押し寄せるDXの波、
次世代技術で乗り切るために

総論 登壇者イメージ 総論 登壇者イメージ
デジタル変革の時代では、誰もが挑戦者になれる一方で、どんなプレイヤーも破壊される恐れがある。そのような世界で私たちはどう次の一手を描くべきなのか。そこで、デジタル変革の波を乗り切るための最新動向の紹介や最新情報を収集できるよう、日経BPは2019年9月19日、「DTTF 2019(Digital Twin&Transformation Forum)-押し寄せるDXの波、次世代技術で乗り切るために-」を都内で開催した。
基調講演では、日経 xTECH/日経コンピュータ 副編集長の中田 敦氏がデジタル変革の成功と失敗を分ける要因を、自らの取材経験を踏まえさまざまな業界の具体例を交えながら紹介。特別講演では、Symmetry Dimensionsの沼倉正吾氏が、デジタルツインはどこまで実現されているのか、5GやXR(VR/AR/MR)、IoT、AI、そしてエッジコンピューティングなどによって実現される未来はどのようなものになるのかを紹介。また、DENSO International Americaの鈴木万治氏が自動運転やスマートシティ、農業などで起きているデジタル変革の大きな波を例に挙げ、シリコンバレーで得た学びを紹介した。
ソリューション講演では、アクセンチュアの河野 真一郎氏がものづくりにおける国内外の先進事例を紹介し、デジタルツイン実現の支援を行うPTCジャパンの成田裕次氏からは、デジタルツインによるソリューションの紹介が行われた。
デジタルトランスフォーメーションの現状と課題を知り、デジタル化における次の一手をどう描くべきなのかを探る、充実した内容のフォーラムとなった。

CONTENTS

最新のデジタルトランスフォーメーション事例
~DXジャーニーで実現するビジネス~

橘 知志 氏

アビームコンサルティング

執行役員プリンシパル P&T Digital
ビジネスユニット IoTセクター長

橘 知志 氏

デジタルトランスフォーメーション(DX)の理解と活用が盛んに叫ばれているが、導入が進まず、導入されていても、なかなか活用に結び付かない現状が見られる。では、なぜDXの導入が進まず、どうすれば有効に活用できるのか。日本をはじめ、アジア、アメリカ、ヨーロッパの各国に拠点を置き、各地域のビジネス要件に適応したサービスを提供しているアビームコンサルティングが、DX導入の戦略や、実現の方向性、業界の最新事例を紹介した。

DX導入を成功させるために

企業が取り組むDXは、なかなか期待通りに進まない。そこには、「将来像が描けない」「自社に当てはまる成功事例が見つけられない」「具体的な費用対効果が示せない」などの理由があると、橘氏は紹介する。

DXを推進するには、「見るべき視点、考え方、進め方が変化し始めていることを理解しなければなりません」と橘氏は語る。例えば、これまで描かれた企業の未来像は既存サービスやプロダクツの延長に過ぎず、自社が供給できるサービスやプロダクツを起点とした価値提供の範囲にとどまっていた。

しかし、これからのDX時代では、新たなビジネスモデルを構想しなければならない。「世の中のデマンド(需要)を起点とした価値提供が求められてきます」(橘氏)。また、今までの業務変革は、調達や生産、販売など業務単位で行われてきたが、DX時代にはビジネス全体のシナリオを考え、自社だけではなくバリューチェーン全体で業務変革を考えていく必要がある。「バリューチェーンで共存共栄を目指し、各社がWin-Winとなる協創型のエコシステムを作り上げていかねばなりません」(橘氏)。

DXの実現 ~プロセス変革とプロダクト変革~

次に橘氏は、DX実現の方向性ついて触れ、4つの象限からなる「デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー」を紹介した(図1)。DXは新しいビジネスモデルに適応可能な、モノづくりとバリューチェーン改革を実行する「プロセス変革」と、デジタル化された製品開発やサービスを創出する「プロダクト変革」の2軸があると橘氏は語る。実際に、デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの4象限の上にさまざまな施策をプロットしていくと、ビジネスモデル変革に至るまでの道筋が見えてくるという。
図1 デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー

図1 デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー

デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーでは、まずは左下の象限の「現場改善」からスタートする。そこから、一方は左下から左上の象限に移り、企業間連携を行う「デジタルサプライチェーン」に繋げて「プロセス変革」を実現する。もう一方は、左下から右下の象限に移り、「製品+サービスの拡充」に繋げて「プロダクト変革」を実現する。最終的に目指すのは、どちらも右上の象限にある「ビジネスモデル変革」すなわち「マネタイズ」である。「顧客からのデマンド起点で新たなビジネスモデルを創出し、既存事業の延長に留まらない継続的な価値提供の実現を目指します」(橘氏)。

一方で、デジタル推進組織も第2フェーズに入り、より早い段階でのDX実現が求められている。そこで重要になってくるのが、誰がDXを進めていくのかであると橘氏は述べる。「日本企業の強みはモノづくりです。サプライチェーンやエンジニアリングチェーンなど、すべてのチェーンが製造現場に関わっていることから、生産を中心とした組織がDXの実現を考えることが理にかなっていると思います」(橘氏)。

DXの推進事例

ここで橘氏は、アビームコンサルティングによって実現されたDXの事例を2つ紹介した。

1つ目のハイテク機器メーカーでの事例では、デジタル技術を活用し、できる限り上流で品質が保てることを目指した。そして、コンカレントエンジニアリングを実践し、設計から製造にいたるさまざまな業務を同時並行的に処理する製造ラインを作り、開発サイクルを短くすることに成功した。

品質評価モデルを作り、設計時の品質評価モデルを量産時の品質検査やサプライ品に活用し、市場不良を低減させた。一方で、顧客が購入後どのように製品を使用しているのかのデータを収集し、その情報を設計に活かすことにした。また、製品データの使用歴(消耗具合など)を活用し、自動注文できる仕組みを構築した。「最終的には、顧客起点で製品サイクルのマネジメントができるようになると思っています」(橘氏)。

2つ目の住宅設備メーカーの事例では、IoTデバイスを活用して顧客の利便性を向上させ、新たな付加価値を生み出すサービスを実現。更に、顧客の挙動を見ながら、エコシステムにより顧客生活全体の向上を図るサービスに繋げ(BtoCからBtoB)、新たな商流を確保した。「こういったビジネスにつなげていく流れになるまでには、数カ月ではなく、数年単位の時間がかかることを意識する必要があります」(橘氏)。

DXの推進には、さまざまな技量を持った人材が必要になる(図2)。「私たちはそういった人材を提供することもできますし、既存の組織の中から人選するお手伝いもできます」(橘氏)。橘氏は最後に、「デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーで意思のある戦略方針を立て、ビジネスモデル変革を実現することが重要」と語り、講演を締めくくった。
図2  DXの推進には、それぞれのステージに合わせ、内外問わず必要なリソースを組合せながら実施していくことが重要となる

図2  DXの推進には、それぞれのステージに合わせ、内外問わず必要なリソースを組合せながら実施していくことが重要となる

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