Beyond 2025
vol.1

DXを加速する
マルチクラウド戦略のカギ
〜新技術を取り込む開発手法、人、組織の在り方とは〜

DXを加速するマルチクラウド戦略のカギ〜新技術を取り込む開発手法、人、組織の在り方とは〜
Dell Technologies
日本最高技術責任者
黒田 晴彦
Pivotalジャパン株式会社
エリアバイスプレジデント 兼
日本担当ゼネラルマネージャー
正井 拓己
デジタル技術を駆使してビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は、重要な経営課題である。ただし、その道のりは簡単なことではない。そのためには旧来の企業システムや開発スキームを大きく変革するとともに、新しい技術を使いこなす人、組織、文化までも変えていく必要があるからだ。世界屈指のITソリューション企業であるDell Technologiesは、この取り組みをトータルにサポートしてくという。同社はどのような価値を提供し、DXを成功に導くのか。Dell Technologiesの黒田 晴彦氏と、Dell Technologiesグループの1社でエンタープライズ企業のDXをけん引しているPivotalジャパンの正井 拓己氏に話を聞いた(本文中敬称略)。

テクノロジーを使いこなす人、組織、文化の変革が先決

──国内でもDXの機運が高まりを見せていますが、海外と比較して日本企業の現状はどのような状況なのでしょうか。
黒田
 Dell Technologiesは2年ごとに大規模なグローバル調査を実施しています。昨年も世界42カ国、4600人のビジネスリーダーを対象に、デジタル変革に関する調査を実施し、その結果を今年1月に発表しました。その中で「デジタルへの取り組みが進んでいない」との回答比率が最も高い国が、日本でした。

 実際に企業の幹部の方にお会いすると、様々な取り組みを始めているものの、それが思うように進んでいないことに高い危機感をお持ちの方が多いですね。

──DXに挑んでも、PoC(概念実証)からプロジェクトが先に進まないケースも少なくありません。その原因をどのように見ていますか。
黒田
 調査では、DXの進捗度合いも5段階で自己評価してもらいましたが「デジタルプランがなく、イニシアチブや投資も限定されている」という5段階で最も低い評価をした比率も世界平均の9%に対し、日本企業は39%。「自社が引き続き後れを取るであろうと懸念」しているとの回答も、世界平均の30%に対し、日本は50%と高い割合を示しています。

 DXの出発点は「経営のビジョン・方針」です。成功している企業は、経営トップが自ら危機感を社員に伝え、強いリーダーシップを発揮しています。

 それでは、DXを進める上で何が必要か。5つのテクノロジーがカギを握ると私は思っています。「IoT」「AI」「VR/AR」「アジャイル」、そして「マルチクラウド」です(図1)。様々なモノが生み出す膨大なデータをAIで分析し、VR/ARで見える化する。そこから潜在的なニーズをくみ取って、素早くソフトウエアを開発・リリースする。これを滞りなくシームレスに行うためには、適材適所で最適なクラウドを使い分けるマルチクラウドが有効です。

正井
 ただし、先進のテクノロジーを適用したからといって直ちにDXが進むわけではありません。組織や文化を変え、デジタルの時代に重要となるアジリティの高いプロダクト開発を担う人材を育成する。これをテクノロジーやプラットフォームの変革と並行して進めることが重要です。
図1 デジタル変革を支える5つの技術要素 図1デジタル変革を支える5つの技術要素 多様なクラウドを組み合わせたマルチクラウドをベースに、IoTデータをAIで分析するとともにVR/ARで見える化し、潜在的なニーズを先取りしたソフトウエアをアジャイルでスピーディーに開発する。このサイクルを高速に回していくことが、デジタル変革を成功に導く

DXを推進するアジャイル開発の内製化をサポート

──なぜ組織・文化の変革や人材育成が重要になるのでしょうか。
正井
 デジタルビジネスを支えるサービスやプロダクトの多くはソフトウエアとして開発されます。ビジネスの主戦場が「ソフトウエアの戦い」に変容しているのです。ところが、日本企業のソフトウエア開発は従来、要件を定義し開発を推進するウォーターフォール型が主流であり、顧客や市場、社内業務の要件が日々変化し、それに合わせて次々と新しい機能やサービスを提供していかなければならないデジタルの時代においては、従来型の開発では要件変更への迅速な対応が難しい側面があります。これでは変化の激しいデジタルビジネスの流れに追随できません。

