「企業の皆さんにフルMVNOサービスを利用していただかなければ意味がありません。SIMのライフサイクル管理など、これまでにない新たなモバイルの使い方が可能です。これまで通信をしていなかった機器へSIMを組み込んで新たなサービスを展開するなど、ぜひ新しいビジネスでの活用にも積極的にお手伝いしたいと思っています」と竹内氏は力を込める。

 IIJでは2018年6月末まで、「IIJモバイルサービス/タイプⅠ」の無料トライアルキャンペーン(先着10,000回線まで)を実施している。フルMVNOサービスの真価を確かめてみてはどうだろうか。

IIJ Special CONTENTS

Vol.1 フルMVNO写真Vol.1 フルMVNOVol.2 マルチクラウド写真Vol.2 マルチクラウド
Vol.3 wizSafe(ウィズセーフ)Vol.3 wizSafe(ウィズセーフ)Coming soon【Vol.4 8月公開予定】ネットワーク(SD-WAN)
Coming soon【Vol.5 9月公開予定】IIJ統合運用管理サービス

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