戦略なきクラウド利用は弊害をもたらす
クラウドファースト
落とし穴とその回避策

戦略なきクラウド利用は弊害をもたらすクラウドファーストの落とし穴とその回避策
企業のクラウド戦略は、今、大きな曲がり角に差しかかっている。コストや運用管理の“壁”に直面し、期待通りの成果が上がらないケースが多いからだ。欧米を含む一部の企業にはオンプレミスへ回帰する動きも出てきている。ただし、企業に必要なのは、「オンプレ or クラウド」という二元論ではない。「オンプレ and クラウド」という観点から、企業インフラの“あるべき姿”を再定義することである。デジタル時代、企業がリスクを減らしつつ、最大限のメリットを得るために、どのような次世代インフラを考えるべきなのか。そのあるべき姿について、有力ITベンダーのキーパーソンに話を聞いた。※本記事の内容は2019年7月16日の取材を基に編集したものです。

なぜクラウドに幻滅する企業が増えているのか

ヴイエムウェア株式会社 ソリューションビジネス本部 クラウド技術統括部 クラウド技術部 部長 古山 早苗氏
ヴイエムウェア株式会社
ソリューションビジネス本部
クラウド技術統括部
クラウド技術部
部長
古山 早苗
──企業の競争戦略の中でデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性がますます高まっています。その実現手段として、クラウドサービスを選択する企業が増えていますね。
古山
 リソースを柔軟に使えて、新しい技術のキャッチアップも速い。多くの企業はそこにメリットを感じてパブリッククラウドを選択しています。事業者の異なる複数のクラウドサービスを使い分けるケースも増えています。

吉田
 クラウドサービスが登場したころは、クラウド自体が新しいインフラで期待も大きかった。しかし、インフラは手段であってゴールではありません。そこで何をしたいのか、ビジネスにどう貢献していくのかが重要です。クラウドを使うだけでは、もはや戦略にはなり得ません。お客様の多くもそのことに気付き、これからどうすべきかを真剣に考え始めています。
Dell Technologies(EMCジャパン株式会社) アドバンスドテクノロジーソリューションズ事業部 クラウドプラットフォームスペシャリスト 吉田 尚壮氏
Dell Technologies(EMCジャパン株式会社)
アドバンスドテクノロジーソリューションズ事業部
クラウドプラットフォームスペシャリスト
吉田 尚壮
──具体的にどのような課題に直面しているのでしょうか。
吉田
 コスト削減を狙ってパブリッククラウドを利用したものの、当初の予想よりもワークロードが増加し、コストの高止まりに悩むお客様が増えています。複数のクラウドを利用している場合は、マシンフォーマットや管理ツールが異なるため、運用も複雑化します。新たにエンジニアを雇ったり、スキル習得のために教育コストも膨らんでいるケースも少なくありません。気軽に使えることからシャドーITが横行し、セキュリティの統制にも苦労しているお客様も多いようです。

 複数のクラウドサービスを利用する理由は、お客様によって様々ですが、よくよく聞いてみるとIT戦略全体の中での位置付けがはっきりしていない。結果としてマルチクラウドになっているケースが多いのです。

マルチクラウドとは“似て非なる”新しい世界観を提唱

──IT戦略全体の中でクラウドをどのように位置付け、どんなインフラを目指すべきですか。
古山
 お客様が求めているのは、クラウドというインフラではなく、パブリッククラウドを利用する際と同じようにインフラを利用できる「サービス」です。クラウドサービスの違いやオンプレミスを意識せず、一貫性のあるオペレーションで運用する。これを実現するため、VMwareが提唱しているのが「ハイブリッドクラウド」です(図1)。
図1 Dell Technologiesの「ハイブリッドクラウド」ビジョン 図1Dell Technologiesの「ハイブリッドクラウド」ビジョン オンプレミス、パブリック/プライベートクラウド、エッジまで、セキュリティをビルトインした一貫性のあるアーキテクチャを適用。インフラの違いを意識しない同一のオペレーションで、すべてのインフラを1つの統合プラットフォームとして利用できるようになる
──先ほどマルチクラウドに起因する課題を指摘されましたが、マルチクラウドとハイブリッドクラウドは何が違うのですか。
古山
 マルチクラウドはSaaSを含むクラウドサービスを複数利用している状態。ハイブリッドクラウドは、「オンプレミスやプライベートクラウド」と「パブリッククラウド」を併用している状態を指します。

