ケーススタディー / ヤマサ醤油

老舗醤油メーカーに 基幹システム全面刷新 決断させたものとは?

――― 課題は迅速な意思決定と
グローバル化への対応 ―――

長年にわたって育んできた自慢の基幹システム。しかし現状のままでは、新たなビジネスニーズに応えることが難しい。改めて自前で作り直すべきなのか、それともパッケージの導入に舵を切るべきなのか ―― そんな決断を迫られている企業も少なくないだろう。老舗醤油メーカーのヤマサ醤油も、そんな一社だった。迷いに迷った末に同社が下した決断は、パッケージによる次世代システムの構築だった。

スクラッチ開発による基幹システムを
運用してきたヤマサ醤油

 日本企業に本格的な情報システムが取り入れられ、ビジネスへの活用が始まったのは1970~80年代のことだ。創業370余年の歴史を誇る老舗醤油メーカーのヤマサ醤油も、ちょうどその時期にメインフレームを導入。長年にわたり培ってきた業務プロセスをベースに、原価計算、生産管理、受注管理、在庫管理、販売管理などの基幹システムをスクラッチ開発で独自に作り上げてきた。

 運用しながら改良を続けてきた基幹システムは、まさに同社の業務に最適化された理想の情報システムだった。ヤマサ醤油の情報システムを統括する立場にある経理・総務本部 副部長 情報システム管理室長の網谷佳久氏も「競合他社に絶対に負けていないという自負が情報システムにはある」と語気を強める。

写真:ヤマサ醤油株式会社 網谷 佳久 氏

ヤマサ醤油株式会社
経理・総務本部 副部長
情報システム管理室長
網谷 佳久 氏

 とはいえ、すべての情報システムを自社でスクラッチ開発することが正しい選択肢だと考えていたわけではない。2003年に稼働を開始した現行の基幹システムには、一部の業務に既成のパッケージシステムを導入している。

 「餅は餅屋。コモディティー化された非競争領域の業務には優れたパッケージ製品を積極的に取り入れて業務を効率化するという考えは、現行システムを導入した当初から持っていました」(網谷氏)

 しかし一方で、競争領域に関わるシステムは、引き続きスクラッチ開発を選択。パッケージに切り替えた業務システムの中にも、従来の業務プロセスに合わせる形でフルカスタマイズを実施したものも多いという。

 2003年からの現行システム稼働後も、時代の要請に合わせた改良・更新が繰り返された。2011年に新たな生産・物流拠点として「成田工場・物流センター」が竣工した際には、フルオートメーションの最新コントロールシステムをスクラッチで開発。さらにロット管理システムやトレーサビリティーシステムも新たに開発・構築し、従来のパッケージを使った生産管理システムと連携させるなど機能強化を図っている。

「素早い意思決定を行いたい」という
経営課題の解決を目指す

 そんなヤマサ醤油の現行の基幹システムだが、引き続き安定稼働は実現できているものの、徐々に「新たなニーズへの対応」が難しい部分も生じてきた。とりわけ経営層から上がっていたのが「素早い意思決定を行いたい」という要望だった。

 「現行の基幹システムは、例えば収益性管理に必要なデータをリアルタイムかつ統合的に可視化する仕組みがありません。各システムから必要なデータを収集して手作業でデータを集計する必要があり、どうしても数日の時間を要してしまいます。そのため『ビジネスの現状をリアルタイムに把握し、素早い意思決定を行いたい』という経営課題には、なかなか応えられずにいました」(網谷氏)

 何としても経営層からの要望を叶えたい ―― そう考えた網谷氏ら情報システム部門は、ついに思い切った決断を下す。それが、長年にわたって安定稼働を続けている現行の基幹システムを全面的に更改し、まったく新しい“次世代システム”を構築しようというものだった。

写真:ヤマサ醤油イメージ

 「情報システム部門では2016年後半に、現行の基幹システムを刷新して次世代システムを構築するという計画を立てました。現行の基幹システムもすでに稼働開始から15年以上が経過し、老朽化も目立ち始めています。少し前から温めていた次世代システムの構想を、いよいよ具現化する時期が到来したと考えました」(網谷氏)

 そして2017年の年頭に開催された経営会議において、次世代システムの構築が情報システム部門からのボトムアップで提案された。次世代システムの提案を受けた経営会議では慎重に検討を重ねた。そこには「グローバル展開を見据えたリアルタイムな経営情報の可視化を実現したい」という石橋直幸社長たっての要望も寄せられた。

 ヤマサ醤油は1992年に米国法人を設立して以降、東南アジアや欧州に相次いで現地法人を設立し、事業のグローバル化を進めている。しかし情報システムが統一できていないため、海外のデータをリアルタイムに見ることができない。海外事業担当役員を経験した石橋社長は、その不自由さを身を持って感じていたそうだ。

