不確実で先の読めない実社会に柔軟に対応すべく、GIGAスクール構想と並んでSTEAM教育が注目されている。このたび、インテルと「STEAM教育ならびに21世紀型スキル育成教育の推進に関する覚書」を締結した埼玉県戸田市教育委員会は、以前から熱心に教育改革に取り組んできた。全国初となる「STEAM Lab」を設置した狙いと、その先にある目標についてキーパーソンが語り合った。

全国に先駆けて推進してきた
戸田市の教育改革

2021年(令和3年)1月26日、中央教育審議会は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」とする答申を取りまとめた。本答申では「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向けた方策が示され、改めてICTを活用した教育の重要性がうたわれている。

新学習指導要領に伴い2020年から本格化したGIGAスクール構想は、令和型学校教育の第一歩となるものだ。1人1台端末、そして高速ネットワーク環境の整備により、学習に対する考え方が大きく変わろうとしている。

そうした中、より次世代に対応した創造的な学びとして脚光を浴びるのがSTEAM教育である。STEAMとはScience、Technology、Engineering、Art、Mathematicsの頭文字を取ったもので、文部科学省の定義によれば「各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育」を指す。つまり“社会で生きていく力”を身につける探究型の教育であり、日本では高校を中心に導入検討が進められている。

この常識を覆すかのように2021年6月、埼玉県戸田市の戸田東小学校・中学校に全国初となるSTEAM教育の拠点「STEAM Lab」が設置された。戸田東小学校・中学校は2021年4月に新校舎が完成したばかりで、真新しい校舎にハイスペックな最新PCや3Dプリンターが並ぶ様子は、およそ義務教育の学校の教室とは思えないほどの壮観さを誇る。

2021年4月に新設された「STEAM Lab」

以前から戸田市は教育改革に力を入れ、全国の自治体に先駆けて革新的な学びを推進してきたことで知られる。STEAM Labがドライブする未来像とは一体どんな光景なのか。戸田市における教育改革のキーパーソンである戸田市教育委員会 教育長の戸ヶ﨑勤氏(以下、戸ヶ﨑)とインテルの井田晶也氏(以下、井田)の対談から、その答えを浮き彫りにする。

戸ヶ﨑

私が就任した2015年以降、戸田市では積極的に教育改革を進めてきました。コンセプトは「AIでは代替できない能力とAIを活用できる能力の育成」「産官学と連携した知のリソース活用」「経験・勘・気合い(3K)から客観的な根拠への船出」「教室や授業を科学する」というものです。

政府が掲げるSociety 5.0時代の教育を展開するためには、“脱・正解主義、脱・自前主義、脱・予定調和”の視点が不可欠です。激動の時代に新たな教育改革を推進するにあたり、私は“社会と学校”がつながることが非常に重要だと捉えました。

そこで2015年と早い段階からインテルと提携し、「インテル® Teach プログラム」を筆頭としたリソースを活用してきたのです。その提携が引き金となり、ほかの民間企業とも連携が深まりました。今の戸田市の教育があるのも、インテルとの提携があったからと言えるでしょう。

井田

ありがとうございます。戸田市の教育改革に採用された「インテル® Teach プログラム」は2001年から提供を開始したもので、21世紀型のスキル育成に向けた教員研修プログラムとなっています。

「インテル® Teach プログラム」には、子どもたちが自ら課題を発見し、探究していく「Project Based Learning(以下、PBL)」に関するノウハウを集約しており、GIGAスクール構想が始まる前からさまざまな自治体と活動をともにしてきました。中でも戸田市とは長年の連携によって、最新テクノロジーをどのように効果的に教育に活用するかを検証してきた背景があります。それがSTEAM Labに結実したと考えています。

戸ヶ﨑

「インテル® Teach プログラム」の採用により、PBLの学びの重要性が徐々に浸透してきました。そうした学びのアウトプットの場の一つとして、戸田市では毎年、子どもたちが社会課題の解決案を提案するプレゼンテーション大会を開催しています。例えばパン屋の食品ロス、校内のトイレの汚れ、ランドセルの重さをどのように軽減するかなど、子どもたちがPBLのグループワークを通して考えたアイデアを提案します。プレゼンテーションの質も年々、目に見えて向上してきました。

与えられた課題を解決するだけではこれからの社会を生き抜くのが困難です。チョーク&トークで教師が引っ張る一方向の学びから、PBL型の学びへとシフトしつつあることは、この6年間の大きな成果だと感じています。

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