日経 xTECH元年 特別トップインタビュー

マウザーエレクトロニクス

製品設計における日本市場にスピードを提供

電子部品のネット取り引きは
グローバルな開発競争に
もはや不可欠

マウザーエレクトロニクス
本社副社長 日本総責任者

勝田 治

電子部品のネット販売を手掛ける米マウザーエレクトロニクスは、誰でも電子部品を買えることを目指し誕生した。設計技術者に特化した電子部品ディストリビューターに注力するビジネスモデルを推進し続け、対象を米国内市場からグローバル市場に広げてからは、みるみる高成長を果たしてきた。今後の成長に向けた取り組みについて、経営陣に聞いた。

これまでのマウザー成長物語の背景を教えてください。

勝田 マウザーの誕生は1964年。かつて高校の物理学教師だった創業者ジェリー・マウザーが、電子部品メーカーに部品を注文しても、容易に購入できなかった苦い経験から設立しました。その後、2000年に電子部品ディストリビューターのTTIによる買収、2007年には米国の著名な投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイのTTI買収により、現在はそのグループ傘下にいます。

ティエン 2000年代後半から、マウザーのグローバル化が始まりました。それまで顧客のほとんどが米国でしたが、今やアジア太平洋地区とEMEA(欧州・中東・アフリカ)で6割近くを占めています。

 マウザーは750社以上のメーカーの認定ディストリビューターとして、200カ国の各地域の60万以上のお客様に、製品をご提供しています。私たちは、2018年度末までに100万以上の個別部品在庫をお約束していますが、2019年以降もこれを継続的に拡大する予定です。

電子部品のディストリビューターとしての特色を教えてください。

 少量生産から大量生産の製品まで扱う他のディストリビューターとは違い、マウザーでは流通拠点をテキサス州の巨大な物流センターに集約した上で、小ロットしか扱っていません。これは電子部品の中でも、設計開発向けに特化しているためです。

 また、世界中にサービス拠点を構えてカスタマーサービスサポートを提供している点も特長の一つです。電子部品はネットを見るだけでは購入いただけません。国ごとの文化風習の違いを踏まえた上で、ネットとリアルの世界を融合させ、お客様が安心して取り引きできる環境が必要です。

ティエン マウザーは単に部品だけを販売する商社ではありません。すべてのお客様が製品開発のために必要な製品や技術情報をご提供しています。また、2015年から始めた電子部品業界で最も広く視聴されているプログラム「Empowering Innovation Together」では、ロボットが人間に与えるインパクトを紹介し、イノベーションが果たす役割を広く伝えています。

日本拠点の開設で好循環

2018年の業績はいかがですか。

ティエン 当社の販売は引き続き好調で、アジアは47%増、EMEAは46%、南北アメリカは35%と、すべての地域で記録的な2桁成長を遂げました。

勝田 日本国内では多くの施策が功を奏して40%以上の増加を見込んでいます。おかげさまで、2015年の日本の拠点設立以来、皆様に助けられて急成長を続けています。中でも当社が注力してきたのが半導体であり、グローバルでは売り上げのおよそ半分、日本では55%を占めます。エンジニアは新製品の開発にあたり、まず半導体を選び、次にその周辺部品を決めます。つまり半導体を第一に考えることは、お客様目線で必然的です。

日本の拠点は米国、欧州、アジア太平洋(AP)と並び本社直轄ですが、どういう背景があるのでしょうか。

勝田 日本の拠点は2015年の設立時には、カスタマーサービスサポート業務から始まり、2016年にマーケティング機能を設けました。当時はAP地域統括本部の傘下にいました。しかし、日本の商習慣や人の扱い方、宣伝の仕方などは、米国だけでなくアジアとも大きく異なります。そこで日本を個別オペレーションにする必要性を本社CEOのグレン・スミスに伝えたところ、すぐに理解し、本社直轄の運営になりました。

 もちろん、AP本部もカスタマーサポートやマーケティングで協力してくれる欠かせない存在です。主に日系以外のサプライヤーとの関係をAP本部はサポートしてくれます。

ティエン 特にマーケティングにおいては、グローバルとローカルを分けて話すことができません。我々AP本部は、インドや中国をはじめ、アジア太平洋圏に拠点を持つ企業とのコミュニケーションに精通しています。他方で、日本にサービス拠点があるからこそ、日本のサプライヤーとの交流を深められるという相乗効果もあります。マウザーにとって日本は今や、販売と調達の両面において重要な国です。

体制の革新は経営者の責務

具体的に、日本市場とグローバルではどのように違うのでしょうか。

 日本では半導体の弱体化が進み、日本の電子機器設計者は外国製半導体に頼らざるを得ません。しかし、最新の情報は十分とは言えない状況です。エンジニアが外国製半導体を早く見つけて早く試作できるように、インフラを整えなければなりません。

 しかし、日本は他国と比べて非常に特殊な、電子部品の調達における大きな障壁があります。近年、欧米をはじめ韓国や中国企業では、エンジニアがコーポレート・クレジットカードで即断即決の部品購入ができます。しかし日本のほとんどの企業では未だに取り引き口座の開設が求められ、大企業では設計開発の段階でも、資材部門経由でしか部品調達できません。また、部品メーカー側も出荷の社内手続き完了まで、1~2週間を要すこともあります。これでは海外のエレクトロニクス企業とは戦えません。

 我々も常々「ネット取り引きによってスピードと利便性が買える」と伝えてきました。しかし、いくらエンジニアに意欲があっても、経営者が開発リードタイムの課題を理解し、体制を整えられなければ、もはや後がない状況です。私も業界にいた人間として、この点を拙著『ワンクリック革命』で提言させていただきました。

2019年の見通しはいかがですか。

勝田 日本もグローバルも市場は今やボーダーレスです。IoTと自動車をキーワードに、状況は以後も続くでしょう。

 マウザーとしてはロングテールにビジネスを展開していくつもりです。最新の半導体や電子部品の品揃えでは、マウザーに競合はいないと考えていますが、お客様が必要とするすべての部品を揃えられるような環境を具現化していきたいです。

 例えば自動車分野にはまだ発展の余地がありますが、欧米ではマウザーにしかない商品を求めて、自動車メーカーのお客様からも直接アクセスいただけることが増えています。日本のエンジニアも早くそうした開発環境になることを願っています。まずは一人でも多くの方にマウザーのサイトをご覧いただきたいですね。

左から、マウザーエレクトロニクス本社エグゼクティブ アドバイザーの横伸二氏、本社副社長 アジア太平洋地区マーケティング&事業開発担当のダフネ・ティエン氏、本社副社長 日本総責任者の勝田治氏

お問い合わせ

マウザーエレクトロニクス
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TEL:0120-954-837
URL:http://www.mouser.jp/