福岡市から世界へ羽ばたくベンチャーを支援
ボーダーレスな環境が育む独自の世界観とはさまざまな情報が発信され、情報過多の時代とも言われる現代社会。あふれかえる情報をどう整理し、スピーディにタスクを処理して意思決定を行えばいいのか。その成果は生産性の向上につながり、働き方改革につながっていく。この課題に対して、Evernote、セールスフォース・ドットコム、NTTドコモの3社がそれぞれの取り組みやソリューションを語るセミナーが開催された。
さまざまな情報が発信され、情報過多の時代とも言われる現代社会。あふれかえる情報をどう整理し、スピーディにタスクを処理して意思決定を行えばいいのか。その成果は生産性の向上につながり、働き方改革につながっていく。この課題に対して、Evernote、セールスフォース・ドットコム、NTTドコモの3社がそれぞれの取り組みやソリューションを語るセミナーが開催された。

立場の異なる3社、それぞれが考える働き方改革

 テクノロジーを駆使して生産性向上と効率化を両立する――これは働き方改革の骨子である。しかし、情報やデータが洪水のように押し寄せる時代だからこそ、ITツールは適切かつ効果的に活用しなくてはならない。ツール導入で満足するのではなく、どのようにして社員に対する意識づけをしていくかが重要になってくる。

 2018年6月14日、NTTドコモ・ベンチャーズのドコモベンチャーズラウンジを舞台に、Evernote、セールスフォース・ドットコム、NTTドコモの担当者が登壇する「情報過多の時代を生き抜くチームになるために」と題したセミナーが開催された。Evernoteとセールスフォース・ドットコムは言わずとしれた“生産性向上を加速する”ITツールであり、NTTドコモも働き方改革ソリューションを法人向けに展開している。

 イベント直前、Evernote  CPO(最高製品責任者)のエリック・ローベル氏、セールスフォース・ドットコム 執行役員 広域営業本部 本部長の安田大佑氏、NTTドコモ 第一法人営業部 法人サービス企画担当 担当課長の藤田武志氏に「なぜ働き方改革が必要なのか?」をテーマに話を聞いた。

Evernoteのエリック・ローベル氏

――まずはEvernoteから。米国と日本で生産性向上に対する課題に違いはあるのでしょうか。

ローベル氏:生産性向上という課題の多くは、米国と日本とで共通していると思っています。例えば会議や打ち合わせが多くて本来の業務の時間が奪われているとか、さまざまな情報の文書化や記録化ができていないなどです。ただ、日本のほうが文書の書式を統一しようとするなど、アメリカよりも秩序だった動きをする傾向があると感じています。

 一方で生産性向上への投資という観点から見ると、米国と日本では大きく違ってきます。米国では以前から、いかにITを生産性向上や働き方効率化に貢献させるかに重点が置かれてきました。日本はやっと、その意識が経営者や社員一人ひとりに浸透してきたのかなと感じています。

――アプリの「Evernote」はあらゆる情報を集約する画期的なツールです。働き方改革の実現にどのように貢献するのですか?

ローベル氏:現在のような情報過多の時代においては、日々蓄積されていく情報のすべてをきちんと整理して管理することが難しくなってきています。ある調査では、世界中のナレッジワーカーは日常業務の中で50%の時間を情報の整理に割いているとのデータがあります。日本だとそこに大量の紙の情報も含まれるので、さらに情報の整理や検索に時間を割いているかもしれません。

 それらの時間は生産性が低く、無駄であると捉えられることから、情報整理を効率化することが生産性を向上させ、働き方改革につながると考えています。Evernoteは、すでにデジタル化されたテキストや音声、画像、動画だけでなく、紙に書かれた手書きのテキストなどもスマートフォンのカメラで撮影してデジタル化できるので、日常業務で発生するあらゆる情報を一元化して管理できます。こうした特徴により、人間にしかできない、クリエイティブな業務に集中できる環境作りに貢献するのが狙いです。

セールスフォース・ドットコムの安田大佑氏

――セールスフォース・ドットコムはCRM/SFA(顧客管理・営業支援)ツールの「Salesforce」を提供しています。働き方改革の実現にはどのような視点からビジネスを捉えればいいのでしょうか。