 ハイブリッドクラウドに対するこの解釈は一般的なものですが、私たちの考えは異なります。オンプレミス、パブリック/プライベートクラウド、エッジ環境を含むすべてのインフラにおいて、一貫性のある「アーキテクチャ」「オペレーション」「セキュリティ」を実現する。これをハイブリッドクラウドと定義しています。単なる併用型ではなく、一貫性があることが重要なポイントです。

ハイブリッドクラウドで展開速度や生産性が劇的に向上

──ハイブリッドクラウドの実現に向けて、どのようなサポートを展開しているのでしょうか。
古山
 ハイブリッドクラウドを実現するプラットフォームソリューションとして、ヴイエムウェアは「VMware Cloud Foundation」(以下、VCF)を提供しています。VCFはメガクラウドをはじめとする世界4200社のクラウドプロバイダが採用するSDDC(Software-Defined Data Center)アーキテクチャベースのソリューション。インフラ管理ソフトウエアがVMware関連製品を自動で認識して設定を行い、サーバー、ストレージ、ネットワークの仮想化をより拡張します(図2)。
図2 VMware Cloud Foundationの概要 図2VMware Cloud Foundationの概要
 VCFを採用すれば、オンプレミスもパブリック/プライベートクラウドもエッジコンピュータも一貫性のあるアーキテクチャで統一し、インフラの違いを一切意識しない同一のオペレーションで、セキュアな運用が可能になります。オンラインでソフトウエアを自動アップグレードするライフサイクル管理にも対応しており、オンプレミスでもパブリッククラウドと同じように手間をかけずに最新機能を使えるようになります。

 例えば、パブリッククラウドでアプリを開発し、それをプライベートクラウドでリリースする場合も、シームレスに移行が可能です。重要なデータはオンプレミスに置き、それを活用する形でパブリッククラウドのアプリを動かす。そういった使い方も容易に実現できます。

 ヴイエムウェアはVCFを提供するだけでなく、そのプラットフォームの設計やサイジング、パフォーマンスの最適化までサポートしています。問題なく稼働する“お墨付き構成”で設計が標準化されているため、設計やテストの工数を削減し、ノーリスクですぐに使い始められます。

吉田
 Dell EMCは、VCFと、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載したハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品の「VxRail」を組み合わせたソリューション「VCF on VxRail」の提供を2019年5月から開始しました。VCFだけでは難しいスイッチやサーバーのインフラストラクチャに対する統合管理が可能で、自動化領域がさらに広がり運用が容易になります。

──VCFの活用で、具体的にどのようなメリットが期待できますか。
古山
 通常、サーバーの構築は準備期間も含めると、最短でも数日、場合によっては2、3カ月かかることもあります。VCFとVxRailを組み合わせたVCF on VxRailは、これを劇的に短縮化します。ランチの前にサーバー、ストレージ、ネットワークなどSDDC環境をフルセットで払い出しておけば、ランチの後には終わっている。そんなスピード感です。あるお客様はインフラの展開スピードが15倍向上し、生産性は2.5倍アップ。TCOも40%削減することに成功しています。

吉田
 これまでは仮想化環境の構築だけでも手間がかかり、それぞれの環境を維持するため個別に対応する必要がありましたが、VCF on VxRailにより、共通の管理ツールで構成や展開が簡単にできるようになる。このメリットは非常に大きいです。