 「経営会議の結論は、海外展開を今後加速させるためにも早期に基幹システムを刷新し、グローバルの経営データをリアルタイムに可視化できる仕組みを整備することが望ましいというものでした。まさに、私たち情報システム部門の提案を後押しするものでした」(網谷氏)

写真:ヤマサ醤油イメージ

情報システム部門の業務効率化を目指し
パッケージの採用へ

 情報システム部門は次世代システムにふさわしい新たなシステム基盤の選定に着手した。ここで網谷氏はある決断を下す。それは「スクラッチ開発をやめて、パッケージに切り替える」ということだった。

 「情報システム部門の運用管理や開発作業にかかる業務量を考慮し、負荷軽減のためにも自社開発をやめることにしました。もちろん、当社の生命線とも言うべき競争領域の業務については自社開発を続けます。しかし非競争領域の業務は、全面的なパッケージの採用へとシフトすることにしました」(網谷氏)

 パッケージを採用するにあたり、まず網谷氏は現行の基幹システムで利用している従来のパッケージシステムのバージョンアップを考えた。だが既存のパッケージは、これまでと同じようにカスタマイズに膨大な工数とコストがかかることが判明し、断念した。

写真:ヤマサ醤油株式会社 石橋 直幸 氏

ヤマサ醤油株式会社
代表取締役社長
石橋 直幸 氏

 システムに関しては、ベンダーと対等以上の知識を身につけ、ベンダーには騙されない ―― これが網谷氏のモットーだ。だが、現行のパッケージシステムに代わる、これといった製品は一向に見つからない。

網谷氏はもう一度原点に立ち返って考え直すことにした。経営層にも何を実現したいのかを改めて尋ねてみた。

 「石橋社長に話を聞いたところ、大画面にリアルタイムの経営データを表示しながら、気になるデータをドリルダウンして原因を究明したり、素早く意思決定したりできることが理想だと言います。それにピッタリと当てはまるパッケージを改めて探してみたところ、最適な製品が見つかりました。それがSAPでした」(網谷氏)

 実は、SAPの機能が優れているということは網谷氏や情報システム部門は前からわかっていた。しかし同社のような規模の企業にとって、SAPはコスト面で手が届かないだろうと諦め、あまり真剣に検討しなかったのだという。

 SAPを候補として考え始めた網谷氏は、自身で同社の問い合わせ窓口を調べて直接コンタクトをとってみた。すると、これまでの認識は間違いだったことがわかった。かつてのSAP R/3とは違い、最新のSAP S/4HANAはヤマサ醤油の予算でも手の届く存在だったのだ。

「コスト」「性能」「実績」が決め手となり
SAP S/4HANAの導入を決定

 コスト面の課題はクリアできそうだ。では、機能面ではどうだろうか。技術に明るい網谷氏が着目したのは、SAP S/4HANAのデータベース機能だった。

 「SAP S/4HANAはインメモリー処理技術を前提に開発されているため、基幹システムに欠かせないオンライントランザクション処理(OLTP)はもちろん、膨大なデータを集計・分析するオンライン分析処理(OLAP)も非常に高速です。技術的にはデータベース性能の高さが選定の決め手となりました」(網谷氏)

 もちろん技術面だけでなく、導入実績も考慮した。「SAP S/4HANAには、当社と同じ食品メーカーへの豊富な導入実績があり、商慣習にも精通しているという安心感が持てました。経営層が考える“グローバル化に対応する業務プロセスの標準化”も実現できます。今後、長きにわたって基幹システムとして利用することを考えた結果、SAP S/4HANAを第一候補として経営層に提案することにしました」(網谷氏)

 網谷氏の説明に、経営層の評判も上々だったという。とくに共感を得たのが「顧客にどんな悩みがあるのか耳を傾け、一緒に解決策を探りながら成功を目指す」というSAPのビジネススタイルだった。石橋社長は、この考え方はヤマサ醤油が全国の販売店や料理店などからの声に実直に耳を傾けながら商品開発を行う“こだわり”と相通じるものがあると高く評価、最終的にSAP S/4HANAを次世代システムの基盤として選定した。

 現在、ヤマサ醤油では2020年1月の稼働開始を目指し、次世代システムの構築を進めている。

 「次世代システムは当社のグローバル戦略に対応し、統制のとれたバックオフィスのプラットフォームになると期待しています」(網谷氏)

 また将来的には、SAPが提供するAI機能を活用した需給予測システムなど、これまでにないシステムの構築も視野に入れているとのことだ。

 今回のヤマサ醤油の取り組みは、長年運用してきた基幹システムの移行先を探す情報システム部門にとって、大いにヒントとなる事例と言えるだろう。企業規模を問わず導入しやすいコスト、データ分析も高速に処理する性能、多種多様な業種業界への導入実績、そしてグローバル展開への対応 ―― 企業のニーズを満たすいずれの要件も、実はSAPの強みなのである。

写真:集合写真

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