特別トップインタビュー 近未来・元年「2020」気鋭の企業に訊く
dSPACE Japan

クルマの制御機能開発に貢献するMBD

複雑化する検証作業に
AIやクラウドを活用
自動運転化の加速に貢献

dSPACE Japan
代表取締役社長

宮野 隆

自動運転の実現は、実証実験が各地で行われる中で加速し始めたが、検証作業の複雑化が進み、開発の重荷になっている。その効率化をもたらす手法、モデルベース開発(MBD)でソリューションを提供するのがdSPACE Japanだ。代表取締役社長の宮野隆氏は、AIやクラウドなどの新しい技術も取り込み、ソリューションの幅を広げていく方針を示した。

自動運転の開発競争が激しくなる中で、MBDに対する期待もさらに強まっています。それはdSPACEの業績にも表れているのではないでしょうか。

宮野 おかげさまで当社の売り上げの約9割を占める自動車業界を中心に、業績は順調に拡大しています。中でもADAS(先進運転支援システム)や自動運転関連は前年比20〜30%の高い伸びを示しており、次世代の自動車を開発する技術者からのMBDへの期待を強く実感しているところです。

 今までMBDの導入は自動車メーカー(OEM)やTier 1が中心でした。しかし最近はTier 2やTier 3からもお引き合いをいただいています。協業するOEMやTier 1からの要望によるものだけでなく、新しい開発手法を先取りしたいと自主的に導入検討を進めるところも少なくないようです。MBDの用途も自動運転やADASに限らず、バッテリー電圧の変動に応じたECU(電子制御ユニット)の制御や、ドアの挟み込み検出のような機能の開発など、さまざまな領域で使われ始めています。

自動運転の制御システム開発は検証作業が大変と聞きますが、いかがでしょうか。

宮野 検証を実車で行おうとすると、数10億kmもの走行テストが必要とも言われています。10億kmとしても地球2万5000周分に相当する距離で、網羅するのは至難の業です。当社はMBDのソリューション拡充でテストの自動化を推し進めてきましたが、自動運転の世界ではそれでもテストしきれません。

 そこでテストそのものを減らすソリューションとして、テストケースを自動的に作り出すために「Automated Scenario Generation」の提供を計画しています。実際の事故データや走行データから危険なシーンを抽出し、さまざまな運転パターンや、道路、天候などの環境条件を再現したテストケースを基にテストができるようになります。テストケースの準備を簡易化できるので、検証作業の負荷軽減が期待できます。

 また、実車を走行して得た情報をテストケースに応用するために、GPSやカメラ、各種センサーのデータを高速でロギングする「AUTERA」の提供も始めています。さらにテストケース作成をより効率化するために、AIの活用にも乗り出したところです。

映像の分類にAI活用

AIの活用について具体的に教えてください。

宮野 当社は2019年7月、ドイツのAI企業understand.aiを買収し子会社化しました。自動車やロボットの分野で高いAI技術を持つ企業で、テストケース作成で必要なセグメンテーションを自動化するのが狙いです。

 実写の走行データからテストケースを作るためには、映像のどの部分が対向車か、歩行者かなどを分類しなくてはなりません。GDPR(欧州データ保護規則)が適用される地域では人の顔や自動車のナンバーを消す作業も必要です。従来これらの作業は、映像を見ながら人手で行っていたのですが、それではテストケースを十分増やすことはできません。understand.aiはセグメンテーション作業をAIで自動化する技術を持っており、テストケース作成を飛躍的に効率化できると考えております。

 こうした作業も自動化するようになると、検証環境を動かすハードウエアにも相当なパワーが必要になります。そのために当社はRCP(ラピッドコントロールプロトタイピング)の「MicroAutoBox」のマルチコア化などを進めてきましたが、高速化をさらに推し進めるためにクラウドのコンピューティング環境にも対応させます。具体的にはPCベースのシミュレーションプラットフォームの「VEOS」を、AWS(Amazon Web Services)などのクラウド上でも動かせるようにするものです。クラウドの高い計算能力を活用し、シミュレーション結果を早く得られるようになります。

 dSPACEのドイツ本社では、創業者のHerbert Hanselmannが30年来務めたCEOを2019年2月末で退任し、その1年前から共同CEOとして参画していたMartin Goetzelerが独自色を発揮し始めています。AIやクラウドの活用も新CEOのリーダーシップによるもので、事業の発展は新しいステージに入っています。

中立的な立場で協調領域作りに貢献

2019年12月に農業機械や建設機械の業界を対象としたシンポジウムを開催しましたね。

宮野 農機や建機は労働力不足などを背景に、クルマ同様に自動運転の実現がテーマになっています。日本のメーカーがグローバルで強い点も自動車業界と同じです。MBDは農機や建機でも開発を支援する有効なソリューションと考え、日本法人の戦略として普及推進に取り組んでいるところです。

 農機や建機は役割によって細かくモデルが分かれているため、自動車以上にバリアントの多い世界です。自動車と違って走る場所が限定されているため、テストシーンは自動車ほど複雑ではありませんが、ぬかるんでいる場所を走るなど路面状況は自動車以上に多彩です。掘削効率の最大化など車両の機能も含めたシミュレーションに、MBDが効果を発揮するのではないかと思っています。

それらの背景も踏まえて、2020年に向けた展望をお聞かせください。

宮野 自動運転の開発では各社が縦割りですべての領域で競争するのは現実的ではなく、協調領域を設ける必要があるという気運が高まっています。公共性があり、個人情報が保護されたデータを基に、ユーザーメリットを明確にできれば、業界で協調領域を定める動きは一気に加速するでしょう。

 MBDで業界各社の自動運転開発を支援してきた当社は、中立的な立場で協調領域を作ることのできるポジションにあります。2020年で設立から15年を迎え、従業員も140人規模にまで拡大しており、ポテンシャルは高まっていると自負しております。これからも日本のお客様の“やりたい”を実現できるよう精進してまいります。

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(左)自動運転向けの最先端のデータアノテーションおよびテストシナリオ抽出
(右上)新製品:MicroAutoBox III - 小型車載プロトタイピングシステム
(右下)新製品:AUTERA AutoBox - 大容量データロギングシステム

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