古山
 実際、多くのお客様にこのメリットを評価し、デジタル変革に取り組んでいます。世界最大規模のオンラインゲーム会社であるPlaytika社は、オンプレミスのゲームサイトをわずか5日間でAmazon Web Services (AWS)にライブマイグレーションし、サービスの提供や開発・テスト作業を止めることなく、キャパシティ不足を解消しました。新しいゲームの市場投入がより迅速になったほか、必要なキャパシティをオンデマンドで拡張できるため、収益の拡大にもつながっています。

 米国最大規模の金融アウトソーサーであるPHH Mortgage社は、3つのデータセンターで運用する350以上の仮想マシンをわずか数日でAWSに移行。インフラの複雑性を解消し、ビジネスの俊敏性が大幅に向上しました。高止まりしていた災害対策向けデータセンターの契約更新を回避することで、費用対効果の高い災害対策も実現しています。

既存インフラのクラウド対応も幅広くサポート

──企業のITインフラは多種多様です。なかにはクラウド化が難しいものもある。そういうインフラでも一貫性のあるオペレーションを提供できるのですか。
吉田
 もちろんです。HCIのVxRailだけでなく、コンバージドインフラストラクチャ(CI)とVCFの組み合わせにも対応する予定です。検証済み構成のクラウドプラットフォーム「Ready Stack」の提供準備も進めています。Dell EMCのサーバーやストレージ、ネットワークを個別調達した場合も、そのインフラ上でVCFが問題なく動くように事前検証して提供します(図3)。
図3 Dell Technologiesが提供するクラウドプラットフォームのポートフォリオ 図3Dell Technologiesが提供するクラウドプラットフォームのポートフォリオ VCF on VxRailは、インフラの構築作業を大幅に省力化し、クラウド環境の管理や構成・展開を容易に行えるようになる。今後はCIとVCFを組み合わせたソリューション、IT機器の検証済み構成を提供するReady Stackなどの提供を通じ、既存インフラのクラウド連携も強化していく
 Dell EMCのストレージに対する、VMware製品のオーケストレーター対応プラグインも拡充しています。これにより、VMware製品から既存ストレージを統合管理する機能がより拡張します。

 これに加え、VCFベースのクラウドインフラをマネージドサービス化した「VMware Cloud on Dell EMC」も提供する予定です。今年下半期から北米でサービスインし、日本では来年以降にサービス展開します。お客様がロケーションを指定してVCFベースのクラウドインフラを利用できるのが最大のメリット。IoTの活用でエッジ側のデータは今後ますます増大していきます。エッジに近いところで迅速にデータを処理したいというニーズにも柔軟に対応できます。

──まず何から手を付けていいか分からないというお客様には、どのようなサポートが可能ですか。
古山
 ヴイエムウェアはお客様の課題に寄り添い、共にその解決を目指す「クラウドジャーニー」を展開しています。既存のインフラの課題を抽出し、最適なクラウド活用はどうあるべきかを考えていきます。誤解しないでいただきたいのは、ハイブリッドクラウドありきではないということです。場合によってはハイブリッドにする必要はなく、プライベートクラウドだけで課題を解決できることもある。デジタル変革やビジネスの成長のためのITの実現をサポートする。これを最重視しています。

吉田
 Dell EMCも最適なクラウド活用をサポートするサービスを展開しています。ヴイエムウェアはソフトウエアスタックの観点からアプローチするのが強みですが、Dell EMCはハードウエア製品を提供する立場から、下位レイヤーの物理インフラの最適化にまで踏み込んでいきます。

 ヴイエムウェアとDell EMCが協力して、物理レイヤーとソフトウエアスタックを含むITインフラ全体のクラウドシフトをトータルにサポートすることも可能です。今後も両社の強みを生かしてDell Technologiesとしてクラウド戦略を推進し、お客様のビジネスの成長に貢献していきます。
お問い合わせ
Dell EMC (デル株式会社) TEL:044-556-3430
お問い合わせフォーム:https://marketing.dell.com/jp/ja/contact
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