いよいよ始まる省エネの“本丸”攻略

あらゆる企業にとって、省エネルギー対策は、社会の中で持続的にビジネスを営むための責務になった。既に対策に向けて動いている企業も多いだろう。しかし、オフィスや工場の照明をLED化するといった表面的に分かりやすい対策で安心している企業も少なくない。これは勘違いだ。本格的な省エネ対策は、まさにこれから始まる。

省エネ大賞受賞モータなら、
年間5000万円の電気料金削減も
実現可能です

社会を動かすモータは
省エネルギー化の本丸

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神嵜 英俊

東芝三菱電機産業システム
執行役員
回転機システム事業部 事業部長

「第5次エネルギー基本計画」が、2018年7月3日に閣議決定された。ここには、エネルギーミックスの2030年、2050年に向けたシナリオが提示されている。2030年には多様なエネルギー源を適切に使い分けていき、2050年にはエネルギー転換と脱炭素化が目標とされた。

 また、2018年6月に可決、成立した「省エネ法」の改正法では、エネルギー(電気や熱)を使う事業者に対して、中長期的に年平均1%以上のエネルギーを削減する努力目標を課している。各事業者はその対応に追われているが、対策の糸口が見えず悩むところも多いという。

 では実際に、ものづくりの現場ではどのような省エネ対策が取り組まれているだろうか。まず、各社が積極的に取り組んだのが照明のLED化だ。一般家庭における浸透なども後押しして、手軽にできて費用対効果の高い対策として普及した。しかし今やこれは完了のフェーズにある。

 より効果的に、エネルギー消費量の多い部分に対策を拡大していかなければ、努力目標の達成はできない。そこで必然的に目を向けるべきは、モータの省エネ化であるとTMEIC 執行役員 回転機システム事業部 事業部長の神嵜英俊氏はいう。

「モータは、一般家庭で使われるエアコンなど家電機器だけではなく、ビルの空調や工場で使う工作機、製造装置の動力源、ポンプやファンなど様々な用途で使われています。その消費電力は、日本国内全体の約55%にまで及ぶほどです」(神嵜氏)

 モータはまさに省エネ対策の“本丸”。ただし、モータの省エネ化とは、事業者にとって自社事業の根幹に位置する設備にメスを入れることを意味する。このため、各事業者がモータを省エネ型に置き換えるには、現存事業に悪影響を及ぼす懸念を払拭する必要がある。その上で設備の入れ替えにメリットがなければならない。

 また一般に、工場などで使われている産業用モータは、極めて堅牢に作られている。買い替えサイクルは長い。このため、そもそもモータを定期的に買い替えるという発想がないのが現状だ。

「モータの省エネ化が著しく進歩していることは、あまり知られていません。買い替えに伴う初期コストを電気料金などランニングコストの削減ですぐに相殺できる効果が得られるほどです。TMEICは、工場で使われる中大容量の産業用モータメーカーとして、より高効率なモータを新たに生み出すために、培ってきた技術のすべてを注いできました。省エネ対策が迫られている今こそ、高効率モータに買い替えるメリットを広く知っていただきたいと考えています」(神嵜氏)

互換性を維持し
全モータを置き換え

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トップランナーモータTM21-FIIプレミアム効率シリーズ

業界初、IE3レベルに対応した高圧&防爆モータ

 TMEICは、最新の高効率化技術を採用した世界最高水準の高効率モータ製品群が評価されて、経済産業省が後援する「平成29年度省エネ大賞」で最高位の経済産業大臣賞を受賞した。産業用の中大容量モータが受賞対象となったのは今回が初めてだ。

 TMEICの「トップランナーモータTM21-FIIプレミアム効率シリーズ」は、高効率化技術を適用することで、同社従来製品比で損失を35%低減し、なおかつ業界最軽量を実現している。

 同社の高効率モータの特長は、従来機との寸法互換性を維持した上で、高効率化を実現している点だ。既存のモータが据え付けられている場所に、高効率化したモータをすっぽりと収めることができる。このため、買い替えに際して、工場のレイアウト変更や設置場所の基礎の作り直しなど、付帯的な作業や費用を最小限に抑えることが可能だ。こうした買い替えのしやすさは、産業用モータの省エネ化を推し進める上で、極めて重要なポイントとなる。

 ただし、モータの高効率化とサイズ維持の両立は、技術的にはかなり難解である。一般的に、モータの効率を上げるためには、様々な部分で発生する損失を減らさなければならない。通常、巻線の銅材料を増やして電気抵抗による損失(銅損)を減らしたり、鉄心の電磁鋼鈑材料を増やして磁気抵抗による損失(鉄損)を減らしたりすることでこれを実現する。ところが、これらの手法はいずれも、モータの大型化を招く原因となってしまいかねない。そこでTMEICは、漂遊負荷損と呼ばれる、高調波磁束によって導体内に発生する渦電流損や鉄心部に発生する高調波鉄損等を徹底的に減らす方策を追究した。

「漂遊負荷損が発生する原因を特定して、適切な対策を施す必要があります。このために、あらゆるパターンの評価軸で、シミュレーションや実験を繰り返しました。そして、材料や構造の見直し、数百回ものシミュレーションを繰り返してパラメーターを最適化して高効率化を実現したのです。当社の総合的技術力の粋を注いだことが、省エネ大賞受賞につながりました」(神嵜氏)

 さらに、TMEICは高効率化技術の適用対象を広範な機種に広げた。「あらゆる機種に最先端の高効率化技術を適用することで、産業界と社会全体の省エネ化に貢献していきたいと考えています」と神嵜氏はいう。

 モータは2015年度から、省エネ性能の目標基準値が規定された「トップランナー制度」の適用対象になった。ただし対象は低圧の375kWまで。産業用では75kW〜1000kWのモータがよく使われるが、大規模ビルの空調ファンなどで使われる高圧モータや石油化学会社が使う防爆モータなど、約半数のモータが適用対象外である。TMEICは、こうした規制除外機種にも、最先端の高効率化技術を適用し、IE3レベルに対応した高圧、防爆モータをいち早く市場投入している。

 寸法互換性を維持した特長は、防爆モータの早期市場投入にも寄与している。防爆性能を保証するためには、検定機関に設計内容と試験結果を提出して検定に合格し、認証を得る必要がある。大きさが変わる従来の高効率化手法では、約1カ月掛けて、新たに検定を受け直す必要があった。これが、TMEICの技術ならば、検定を受け直す必要がなくなる。