ミートアップイベントレポート

イスラエル スタートアップが描くデジタルヘルスの未来

6月、都内某所で開催されたデジタルヘルス分野のイスラエル企業によるミートアップイベント。IT技術大国として注目が集まるイスラエルからデジタルヘルス分野のスタートアップ10社が登壇した。本レポートでは、各社ソリューションの概要とともに熱のこもったプレゼンテーションの様子をお伝えする。

6月、都内某所で開催されたデジタルヘルス分野のイスラエル企業によるミートアップイベント。IT技術大国として注目が集まるイスラエルからデジタルヘルス分野のスタートアップ10社が登壇した。本レポートでは、各社ソリューションの概要とともに熱のこもったプレゼンテーションの様子をお伝えする。

デジタルヘルスが
イスラエル経済の成長エンジンに

基調公演はイスラエル保健省 デジタルヘルス・IT部門 国家デジタルプロジェクト特命部長 イチック・レビー氏が担当した。レビー氏は「イスラエルはスタートアップが盛んな国として有名だが、デジタルヘルス分野も急成長している」と述べ、2016年段階で300社を超えるデジタルヘルスのスタートアップが存在することに言及。こうした非常に活発な動きを鑑みて、保健省としてデジタルヘルス戦略を策定したという。 具体的には「Information」「Integration」「Incentive」「Innovative」の4つ“I”を軸にデジタルヘルスの普及を進めている。たとえばInformationはデジタルによる情報収集、Integrationは集約した情報の統合基盤整備などだが、中でもInnovativeに関しては「失敗しても終わりではないという文化が浸透し、成功するまで起業を続ける。それがイノベーションを加速する」(レビー氏)と説明。そして今後、デジタルヘルスがイスラエル経済の成長エンジンになると話し、そのためにインフラ整備を惜しまない考えを示した。 続いてイスラエル企業10社によるピッチが行われた。ここからは各社のソリューションについて紹介する。

01 BO&BOhttp://bobo-balance.com/

BO&BO

BO&BOはトレーニング用のスマートデバイス「boboPRO」を紹介した。同製品は、加速度センサーを搭載したバランスボード「boboBOARD」と、操作・モニター用のタブレット「boboTAB」から構成されており、boboBOARDをバランスボールなどのバランストレーニング機器に装着することで、簡単に体のバランスが取れるようになる。Android OSを採用しており、Google Playで公開されている様々なバランスゲームをプレイすることもできる。苦痛を伴うリハビリも、容易に楽しく行うことができるようになり、患者のモチベーションアップにもつながる。タブレットやテレビモニターをガイドにできるため、1人でリハビリを行うことができ、トレーナーがつきっきりでなくてもよいのも特徴だ。さらに動体データを計測し、理学療法に役立てることもできる。

地元イスラエルの大学病院と検証を行い、boboPROの使用が明らかに筋肉強化に影響を及ぼすとの結果を得た。すでにイスラエルのリハビリ市場には普及しつつあるが、超高齢社会を迎える日本でも高齢者向けのデバイスとして活用してほしいと語った。

02 BSP Medicalhttp://bsp.co.il/

BSP Medical

BSP Medicalは虚血性心疾患の診断・監視用のソリューション「HyperQ Technology」を事業の主力としている。特許を持つ「HyperQ」の技術は独自の信号処理技術により、心臓周期のうち高周波のQRS波の脱分極を分析し、高精度に虚血を検出して早期発見につなげるシステムだ。一般的な心電図計測と比較して検出率が30%向上し、女性の検査では誤検出率を25%削減したという。信頼性の高さに加え、患者に負担を与えない非侵襲な仕組みであることもポイントとなる。AHA(米国心臓協会)にもその効果が認められ、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可やEU基準のCEマークを取得済みであることから日本でも積極的にパートナーを探していきたいと語る。

HyperQ Technology自体はソフトウエアであるため、医療機器との連携をはじめ、最先端の在宅ケアなどに組み込むことで、デジタルデータの活用が可能となる。スマートフォンやウエアラブルデバイスを利用した記録・モニタリングについても触れ、高度な技術を要しながらも非常に柔軟性があることをアピールした。

03 Essence SmartCarehttp://www.essence-grp.com/

Essence SmartCare

Essence Smart Careは1994年に設立された企業で、これまで医療・通信・セキュリティ分野でIoTソリューションを提供してきた。グローバルに事業を展開し、世界各地に2,500万台以上のデバイスを供給している。

