IoTとAIで空調管理に革新を!
既設データセンターの
収益性を高める「秘策」とは

デジタル化の進展に伴い、データセンターの消費電力は増加の一途をたどっている。逼迫する電力消費の改善に向けて、有効な手立ての1つとなるのが空調電力の最適化だ。冷却効率を高めて消費電力を圧縮する。これを実現するのが、TOKAIコミュニケーションズが提供するクラウド型設備管理ソリューション「Smart Facility Manager」である。その機能とメリットについて、日経BP総研 フェローの桔梗原 富夫がTOKAIコミュニケーションズ 常務取締役の松倉 明広氏に話を聞いた。

センター内温度のムダ・ムラを人手で管理するのは限界に

株式会社TOKAIコミュニケーションズ 常務取締役 IT サービス本部長 兼 サービスイノベーション事業部長 松倉 明広氏
株式会社TOKAIコミュニケーションズ
常務取締役
IT サービス本部長
兼 サービスイノベーション事業部長
松倉 明広
桔梗原 サーバーの処理能力の向上、IoTやAIといったデジタルテクノロジーの進展により、データセンターには高い処理能力が求められるようになっています。ファシリティとしてのデータセンターが抱える課題をどのように見ていますか。

松倉氏 使用されるIT機器は高スペック化し、発熱量が増えています。サーバーやストレージなどのIT機器の稼働を担う電力に加え、冷却を行う空調機の電力も増加傾向にある。2つの側面からデータセンターの消費電力は増え続けています。

 データセンターは最初に消費電力を含めた設計をしてから建設するため、比較的新しいデータセンターはラック当たりの供給電力も大きいのですが、問題は既存のデータセンターや長年運用を続けている企業のサーバールームなどです。供給電力の総量は設計段階で決まっているので、これを超える電力は供給できない。ところが消費電力は伸びていく。これをどうコントロールするかが、大きな課題になっています。

日経BP総研 フェロー 桔梗原 富夫
日経BP総研
フェロー
桔梗原 富夫
桔梗原 IT機器そのものの電力は、抑制が難しいですよね。

松倉氏 おっしゃる通りです。「IT機器の稼働には、これだけの電力が必要だ」と分かっているのに、それを絞ることはできません。特にデータセンター事業はファシリティを提供するのが役割。契約したラックに対し、契約通りに安定的に電力を供給しなければなりません。

 それでは、限られた電力総量の中で、どう効率化を図るのか。重要になるのが、空調機の消費電力です。データセンター内はレイアウトや規模、空調の仕組みなどがそれぞれ異なります。そのため空間内の温度にはムダ・ムラがある。これを改善すれば、冷却効率が高まり、空調機の消費電力の削減につながります。消費電力の削減は、データセンターの収益性に直結します。地球環境保護の観点からも重要なテーマです。社会的に関心が高まっている省エネルギー化は、データセンターにおいても喫緊の課題になっています。

桔梗原 空調機の電力制御は、データセンターの省エネを考える上で重要な要素になっているのですね。現状はどのように制御が行われているのですか。

松倉氏 温度のムダ・ムラの把握は、主にデータセンターの設備管理を担うファシリティエンジニアが担当しています。日に何度もデータセンター内の温度を調べ、上がりすぎや下がりすぎがあれば、きめ細かに調整する。広い空間の中で、どの空調の温度を上げ下げすればよいのか、風量や風向きはどうするか。そういう作業はファシリティエンジニアの勘や経験に頼っていることがほとんどです。

 しかし、長年の経験と豊富な知識を有するエンジニアは慢性的な人手不足です。高齢化により、人材の確保はますます難しくなっていくでしょう。そこで当社が今年5月に発表したのが、クラウド型設備管理ソリューション「Smart Facility Manager」(以下、SFM)です。

ファシリティとITの強みを生かし、空調をAIで制御

桔梗原 SFMとは、どのようなソリューションなのでしょうか。

松倉氏 IoTとAIを活用し、空調機の自動制御を実現します。具体的には空調機を含む様々なポイントに温度センサーを設置し、空間内の温度分布をきめ細かく把握します。ラックや空調機の吹出口の温度だけでなく、ドアの開閉データ、空調機および関連設備機器から数千点のデータを収集します。さらに気象データなどの外部データも取り込みます。

 それらを当社が運営するクラウドサービスへ送信し、可視化ツールによってデータの相関関係を自動的に導き出してグラフ化するとともに、空調自動制御AIによる分析を実施。その結果を空調機制御へフィードバックし、空調機の温度設定を自動的に調整します(図1)。

 SFMは既設のデータセンターに後付けで利用できます。空調機については、現在稼働している多くのメーカーや機種に対応しています。 桔梗原 データセンター事業を展開し、現場の課題を熟知する御社だからこそ提供できるソリューションといえそうですね。