Pivotalジャパン株式会社 エリアバイスプレジデント 兼 日本担当ゼネラルマネージャー 正井 拓己氏
黒田
 ソフトウエアの戦いを支援するため、Dell Technologiesでは四象限によるアプリケーション仕分けのコンサルティングサービスを展開しています。具体的には、横軸に「ビジネス上の価値」、縦軸に「技術の先進性」を取って、ビジネスを支えるアプリケーションを「Modernize(近代化)」「Retain(保持)」「Migrate(移行)」「Retire(廃棄)」の4つに分類します。これによって、どういうアプリケーションはアジャイルで開発すべきで、何を残し廃棄すべきかが明確になります。

正井
 Pivotalはアジャイル開発の方法論やツール、クラウドネイティブ基盤の提供などを通じ、DXを担う人材の育成や組織・文化の変革を支援しています。この拠点となるのが、世界30カ所に展開する「Pivotal Labs」です。東京のラボである「Pivotal Labs東京」は2016年に開設しました。

 Pivotal Labsが目指すゴールは、お客様自身がリーン・スタートアップやアジャイル開発などのベスト・プラクティスに基づくスキル・ノウハウを身に付け、新たな開発文化を組織内に定着・浸透していただくことにあります。まずPivotalとお客様のプロダクト・マネージャー、デザイナー、エンジニアが1つのチームを作って、リーン・スタートアップの手法を用いて「MVP(実用最小限の製品)」を定義し、実際のサービスやプロダクトをアジリティ高く開発していきます。こうした取り組みを通じてお客様の中にデジタル変革を担う人材やチームを育成し、お客様自身がデジタル時代に必要となるソフトウエア開発を内製化できるように変革を進めていきます。

黒田
 ビジネスを支えるアプリケーションの中には、既存のものを継承・移行したほうがいい場合もあるし、アジャイルで新たに開発したほうがいいケースもある。その仕分けを担うのがDell Technologiesのコンサルティングサービス、そしてアジャイルの開発文化や人材の育成をサポートするのがPivotal Labsという位置付けです。
Pivotal Labs東京
Pivotal Labs東京の様子
──Pivotal Labsの活用によって、どのような効果が期待できますか。
正井
 素早く要件を決めて開発し、数日でサービスをリリースし、またエンドユーザーのフィードバックを実装する。そんな迅速で俊敏な開発が可能になります。モバイルやWebアプリだけでなく、社内業務システムなどのバックエンドのアプリケーションもアジャイルで開発している企業も少なくありません。実際、Pivotal自身も製品開発の多くをリーンやアジャイルの手法を用いて行っています。

 「Pivotal Labs東京」では、日本のお客様向けにこれまでに30以上のエンゲージメントを手掛けました。Yahoo! JAPANを展開するヤフー様、 全日本空輸(ANA)様、東日本旅客鉄道(JR東日本)様など業界を代表するリーディングカンパニーが、アジャイル開発を実践されています。

マルチクラウドを統合プラットフォームとして運用可能

──デジタル変革を進めるためには、開発文化を変えるだけでなく、開発や運用を支えるプラットフォームの最適化も欠かせませんね。
Dell EMC(デル株式会社)最高技術責任者 黒田 晴彦氏
黒田
 ビジネスの変化に応じて、最適な動作環境を自由に選択できる。そういうプラットフォームが必要です。一方で利用環境が増えると運用コストが増加し、クラウドをまたがる自動化ができなくなる恐れが出てきます。1つのポータルからシステム全体を管理し、自動化可能なマルチクラウドが求められています。

正井
 これを実現するソリューションとして、Pivotalではクラウドネイティブ基盤である「Pivotal Cloud Foundry」(以下、PCF)を提供しています。ソフトウエアの開発からリリース、その後の運用管理までを一貫してマルチクラウドの環境で行えるプラットフォームです。PCFを活用することで、お客様はパブリックからプライベートまで最適なクラウド環境を選択・利用し、複数クラウド環境をまたいだ運用の自動化も実現可能です。お客様はシステムの運用・管理に煩わされることなく、DXを支えるソフトウエア開発とリリースに専念できます。

──PCFによって、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
正井
 メリットは大きく3つあります。1つ目は「ソフトウエアのリリースサイクルの高速化」です。せっかくアジャイルでソフトウエア開発の俊敏性を高めても、実行環境が従来型のままでは、ソフトウエアのリリースまでに数週間から数カ月かかってしまうケースがあります。PCFはプログラミング言語や必要なプラットフォーム要件を認識し、実行に必要なコンテナを自動で組み立てます。開発したソフトウエアをオンプレミスやパブリックなどのクラウドの本番環境に即座にリリースすることも可能になり、従来数週間から数カ月かかっていたリリースの作業を劇的に短縮することができます。