今回紹介した「Care@Home Platform」は、宅内各所に設置したセンサー機器とスマートフォン/タブレットを組み合わせた高齢者用見守りシステムの統合サービスだ。宅内における高齢者の活動をセンサー機器を通じてリモートモニタリングし、転倒などの異常があった場合にはモニタリングセンターから遠隔地にいる家族や医療機関へアラートが送信される。これまで緊急対応システムとして利用されてきたパニックボタンは高齢者自身が自発的に押さなければならなかったが、このスマートなシステムにより“まさか”のときでも安心を担保できるという。今後はAIによる学習システムの応用や誤投薬防止システムも採り入れたいとしており、さらなる高品質な見守りに貢献していきたいと述べた。

04 Healthy.iohttps://healthy.io/

Healthy.io

尿検査は糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、尿路感染症、妊娠などを調べるのに欠かせないものだが、実施するにはクリニックや病院まで足を運ばなくてはならない。Healthy.ioは手軽な尿検査システムを開発し、これまでの尿検査のあり方を変えようとしている。

仕組みはこうだ。自宅などで採取した尿に検査用のスティック「Dip.io」を浸した後、スマートフォンのカメラで撮影して医師のもとに送るだけ。スマホアプリを使う感覚でいつでもどこでも患者自身で尿検査ができ、病院へ行く必要もない。これにより、患者の利便性向上はもとより、予防医療や早期介入に役立つという。特筆すべきは独自のアルゴリズムにより臨床レベルの精緻な分析を実現していること。全米腎臓財団らによる慢性腎臓病向けの検査キットとしても採用されるなど、その信頼性は高い。日本の学校における尿検査の代替手段としてもぜひ活用してほしいと語り、日本でのパートナーシップを積極的に訴えかけた。

05 INSIGHTEChttps://www.insightec.com/jp

INSIGHTEC

INSIGHTECは、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)と呼ばれる画期的な非侵襲治療法を開発した企業である。MRI(磁気共鳴画像診断装置)と組み合わせる治療法で、集束超音波の焦点を体内の腫瘍内に照射し、標的となる組織を焼灼する。メスによる切開など外科的な負担がなく切除でき、最小限の副作用で高い効果を得ることができる。

今回紹介したのは、神経外科ソリューションの「Exablate Neuro」だ。これは本態性振戦と呼ばれる制御できない体の一部の“ふるえ”にフォーカスしたもので、本態性振戦の治療法としてFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を得ている。会場で流された映像では、コップも持てないほど激しいふるえのある患者が治療直後にふるえが収まっている様子が映し出され、治療の効果が高いことを訴求した。現在、日本でも9病院に導入されており、治療が行われている。今後は本態性振戦にとどまらず、パーキンソン病、アルツハイマー、てんかんなど機能的脳神経外科領域で応用していきたいと今後の展開を語った。

https://www.innosphere.xyz/

世界中で多くの子どもが苦しんでいる発達障害の一つであるADHD(注意欠陥・多動性障害)。InnoSphereは、ADHDをはじめとする認知障害治療用の医療デバイスを開発している。治療はキャップ型のデバイスを患者の頭にかぶせ、脳内の複数領域に電子脳刺激技術による信号を送ることにより行う。患者の症状に応じて治療を個別化できるのが大きな特徴だ。また、特許申請中の独自技術によるこの信号は非常に繊細なものとなっており、患者である子どもにとって負担が少ないことからも、薬物治療の代替として期待されているという。

同社は現在、認知神経科学の権威である英オックスフォード大学のRoi Cohen Kadosh教授を科学顧問に迎え、イスラエルと英国で臨床試験を実施している。この技術を応用し、認知症や脳梗塞、うつ、神経変性症状といった認知障害全般にも適応させたいと語る。当面は臨床用システムとして開発を進めるが、将来的には家庭用デバイスを目指しており、「そのためにも技術的な提携や資本の拡大をしていきたい」と日本企業との連携をアピールした。

07 Laminate Medical Technologieshttp://www.laminatemedical.com/

Laminate Medical Technologies

腎機能低下を人工的に補う透析治療において、腹膜透析と並ぶ代表的な療法である血液透析。血液透析では血液ろ過のバスキュラーアクセスのために静脈と動脈をつなぎあわせる「シャント(動静脈瘻)」を造設する必要がある。シャントでは動脈と静脈という、2つの異なる速さで血液が流れるため、乱流が発生して閉塞・狭窄などの合併症が発生しやすくなる。

