「食×tech」がもたらす新しい世界を議論 
各界の精鋭たちが思い描く未来像とは 2018年10月26日、東京・六本木の貸し切りバルで「未来協創Lab」のフードテックアイデア会議が開催された。「5G」をはじめとする最新テクノロジーと「食」を組み合わせることで、いったいどんな世界が実現するのか。各界の精鋭5人が、その方向性や未来像をディスカッションした。
 2018年10月26日、東京・六本木の貸し切りバルで「未来協創Lab」のフードテックアイデア会議が開催された。「5G」をはじめとする最新テクノロジーと「食」を組み合わせることで、いったいどんな世界が実現するのか。各界の精鋭5人が、その方向性や未来像をディスカッションした。

店の「ペルソナ」をどうやって知ってもらうか

 アイデア会議に参加したのは女性3名、男性2名。「ABC Cooking Studio」で代表取締役社長を務めた経験もあるNTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 食文化事業・フードテックビジネス担当部長の櫻井稚子氏、訪日外国人に日本旅行を満喫してもらうためのサービスを展開するWAmazing 代表取締役社長CEOの加藤史子氏、「さいころ食堂」などを運営するフードプランナーの大皿彩子氏、石川県金沢市を拠点に「食」のクリエイティブを推進するセンド 代表取締役の宮田人司氏、ラジオだけに留まらないマルチな活躍を見せるニッポン放送 アナウンサーの吉田尚記氏が一堂に会した。

リラックスした雰囲気で開かれた食×tech会議

 主催は、「食のスタイル革新」を掲げるNTTドコモ。安心・安全で豊かな食生活が送れる世界の実現にあたって、NTTドコモは「外食領域の強化」を重要なポイントのひとつと捉えており、ユーザビリティの高い商品やサービスが必要だと考えている。さらに、中期戦略2020「beyond宣言」を策定し、次世代の移動通信方式である「5G」の活用を通じたビジネスパートナーとの新しい価値の協創にも力を入れている。

 そこで今回は「食×tech」をテーマに設定。5Gなどの最新テクノロジーを活用すると、レストランなどの外食産業でどんな新しいサービスが生み出せるのか。「創客(新規顧客獲得)」や「店内での新たなソリューション」などを議論のポイントに挙げ、飲食業界ならではの特徴にも注目しながら、さまざまな可能性やアイデアを探った。

 最初の「創客(新規顧客獲得)」では、まず前提条件として「フランチャイズチェーンの店舗」と「個人経営の店舗」の違いが指摘された。例えば、フランチャイズチェーンの店舗はブランド色やメニューなどの統一感が求められるため、店舗ごとに特色を出す必要性はそれほど高くない。一方、個人経営の店舗は、他店と差別化をはかることが集客の重要なファクターとなることから、その店の「ペルソナ(人格)」ともいうべき特徴や雰囲気、コンセプトなどを確立させることが不可欠だ。

NTTドコモの櫻井氏



 加えて、日本は国籍も種類も豊富な料理店がそろっているとともに、日本人の食に対する趣味趣向も実に多彩である。そういった点を踏まえると、個人経営の店舗は店のペルソナをどれだけ多くの人に素早く詳細に届けられるかが重要となってくる。その情報伝達の手段として「さまざまなテクノロジーを活用すべきではないか」との意見が上がった。

 また客側の視点で見てみると、スマホを使って情報サイトやSNSから店のメニューや雰囲気をチェックする行為はすでに当たり前になっている。しかし膨大な店の中から、自分の望んでいる店を必ずしもピンポイントに探せるとは限らない。また、そうした客側の動向に関するデータを店側がマーケティングなどに活かそうとすると、大型のフランチャイズチェーンであればある程度は対応できるかもしれないが、個人経営ではかなりハードルが高いのが実情だ。

WAmazingの加藤氏

 それらの課題に対して、ひとつの解決策となりうるのが5Gのような新しい通信インフラだ。超高速・多接続・大容量の5G環境が整えば、店の情報をより多くの人に詳しく知ってもらえるのはもちろんのこと、顧客データの収集や蓄積、共有のハードルも下げてくれることから、新たなサービスを生み出すきっかけにもなるだろう。