 2つ目は「運用の効率化」です。PCFは、ソフトウエアの自動アップグレードやシステムのモニタリングなど、運用管理の機能が非常に充実しています。例えば、アプリケーションに障害が発生した場合は、正常な仮想マシン上にアプリケーションを移動・再作成する機能も実装しています。これによって、運用管理を必要最小限の人員で対応できるため、その人員を開発作業へシフトさせることができるのです。開発者と運用者の比率を500:1にするというのがPCF導入の目標値であり、国内でも既にこの目標値を達成しているお客様がいらっしゃいます。

 そして3つ目が「強固なセキュリティ機能」です。PCFはシステムの自動アップデートにより、セキュリティパッチの適用も自動化できます。サイバー攻撃の温床になる脆弱性を排除し、安全なクラウドプラットフォームを実現します。

プラットフォームを支えるインフラの最適化も支援

──PCFはどのような環境で利用できるのでしょうか。
正井
 Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった主要なパブリッククラウドのほか、クラウド環境を構築するためのソフトウエアプラットフォームであるOpenStackやVMwareの仮想環境での動作も保証しています。

黒田
 「VxRail」などのHCI上でも稼働保証しており、オンプレミスでも利用可能です。また、Dell Technologiesはお客様の状況に合わせて様々なハイブリッドクラウドを選択できる「Dell Technologies Cloud」を2019年5月に発表しました。ストレージやネットワークなど物理的な環境を意識することなく、ソフトウエア制御できる機能も実装していきます。

 ここにPCFを用いることで、オンプレミスとクラウドの違いはもちろん、物理環境も意識することなく、統一のプラットフォーム上でソフトウエアの開発・展開・運用管理まで行えるようになります。この仕組みは工場やオフィスなど、お客様環境に近いエッジ部分にも適用を広げていきますので、まさにあらゆるIT環境を統合的なクラウドプラットフォームとして利用できるようになるのです(図2)。

 さらにアプリケーションのコンテナ化を進めるお客様向けには、VxRail上でコンテナ環境の導入・運用を容易にするPivotal Container Service(PKS)もご提供してまいります。
図2 Dell Technologiesのクラウドプラットフォーム戦略 図2Dell Technologiesのクラウドプラットフォーム戦略 グループの総力を結集して、マルチクラウドを支えるクラウドインフラ、その上位で稼働するプラットフォーム、さらにデジタル変革を加速させるコンサルティングやアジャイル開発支援サービスなどを幅広く提供し、デジタルビジネスの競争力強化を支援する
──企業の中には既存のアプリケーションも数多くあります。その運用管理をどうするかも重要な課題ですね。
黒田
 既存のアプリケーションもPCF上に移行すれば、最適なクラウドを選んで運用することも容易に行えます。アプリケーションのライフサイクル管理を効率化し、機能の追加や改編にも柔軟に対応できるようになります。この点にもぜひ注目していただきたい。そうすれば、新規の開発により多くの人的リソースを投入できるでしょう。スタートアップやベンチャー、中小企業でも既存のプラットフォームに課題を抱えている企業は多いはず。PCFは幅広いお客様のプラットフォーム変革に貢献できるソリューションです。

──最後に今後の注力ポイントやDXを進める企業へのメッセージをお願いします。
正井
 デジタル変革の推進において最も難しいものの1つが企業における組織や文化の改革であり、それをベスト・プラクティスやプラットフォームの面で支えているのがPivotalのアジャイル開発やクラウドネイティブ基盤です。日本の特にエンタープライズの企業では内製のチームを持たないケースも多いため、DXを実現する上では欧米企業以上に様々なチャレンジがあるといわれていますが、実際には本格的なデジタル変革を既に実践されている日本のお客様も数多くいらっしゃいます。クラウドネイティブなプラットフォームをベースとして、自社内で俊敏なアプリケーションの開発と展開を可能にする。この支援を通じて、今後もお客様のDXの実現をサポートしていきます。

黒田
 DXに注力するためには、高止まりしている運用保守コストの削減は重要なテーマです。PCFはアジャイルによる開発・展開を支える基盤としてだけでなく、既存の資産も同じプラットフォームで統合的に運用管理が可能です。開発部門を新しい価値を生み出す活動にシフトさせ、同時に既存の運用保守コストを大幅に低減できる。今後もDell Technologiesはグループの強みを生かして、アプリケーション開発文化とプラットフォームの変革を支援し、次世代につながるお客様の競争力強化に貢献していく考えです。
黒田氏と正井氏
お問い合わせ
Dell EMC (デル株式会社) TEL:044-556-3430
お問い合わせフォーム:https://marketing.dell.com/jp/ja/contact