星野 このたび「日経 xTECH Active」では「AI/IoT時代の外付け型ストレージ利用実態調査」を実施しました(日経 xTECH Active リサーチ Special,2018年9-10月実施 )。それによると、「データ量の増加に対応できない(15.4%)」「性能が低い、バックアップなどの処理に時間がかかる(13.8%)」「運用・保守費用が高い(12.9%)」「運用・保守における人的負荷が高い(12.1%)」などの項目が大きな課題としてクローズアップされてきました(図1)。こうした回答が寄せられた背景には、どのような要望や問題点があるとお考えでしょうか。
山田 「外付け型ストレージについて、データ量の増加に対応できない」という課題は、近年増えてきたSoEの非構造化データや、IoTで生み出される膨大なセンサーデータも含めたデータ量の増加に、既存のストレージ環境が追いついていない可能性を示しています。土地が狭い日本特有の課題として、データセンターの限られたラックスペースに、新たなストレージを追加する余裕がないという状況も考えられます。
次に「性能が低い、バックアップなどの処理に時間がかかる」という課題については、リニアに進化しているサーバー性能に比べ、従来型のHDDのディスクI/Oがボトルネックになっている可能性があります。システムの複雑化でワークロードが多様化し、アクセスするアプリケーションやデバイスが増えていることも原因の1つかもしれません。
岡野 「運用・保守における人的負荷やコストが高い」といった問題は、どの企業でも悩まれているIT人材の不足や、システムの高度化・複雑化による管理者負担の増大が原因でしょう。
これらの課題については、日本市場のお客様の要望や不満を直接ヒアリングする過程で、Dell EMCでも以前から認識していました。そこでDell EMCでは次世代ストレージに求められる要件として、高いパフォーマンス、拡張性、シンプル管理、コストといったメリットを兼ね備えた製品やサービスを幅広いラインアップで提供しています。
星野 具体的にどのような製品を提供しているのでしょうか。
山田 コストを重視しながらシンプルで性能も高いのが「PowerVault ME4シリーズ」です。高性能と大容量を妥協しないミッドレンジクラスとしては「SCシリーズ」を用意しています。どちらの製品も中堅・中小企業のお客様が導入しやすい次世代型ストレージとして、従来型ストレージが抱える問題点を解消する機能を備えています。
例えば「データ量の増加に対応できない」という課題には、実績のある「シンプロビジョニング」や「重複排除」「ライブマイグレーション」といった機能が有効です。
実際のストレージ容量に対して仮想的なストレージ容量を設定することで効率的なストレージ利用を可能とする「シンプロビジョニング」は、必要に応じた柔軟なディスク追加とともに、設備投資の最適化によるコスト削減や運用負荷の軽減にも寄与します。
同じデータを排除する「重複排除」も、限られたストレージ領域を効率よく使うためには欠かせない機能です。「ライブマイグレーション」は、SCシリーズの機能の1つで、あるSCシリーズの中で稼働中のボリューム(LUN)を停止させることなく、別のSCシリーズに移動させることが可能な機能です。万一、あるSCシリーズの容量が不足した場合、業務中であっても、他のSCシリーズにボリューム(LUN)を移行することが可能です。
星野 ストレージ性能を高める機能としては、どのようなものがありますか。
山田 SSD(Solid State Drive)に代表されるフラッシュストレージと、Dell EMCの「自動階層化」機能の組み合わせが有効な解決策になると考えています。以前から、高速なSSDと大容量のHDDを階層化し、アクセス頻度の高いデータをSSDに、低いデータをHDDに自動配置することで、高速かつ大容量を実現するというアプローチを行ってきました。
SCシリーズではさらに、SSDの階層化も可能となるのが大きな特長です。例えば、高速で書き込み耐性の高いSLC/eMLC型のSSD(Write Intensive SSD、略称WI SSD)と、安価なMLC/TLC型のSSD(Read Intensive SSD、略称RI SSD)を階層化することで、全体的に最適かつ高速なSSDストレージが実現できるのです(図2)。もちろんSSDとSATAディスク、SASディスクの組み合わせでも、アクセス頻度に応じた自動的なデータ再配置によって、システム性能とコストパフォーマンスを大幅に高めることができます。