安田氏:ビジネスとは本来、シンプルにいうと「情報伝達のプロセス」だと捉えています。企業は絶えず自社の製品やサービスの情報を発信し、顧客に伝わり、顧客のニーズが企業に繋がり、最終的に購入意思という情報が伝わりビジネスになる。

 このように、ビジネスとは「情報伝達のプロセス」と考えると、このプロセスをつなぐために、人がいてツールが存在します。伝達するための様々な手間を取り除くことが、働き方改革や生産性の向上につながっていくと考えています。ただ、それに気がついている企業は日本ではまだ少ないと感じています。

――なるほど。情報伝達の無駄を取り除くにはどうすればいいのでしょうか。

安田氏:例えば営業部門がお客さまに対して行うさまざまな行動を細かく洗い出してみます。電話をかけたり受けたりしたタイミングや、メールの送受信などのタイミングを時系列に分析してみるのです。それによって受注後に受ける電話の数が非常に多かったとすれば、それは注文前にきちんと情報を伝えていなかったからであり、そこに情報伝達に関わるプロセスに無駄があったと判断できます。

 私たちは、このようにお客さまと一緒に業務を因数分解して無駄を探し出します。そして、その無駄を取り除く手段としてITを活用するのがいいのか、あるいは別のソリューションが活用できるのかなどのコンサルティングを提供したいと思っています。

NTTドコモの藤田武志氏

――NTTドコモだからこそ提供できる働き方改革のソリューションとは。

藤田氏:働き方改革に関しては、意識と制度、そして環境という3つの課題を三位一体で解決していく必要があると思っています。その中でドコモは、モバイルという働き方の環境を法人のお客さまに向けて提案していきます。そのために、自社においてもどうすればモバイル環境を日常的な業務に適合させられるのかなどに取り組んでいます。

 例えば一般的な企業では、リモートワークを全社一括で取り入れることは難しいでしょう。ドコモでも実際に外勤が多い法人ビジネス本部から積極的にリモートワークに取り組み、そこから全社に浸透させました。

 このように、モバイル環境の活用に関わる意識や制度の課題も含めて、ドコモを働き方改革の取り組みへの実験の場にし、そこから得られたさまざまなノウハウをお客さまに提案したいと思っています。特に成功体験だけでなく失敗事例も、教訓としてお客さまと共有していきたいと考えています。

――より具体的にはどのようなイメージですか。

藤田氏:ドコモがお客さまに提案したいと考えているのは、モバイル環境というツールではなく、働き方改革や生産性向上を実現するために必要なソリューションです。そういったソリューションを、私たちが持っている商材だけで実現するのは難しいと思っています。

 今は「協創」の時代です。ドコモでは基盤となるモバイル環境をベースにしつつ、それが活かせるパートナーと連携しながら、お客さまの課題解決に向けた取り組みを提案したいと考えています。そのために、様々なお客さまの業務課題に即して提案できるパートナーを常に募集しているのです。

取り組む姿勢とツールが一体化してこそ効果が生まれる

 イベントはNTTドコモ、Evernote、セールスフォース・ドットコムの順で登壇した。本イベントのファシリテータを務めたNTTドコモ・ベンチャーズ兼Evernote認定コンサルタントの篠原敏也氏が挨拶。篠原氏はかつてシリコンバレーでEvernoteに勤務していたキャリアを持つだけに、今回のイベントに対する熱い期待を寄せた。

NTTドコモ・ベンチャーズ兼Evernote認定コンサルタントの篠原敏也氏(左)。会場は満員の盛況となった(右)

 自社で実践する働き方改革への取り組みについて、NTTドコモの藤田氏は「自律的に行動し、新しい価値の創造に挑戦している」と語る。そのためには「生産性の向上」と「働きがいの向上」が重要であるという。

 講演では、実際に法人ビジネス本部で行われている働き方改革の実践例を紹介した。事前に社員一人ひとりの業務内容や時間を分析して現状把握を行い、働き方の改善につなげていくアプローチを取っている。

 分析の結果、日常業務の中で移動に多くの時間を割いていることがわかった。そのため法人ビジネス本部では「お客さまへの訪問時間を確保しつつ移動時間を減らすために、実際にリモートワークを導入することにした」(藤田氏)。ドコモでは個々の社員にモバイル用デバイスを配り、それまでは社員の自宅でしかできなかったリモートワークを、都心のシェアオフィスでも行えるように環境を整備している。