今後求められるのは食の「多様性」

 次の「店内での新たなソリューション」に関する議論では、最初にVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用したアイデアが飛び出した。例えばプレーンのクッキーを食べる場合に、VRやARで見た目をチョコチップクッキーに変え、食べる瞬間にチョコレートの香りもプラスすることで、あたかもチョコチップクッキーを食べているかのように感じさせるというもの。すでに実証実験なども行われており、実現性はかなり高いアイデアだという。

センドの宮田氏

 この技術がさらに進化すれば、いずれは「実際には野菜を食べているのに、意識的にはステーキを食べているのと同じ満足感が得られる」といった未来が来るかもしれない。健康志向や代替食糧の観点であれば、そういったやり方もあり得るだろう。

 しかし、ある意味で「騙す」ことと同じでともいえるこのやり方に、食のプロからは否定的な論調も多かった。食には“出会い”の要素もあり、「セレンディピティ(偶然の発見)も必要である」ことから、違った方向性でのテクノロジー活用を改めて模索することとなった。

 そこで新たに議論のポイントとして挙がったのが「コミュニケーション」。近年はサービスの質の向上において「パーソナライズ」が重要な要素となっていることから、「店と客のコミュニケーションを可視化できるようなテクノロジー」が求められた。そのアイデアのひとつとして提示されたのが、「卓上のタブレット端末などに自分の好みを書き込むことで、その内容が反映されたメニューが出てくる」というもの。周りにあまり知られたくないような個人的注文があったとしても、これなら恥ずかしがらずに注文できるというわけだ。

フードプランナーの大皿氏

 そこからさらに発展した発想として出たのが「食のシェアリングエコノミー」をイメージしたもの。店と客の立場をフレキシブルに入れ替える考え方をベースに、例えば「食材を持ってきたら食事が無料で1回提供される」、あるいは「店のロゴをデザインしたら、10回食事が無料で提供される」といった手法を取り入れ、食を中心とした新しい形態でいくつもの店や個人をつなぐシステムだ。

 食事は誰にとっても不可欠なものであることから、それぞれが「提供できるスキル」を可視化して共有・コミュニケーションできるテクノロジーがあれば、このようなシェアリングエコノミーも実現可能となる。

 こうしていくつかのアイデアや未来像が示されたなかで、最後にキーワードとなったのは食の「多様性」だった。

ニッポン放送の吉田氏

 ここでの多様性とは、単純な料理のバリエーションに留まらず、例えば「1日3食しっかり食べるのか。あるいは1食で済ますのか」というライフスタイルや、「ロボットが提供する無人レストランが好みか。それとも手厚い接客が売りの高級レストランが好みか」という環境の違いなども含まれる。さらに、レストランの料理をデリバリーする「UberEATS(ウーバーイーツ)」などを活用した時間と場所に対する「自由度」や、デジタルデバイスを使った注文や電子決済といった「利便性」なども、多様性のひとつといえる。

それぞれの立場から「食」に対しての提言を行い、活発な議論が交わされた

 このような多様性に対して、「現時点での最強ツールとなるのはやはり『スマホ』である」というのは共通の認識だった。さらに、その多様性実現のためには「食の細分化やパーソナライズを後押しするとともに、食の感動体験やコミュニケーションの起点となるようなテクノロジーが求められる」との考えで一致した。

 今回のような機会を通し、外部パートナーと連携することで次世代のフードテックがきっと生まれてくるはずだ。NTTドコモとしても、オープンイノベーションを積極的に推進して新しい発想を掘り起こし、外食産業の可能性を広げることにチャレンジしていく構えだ。

 効率的かつ迅速な情報共有を実現する5Gのサービス開始まで約1年あまり。5Gによるプラットフォームが社会実装されれば、食の多様性がぐんと広がるに違いない。これからもNTTドコモによる「食」の取り組みに期待したい。

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