松倉氏 もちろん、そこが開発の発端になっていますが、把握した課題をどう解決するか。その実現力も大きな強みとなっています。当社はデータセンター事業のほかにも、システムインテグレーション事業、自社保有のネットワークを基盤とした情報通信事業を展開しています。三位一体の取り組みが可能なので、自社内でアイデアを形にできる。IoTやAIを駆使したSFMの開発にも、この強みが生かされています。

 例えば、ソリューションの頭脳にあたる空調自動制御AIを、自社で独自に強化していることもその1つです。お客様環境のデータを学習し、どんどん進化していきます。可視化ツールに関しても、現場のファシリティエンジニアの意見を反映し、見やすさや使いやすさにこだわりました(図2)。このように、クラウド、ネットワーク、ソフトウエアを自前で提供できることで利用者目線に立った素早い対応、使いやすさ、見やすさにこだわることができるのです。

 導入するデータセンターは大規模なものから中小規模のものまで幅広く対応します。既設のデータセンターの空調制御や電力に課題を抱えているお客様にとって、メリットは大きいはずです。

データ駆動型の設備運営により、電力コストを30%削減

株式会社TOKAIコミュニケーションズ 常務取締役 IT サービス本部長 兼 サービスイノベーション事業部長 松倉 明広氏
桔梗原
 SFMによって享受できるメリットをもう少し詳しく教えてください。

松倉氏
 メリットは大きく3つあると考えています。

 1つめは、室内温度のムダ・ムラの改善による電力コストの削減です。自社データセンター内で約4000ポイントのデータを1分間隔で取得し、これに基づいた制御を24時間体制で行った実証実験では、予想以上の効果が得られました。

 例えば、各空調機がどのエリアの温度に影響を与えるのかを1カ月にわたりAIに学習させたところ、13台の空調機のうち、2台の空調機は冷房を稼働せず送風だけで十分だということが分かったのです。安全性を重視するあまり、冷やしすぎていたわけです。実験ではこうしたムダが解消され、空調電力コストを30%削減することに成功しました。これがすべてのケースに当てはまるわけではありませんが、人では難しい制御が可能になることで、消費電力の削減につながることは確かです。

桔梗原
 御社のように適切に管理されたデータセンターでも30%削減できたというのは大きな成果ですね。

松倉氏
 はい、我々自身も驚きました。2つめは、温度管理作業の効率化です。温度分布を基にSFMが最適な温度設定を自動制御してくれるため、ファシリティエンジニアが行っていた温度チェックや温度調整の作業が不要になります。その余力をほかの設備管理や保全作業に充てることで、生産性向上が期待できます。

 ファシリティエンジニアを外注していた場合、その作業も自分たちで行えるようになるため、管理コストの削減にもつながります。

 そして3つめは、スキルやノウハウの習得が容易になること。可視化ツールにより「どの空調の温度を何度にすると、室内がどう変化するか」といったことが容易に把握できるため、ファシリティエンジニアがリアルタイムに収集されるデータを基に行動を起こせるようになっていきます。

 経験が浅くても、温度管理のノウハウを身に付けやすくなるのもメリットです。当社のデータセンターでも、新人エンジニアが先輩から教わらずに、自ら改善活動に取り組めるようになりました。

日経BP総研 フェロー 桔梗原 富夫
桔梗原
 大きなメリットを期待できそうですが、「最新ではない自社のデータセンターで本当に効果が出るのか」と、導入をためらう事業者もいるのではないですか。

松倉氏
 そういうお客様向けに、今年10月中旬から「SFM PoCキット」を提供します。これはデータセンター内の温度分布を見える化するサービスです。各所に温度センサーを取り付けて、3カ月間のデータをレポートするというものです。温度管理の自動制御の前に、自社データセンター内の温度がどうなっているかをまずは実感してもらうのが狙いです。

 SFMのオプションとして、データに基づくアドバイザリーサービスも提供しています。データを蓄積・分析していけば、様々な改善策も見えてきます。サーバールーム内の環境を改善することで、冷却効率がもっと高まるかもしれない。しかし、分析して的確な対処を実施するにはノウハウが必要なのでそれを支援するサービスです。

 今後はSFMを支える空調自動制御AIのさらなるブラッシュアップを図るとともに、空調機をはじめとする各種設備の故障の予兆検知を可能にするなど、ソリューション全体の機能強化を推進し、データセンターの価値向上に貢献していきます。
お問い合わせ
株式会社TOKAIコミュニケーションズ URL:http://www.tokai-com.co.jp/
担当:IoTソリューション推進部 平林・亀谷
TEL:03-5404-3292
E-mail:SFM_INFO@tokai-grp.co.jp