建築の安全を考える 第2回 災害時の見通しと平常時の安全性。設計者が語る「ファイアライトプラス®」

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東日本旅客鉄道(JR東日本)のグループ会社として、安全確保を最優先するジェイアール東日本建築設計事務所。同社で設計する駅施設や駅ビル、商業施設では災害時の見通しや視認性と平常時の安全性を同時に確保する狙いから、特定防火設備として唯一の耐熱合わせガラス「ファイアライトプラス®」を積極的に採用している。その使い勝手を、設計担当者に語り合っていただいた。

災害時の安全対策として必要な防火ガラス。設計ではガラスそのものの安全性にも配慮

CIAL鶴見・JR東京駅・JR川崎駅・バスタ新宿(新宿南口交通ターミナル)

――前回は、ジェイアール東日本建築設計事務所 取締役建築設計本部長の石橋裕之様から、安全確保に向けた設計思想をお聞きしました。今回は、「ファイアライトプラス®」を採用したCIAL鶴見、バスタ新宿、JR東京駅、JR川崎駅、それぞれの設計ご担当者様にお集まりいただきました。まず、「ファイアライトプラス®」のメーカーとして前回の石橋様のお話からどのような印象を受けたか、日本電気硝子 執行役員 コンシューマーガラス事業本部の岸本暁本部長から一言いただけますか。

建築の安全を考える  第1回 鉄道の安全思想をベースに災害時の見通しをガラスで確保

岸本 災害時における安全対策として、見慣れた空間と見通しの確保という観点から防火ガラスが必要であること、そのガラスの安全性が重要であることなど、きめ細かな配慮の下で設計されていることが理解できました。同時に、安全性のより高い防火ガラスの開発という使命をメーカーとして強く感じました。今回は、建築設計者のお立場から、この製品はこうあるべき、もっとこうしてほしい、という生の声をお聞かせください。

耐熱合わせガラス「ファイアライトプラス®」後からフィルムを貼らずとも安全性を確保

――設計を担当されたプロジェクトに「ファイアライトプラス®」を最初に採用されたのは、青木様とお聞きしています。CIAL鶴見が第一号ですか。

青木 そうです。「ファイアライト®」は以前勤務していた別の建築設計事務所でも、熱衝撃に最も強い防火ガラスとして採用していました。CIAL鶴見でも、ごく自然に「ファイアライト®」の採用を検討しました。

 それは、売り場の効率を高められるからです。商業施設である以上、売り場面積はできるだけ広く確保したい。しかし、特定防火設備が必要とされる箇所に通常のガラスとシャッターを組み合わせて使用すると、建具2枚分のスペースを取られてしまう。効率を考えると、建具1枚分で済む防火ガラス「ファイアライト®」を利用するほうがいい。

 ただ1つ、悩みがありました。ガラスが万が一破損した場合でも安全を確保できるように、その表面に飛散防止フィルムを貼るのが慣例でしたが、コンプライアンス上、そうした対応が許されるのか、という悩みです。特定防火設備としての認定はフィルムを貼っていない状態で取得しています。フィルムを貼ってなお同じ性能を確保できるのかという点は、厳密には分からないはずなのです。

 それを、日本電気硝子の製品開発担当者にご相談したところ、2枚の「ファイアライト®」の間に特殊樹脂を挟み込んで合わせガラスにした「ファイアライトプラス®」を間もなく特定防火設備の認定を取得できる見通しとのことでした。この「ファイアライトプラス®」であれば、後からフィルムを貼らなくても安全性を確保できます。建築主にも安心してお勧めできる製品と考え、採用を決めました。

ジェイアール東日本建築設計事務所 商業設計本部 商業3部 主幹 青木 容子 氏

――CIAL鶴見で実際に採用されてみて、いま、どのように評価されていますか。

青木 避難経路を確認しながら、災害時にシャッターが降りることがないというのは大きなメリットではないか、と現地で思いました。ガラス張りのシースルー部分にシャッターが下りるとなると、日常空間は非日常空間へと一変します。しかも、シャッターがガラガラと降りてくる音も聞こえてきます。平常時と違う状況の中で避難しなければならないことによって、恐怖は倍増するでしょう。「ファイアライトプラス®」を採用したことで、施設利用者の安心を確保できたと考えています。JR東日本の基本思想でもある「避難経路の安全・安心」の確保に貢献できたと思います。

