ITインフラSummit 2019

クラウド移行をめぐるウソ・ホント
~オンプレのVMwareからの切り替えは大変?
P2V2Cの具体的な事例を紹介~

富士通クラウドテクノロジーズ
クラウドインフラ本部
物理インフラサービス部
遠藤 秀平

オンプレミスシステムがクラウドで運用されることは、もはや珍しくなくなっている。しかし、その移行は失敗できないだけに、ポイントを押さえて行う必要がある。そのプロセスやポイント、注意点などを、自社での経験を交えて、富士通クラウドテクノロジーズの遠藤秀平氏が紹介した。

エンタープライズシステムのクラウド利用が急増

富士通クラウドテクノロジーズ
クラウドインフラ本部
物理インフラサービス部
遠藤 秀平

富士通クラウドテクノロジーズは、2017年ニフティからコンシューマー向けビジネスを分離し、クラウド事業会社として社名を変更した。同社が提供するクラウドサービス「ニフクラ」は、わかりやすいUIや他社を圧倒するコストパフォーマンスを持つ高性能、月間のサーバー稼働率 99.99%以上という高信頼が評価され、導入案件数は国産クラウド最大級の6,500件を突破。特に高信頼、高性能には定評があり、VMwareの自動フェイルオーバー(HA)機能を標準実装し、RAID6相当以上の冗長構成によりデータを保全。各種第三者認証等を取得しており、安心して利用できる。

このような高信頼が評価され、エンタープライズシステムでの利用が急増している。遠藤氏は、「ニフクラの月間受注件数の割合は、2010年にはエンタープライズ系が約20%、エンターテインメント系が約80%でしたが、2018年にはほぼ逆転しエンタープライズ系の利用が約80%に増えています。すでにクラウドを正しく理解して使うフェーズへと移行しているのです」と語る。

※:2018年3月末時点

3ステップでのクラウド移行を推奨

では、実際のクラウド移行はどのように進めればいいのだろうか。遠藤氏は、同社が実際に行ったクラウド移行事例を紹介する。同社は、2011年本社移転の際クラウド化を実施した。当時、Webサービスや、ISPサービス提供サーバーはデータセンターで運用していたが、開発や検証用、社内システム用サーバーは社内にあった。現場では古いサーバーを廃棄して縮小し、新社屋に持っていく予定を立てていた。しかし、東日本大震災後だったこともあり、自社にサーバーを置くのはBCP的に許容できないと経営が判断。クラウドサービス会社であり、業務継続性や信頼性の意向もあって、全面クラウド化が決まった。

そこで、社内の物理サーバー約300台を精査。そのうち約200台を廃棄し、残る100台強について担当者を探し入念なヒアリングを実施した。「このプロセスで移行後に必要なリソース計算のための情報が揃うので、この作業はしっかり行うことが重要です」(遠藤氏)。

クラウド移行の基本は、再構築で対応した。一方で、再構築のコストが大きくなったり、Windows Serverなど、OSが古く再構成ができないものなどは、Physical to Cloud(P2C)での移行とした。P2Cとは物理サーバーのイメージを吸い出して仮想サーバーにしたうえで、クラウド環境にインポートすること。最終的に約30台をP2C対象とした。

具体的なP2Cの作業は、STEP1 持ち込み対象サーバーの確認、STEP2 ファイルへの出力(OVF化)、STEP3 クラウドへのインポートの3ステップで行う。

まず、STEP1 は、持ち込み可能なOSかどうか、ブラウザー上やAPIで持ち込む場合はOVFファイル通過条件に適合しているかどうかを確認する。ただし、検証済みOS以外でもユーザー側で動作とライセンスの確認をすればインポート可能。容量制限を超える場合はディスクの郵送サービスも利用可能だ。

STEP2で、遠藤氏が推奨するのは、移行前の物理サーバーに2台のノートPCを接続して行う方法だ。クラウドに持ち込む前に、まず仮想化(P2V)を行い動作を確認。ここで検証をしたうえで、STEP3としてクラウド環境に持ち込む(V2C)。

クラウド移行の注意ポイント

物理サーバーから移行する場合の注意ポイントとして、まず遠藤氏が挙げるのは、ドライバー・機種に起因する問題である。「P2V後HDDを認識できず起動しないことはよくあります。一番多い理由は、RAIDドライバーとの相性です。P2V、V2Cの2段階での移行を推奨しているのは、この問題を回避するためです。仮想サーバーとして動けば致命的な問題はクリアできます」(遠藤氏)。ドライバーに起因する問題への基本対応としてはドライバーを削除し、VMware Toolsのドライバーを再適用する。これを繰り返すわけだが、その手間を吸収するAcronisというツールもある。

2つめはサーバーを停止できないこと。古いサーバーの場合一度電源を切ると起動できるかどうかわからないこともある。その場合は、無停止でP2Vするツール「VMware vCenter® Converter™」や、確度高くP2Vするツール「Acronis Backup Cloud for ニフクラ」を用意している。

3つめはVMインポート時の失敗。その際有効なのがコンソール接続だ。「サーバーに直接ディスプレイをつないで表示している状態なので、設定ミスや障害でSSHやRDP等で接続できなくても状態確認や操作が可能です。オンプレミスの場合だと何らかの不具合があった場合、再度インポートからやり直さなければなりません」と遠藤氏。

他社事例として、1カ月で約40VM、約10TBの移行を行ったITソリューション企業の事例と、半年で約400VM、10TBの移行を情報メディア企業の事例を紹介。前者はスケジュールが短いなか、毎週ディスク郵送定期便を実施し計画通り移行を成功、後者はP2V2Cを大規模に実施した例だ。

技術以外の注意点として、責任分界点を明確にすることと、クラウドらしい使い方を挙げる。ニフクラは、標準で物理的に分離された構成にできるので、オンプレミスに比べて大幅な低コストで可用性を向上できる。また、CPUやメモリー増減のメリットを活かせる構成にしておくことで、運用の幅が大きく広がる。

遠藤氏は、「ニフクラは、パートナーと共にお客様が安心してクラウドを活用できるサービス拡充するとともに、クラウド活用、データサイエンスなどに皆様と共にチャレンジしていきます」と宣言し、講演を終えた。

お問い合わせ

富士通クラウドテクノロジーズ

https://fjct.fujitsu.com/

▲ページの先頭へ