将来的にはミッドレンジストレージでも、フラッシュストレージとの通信を高速化するインタフェースNVMe(Non-Volatile Memory Express)や、ストレージクラスメモリ(SCM)への対応を図っていくと予想されるので、高速化ニーズへの対応は今後さらに進んでいくと思います。
岡野 ストレージでもサーバーでも、今はSSDを前提にした提案が主流です。性能面で有利ですし、SSDの価格自体もこなれてきて、一気に普及が加速してきました。Dell EMCは世界規模でストレージ、サーバー、クライアントPCのすべてでSSDベンダーと取引しており、このスケールメリットを生かした調達力と価格メリットをお客様に還元できます。それを牽引するインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載の第14世代「Dell EMC PowerEdge」サーバーは、SSD、特にNVMeにおけるサーバー業界屈指の搭載密度を強みとしています。
山田 Dell EMCのストレージは、性能アップに関しても継続的なメリットを提供しています。例えばSCシリーズでは、ファームウエアを最新の「SCOS 7.3」にアップグレードしていただくだけで、ワークロードのパフォーマンスを飛躍的に高めることができます。Dell EMCでの評価検証となりますが、VDIやSQL OLTPといったアプリケーションでは「SCOS 7.2」から「SCOS 7.3」にするだけで、33%から54%のパフォーマンス高速化と100万超のIOPSを実現します。もちろん「SCOS 7.3」は、標準的なハードウエア保守契約をしているお客様には無償で提供しています。
星野 新たなシステム投資を行わなくても、ストレージ製品への投資効果を、より長期間享受できるわけですね。では運用・保守に関連した悩みについてはいかがでしょう。
山田 こちらの課題についても、管理者負担を軽減していただける様々な機能やサービスを提供しています。例えばPowerVault ME4シリーズは、インストールと構成が非常に簡単で、電源とケーブルさえつなげば、シンプルなHTML5ベースのGUIによってセットアップが15分ほどで完了します(図3)。
ストレージの運用負荷を大きく軽減したいというお客様ニーズに対応するのが「CloudIQ(クラウドアイキュー)」と「Optimize(オプティマイズ)サービス」です。CloudIQはSCシリーズ含めたDell EMCストレージ製品向けのクラウド型管理ツールで、保守契約済みのお客様企業は無償で利用できます。お客様先で稼働しているストレージのログ情報をクラウド上に集約し、設定状況やパフォーマンス、容量、エラー発生状況などから算出したヘルススコア機能によって、システムの状態をいつでも一目で確認することができるわけです。AIによるトラブル発生の予兆検知と通知機能も備えており、トラブルの発生を未然に防ぐことが可能です。
もう1つのOptimizeサービスは、Dell EMCのエキスパートがお客様ストレージのログ情報を診断することで、コンサルティング的なガイダンスや定期的なシステムレビューを提供する有償サービスです。容量追加のご提案といったプロアクティブなサポート、定常的な状態とは異なる動きが生じた際のプッシュ型通知サービスなども含まれており、プロの視点からシステムのパフォーマンスや健康状態をさらに高めることができます。
星野 クラウドやAIを活用したベーシックなサポートと、専門家の手によるきめ細かなサポートの二本立てということですね。これなら専任の管理者がいなくても、ビジネスレベルに応じて、最適なコストで運用管理を実現することができますね。
岡野 IT人材のリソースが足りないというお客様にご好評をいただいているのが、「Dell EMC ProSupport Plus」というサービスです。お客様専任のテクノロジーサービスマネージャ(TSM)をお付けし、お客様のIT環境を熟知した上で弊社サポート部門と連携して、システム性能や安定性を維持するご支援をします。サポートは24時間365日ですし、通常の障害発生時も上級エンジニアがコール対応にあたるなど、1クラス上の体制で迅速に問題を解決します。お客様の専任という、一般的には高額なコンサルティング契約が必要な体制を安価なコストで得られる点が、お客様企業から非常に喜ばれています。