自社の取り組みと効果を説明するNTTドコモの藤田氏。同社法人ビジネス本部では、リモートワークの環境整備にも力を入れる

 このような取り組みの結果、生産性(単位時間当たりの売上げ)が取り組み前と比べて前年比で3%向上、働きがい(満足度)は同77%向上、一方で残業時間(1人当たりの残業時間)は同20%削減できた。「ドコモの働き方改革の取り組みは、総務省(テレワーク先駆者百選 総務大臣賞)や日本経済新聞社(日経スマートワーク経営 イノベーション部門賞)などからも評価をいただいている」(藤田氏)。

 今後もドコモでは自社を働き方改革の実験場にして、ソリューションの足がかりにすることが重要だと考えている。そのためは、ノウハウとICTツール、シェアオフィスといった物理的な場所などを含めたトータルな提案を視野に入れる。ICTツールに関してはEvernoteやSalesforceをはじめとするさまざまなパートナーと一緒に提案し、今後も積極的に協創に取り組んでいく姿勢を示した。

 続くEvernoteのローベル氏は、「情報過多の時代において、ナレッジワーカーは増えすぎたデータをどのように整理して活用すればいいのか。現在はお手上げ状態になっている」といった状況分析から始めた。最近では、Evernoteをメモするためだけでなく、情報整理の目的で使っているユーザーの声も多く聞かれるという。こうしたフィードバックを受け、ローベル氏は「Evernoteは今後、個人やチームが情報整理というニーズを満たすためのソリューションを目指している」と語る。

Evernoteのローベル氏は新機能のスペース活用などを説明

 新しいニーズに応えるために法人向けの「Evernote Business」に“スペース”という新機能を追加した。「スペースは、グループやチーム単位での情報共有をより簡単にし、情報の活用をさらに促進するものだ」(ローベル氏)。スペースに招待されたメンバーはそこにある情報を自由に見ることができるし、招待する方もメンバーごとに閲覧・編集などのさまざまな権限を与えることができるという。講演では、今後実装されるいくつかの機能についても概要が紹介された。

Evernote日本法人代表の積田英明氏は、Evernote Businessの活用事例を紹介した

 ローベル氏の後、Evernote日本法人代表の積田英明氏がEvernote Businessを導入してグループ単位で活用している日本企業の事例を2つ紹介した。最初の導入事例では、名阪近鉄バスの例をビデオで紹介。バスガイドが観光地で撮った写真はすぐに社内で確認後、都道府県ごとに整理し、バス車内でのレクリエーション素材として利用される。次のレンタルバスターズの導入事例では、紙の情報をデジタル化して保管し、外出先でも閲覧できることを紹介。さまざまなデータをEvernote Businessで一元管理することで、生産性向上につながった成功例としてアピールした。

 最後に登壇した安田氏は、セールスフォース・ドットコムはクラウドで提供するCRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援ツール)などを販売するが、単にITソリューションを提供するだけでなく、ITをどのように活用するのかまでを言及する会社であると紹介した。そして「弊社の製品を使っていただいているお客さまの、生の声を大切にしている会社である」と続けた。

セールスフォース・ドットコムの安田氏は、会議の無駄を減らし、時間を上手く使うことが重要と力説した

 次に、「“情報伝達のプロセス”の中でも最も影響が大きく、かつ全員に共通する改善ポイントとして『会議』のあり方があり、ムダな会議と言えるようなダメな会議が生産性向上の妨げになっている」(安田氏)と解説した。

 生産性向上のススメとしては無駄な会議を減らし、時間の使い方を正しく把握することが重要だと改めて力説。実際、会議の運営が上手くいっている会社は業績がいいとの傾向があり、その理由について「さまざまな決定が遅れると、製品を市場に導入するタイミングなどを逃してしまうことになるから」(安田氏)と説明した。解決策の1つとしては、シリコンバレーの企業などが行っている「コラボレーション型会議」が有効だと指摘。これはしっかりした事前準備と目的意識をセットにして進めるもので、こうした日常的な心がけから無駄を省いていくべきとアドバイスした。

 さらに今後をにらんだAIの活用についても触れ、「例えば過去のデータを分析し、お客さまの優先順位を考えてくれるなど、いずれはAIも業務効率化に貢献するようになるだろう」との見方を示した。

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ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
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