――日本電気硝子 建材販売店の電気硝子建材でこのプロジェクトを担当した丸山義幸リーダーはどのような感想をお持ちですか。

丸山 耐熱強化ガラスの場合は、自然破損の危険性があることやフィルム貼りには危険が伴うことを、ご担当者様にはよくご理解いただいていました。その結果、採用を決めていただくまで、順調に話を進めることができました。ただ、ガラス越しにものを見たときにもう少し透明に近い色にならないか、とご要望をお受けし、苦労したことを思い出します。

青木 「ファイアライトプラス®」越しに向こうを見ると、ものがやや黄色っぽく見えるということがあります。LED照明の下ならそうでもないのですが、商業施設で利用されるハロゲンランプの下ではその色味が目につきます。そこは改善してほしいですね。

――岸本本部長、いまご指摘いただいた問題は改善できそうですか。

岸本 実は、その「ファイアライト®」の色合いを、社内では「シャンパンゴールド」と呼んでいるのですが、それを透明に近づけられないか、というお客様からのご要望を受け、改善に取り組んでいます。しかし、高温に耐え、水を掛けても割れない結晶化ガラスの材質上、現段階では難しい。ガラス越しでもモノが自然な色に見えるように引き続き改善を試みていきますが、いまは「安全と安心の色」とみていただけないでしょうか。

サッシ枠はもっと細く、シャープに見せたい。設計者の率直な要望に開発責任者が答える

――榎木様がご担当されているJR東京駅は巨大な空間だけに避難経路には安全・安心が強く求められるはずです。そうした巨大な空間で「ファイアライトプラス®」を採用されたのも、やはり、CIAL鶴見と同様の理由からですか。

ジェイアール東日本建築設計事務所 建築設計本部 ターミナル駅開発部門 設計長 榎木 理人 氏

榎木 そうです。JR東京駅では総武線地下駅の改札窓口に部分的に採用しました。通常は防火区画性能の必要のない部分ですが、消防法上の排煙設備規定の免除のため、防火区画を設けました。その開口部に「ファイアライトプラス®」を採用しています。「CIAL鶴見」と同じように、コンプライアンス上の問題なしに災害時の見通しや視認性と平常時の安全性を確保する狙いからです。

 また、デザイン面からの要望として、メーカーには、サッシ枠のごつさを少しでも解消してほしい。エレベーターシャフトをシースルーにしようとしても、そこが竪穴区画にあたる場合、「ファイアライトプラス®」を用いざるを得ません。すると、ごついサッシがどうしても目立つ。

――サッシ枠の話題はサッシメーカー次第ですが、この問題に関して岸本本部長どのようにお考えですか。

岸本 世の中にまずこうした製品を供給するのが使命と考え、認定を取得できるサイズで進めてきました。今後、サッシメーカーとも検討していきたいと思います。サッシ枠としては、例えばどの程度のサイズを想定されていますか。

榎木 20~30㎜程度です。手前に見える部分がシャープであればいいので、その程度の盛り上がりを表面に設ける形も考えられます。選択肢があるといいですね。

ジェイアール東日本建築設計事務所 建築設計本部 ターミナル駅開発部門 主幹 菅原 和人 氏

――2018年2月に改良工事を終えた菅原様ご担当のJR川崎駅では、駅ナカに「ファイアライトプラス®」を採用しています。狙いはCIAL鶴見のように、売り場面積を多く確保できるようにしたうえで、災害時の見通しと平常時の安全性を確保することにあるのですか。

菅原 そうです。そうした狙いを果たすには、「ファイアライトプラス®」は有力な選択肢といえます。JR川崎駅では照明はすべてLEDで暖色系のものが多く、しかも店舗側もアースカラーのデザインを好んだため、ガラス越しに向こうを見ると黄色っぽく見えるという点が気になることはありませんでした。ただ、短辺方向のサイズが現状の1200㎜よりもっと大きな、例えば1500㎜程度の製品があると、意匠面から採用しやすくなります。

