建築の安全を考える 第1回 鉄道の安全思想をベースに災害時の見通しをガラスで確保

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ジェイアール東日本建築設計事務所は30年前、旧国鉄の分割・民営化に伴い、東日本旅客鉄道(JR東日本)の100%子会社として設立された。以降、駅施設や駅ビルを中心に建築設計の実績を数多く積み重ねてきた。「建築の安全」は、そこで一貫して追求してきたテーマの1つである。

いざというときに避難しやすいように見通しの利くガラスを採用

株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 取締役建築設計本部長 石橋 裕之 氏

 初めての来訪者でも安心して利用できる、災害時にも大きな混乱を招くことがないなど、不特定多数の人で混雑する駅施設や駅ビルには、一般的な建築物以上に高い安全性が求められる。災害時に帰宅困難者を受け入れる施設ともなれば、なおさらだ。鉄道業のグループ会社は、それらの施設で誰もが安全に過ごせることに重きを置く。運行の安全を最優先する鉄道会社の文化は、そこにも根付く。

 ジェイアール東日本建築設計事務所(以下、JRE設計)も、そうした文化を受け継ぐグループ会社の一つだ。同社取締役建築設計本部長の石橋裕之氏は「安全衛生活動に取り組む工事現場のように、社員の安全意識を高める狙いで標語コンクールを開催しているほどです」と、笑顔を見せる。

 安全確保という観点から建築設計の現場では、空間の「分かりやすさ」を何より重視する。「いざという時に避難しやすいことが大事。たとえ初めて訪れた利用者でも、可能な限りサインを頼りにしなくても出入り口に向かえる空間づくりを心掛けています」(石橋氏)。

 そこで積極採用するのが、見通しの利くガラスである。防火区画では特定防火設備として大臣認定を取得したガラスを用いる。災害対策上、通常のガラスに防火シャッターを組み合わせるという手段も考えられるが、石橋氏は防火シャッターには難があるという。

特定防火設備としての認定品を用いる。部材選定に課される厳しい条件

 「防火シャッターが下りると視界が妨げられ、全く見慣れない光景が眼前に広がるため、施設利用者は自分がどこにいるのか、分からなくなってしまいます。そのため、クリアなガラスだけで区画して、災害時にも見通しを確保しておきたい」

 長く使い続けることを考えると、防火シャッターにはリスクも見込まれる。「可動部分が多いということは、それだけ故障リスクを抱えるということ。可動部分はできるだけ少ないほうが安心です。防火区画の造りは単純なほうがいい」(石橋氏)。

 ただ、特定防火設備として大臣認定を取得したガラスなら何でも採用できるいうわけではない。駅施設や駅ビルの発注者であるJR東日本グループは安全を最優先する思想から、部材の選定には厳しい姿勢で臨むという。

 石橋氏は指摘する。「駅施設の場合、例えば仕上げ材を留め付けるビスが振動で緩んで、その部材が落下する事態も考えられますが、そのようなことは決して許されません。建築物にどのような部材を採用するか、その選定には厳しい条件が課されます」。

 例えば、特定防火設備として大臣認定品の防火ガラスを用いるにしても、その特性が問われるという。防火ガラスには、低膨張ガラス、耐熱強化ガラス、耐熱結晶化ガラスという3つの種類がある。材質やその製造法が異なるため、同じように火災に強いガラスとは言っても、それぞれの特性は異なる。

【防火ガラス実火災検証比較試験】
局所的な急熱の後に水球衝突による急冷など、実火災に近い条件下の実験でも割れない防火ガラスは、
耐熱結晶化ガラスのファイアライト®だけ。
※防火ガラス実火災検証比較試験:消防研究所・東京大学・イー・アール・エス・日本電気硝子による共同研究

割れても飛散・脱落・落下しない、特定防火設備として唯一の「耐熱合わせガラス」

 JRE設計が採用するのは、耐熱結晶化ガラス。日本電気硝子が製造・販売する防火ガラス「ファイアライト®」シリーズである。防火ガラスとしては唯一の結晶化ガラス製で、誕生から今年30年を迎える。くしくも、JRE設計とほぼ同い年だ。

 採用の理由は何か。石橋氏が挙げるのはやはり、安全性だ。「結晶化ガラスは熱した後に急速に冷やしても割れない。それはつまり、火災で熱せられているところに放水しても割れないということ。消火活動と安全性を両立する防火ガラスなのです」。

 もう1つ、やはり安全性の観点から、割れたガラスが落下しないことも求められる。ガラスだけに割れるリスクは当然に見込まれるが、たとえ破損したとしてもガラス片の飛散や落下、脱落がないということが欠かせないというのである。

 そこでJRE設計が目を向けたのが、合わせガラスである。これなら、ガラスとガラスの間に樹脂製の中間膜を挟み込んでいるため、ガラスの破片は中間膜に接着されたまま残り、落下することはない。

高い衝撃安全性 合わせガラスなので、万一、人や物が衝突し割れた場合でも破片の飛散や落下・脱落がほとんどない。

鶴見駅ビルをきっかけに「ファイアライトプラス<sup>®</sup>」の積極採用へ

 具体的には、「ファイアライト®」シリーズの1つである「ファイアライトプラス®」という合わせガラスを採用する。災害時には、視界を妨げることがなく、消火活動を安全に進めることができる。たとえ割れても、ガラス片の落下や脱落などで人を傷付けることはない。

 この「ファイアライトプラス®」を初めて採用した新築案件は、JR鶴見駅に2012年11月に開業した駅ビル「CIAL鶴見」だ。駅ビル内のアクティビティをあえて外に露出させ、にぎわいをもたらす狙いから、コンコースに面した吹き抜け空間にもガラスを利用しようと考えたのが、採用に至ったきっかけという。

 「吹き抜け空間は竪穴区画にあたるため、ガラス面には特定防火設備としての耐火性能が求められます。しかも、その下は駅利用者が往来するコンコースなので、ガラスが破損した場合でも、その破片が落下する恐れを最小限に抑えなければなりませんでした」(石橋氏)。そこに、「ファイアライトプラス®」の出番が生まれた。

 以降、「ファイアライトプラス®」を採用する案件は増えている。石橋氏は「JR東日本グループの発注案件では、厳しい選定条件を満たす『ファイアライトプラス®』という部材と出会えたため、『CIAL鶴見』以降の案件にも積極的に採用しています」と明かす。

 耐熱結晶化ガラスの合わせガラスという「ファイアライトプラス®」の採用はいまや、安全確保に向けたJRE設計としての定番材料の1つ。同社では駅施設の改修を見据え、非構造部材の耐震化にも積極的に取り組んでいる。

いずれの採用例も、万一の避難時に「先が見えるという安心感」を与えている(バスタ新宿・CIAL鶴見・JR川崎駅)
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建築の安全を考える  第2回 災害時の見通しと平常時の安全性。設計者が語る「ファイアライトプラス®」
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