IoT、車載、ウェアラブル医療機器に最適なExcelon F-RAMファミリ

サイプレス セミコンダクタは、強誘電体メモリ(F-RAM)の新シリーズ「Excelon F-RAMファミリ」を発表した。厳しい動作環境でもデータを喪失せず高速の不揮発性データロギングを可能にするこの製品は、IoTや車載機器、そしてウェアラブル医療機器に適した3つのファミリをラインアップしたソリューションである。

品田 唱秋 氏
早瀬 昭司氏
サイプレス セミコンダクタ
シニアマネージャー
リージョナルマーケティング

 サイプレスRAM事業部の2018年第3四半期における売上額の割合は、産業機器が全体の48%、車載機器が同15%となっている。今後はこの2つに加え、新シリーズ「Excelon F-RAMファミリ」の超低消費電力を活かして、まだ同4%しかないその他に含まれる医療機器への応用を広げていくという。
 サイプレス セミコンダクタ シニアマネージャー リージョナルマーケティングの早瀬昭司氏は「その他4%には医療の他に航空・宇宙も含まれていますが、特に医療用のウェアラブル機器に新しい市場があると見ています。産業機器と車載機器は年4%、医療機器は年6%の市場の成長を見込んでいます。いずれもデータロギングの応用に適しています。特に、瞬時停電のようなミッションクリティカルな応用で最適です」と話す。

高速の書き込み速度、超低消費電力が魅力

 FRAMは、RAM動作を行えるほど書き込み速度が高速である。EEPROMやフラッシュメモリでは10msオーダーだが、Excelon F-RAMは0msとリアルタイム動作を実現。アクティブ書き込みの電流は0.6mAと1~2桁小さいため、書き込みエネルギーは4Mビット品で1.5mJと、これまでの不揮発性メモリよりもぐんと小さい(図1)。

図1 Excelon F-RAMと他のメモリとの比較
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 書き込みエネルギーが小さいので、電池を使ったIoT搭載の産業機器はもちろん、ウェアラブル、ポータブル医療機器にも活用できる。心拍数や心拍鼓動を自宅で常にモニターできれば、病院へ行かなくても医師へ24時間データを送ることが可能だ。
 Excelon F-RAMは、産業機器向けにはExcelon Ultraファミリ、車載向けには極限温度下の厳しい動作環境にも耐えるExcelon Autoファミリ、そしてウェアラブルやポータブル医療機器では消費電流が極めて低いExcelon LP (Low Power) ファミリが用意されている(図2)。

図2 主なExcelon F-RAMの仕様
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瞬時停電でもモータ回転角を高速保存

 サイプレスは産業用途でのRAMの市場シェア率56%を誇るが、最新のExcelon LPファミリは、IoT端末に適した不揮発性FRAMであり、書き込み回数は100兆回という事実上の無制限の読み書きができる(図3)。しかも、電池で動作する端末でのメモリデバイスには、ピン数の少なくしたSPIインターフェースを使い、高速性も持たせるため、クアッドSPIでわずか8ピンのシリアル動作を採用している。

図3 Excelonの産業用途ではIoTやPLCのデータロガー
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 ロボットを導入している工場では、電源が落ちた場合、モータの位置がずれてしまうことがある。その位置をF-RAMで高速にデータを書き込み、位置を補正することで、素早く復旧できる。ロボットの関節ごとにモータとMCUとメモリがあるが、ここにF-RAMでデータを蓄えておくと、復旧がさらに容易になる。

画像データを即座に書き込み、事故の原因を特定

 車載用途のExcelon Autoは、クルマ同士が衝突するような事故での判別に有効だ。様々なセンサーにつながったメモリに履歴データが残っていれば、事故の原因が即座に判明する。NORフラッシュメモリのようにセクター単位で書き込むデバイスでは、書き込み速度が遅いため、事故時に最後のセクターの画像が消えてしまうことがある。もちろんNANDフラッシュでは不可能だ。これに対して、高速に書き込むF-RAMは、事故の瞬間までの画像データを保持することができる(図4)。

図4 車載用途では事故での判別に有効
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 電気自動車ではバッテリー・マネジメント・システム(BMS)において、バッテリー電源がオフした時に重要なパラメーター(電圧や充電電流、温度など)を瞬時に取り込み、データを保存しなければならない。これにより、充電の最適化が図られ、バッテリー寿命を延ばすことができる。Excelon F-RAMでは、待ち時間不要でデータを瞬時に取り込める。しかも100兆回の書き込みが可能なことから、10µs間隔で20年間のデータを取り込める。
 車載用途では、安全基準のISO26262に準拠しており、使用温度範囲を規定したAEC-Q100規格のグレードA(-40~+80℃)およびE(-40~+125℃)を満たしている。

電池動作のウェアラブルの医療機器と好相性

 ウェアラブル、ポータブル医療機器に向けたExcelon Ultraは、特に日本のような高齢化が進む国に適した製品だ。慢性疾患のように24時間のモニターが必要な病気も増加傾向にあり、ウェアラブル機器で監視する場合には、書き換え回数がほぼ無制限であるExcelon F-RAMと相性が良い。消費電力が極めて低いという特長も、電池動作のウェアラブル機器に適している。

図5 医療用途では電池の寿命の長さを活かしウェアラブル機器に
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 Excelon F-RAMの最大の特長である低消費電力に関しては、3つのモードがある。ハイバネートモードと呼ばれる超低休止電流は0.1µA以下、超低ディープパワーダウン電流は0.75µA以下、そして超低スタンバイ電流は1µA以下と定めている。
 ペースメーカーのように体内に埋め込むタイプの機器は、電池の寿命が長ければ取り替える頻度が少なくなるため、消費電流が低いRAMが望まれる。Excelon F-RAMは、コントローラーを工夫することによって低消費電力を実現した。
 全ての応用にも、電源電圧は1.71~1.89Vと高速CPUの電圧に対応しており、電池駆動の場合には、1.8V~3.6Vと広範囲に設定している。パッケージは小型の8ピンのGQFN。4M/8Mビット製品は2018年第4四半期にサンプル出荷を始めており、量産は2019年第1四半期を予定。メモリ容量の大小に関しては2M/16Mビット品を2019年第3四半期にサンプル出荷、同第4四半期に量産をスタートさせる。

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