幅広サイズに対するニーズにも実現に向けて前向きに検討

――岸本本部長、この点は要望としてすでにお聞きになっていますか。

岸本 はい。幅広サイズへのご要望はうかがっております。この幅広サイズ化の実現のためには、製造設備の改造を含めた技術的な課題が多くありますが、いまお話にありました1500㎜というサイズが実現できるように検討します。できるだけ早く皆さんのご期待に応えられるように進めてまいります。

――バスタ新宿は大規模な交通ターミナル機能を持つ施設です。災害対策には鉄道建築と同様に特段の配慮が求められると思います。

ジェイアール東日本建築設計事務所 建築設計本部 ターミナル駅開発部門 次長 上野 清隆 氏

上野 私が担当しましたバスタ新宿では全館避難安全検証法で安全性を検証していることから、防火区画が随所に設けられています。それらをすべて壁で区画すると、災害時は迷路状態になってしまいます。ガラスで区画し見通しを確保することが欠かせません。「ファイアライトプラス®」を用いたのは、そうした理由からです。

 ただ、非常時開放システムを備えた自動ドアに関しては、「ファイアライトプラス®」との組み合わせで特定防火設備の認定を取得した製品がなかったため、別の方法で対応せざるを得ませんでした。「ファイアライトプラス®」との組み合わせで、特定防火設備の認定を取得するようにしてほしいですね。

――この点もサッシメーカーとの連携が欠かせませんが、電気硝子建材 営業本部の春山真一副本部長はどのような対応をお考えですか。

春山 新規の認定取得につきましては、設計士の方々のご要望を伺い、各サッシメーカーとの開発に取り組んでまいります。「ファイアライトプラス®」を利用しやすい環境をつくっていきます。

――最後に、防火ガラスへの期待や設計活動に関する抱負をお話しください。

菅原 2020年東京五輪・パラリンピックの開催を前にテロ対策は一層重要になりそうです。防火ガラスには今後、衝撃に強いという防犯性能も求められると思います。

青木 駅ビルに買い物に訪れた不特定多数のお客様が、災害時でも安全に避難できるような設計をこれからも心掛けていきたいですね。

上野 鉄道建築の中でもデジタルサイネージが広まっています。今後、サイネージとしても機能する防火ガラスが求められていくのではないでしょうか。

榎木 将来的には改札機が無くなり、駅はその領域があいまいになっていくと思います。街とこれまで以上につながりを深めていくでしょう。そういう中で既成概念を打ち破るような駅空間を提案していかなければなりません。防火ガラスも、そうした時代の流れに合わせて発展していくことを期待しています。

――「ファイアライトプラス®」の今後の展開に期待したいと思います。本日は、ありがとうございました。

写真右から、ジェイアール東日本建築設計事務所の青木主幹、上野次長、菅原主幹、榎木設計長、日本電気硝子の岸本本部長、電気硝子建材の春山副本部長、丸山リーダー
座談会を終えて 製品を使いやすく改良し広めていくのは、メーカーの責務  日本電気硝子 執行役員 コンシューマーガラス事業本部長 岸本 暁 氏

 消防士の方に話をお聞きすると、消火活動中に進む先の様子が見えない状況というのは、とても不安だといいます。扉を開けた途端、くすぶっていた炎に酸素が供給されて火勢が急激に増すバックドラフトという現象も考えられるだけに、なおさらでしょう。消防士はそういう観点から、見通しの利く「ファイアライトプラス®」を評価してくださいます。

 この「ファイアライトプラス®」は非常にユニークな製品であると自負しています。それをどう広めていくかということは、メーカーとしての責任です。今後、もっと使いやすい製品になるよう、今回のように生の声をお聞きし、改良を重ねていきたいと思います。それもまた、メーカーの務めです。今回お聞かせいただいたご要望を一つひとつ実現するために、私たちは何をしなければいけないのか、しっかり考えていきます。(談)

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