日経 xTECH元年 特別トップインタビュー

電力効率向上の要求にきめ細かく対応

日本のお客様に寄り添い
最先端のニーズを学び
世界基準の先進技術を提供

インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
代表取締役社長

川崎 郁也

電動化が進む自動車やスマート化が進む電力システム、莫大な電力消費が課題になっているデータセンターなど、パワーエレクトロニクスのさらなる進化に期待が掛かるアプリケーションは年々増えている。この分野で、保有する技術の幅広さと高度さから市場をリードする半導体メーカーが、インフィニオン テクノロジーズだ。日本法人 代表取締役社長の川崎郁也氏に展望を聞いた。

2018年の事業情況をお聞かせください。

川崎 2018年は、半導体業界全体が絶好調でした。インフィニオンも、ワールドワイドでの売り上げが2017年比で約8%成長しました。特に自動車向けや発電・送電・蓄電の電力システム向けのパワー半導体関連ビジネスの伸びが顕著でした。

 成長の要因は、単に応用システム市場が拡大したのではなく、応用技術の革新による構造的変化が顕在化した結果だと見ています。私たちはこれを「構造的成長(Structural Growth)」と呼んでいます。例えば、日本企業が高い国際競争力を維持している自動車産業では、電動化と自動化という大きな変革が同時進行しています。世界の自動車販売台数も増えていますが、電動化と自動化によって1台当たりに搭載される半導体の量が増えたことが、需要の伸びを加速させています。私たちの半導体製品は、こうした構造的成長にうまくマッチしました。同様の構造的成長は、電池駆動のコードレス製品が増えてきた電動工具など様々な応用で見られました。

日本で学び、日本に価値を提供

ワールドワイドでビジネスを展開するインフィニオンの中で、日本市場は、どのように位置付けられているのでしょうか。

川崎 インフィニオンにおいて、最も成長率が高い市場が日本です。売り上げとしてはまだまだこれからですが、一層の発展が期待されています。日本には強い競合が数多くいますから、シェア拡大が難しい市場です。それでも、世界の他の地域に比べ成長率が高いのは、これまでのビジネス開拓の成果が実り始め、着実に食い込むことができてきた証拠だととらえています。

 加えて、日本は産業が進んだ地域であり、お客様からの要求や競合の動きから、先進技術を学び、磨くことに適した市場でもあります。例えば、日本のお客様は、品質関係に対する要求が世界一厳しく、私たちも日本のお客様によるテスト結果を基に一層の品質向上に努めています。その成果は、全世界のインフィニオンの製品にフィードバックされています。

日本市場では、やはり自動車向けでの成長に期待がかかります。しかし、日本の自動車業界は新しいサプライヤーが割って入るのが難しい市場に見えます。

川崎 近年、日本の自動車業界では、OEMもティア1もグローバル・スタンダードの技術の導入に積極的になってきたと感じています。これは、自動運転やコネクテッド・カーなどの分野で、ソフトウエアやインフラ、通信のような、これまで自動車業界が蓄積してきたものとは別の技術やノウハウが必要になってきているからだと思います。こうしたお客様の意識の変化に伴って、日本市場の門戸が私たちのような外資系半導体メーカーにも開かれてきています。

日本企業との距離が縮まる素地が生まれつつあるのですね。2018年10月に東京テクノロジーセンター(TTC)を新設されましたが、これは日本市場で技術を磨く取り組みの一環でしょうか。

川崎 日本では、2015年に解析技術センターを拡張することで、品質向上を加速させる体制を整えてきました。新設したTTCでは、解析技術センターでの品質解析をさらに進化させるだけでなく、ADAS技術と産業用モーター制御の開発拠点も置きました。これによって、最適なシステムを構築するためのソリューションを素早く提案し、万全なサポート体制で日本のお客様の要望に対応していきます。

日本のお客様にはどのような価値を提供していくのでしょうか。

川崎 技術面では、世界最先端の技術を注いだ製品を日本市場に提供していきます。インフィニオンの市場は全世界に広がっています。ドイツ、米国、中国などそれぞれの地域に固有の強い産業があります。例えば、電気自動車(EV)は、中国に巨大な市場があり、そこで先進的なニーズが生まれています。こうした各地域の応用トレンドや先進的なお客様の要求に応えられる技術を投入した製品を日本のお客様に提供していきます。

 さらに、インフィニオンは、300mmウエハーでパワー半導体を製造できる現時点で唯一のメーカーです。高度なパワー半導体を高いコスト競争力で安定供給できます。2018年5月には、16億ユーロを投じて300mmウエハーでの新しい生産施設をオーストリアに建設する計画も発表しました。2019年上半期に着工し、2021年の生産開始を予定しており、需要のさらなる高まりに明確に応える体制を整えます。

 また、2018年12月には、SiC(シリコン・カーバイド)の材料損失を最小限に抑えることでウエハーから得られるチップ数を2倍に拡大する技術「Cold Split」を保有するベンチャー企業、シルテクトラ社を買収しました。SiCパワー半導体は今後、アプリケーションが増えていくことは確実です。ただし、現時点でSiCウエハーの価格がSi比で約10倍と高く、これが応用拡大の足かせになっています。Cold Splitはデバイス形成後のSiCウエハーを2枚に剥がして、片方を再度利用する技術です。ウエハーコストが高止まりしている現状を打開する可能性を秘めています。

ソリューション提供に注力

応用市場が構造的成長を遂げる中、お客様からの要求に変化はありますか。

川崎 優れた性能を持つ個別の半導体デバイスだけではなく、システム全体としての価値向上や課題解決につながる提案を求めるお客様が増えています。この点は、日本市場でも同様です。

 インフィニオンでは、これまでにも「Product to System(P2S)」と呼ぶスローガンの下で、システム提案を強化する取り組みを進めてきました。パワー半導体を提供する際にも、その最適駆動が可能なドライバーICやコントローラーも併せて提案しています。

 また、私たちはセキュリティICでも競争力の高い技術を保有しています。コネクテッド・カーやIoT関連の応用では、より強力なセキュリティ技術の投入が必須になりますから、これからはセキュリティ製品がシステム・ソリューションの価値を高める機能の1つになると見ています。

電力効率の高いSiCパワー半導体のような、単独でも傑出した特性を実現できる製品を保有しています。こうした製品でも積極的なシステム提案をしているのでしょうか。

川崎 もちろんです。パワー半導体の潜在能力を引き出すためには周辺チップの機能や特性も最適調整する必要があります。日本には、グローバルで高い競争力を持つモーターメーカーが数多くあります。特にハイエンドのモーターに注力しているお客様が多く、駆動回路には極限の性能向上が求められます。こうしたニーズに応えるためには、高性能なパワー半導体の投入に加え、高精度な駆動制御を実現する必要があります。私たちは、モーター制御用高集積マイコン「iMOTION™」を提供していますが、これのカスタマイズやソフトウエア開発も重要になります。こうしたハイエンドのモーターは、高度なロボットや工作機械の性能を支えるキーパーツであり、この部分で貢献できれば、私たちの技術力も底上げできると考えています。

2019年は、どのような市場に注力していくのでしょうか。

川崎 自動車の電動化や電力効率の向上に対する要求の高まりは、さらに進むことでしょう。また、本格的なEV時代の到来を前にして、充電ステーションの拡充も進むと見ています。この応用ではSiCパワー半導体の需要増が期待できます。また、データセンターも、電力効率が1%でも向上できれば大きなインパクトがありますから、より革新的な技術の投入が進むと見ています。インフィニオンは世界基準の先進的ソリューションを提供することで、これに貢献していきます。

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