日経 xTECH Special

東京から北陸新幹線で約2時間30分――。北陸3県の中心都市である金沢は、風情ある街並みが数多くの人々を魅了してやまない城下町である。そして、現在この日本有数の観光地には、県外から移り住むクリエイターが増えているという。彼らはなぜ金沢に集まるのか? 実際に金沢を拠点に革新的なものづくりを行う、あるクリエイティブ企業に話を聞いた。

工業デザインで培った技術を活用して
今までにない造形を実現

北陸新幹線の終着駅であるJR金沢駅から徒歩10分ほどの場所に位置するビルの中にあるsecca inc.(株式会社雪花、以下secca)。伝統的な工芸技術に最先端のデジタル技術を掛け合わせ、これまでは実現不可能だった造形のプロダクト等新たなものづくりの可能性を世に送り出しているベンチャー企業である。

例えば、金沢の料亭「日本料理 銭屋」の髙木慎一朗氏などの国内の有名料理人だけでなく、海外の有名シェフからも高い評価を得ているという同社の陶磁器は、いずれもこれまでの陶磁器のイメージを覆す造形である。美しくたおやかな曲線が描くフォルムが印象的で、「本当にこれが陶磁器なのか?」と疑ってしまうほどだ。

「我々の使命は、ものづくりをアップデートすること」だと、同社の代表取締役CEO上町達也氏が語る通りのものづくりが、北陸の地方都市で日々行われているのである。

では、どのようにして、独創的なアイデアと形は生み出されるのだろうか?

陶磁器の一例で説明すると、まず3D-CADによって設計したデザインを3Dプリンターで出力。これを型取りして作成した石膏型に粘土を流し込み、カタチを作るのだという。

石膏型に粘土を流し込むと、人の顔の形が生み出される

このような手法に行き着いた経緯について、同社のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)を務める柳井友一氏は、次のように説明する。

「僕は元々音響メーカーで、工業デザイナーをしていましたが、27歳の時に仕事を辞め、陶芸家を志し、岐阜県の『多治見市陶磁器意匠研究所』に入りました。それは、工業デザインの消費サイクルの速さに疑問を感じ、もっと長く愛され続けるモノを作っていきたいという思いからの行動でした。そして、陶芸家を目指し毎日を過ごす中で、作品の独自性を考えた結果、自分には工業デザインで培った3D-CADなどのデジタル技術があり、それを活用することが自分らしい表現に繋がるのではないか、と気付いたことがきっかけです」

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