福岡市から世界へ羽ばたくベンチャーを支援
ボーダーレスな環境が育む独自の世界観とは これまで数々のベンチャー企業支援を行ってきたドコモ・イノベーションビレッジが、国内随一のスタートアップシティ・福岡市で「メンタリングイベント2018 in Fukuoka」を地元企業らと共催。ドコモグループ、そしてベンチャーを支える関係者の狙いを聞くとともに、熱く繰り広げられたピッチの様子をレポートする。
 これまで数々のベンチャー企業支援を行ってきたドコモ・イノベーションビレッジが、国内随一のスタートアップシティ・福岡市で「メンタリングイベント2018 in Fukuoka」を地元企業らと共催。ドコモグループ、そしてベンチャーを支える関係者の狙いを聞くとともに、熱く繰り広げられたピッチの様子をレポートする。

ドコモと協業の可能性があることは非常に大きなモチベーション

 梅雨の中休みとなり、カラッと晴れ上がった2018年6月12日。福岡市で「メンタリングイベント2018 in Fukuoka」が開催された。

 ご存知のように福岡市は、2014年に国家戦略特区の「グローバル創業・雇用創出特区」に指定され、国内でも起業が盛り上がる街として知られている。会場となった福岡市の中心部・天神にある「福岡市スタートアップカフェ」は、まさにスタートアップシティを象徴する場所だ。旧大名小学校を活用した官民共働型の起業支援施設「FUKUOKA growth next」に併設され、創業を志す人たちが日々交流する場となっている。

旧大名小学校を活用した「FUKUOKA growth next」。繁華街に近く、アクセスも至便だ(左)。当日のイベントの案内板。室内の雰囲気もかつての小学校そのまま(右)

 イベントは地元・福岡を中心に起業支援・IPO支援を行うアイ・ビー・ビー、資金調達のノウハウ伝達や起業に関するさまざまな情報発信を展開する創業手帳、ドコモ・イノベーションビレッジが共催した。

 NTTドコモ スマートライフ推進部 アライアンス推進担当の河村真里氏は、イベント開催のきっかけを次のように語る。

 「2018年1月に創業手帳様と一緒に東京で同じ主旨のイベントを開催した際、登壇した企業をNTTドコモの事業部に紹介することができました。2回目も東京で開催して、いざ3回目を開催しようと思ったときに“東京だけではなく全国でドコモ・イノベーションビレッジの活動を発信していきたい”と考えたのです。

 そこで候補に挙がったのがスタートアップ支援に力を入れている福岡市でした。せっかく福岡市で開催するなら、ベンチャーのハブとなっている福岡市スタートアップカフェを使いたいなと。なぜならドコモ・イノベーションビレッジと同じ姿勢で取り組んでいると感じていたからです」(河村氏)

 創業手帳の福岡営業所長を務める國嶋利幸氏は、福岡市でメンタリングイベントが開催される重要性をこのように指摘する。

 「スタートダッシュの後は、どうしても出資や協業などの面で越えなくてはいけない壁があり、そこではさまざまな人脈が重要になってきます。すなわち今まで接触できなかったクライアントと接触できる場は非常に貴重で、こうしたイベントは地方のスタートアップにとってまたとない機会になります」(國嶋氏)

 2000年から福岡でインキュベーション施設を運営してきたアイ・ビー・ビーは、昨年までの17年間で6社の株式上場を支援した実績を持つ。同社の深澤由美氏は、地元ならではの視点でイベントのメリットについてこう述べた。

 「いろんなメンターの方々の前で発表できること自体、福岡の企業にとっては絶好のチャンス。資金調達はもとより、NTTドコモと協業の可能性があるのは非常に大きなモチベーションになります。やはり皆さん、全国にサービスを展開したいとの思いがありますし、それだけに気合いも入っています。そして地元密着のアイ・ビー・ビーだからこそ一緒に最後までやっていきたいとの思いもある。このイベントが契機となってサービスが大きくなれば、弊社にとっても大きなプラスとなるのです」(深澤氏)

