デジタルトランスフォーメーション(DX)が経営の大きなテーマになる中、DXに不可欠なIT人材の不足が浮かび上がってきた。どう状況を打開すべきなのか。3回にわたり、IT人材不足の実態と解決策を考える。第1回目では、現状の把握と日本の情報システム部門が抱えている問題点を明らかにする。

DXが声高に叫ばれている。コロナ禍によってテレワークやペーパーレス化が加速し、DXの進展に影響を与えたのは事実だが、動きは一過性のものではない。DXは企業の生産性向上と売り上げ拡大を実現し、企業風土一新の切り札ともなる長期にわたる取り組みにほかならない。

DX人材の供給源は情シス

にもかかわらず現在、日本でDXを実現できている起業は全体の1割程度しかないと言われる。理由はいくつかあるだろうが、人材不足も大きな要因だ。

DXの核になる人材は、デジタル人材、DX人材とも呼ばれる。ひと口にデジタル人材といっても、DXを成功させるには様々なレイヤー、様々なタイプの人材が必要になる。

その筆頭は、プロジェクト全体をリードする指揮官だ。CIO(最高情報責任者)、最近ではCDO(最高デジタル責任者)やCDXO(最高DX責任者)と呼ばれることもある。

次はDXを推進するメンバーだ。社内にいる人材から適性を見て抜擢するほか、新卒採用やキャリア採用などを活用する方法がある。

DXはビジネスの変革であり、ITに詳しいだけでなく、自社のビジネスのどこに問題があり、何を変えるべきか、新たなビジネスの種はどこにあるかといったことを理解できる人材が求められる。他方、技術開発、プロデュース能力、プロジェクト管理能力など、異なる能力を備えた人材を適材適所にうまく配置することも重要だ。

これらの人材の供給源となるのが情シスであり、IT人材である。必要性は高い。

2030年、日本では最大79万人のIT人材が不足

2021年10月に情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX白書2021」によれば、日本の事業会社、いわゆる「ユーザー側」にいるIT人材は約34万1000人。一方、「提供側」のITベンダーにいるIT人材は約100万9000人で、合計約135万人となる。

かなりの数に思えるが、2019年に経済産業省が発表した試算によれば、このままいけば2030年には最大で79万人、最善のシナリオでも16万人のIT人材が不足する。調査の時期が違うので若干のずれはあるだろうが、人材のひっ迫感が伝わるはずだ。今もIT人材は足りない。

ITベンダーと発注側の企業でも人材の取り合いが始まっている。学生人気の高い一部の大企業を除き、本業ではなかった発注側企業で、優秀なIT人材を確保するのは簡単ではないのが現状だ。特にDXで注目の高まるAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)、クラウドといった技術を知る優秀な人材の確保は難しい。

採用できないなら、今の体制でなんとか乗り切ろうと考える経営者がいるかもしれない。しかし、働き方改革やワークライフバランスが常識となっている今日、人材不足を労働強化で解決するのは現実的ではない。短期的には可能だったとしても、中長期的には組織から人材が離れ、状況はより悪化するだろう。

日本が抱える2大問題、2025年の崖と団塊世代の引退

日本のIT人材を語るとき、避けて通れない2つの問題がある。どちらも西暦が含まれる。

1つは、経産省が2018年9月に発表した「DXレポート」で触れた「2025年の崖」だ。

多くの日本企業では、老朽化した基幹システムを今でも使い続け、他のシステムとの連携まで考慮して開発されたものは多くない。利用部門の要望に応えるための保守を重ねた結果、システムがブラックボックス化している。保守に取られる労力とコストそのものもDXの進展を阻害する。このままでは2025年以降、最大で年間12兆円以上の経済損失につながるという経産省の試算も有名になった。

2つ目は、「2007年問題」と言われるものだ。2007年は、日本のビジネスシーンをけん引してきた団塊の世代が定年を迎え始めた年。基幹システムを支えてきたエンジニアが戦線を離脱したらどうするのか、2000年代前半に指摘された。

その後、どうなったか。結局、団塊世代のエンジニアは定年を迎えても様々な形態で企業に残り、レガシーなシステムの保守にかかわることが多い。人は必ず歳をとる。今のやり方をいつまでも続けるわけにはいかない。

DXという未来だけでなく、レガシーという過去からの脱却もIT人材が左右する。抜本的な対策を打ってIT人材を確保しなければ問題は乗り越えられないと考えるべきだ。

今回は、日本企業が抱えるITの課題と人材不足の現状を俯瞰した。次回は、慢性的な人材不足の中、企業はどのようにIT人材を確保すべきなのかを考える。人の問題の解決には時間がかかるだけに、待ったなしの対応が求められている。

いかがだっただろうか。議論の場としてSNSを使われる場合には、#jyosyslabo を使っていただければ幸いである。本記事に関するご意見がある場合も同様だ。

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