日経 xTECH Special

数多くのデバイスに対応する必要があるデザインの現場では、少人数のクリエーター集団やデザイン事務所が活躍している。PCとITの進化はデザインの現場にどのような変化をもたらしたのか?今回は株式会社SELFISH アートディレクター 北村大輔氏に聞いた。

パソコンがなかった時代の
狭間の世代なんですよ

祖父はプロダクトデザイナーで、母は編集関係の仕事についていたので、小さい頃からデザインの現場を覗く機会が多い環境に育ったという北村氏。

「小さい頃、祖父は製図板の上でデザインをしていましたよ。今では考えられないんですけど、全部手書きなんです。ラフスケッチも図面も。今でも実家に図面は残っていますけど、本当にこんなのを手で書いたのっていうぐらい凄いんですよ。今だったらCADがあるから書きながら簡単に修正できるけど、その当時は消しゴムで消して書いてを繰り返していましたもんね。母親も入稿時になると、ポジとDICと写植を使って紙にレイアウトを作り色々指示を書き込んでるんですよ。ページを手作業で作ってましたよ。切り貼りして(笑)」

子供の頃に、その環境を体験したことがデザインの世界に入って大きな影響を与えてくれたという。

「デザイナーになる前にアパレルで働いていたんです。最初の会社は大手だったので、コレクションブランドを扱っていました。二つの目の会社は変わった会社で、コレクションブランドのセレクトショップなんですけどブランドのデザイナーに合わせて、シーズンに1回、年2回(春夏・秋冬)、自分たちでお店の内装を変えるんです。しかも手作業で(笑)毎回インスタレーションなんです。多分これを不思議に思ったほうがよかったのですが、小さい頃から祖父や母親がそんな環境でデザインをしていたので、疑いもせず手作業でお店をつくっていましたね」

実際にはどのようにお店の改装をしていたのだろうか?

「社長が、今シーズンのブランドのイメージ写真を集めてくるんです。それに合わせて絵を書いたりしながら什器を作ったりしていくのですが、社長の頭の中にしか完成図がないので作るのが大変なんです。Adobeのイラストレーターで四角い箱みたいなオブジェクトに素材を書き込むのですが、それでも社長のイメージにならなくて作り直しが多かったですね」

言葉だけだと最終のイメージ共有をすることが難しく、ニュアンス部分が伝わらず完成度の低いものになってしまっていたという。

「デザインって好みもあるんですけど細かい部分に齟齬があると相手は納得してくれないんですよね。大きなイメージより細かい部分が、みんなのこだわりだったりするので、完成図のないままぼんやりと進めて行くと最終的に違うってことになるのをすごく感じました」

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