左から創業手帳の國嶋氏、NTTドコモの河村氏、アイ・ビー・ビーの深澤氏

 これを受け河村氏は、「ドコモ・ベンチャーズとしては、東京以外から勢いのあるベンチャーを発掘できることにワクワクしています。さらにNTTドコモ全体としては、きちんとした関係性を構築した上で新たなビジネスを一緒に作り上げていくことがゴール。結果的に協創につながれば、お互いのメリットになるはずです」と期待を込めた。

 

ゴルフから美容まで、バラエティに富む6社が登壇

 今回のイベントは福岡を拠点に活動するベンチャーが投資家や事業家らのアドバイザーを相手にまず5分間のピッチを行い、続く20分間で実際のメンタリングを受けるという2段階方式で実施された。

 トップバッターのインフォニアは、ゴルフコース管理支援システム「アルバトロス」を紹介。コース状況や作業を登録してデータベース化し、人力に頼りがちなグリーンキーパーの支援に役立てるシステムで、作業効率向上とゴルフ場管理のコスト削減に結びつける。すでに九州の複数のコースでは導入実績がある。

インフォニア代表取締役 中村太郎氏

 2番目のPLAceは“教育”がテーマ。日々、連絡事項が溢れる幼稚園・保育園と保護者を結ぶ情報プラットフォームを作成して、必要な情報を取り逃がさない仕組みを構築した。ほしい情報にすぐリーチできることに特化した点が特徴で、使い勝手を考慮したアプリも作成中だ。

PLAce代表取締役 久保山 宏氏

 3番目のコーホー部は、VRを活用した仮想空間のプラットフォーム「JoVRoom」について説明した。映像制作と中小企業の広報業務支援に強みを持つ同社は、解像度が向上して需要も高まりつつあるVRに着目し、テレビ会議やWeb会議などの平面では味わえない、よりリアルなデジタルプラットフォームを提供したいとする。これにより、どこにいても働ける可能性が生まれることから、働き方改革、地方創生にも寄与すると語った。

コーホー部代表取締役 大仁田英貴氏

 後半戦の最初となったベルズシステムは、自社開発の質問回答人工知能「ロアンナ」を解説した。膨大な量の学習データを必要としない自然言語処理技術が最大の特長で、さらに日本語特有の表記ゆれや、さまざまな言い回しにも対応するという。コールセンターや店舗業務などで定型的な業務を代替することで、人がより生産性の高い仕事へシフトすることを狙う。

ベルズシステム代表取締役 小野寺 隆氏

 5番目のthee momentは、マップを簡単にカスタマイズできる便利で遊び心のあるプラットフォーム「UNLOCKS(アンロックス)」を紹介した。例えばユーザーが「うどんマップ」「子連れで行ける店マップ」などを作成し、プラットフォーム上で共有。とりわけ期間限定のイベントマップなどでは効果があり、今後はインバウンド向けのアピールも強化していきたいと語った。

thee moment代表取締役社長 志気公介氏

 最後のGlocalnet、IDEA JAPANは美容業界にフォーカスしたシェアリングサービス「Airchair(エアチェアー)」を運営している。美容師と客が好きなタイミングでアプリ上でマッチングして、スタイリングは空いているサロンの座席を利用。人、時間、場所をシェアリングしながら美容業界の活性化を図っていきたいとする。

左からGlocalnet代表取締役 安部虎長氏、IDEA JAPAN代表取締役 左治木雄三氏

 異なる分野のサービスを手がける6社とあり、続くメンタリングも白熱した。「限られた5分間をもっと有効に使うべき」「自社にしかできないポイントが希薄」「資金を出したいと思わせる熱意が伝わりにくい」といった意見から、「どうすれば上手く事業を展開できるか、その先を教えてほしい」「首都圏をはじめ、全国への展開はどのように考えているのか」「具体的にどれだけの資金が必要なのか」といった一歩踏み込んだものまで、いろんな角度から質問やアドバイスが飛んだ。いずれにしろ、それぞれのベンチャーにとって “またとない機会”となったことは間違いないだろう。

