「新電力必見!ITシステムの必勝パターンを学ぶ」セミナーレビュー ICT活用で電力市場における競争を勝ち抜く 開催日:2018年9月20日 会場:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区)

主催者講演 顧客管理/需給管理システムの上手な選び方

日経エネルギーNext
編集長
山根 小雪

2016年4月の電力全面自由化から2年半。「新電力の販売量は9.3%に拡大し、小売電気事業者は508社になりました。その一方で、大手電力の巻き返しや値引き攻勢によって、高圧部門はレッドオーシャンになっています」と、日経エネルギーNext編集長の山根小雪は現状を整理する。

このような状況を受けて、新電力の中には大手電力会社から電力を卸してもらったりその取次になったりする事業戦略を選ぶところが急増中。ブルーオーシャンを求めて新電力が家庭向け/法人向けの低圧部門を強化する動きも目立つ。また、自社電源を持たない新電力にとっては、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格の高騰も悩ましい問題となっている。

さらに、2018年には新電力2社が市場から撤退した。山根は、「両社とも、引っ越し時に伴う切り替え業務(再点)で発生する業務量の増加が撤退の理由の1つ」と分析。各社が新電力事業のニーズに合ったICTシステムを活用することによって、新電力事業はさらに成長していくという見通しを述べた。


主催者講演 顧客管理システムを選定する際に
新電力が留意すべき10項目

株式会社ビジネスデザイン研究所(BDL)
代表取締役社長
久保 欣也

新電力事業に参入しようとする企業は、どのようなICTソリューションを導入すればよいのか。ビジネスデザイン研究所の久保欣也氏は、新電力に欠かせないCIS(顧客管理システム)について、コンサルタントとしての自らの体験を基に製品選びのポイントを語った。

まず重要なのは、ベンダーと製品を決めるのに先立って、「どのような特徴の新電力事業を目指すか」というグランドデザインを描き、「そのためには、誰に、何を、どうやって売るか」という目的を明確化すること。「その上で、事業を進めるために必要な製品を選ぶようにすれば、致命的な導入のミスはなくなります」と久保氏は話す。

CIS製品に求める機能についても、事業の現状と将来構想規模に見合ったものとすることが重要だ。CISには「顧客管理」「料金計算」「収入管理」「ポータル」の4大機能があり、どの製品も、それぞれの下に多数の詳細機能を用意している。しかし、すべての機能を備えたものを買ってしまうとシステム費用が高額になって事業が赤字になってしまう可能性も大。選定に当たっては、慎重な見極めが必要だ。

CIS製品選び10のポイント

久保氏がCIS製品選びの具体的なポイントとして挙げたのは、全部で10個。グランドデザインに関するものでは、「“個人向け”か“法人向け”か」と「どれだけ代理店販売に注力するか」が重要だ。起業時は法人向け直販のつもりでも、その後の状況によっては個人向けの間接販売を追加することもあるからだ。「コールセンターの体制・システム」と「顧客規模・費用対効果」もグランドデザインの段階で決めておくべき事柄である。

また、事業目的に関係してくるのが、「切り替え・再点のどちらがメインか」「料金メニュー」「申し込みからの動線」の3つのポイント。再点(現在廃止中の需要場所について電気の使用を開始すること)の事務作業は複雑なのでICTで対処できないことも多く、料金メニューが複雑だと追加改修の費用が発生する場合もある。見積もり・申し込みシステムからCISにうまく連携できるかをチェックしておくことも大切だ。

さらに、ICTソリューションの導入時の一般的な注意事項として、「自社基幹システムとの連携」「ベンダーとのSLA(サービス品質の保証レベル)」「将来の拡張性・買い替え」を確認しておくことも忘れてはならない。

「電力自由化が始まったばかりの頃は想定外のことも多々起きましたが、今からCISを導入・リプレイスするのであればトラブルが生じるリスクは非常に低い。事業のグランドデザインと目的をしっかり考えて、“勝てる”システム選定をしていただくことを望んでいます」と久保氏は締めくくった。


主催者講演 需給管理システムは需給管理者の
レベルにあったものを選定すべき

村谷法務行政書士事務所 所長
環境エネルギー技術研究所 上級研究員
村谷 敬

新電力にとって、電力の需要と供給バランスを監視・制御するための需給管理システムも極めて重要なシステムだ。新電力には「30分同時同量」(30分間に使われる電気量とつくる電気量を合わせること)が義務として課せられており、インバランス(過不足)が発生すると、不足分については市場価格をベースに算定する「インバランス料金」で購入しなければならないからだ。

ところが、新電力は需給管理システムを必ずしも適切に選定しているわけではない。村谷法務行政書士事務所/環境エネルギー技術研究所の村谷敬氏が新電力49社にヒアリング調査したところ、58%の事業者が「システムが電力販売規模に対してスペック不足」の状態だったとのこと。そのギャップを埋めるために、優秀で高い責任感を持つ電力需給管理担当者に重い負荷がかかっている「エース依存型」となっている新電力事業者が多いという。

このような現状を改めるには、まず、需給管理者の育成パスをきちんと定める必要がある。「電気事業開始当初の段階では、電力需給ルールに基づいて正しく需給運用ができるようになることを目指します」と、村谷氏。その後は、電気事業分析、リスク分析ができる需給管理者へとステップアップし、さらに、需要家にメリットがあるメニュー構築や、利益率の高い需要家を営業部門に提案できる需給戦略営業の要というレベルへと能力を高めていくのである。

需給管理システム採用のポイントは「自動化」

さらに、新電力の需給管理システムは、需給管理者レベルに見合ったものとすべき、というのが村谷氏の指摘。具体的には、最低限の運用しかできない場合はクラウド型の汎用的な需給管理システムが最適。分析ができる管理者がある程度育っている新電力には、「クラウド型の汎用的需給管理システム+便利ツール」の組み合わせが勧められるという。さらに進んで、営業部隊と連携して需給管理できるレベルに到達していれば、オンプレミス型のハイエンド需給管理システムを使いこなして企業の利益の最大化を図ることができる。

機能面では、各種の自動化機能や予測機能が装備されているかどうかが、製品採用の重要な判断材料になると村谷氏は話す。特に、オペレーションの自動化、KPI分析の自動化、高利益需要家の自動抽出など、自動化機能への期待は大きい。「オペレーションや分析の自動化が実現すれば、需給管理者の工数が縮減し、浮いた工数を営業支援やメニュー開発などの業務に振り向けることができます」と、村谷氏。今後は、複数の電力事業者を束ねて需給のバランスを図るバランシンググループを精緻に管理する機能も製品選びのポイントになる。