特別広報企画 人工知能サミット 2018

REVIEW
AIがもたらすビジネス革命

その実現のためにいまなすべきこととは

KPMGコンサルティング

製造業100年に一度の変化の時代における企業の構え

KPMGコンサルティング AIT(アドバンスド・イノベーティブ・テクノロジー) ディレクター 山本 直人 氏

製造業100年に一度の変化の時代における企業の構え

KPMGコンサルティング
AIT(アドバンスド・イノベーティブ・テクノロジー)
ディレクター

山本 直人

「100年に一度の転換期にある日本の製造業。AIを活用し、日本の製造業の競争力を高めたい」と、KPMGコンサルティングの山本直人氏。日本らしさの象徴である品質を維持し、多様化するニーズにスピード感をもって応えていくためのポイントを解説した。

変化する製品ニーズに対応しなくては生き残れない時代

 KPMGコンサルティングは、100年に一度の変化を迎える製造業の競争力強化のためのAI活用に着目している。

 同社の山本氏は、「日本の製造業の強さの源泉は品質の高さにあります。それを担保してきたのは熟練技術者の高度な職人芸です。しかし、デジタル技術の進化に伴い、市場には、こうした“匠の技”だけでは対応できないユーザーニーズの多様化やライフスタイルの変化という潮流が押し寄せています」と語る。

 例えば自動車を見てみよう。KPMG-USの調査によれば、アトランタ、ロサンゼルス、シカゴの3都市ではそれぞれ自動車の利用目的や移動距離に違いがあり、特色がある。企業の拠点が都市の郊外に点在しているケースでは移動オフィス、中心部にまとまっていれば乗り降りが容易なポッド型のモビリティーが、生活スタイルにフィットするだろう。そのような中で、シェアリング化が進むと、モビリティーの稼働率が上がり、購入サイクルも大きく変化する。企業は、今以上に多様なモビリティーを短いサイクルで市場投入していく必要があるため、今後のデジタル時代にはスピードという価値が重要になってくるのだ。

 「日本企業特有の丁寧な仕事による品質と、断続的に変化する世の中のニーズにフィットする価格帯の製品を素早く市場投入していくことが、今後の市場で勝ち抜く鍵となります」と山本氏は語る。

日本企業の“暗黙知への依存”を超えるためにできること

 しかし、現状は厳しい。というのは、日本の製造業はいまだに卓越した熟練技術者の暗黙知に頼って業務を動かしているからだ。さらに、昨今の製品の複雑化に伴い、検討漏れやそれに起因する手戻り作業の発生リスクが高まっている。また、ベテランが引退すればその知識や技能が失われてしまうという課題もある。手戻りが発生した場合の遅れは人海戦術でカバーすることもできるが、これではスピードと品質の両立ができず、価格上昇やリコールなどのリスクにもつながってしまう。

 「デザインレビューでは、よくベテランが大部屋に集まって議論しますが、レビューできるのはあくまで各人の経験の範囲内に限られるので、レビュアーの経験の範囲外のリスクについては検知することができず、実機検証フェーズで発覚すると大きな手戻りとなります」と山本氏は分析する。

 今必要なのは、こうした暗黙知主導型からの脱却である。そこでKPMGコンサルティングが提唱するのが、AIによって膨大な過去の知見を網羅し、その関係性を見えるかたちにすることだ。

 日本企業は製品を開発するための最終的な設計図面に至るまでに試行錯誤し、計画書や報告書を作成、蓄積しているが、山本氏によればこれらは「企業の叡智」である。

 「例えば自然言語処理技術を活用することで、計画書や報告書から網羅的に知識を抽出し、トピックを関連付ける。それをデザインレビュー時のレビュー項目として活用すれば漏れの防止につながるのです」

グラフ構造を駆使して、知識の関連性を可視化する

 山本氏は、新製品を開発する際に、既存製品の「設計の変化点」を見出し、その影響範囲を網羅的に把握できれば、究極的には手戻りは起こらないと主張した。

 しかし、人間がこれを行うのは非常に困難である。「金属バルブを樹脂製バルブに変えるという開発例を挙げてみましょう。設計変化点がどこにあり、その影響はどうなのかを探ろうと、金属部品と樹脂素材の専門技術者を集めても、影響範囲を完全に把握することは困難です。人間には、物事を階層的にドリルダウンしたり、関連する要素を横串で見たり、異なる観点を関連付けるにあたっては認識能力の限界が存在します」

 そこでKPMGコンサルティングが着目したのが、グラフ構造(グラフ理論)である。

 グラフ構造を活用すれば、知識や情報同士の複雑な依存関係を可視化し、俯瞰的な視点を得ることで、直感的な理解を可能にする。あるトピック(話題)同士の経路を視覚的に示し、しかも個人、部署、会社を越えた広い範囲でとらえることができる。つまり通常の人間の情報把握の限界を超えられるのである。

 グラフ構造活用の手法は多岐にわたる。山本氏はまず、AI に関するニュース記事を自然言語処理してグラフ化した実験を示し、人間ではとらえることのできない、情報と情報との間の相互関係を説明した。「人間にとって、自分が着目した情報の隣にある情報、さらにその隣にある情報を知ることは困難です。しかし、情報間は依存関係にあって、それを知ることが課題解決に力を発揮します」

 目の前の設計課題と解決策を経路探索アルゴリズムによってつなぐことや過去の知見から課題の解決策を経路上にあるトピックを追うことで見出すことも可能である。

 グラフ間のさまざまなギャップを見ることも効果的だ。設計開発部門と品質保証部門は共通する知見を持ちながらも、互いに違う領域を見ていることが少なくない。そこでグラフ構造に、設計開発部門の報告書だけでなく、品質保証部門の報告書を取り込み、そのギャップを把握したり、社外の論文や特許と社内情報とのギャップを見ることによって、課題を解決し、新しい発想を生み出すことができる。

 グラフ構造は他にもさまざまな活用法がある。例えば、報告書内に含まれる課題を識別し、ヒートマップとして可視化すると、自社内の課題の発生状況を一目で把握することができる。また、ヒートマップとグラフの連動では、課題が多発している領域の原因分析ができ、管理者層が現場の状況を容易に把握できるようになり、ヒト・モノ・カネの投入・引き上げの判断に活用することも可能である。

 このように山本氏は、日本企業が伝統的に持つ暗黙知の優れた点を維持しつつ、これをAI に取り込み、競争力を高める手法を示した。

 そして最後に、その実現に向けて「AI技術者が圧倒的に不足していることもあり、企業が個別に取り組むのではなく、企業横断的なプラットフォームを整備し、産業全体を底上げしたいと考えます」と提言した。

グラフの特性を生かすことで、人の情報把握の限界点を底上げすることが可能になる

グラフの特性を生かすことで、人の情報把握の限界点を底上げすることが可能になる

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社内の情報と社外の情報(特許や学会論文等)のGAPを見ることで、新たな着想を得ることが可能である

社内の情報と社外の情報(特許や学会論文等)のGAPを見ることで、新たな着想を得ることが可能である

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  • お問い合わせ先

  • KPMGコンサルティング株式会社

    URL:kpmg.com/jp/kc

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