メンタリングの様子。PE&HR代表取締役 山本亮二郎氏(左)は投資のプロとして、五洋食品産業代表取締役 舛田圭良氏(右)は事業家としてアドバイスした

ほかの街にはない、福岡ならではのセンス

 イベント終了後、アドバイザーに話を聞いた。答えていただいたのは福岡県・糸島市に本社を置く五洋食品産業代表取締役 舛田圭良氏、東京を拠点にベンチャー投資と人材育成を手がけるPE&HR代表取締役 山本亮二郎氏、NTTドコモ スマートライフ推進部アライアンス推進担当部長 鈴木康広氏の3人。

――まずはイベントを振り返っての感想を聞かせてください。

舛田氏:以前はもっとこじんまりしていたと思いますが、最近は非常にベンチャーの気運が高まってきたと思います。このイベントのように、自社のことをきちんとアピールしたり、発表することで訓練したりする“場”がインフラとして整ってきました。それは地元企業にとってはとてもありがたいことです。

五洋食品産業の舛田氏

山本氏:私は関東生まれですが、両親が福岡と山口出身ということもあり、自分の故郷のような感覚があります。福岡市はいつ来ても気持ちがいいし、この気候や空気感もベンチャーに合っているのかもしれません。今日のイベントを聞いても感じましたが、本当に優れた方々がたくさんいる街だと思います。

鈴木氏:今日登壇したベンチャーのスケール感は福岡や九州というローカルに根ざしたものではなく、グローバルや全国展開を視野に入れていました。だからこそNTTドコモのコネクションを生かして、連携する可能性も十分にあり得るのではないかと思いながら聞いていました。

PE&HRの山本氏

――福岡ならではの特徴はあるものでしょうか。

鈴木氏:個人的な印象ですが、アジア諸国との距離が近く、常に外に向いて開かれているという福岡の気風があるかもしれません。例えば今日のピッチでは、世界に冠たる大企業をライバルとして見ている企業もあり、非常に新鮮な感覚でした。自然に世界とつながっている感覚がある。これはなかなか、ほかの地方都市では感じ取れない雰囲気です。

舛田氏:福岡人は福岡のことが大好きなんだけれども、昔から圧倒的に東京に憧れている思いもあります。その相反する感情がユニークな土壌を形成しているのではないでしょうか。常に東京で何が流行っているかを意識しながらも、福岡発信で成功したいとの気持ちが大きいのです。

NTTドコモの鈴木氏

――発表した企業のレベル感は東京と遜色ありませんでしたか。

山本氏:東京の2回に続き、私は3回目の参加です。1回目は投資を即断し、2回目も投資会議を経た上で投資を決定しました。そして今日も投資できそうな会社がいくつかあったのは事実です。

鈴木氏:福岡のセンス、見ている世界観は東京とさほど変わりません。NTTドコモに求められているのは、今日発表したサービスをどうやって人びとに認知させるか。協創することで、伝えていく部分を含めていろんな工夫ができるのではないかと思います。

舛田氏:地元で資金調達に苦労してきた側からすると、もっとこういう機会が増えてほしいなと。投資家はきちんと自社のビジョンを汲み取って支援してくれますが、地元の銀行はどうしても担保や実績に目が向いてしまいます。でも、ビジネスを動かしていくには現実的にお金が必要なわけで、まずは熱意に応えてほしいというのが本音です。

3人とも、今回のイベントが有意義なものだったと振り返った

山本氏:時間はかかるかもしれませんが、全国のいろんな地域で自分たちの街のお金で、自分たちの産業を興していく――今後、そういう気運は高まっていくと考えています。

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ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com