2020年12月、前回のレポート公開から約2年を経て、経済産業省から新たな「DXレポート」が発表された。企業規模や業種にかかわらずすべてのDX担当者やシステム管理者は必読といわれる同レポートでは何が語られたのか? この2年のDXの進展度合いやコロナ禍で表出した事象から明らかになった企業が取り組むべき方向性やDXの本質を理解しておこう。

DXに対する誤解を生じさせた
「2025年の崖」という言葉の罪

2020年12月に経済産業省から発表された「DXレポート2 中間とりまとめ」は、DXの本質やDXを実現するために必要なアクションなどがまとめられ、非常に興味深い内容となっている。

その内容でまず目を引くのが、DXについて誤った認識をもつ企業が多いという指摘だ。そして、そんな状況は2018年9月に発表された前回のDXレポートが影響しているという何とも皮肉な話が紹介されている。

前回の「DXレポートでは「2025年の崖」の克服という言葉が使われた。これは老朽化、複雑化、ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)がDX推進を阻害するため、2025年を目指しシステムを刷新してDXを進める必要性を表した言葉だ。レポート発表後にこの言葉が大いに話題になったが、その結果、「DX=レガシーシステム刷新」といった解釈が世間に広がってしまったのである。

経済産業省が令和元年7月に発表したDX推進指標とそのガイダンス」によれば、そもそもDXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だ。

もちろんDXを果たす上で、レガシーシステムを刷新することは必要不可欠。しかし、それはDXの必要条件でしかないのである。

今回のDXレポートでは、DXを進めるにあたって、システムの刷新と共に、従来から続く企業文化が変革の足かせとなっている可能性があることを意識するべきだと説く。例えば「現在のビジネスモデルを継続しながら新しいビジネスモデルを開拓する、ということは、現行の業務と密接に結びついたITシステムを是とした検討にとどまってしまうことを意味する。従って、既存のITシステムに問題があったとしても、改善点があるのではないかという視点が欠如してしまい、機能追加や部分的な改修で可能となる範囲をDXとして取り組むことになってしまう」(「DXレポート2 中間とりまとめ(本文)」より引用)からだ。そのような取り組みでは抜本的な変革につながらないのは言うまでもない。

前回のレポート発表から2年
――いまだ95%の企業がDXを実現していないという現実

以上のような誤った解釈が広がったことも影響しているのだろう、実際に企業のDXについては、この2年間で思ったような成果は出ていない。

それは「DXレポート2」が紹介した調査結果を見ても明らか。2020年10月に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がまとめた調査結果によれば、回答があった約500社の内、95%は「DXにまったく取り組んでいない」か、「取り組み始めた段階」にあるという。

またDXに取り組んでいても、現在のビジネスモデルの継続を前提としている企業や部分的なデータ分析にとどまっていて、全社的な危機感の共有や意識改革に至っていない企業が多数を占めることにも触れている。

さて、この度の新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、企業のテレワーク導入率が一気に増えた。しかし、その一方でテレワークを導入できない企業も存在する。

今回のレポートでは、コロナ禍という企業活動の継続性を脅かす状況下で、ITインフラや就業ルールを変更して環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できた企業と、そうでない企業の差についても言及。その差は「押印、客先常駐、対面販売など、これまで疑問を持たなかった企業文化、商習慣、決済プロセス等の変革に踏み込むことができたか否かが、その分かれ目」(「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」より引用)になっていると指摘する。

分かれ目に挙げられたポイントは、先述のDXの定義における「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革する」という部分と呼応するものだ。つまり、図らずともコロナ禍によって、DXの必要性が証明されたということになる。

そして、レポートでは、今後、デジタル競争における勝者と敗者の明暗がさらに明確になっていくとした上で、「企業が競争上の優位性を確立するには、常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、『素早く』変革『し続ける』能力を身に付けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することが重要」(「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」より引用)で、これこそ企業が目指すべき方向だと結論付けている。

DXを実現していない企業は、社会やビジネス環境の変化についていけず、事業継続すら危ぶまれる事態に追い込まれるリスクがあることは、今回のコロナ禍で明らかになった。ますます見通しのきかない時代を迎えている現在、DXへの取り組みを始めることには、もはや一刻の猶予も許されない。本格的にDXに取り組めていない9割を超える日本企業は、今すぐ固定観念の変革から取り組みをはじめるべきなのである。

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