「自分とは何者か、自分はどうしたいのか」に
不可欠なPBL

インテルでは広島県向けに「インテル® Teach プログラム」のメニューをカスタマイズ。合計3日間の研修でPBLを学ぶ内容とした。当初は集合研修を予定していたが、奇しくも新型コロナウイルス感染症が襲い、オンラインでも受講できるように変更。平川氏は、コロナ禍がICT活用に関する意識を高めたと話す。

平川

コロナ禍の状況でも円滑に研修を行なうことができました。初日こそ東広島市の研修センターに来てもらいましたが、2日目、3日目は自宅からでも学校からでもオンラインでアクセスできるように環境を整えました。通常のメニューに加えて注力したのはICT研修です。ちょうど休校が重なり、オンライン授業への対応が叫ばれていたからです。

全国での一斉休校など未だかつてない事態ですから、とにかくやるしかありませんでした。「インテル® Teach プログラム」では、明日から使う単元のモデルを具体的に作る内容にフォーカスし、“習うより慣れろ”の方式で実践してもらいました。現実的に教室に集まることができないわけですし、ICTを活用しなければ子どもたちに何も提供できません。究極的には「学校は何のためにあるのか」という存在理由にさえ関わってくる。なので先生たちもかなり奮闘してくれました。

ただし、3日間の研修を受けてすべてが上手く行くわけではありません。ここで学んだことをPDCAとしてやり続けることで、PBLの構成力やファシリテーション能力が向上します。つまり、目の前の子どもたちに当てはめて小さな成功体験を積み重ねてこそ体得できるのです。実際、「どうすればいいのか?」と混乱する先生もいましたが、引っ張ってくれる先生もたくさんいらっしゃるのでお互いにフォローし合って研鑽しています。

井田

「インテル® Teach プログラム」は自らプロアクティブに臨む思考を基本としていますので、そこで戸惑ってしまう先生もいるとは思いましたが、とても真摯に取り組んでいただきました。いずれにせよ「GIGAスクール構想」からの一連の流れは、先生や教育委員会の方々、および我々のような企業が一丸となって教育のICT化を推し進めた貴重な経験となりました。

平川

「インテル® Teach プログラム」のアプローチは、今後の教育の在り方に大きく関わっています。広島県では令和5年度(2023年度)の公立高校入試から、調査書(内申書)の比率をぐんと減らします。調査書で先生が書く所見、出欠席の項目もなくしました。代わりに「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」を重視します。このために、小学校から子どもたちに自己表現を磨く教育をお願いしています。

ここでは一面的ではなく、多面的な視点や気づきを与える調べ方や勉強が必要になります。良い高校、良い大学に入り、良い企業に就職することがゴールではなく、「自分とは何者か、自分はどうしたいのか」を考える習慣を身につけるには、PBLは避けては通れない道なのです。

井田

ユニークネスを重視する場合、我々はICT活用によって子どもたちの個性をデータ化する支援が可能です。現在、インテルではデータ利活用を中心に据えた「DcX(データ・セントリック・トランスフォーメーション)」を提唱していますが、児童・生徒一人ひとりのデータをもとに、得意な部分をより伸ばしてあげるにはどうすればいいかを分析することが可能になります。「GIGAスクール構想」で整備した端末からデータを収集すれば、データ利活用による新たな発見もあるはずです。

STEAM教育や遠隔学習でも
深まる連携

2020年9月には、広島県教育委員会と経済産業省が連携して「広島LIFE-TECH ACADEMY NETWORK構想」を開始。専門高校である県立広島商業高校、県立庄原実業高校、普通科高校である県立廿日市(はつかいち)高校が参画して「学びのSTEAM化※」の実証事業を行なった。
※STEAMは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、人文社会(Arts)、数学(Mathematics)の頭文字

平川

「広島LIFE-TECH ACADEMY NETWORK構想」では、庄原実業高校のスマート農業の実証でインテルにお世話になりました。人手不足や気候変動などさまざまな課題を抱える農業を、IoTやドローンを活用しながら解決していく取り組みを実践しました。

ただ、これからの時代はどういう作物を栽培すれば生産性が高く、利益率が高いかも考慮しなくてはなりません。作って売るだけではなく、マーケティングリサーチまで含まれるわけです。従来、これらは社会に出て経験を重ねて学ぶものでしたが、これだけ複雑化した社会では学校にいる段階でいくつかヒントを与えてあげないと厳しい。知っている、知っていないで大きな差が出てきてしまいますから。

井田

おっしゃるとおり、日本の一次産業は深刻な問題に直面しています。食料自給率もそうですし、毎年のように災害による農作物被害も出ています。こういった問題に対する課題解決から、これをビジネスとして捉え市場のニーズやディマンドに対して戦略的に展開していく。その意味で、ビジネスの視点でのヒントを企業の立場から提供するなど、授業づくりも含めて今後も協業を続けていきます。

平川

今年度からは、中山間地域と都市部をオンラインで結ぶ遠隔学習に着手します。中山間地域では専門の先生が少なく、授業の粒度が粗くなってしまいがちですが、テクノロジーによって平等な教育機会を設けることにしました。ここでもインテルに協力いただいて発展させていきたいと思います。

井田

インテルでは、学校の視聴覚室や放送施設をオンラインスタジオ化する取り組みを行っています。そこから授業やメッセージを発信または双方向のコミュニケーションができるようになれば、子どもたちが在宅でも学校とつながり、さらには他の学校、企業や社会、ひいては世界とつながることができるようになります。社会とつながり新しい考え方に触れ、より広い可能性に学生達に気づいてもらう、そうした環境を広島県からスタートできれば幸いです。