日経 xTECH Special

シーメンスの「MindSphere」
ユーザーの選択肢拡大を最優先し
オープン性を追求したIoT基盤

パートナーとの協業で発展

 国内の協業におけるもうひとつの取り組みは、日本の製造業の実情を踏まえたパートナーの組織化だ。MindSphere上で動くアプリケーションは、2018年春時点で約50本用意されているが、「日本のユーザーは、パッケージよりもオーダーメイドを望む傾向が強い」(角田氏)。そこで、ユーザーの個別のニーズに応じたアプリケーションを開発するパートナーを組織化している。

 ここでも同社はOSのベンダーに徹し、自らはAPIを提供するにとどめ、アプリケーション開発で積極的に前面に立つことはしない。開発環境を提供して、実際の開発はパートナーに任せる。それにより各パートナーが能力を発揮できるようにし、MindSphereを中核としたオープンエコシステムを構築しようとしているのだ。

 アプリケーション開発の他にも、分野ごとにパートナーの組織化を進めている。技術面でMindSphereのエコシステムに参画する「テクノロジープロバイダー」には、AIをコア技術に持つパートナーが名を連ねる。角田氏は「工場の自動化を進める中で、一番のボトルネックは目視検査」と指摘する。目視検査のような熟練技術者の暗黙知をいかに形式化するかは、多くの日本の製造業が課題とするところで、そこにAIの活用が期待されている。しかしAIのノウハウを持つベンダーは、工場の各機器から情報を収集する環境には必ずしも通じていない。製造業のソリューションで実績を持つ同社と技術を互いに補完しながら、生産現場へのAI導入を目指す姿は、まさにエコシステムと言える。

 互いに補完するという点では、「ハイブリッドOTパートナー」の存在も大きい。生産現場のシステムがラダー言語のような機器制御に特化した環境で構築されている場合、データ分析のためにITのシステムにつなぐ作業は煩雑なうえに、そもそも日本ではラダー言語を使える現場技術者が減っているという事情もある。そこで、古いFA機器と最新のITの両方に通じたパートナーを組織化。その中には、同社と競合するFA機器ベンダーのインテグレーションを得意とするパートナーも含まれている。ここでも同社はオープンエコシステムという姿勢を貫いているのだ。

“すべて”をつなぐ使命

 それぞれのベンダーが力を引き出せる環境が整ったMindSphereには、多くのベンダーが大きなビジネスのチャンスを予感し、パートナーとして参画し始めている。その数は2018年夏時点で60社を超え、日々増加中だ。それはユーザーから見れば、利用できるソリューションの幅が拡大し続けていることに他ならない。

 シーメンスにとって、ソリューションを自社ですべて構築することは本来難しくはないはず。製造業など産業向けのソリューション提供で、同社はグローバルレベルで長年の実績を誇るからだ。しかしそれでは「パートナーもソリューションも広がることはなく、ユーザーの選択肢を狭めてしまいます」(角田氏)。OSのベンダーとして敢えて“黒子”に徹してパートナーを前面に出したソリューションを提供し、“すべて”の機器をつなげようとしているところに、同社がMindSphereのオープン性にかける本気度が読み取れるだろう。

シーメンス 角田氏
角田裕也氏
シーメンス株式会社
デジタルファクトリー/プロセス&ドライブ事業本部
クラウドアプリケーションソリューション部 兼 工作機械営業部 部長

オープンエコシステムMindSphereの
日本におけるパートナー企業との協業
(一部抜粋・順不同)

コンサルティング/戦略提案
アクセンチュア、FPTグループ、ブレインパッド、ISID、PwC 、コニカミノルタ、タタ・グループ etc.
テクノロジープロバイダー
ガルーダ、AISing、アクセンチュア、GRID、日本マイクロソフト 、IBM、ABEJA etc.
アプリケーション開発
オフィスエフエイ・コム、富士通、Salesforce、アトス、ダイセック、アクセンチュア、ISID、FPTグループ、富士ソフト、コニカミノルタ etc.
ハイブリッドOTパートナー
マナ・デザインワークス、ISID、FPTグループ、オフィスエフエイ・コム、アイデン、武蔵精密工業、アクセンチュア、ダイセック etc.
システムインテグレーター
富士ソフト、ISID、アクセンチュア、FPTグループ、ダイセック、タタ・グループ etc.
MindConnect開発
アクセンチュア、ジェイテクト、オフィスエフエイ・コム、金沢エンジニアリングシステムズ、Edgecrossコンソーシアム、ファナック etc.
MindSphereの主なパートナー企業。分野ごとに独自の強みを持ったベンダーが名を連ねる
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