山田 SCシリーズにもサーバーと同様なサポートサービスを受けられる「ProSupport」、および、「ProSupport Plus」が提供されます。加えて、繰り返しになりますが、プロアクティブなサポートの「ProSupport Optimize Service」も提供しています。もともとSCシリーズでは、「CoPilot」という名称でサポートサービスを提供していたとおり、経験豊富なエンジニアが“副操縦士”的な管理者となり、御客様の運用管理を全面的に御支援をしています。
星野 管理者不足は多くの企業で悩みのタネとなっていますが、そういった手厚いサービスがあると非常に心強いですね。ところでDell EMCではストレージだけでなくサーバー製品も併せて提供しています。それによる利用者メリットはどこにあるのでしょうか。
岡野 サーバーとPowerVault ME4、SCシリーズなどのストレージをワンストップでお客様に提供することで、システムの親和性を高め、保守サポート窓口の一本化やトラブル時の迅速な対応といった、ITインフラのエンドツーエンドのサポートを実現しています。
この点で重要になるのが、全般的な保守サポートのクオリティと体制、その仕組みだと考えます。弊社ではストレージもサーバーも、サポート契約内容を問わずすべてのコールが国内対応ですし、カスタマーセンターの対応エンジニアは100%正社員です。さらに、パーツの配送状況やオンサイト保守エンジニアの派遣状況といった対応の進捗は「Dell EMC グローバルコマンドセンター」が24時間リアルタイムで監視しています。こういった取り組みで、サポートコールのお客様満足度は91.1%というデータもあります※1。
※1 出典:Dell EMC自社調べ。同社実施サーベイに基づく2018年8-10月期の実績
星野 サーバーとストレージの双方を、安心してワンストップで導入できるのは、お客様にとって大きなメリットですね。日経コンピュータ「顧客満足度調査 2018-2019」でも、デルはストレージ部門で1位を獲得し、また、サーバーも官公庁・自治体の満足度調査でも1位を獲得しました。
岡野 非常にありがたい評価だと思っています。こうした評価は、Dell EMCのサーバーやストレージを利用しているお客様だけでなく、これから導入を検討しようと考えているお客様にとっても、大きな安心と信頼につながると考えています。
特にPowerEdge サーバーは現在x86サーバー世界シェアNo.1※2を独走中ですが、まだまだ日本のお客様に製品の良さをお伝えできていないと感じており、製品の差別化要因を中心に特長をご紹介するプロモーションビデオを作成しています。
※2 出典:IDC Worldwide Quarterly Server Tracker 2018 Q3 - Share by Company, Units and Vendor Revenue
星野 サーバーとストレージの一体化といえば、近年はHCIが急速に市場に浸透しつつあります。HCIと三層構造のシステムがそれぞれ向くビジネス領域の違いについて教えてください。
山田 HCIにはDell EMCも力を入れており、実際に世界市場・日本市場共にNo.1プレーヤーです※3。それぞれを適材適所で使い分けていくことが大事だと思いますが、敢えていうなら、HCIはワークロードが類似の定型業務であり、業務拡大に合わせてスケールアウトしていくシステムには非常に最適といえるでしょう。
一方の三層構造は、ストレージを大量に使用するシステムや、サーバー性能を強化したパフォーマンス重視のシステムを組みたいといった可変要素が多いシステムに向いています。例えるならば、HCIはあらかじめ、ご飯やおかずが決まっているランチボックス、三層構造はその分量や中身を自分の好みに応じて変えられるセットメニューというイメージでしょうか。どちらの形態が適しているかは、お客様自身でも判断できないケースがありますので、ぜひ経験豊富なDell EMCの営業・SEにご相談いただければと思います。
星野 企業のITインフラの課題を解決するストレージやサーバー、サービスをDell EMCが積極的に展開していることがよく分かりました。企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する、さらなる進化を期待しています。本日はありがとうございました。
※3 出典:IDC Worldwide Quarterly Converged Systems Tracker 2018 Q3, Category : Hyperconverged Systems, System Unit by company