Laminate Medical Technologiesが紹介したのは、Hemodynamic(血流力学)のモデルをもとにしたシャントの劣化を防ぐ補強器具だ。Brace(留め具)によって血管の外部から的確に動静脈の吻合部を補強し、静脈に負荷を与えないように工夫されている。これによりシャントの合併症発生を劇的に削減できるという。欧州ではすでに臨床試験が開始されており、狭窄・閉塞の被発生率においてこのデバイスを埋め込んだ患者の優位性が認められた。同社では2020年にデバイスの上市を予定している。

08 Medispechttp://medispec.com/

Medispec

Medispecは1992年以来、四半世紀にわたって体外衝撃波療法を提供してきた。メスなどを用いず、文字通り体外で発生させた衝撃波を患部に照射して治療を行うものだけに、非侵襲で痛みを伴わない。同社のサービスは世界80カ国以上の病院、医療センター、クリニックに提供されている。

主な治療の対象は泌尿器科、循環器科、整形外科、腎臓科など多岐にわたり、とりわけ腎結石、慢性腎臓病、ED(勃起不全)、虚血性心疾患にフォーカスしている。結石治療に関しては15年以上の実績があるが、そのほかの治療例も豊富だ。例えば腎臓病に関してはアテローム硬化型腎動脈狭窄(ARAS)や高血圧に効率的に作用する。ED治療では高度な音響技術を活用して、1年後でも62%の患者が機能を維持したという。また心疾患では治療を続けることで、心筋の還流の改善、高齢者の入院期間が3割短縮されるなどの効果が見られた。同社ではこの技術をほかの疾患にも応用していく構えだ。

09 Salutehttps://www.salute.technology/

Salute

脳梗塞などの神経損傷や神経外科的損傷の後遺症から身体機能を回復させるためには、ひたむきなリハビリが必要となる。Saluteはそのリハビリ向けの製品として、「Intutive Neuro-Motion Learning」と名付けた器具を開発。実用性の高いソリューションを提供している。

Intutive Neuro-Motion Learningは足と腰に装着するユニットから成り、あらゆる患者のサイズにあわせて上肢と下肢の両方の動きをサポートする。装置自体は単純なものであるため、在宅でのリハビリに役立てたいとの狙いもある。シンプルな仕組みながら、筋肉を動かすときや関節を曲げるときに感じる「固有受容」感覚を増加させることで、体が自然で正しい動きを本能的に学び直す点を重視している。これにより、従来とは異なる方法でリハビリ患者の歩行や体の動きを支援する。会場で映し出された映像では、患者が歩けるようになったり、バランスを取れるようになったりする様子が映し出され、新たなリハビリ器具としてのポテンシャルを示した。

10 Via Surgicalhttp://viasurgical.com/

Via Surgical

ヘルニアの外科的な修復手術として、さまざまな種類のメッシュ固定法が用いられている。その一方で、これらの手法は体内軟組織への固定が前提となるため、安定度に欠ける傾向がある。Via Surgicalではこの課題を解決するヘルニア手術用デバイスの「FasTouch」を開発。均一な固定強度をもたらす筋膜接合固定法により、容易・迅速・低侵襲の施術を可能とした。体内に埋め込むことで患者が感じる異物感を極小化し、経年による疼痛や合併症の発症を減らせることもメリットだとする。

ヘルニアの症例は世界でも非常に多いことから、「FasTouch」の簡便性がヘルニア手術のコスト削減に寄与することもアピール。研究開発にも力を入れており、すでに進出を果たした米国では最初の半年で55万ドル(約6,000万円)の売上を記録している。この評価と臨床的な価値を武器に、日本市場でも販売チャネルを開拓していきたいと語った。

閉会とネットワーキング

閉会の挨拶では、駐日イスラエル大使館 経済公使 経済貿易ミッション代表 ノア・アッシャー氏が登壇。10社の健闘をねぎらうとともに、「私たちが窓口となって日本企業とイスラエル企業の交流を促進していきたい。その機会をこのイベントでつかんでほしい」と会場に呼びかけた。

終演後のフロアでは、日本企業の方々と登壇したイスラエル企業との名刺交換会(ネットワーキング)が開催された。いずれのテーブルでも交流の輪が見られ、イスラエルの産業界に対する熱視線ぶりを感じ取ることができた。デジタルヘルスは世界を巻き込んだ大きな潮流となっているだけに、今回の「日本×イスラエル」によるネットワーキングから、デジタルヘルスの未来につながる新たな動きが生まれることに期待したい。

お問い合わせ

イスラエル企業とのマッチング、イスラエル企業への投資等を御検討の折には、是非イスラエル大使館経済部迄ご一報の程お願い申し上げます。

イスラエル大使館 経済部
E-mail:israeljapaneconomy@israeltrade.gov.il
TEL:03-3264-0398
URL:http://israel-keizai.org/

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