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鍵を握るのはワンストップのAI活用IT×ビジネスを知り尽くしたインテルの強み

今や社会のあらゆる部分に普及し始めたAI。そのトレンドをいち早く読み、インテルでは2010年代半ばからAI戦略を強化してきた。世界トップの半導体企業としてAI基盤を支えるハードウエアにフォーカスされがちだが、同社が目指すAIの取り組みはソフトウエアと密接に結びついたものだ。その全貌を解き明かすべく、インテルのAIスペシャリストに話を聞いた。

AIはビジネス視点から
考えるべき

AI導入などまだまだ先の話――世の中には、そう感じている経営層が多いかもしれない。だが、それと気づかないだけで現代の社会生活にはすでにAI技術が実装されている。スマホの音声検索、ブラウザの画像検索、ECサイトのレコメンド、問い合わせのチャットボットなど、我々は普段の生活でAIに触れているのだ。

最近ではもともと親和性の高かったIT、通信、メディアといった情報関連のみならず、製造、小売、流通、金融、医療、教育、エネルギー、政府機関、農業などのリアルな分野にまで急速にAI活用が進む。それだけ人材不足に伴う自動化、効率化による生産性向上のニーズが高いことの証左とも言えるが、ご存知のようにAIは画一的なソリューションではない。

あらゆる分野で急速にAI導入が進んでいる

はじめに企業が抱える課題を洗い出し、課題に対して最大限のパフォーマンスが出せるように緻密なチューニングを施す必要がある。それゆえ個々の点で対処するのではなく、ひとつながりの線でビジネスの全体像を把握することが重要になってくる。

インテル株式会社
アジア・パシフィック・ジャパン
データセンター・グループ・セールス
AIテクニカル・ソリューション・スペシャリスト
大内山 浩 氏

インテル株式会社 アジア・パシフィック・ジャパン データセンター・グループ・セールスAIテクニカル・ソリューション・スペシャリストの大内山浩氏は「インテルは技術的視点に限らず、どのように実業に貢献するかといったビジネス視点からもAIを捉えています。これまでの知見を生かしながら、実際のビジネス課題解決とAIを結びつけることができるからです」と、同社のAI戦略ビジョンを説明する。

こうした“ビジネスを見据えたAI”を実現する手段として、同社はハードウエアと並んでソフトウエアにも力を入れている。AIがソフトウエア技術である以上、両輪がうまく噛み合わないと成果は出ないからだ。

「最上位のレイヤーに位置するソフトウエアであるAIに向け、マシンラーニングやディープラーニングのフレームワーク、開発ツールなどを提供しています。伝統的なインテルのイメージはハードウエアかもしれませんが、多彩なソフトウエア製品とエコシステムで幅広い要望に対応できます」(大内山氏)

意外と知らない
「CPUの学習能力の高さ」

具体的なインテルのAIへの取り組みを見ていこう。一般的に、AIを稼働させるまでには「発見」「データ」「開発」「導入」の4つのフローがある。大内山氏は「これらのフローが結実して真のAIになる」と語る。

「真のAI」を稼働させるまでの4つのステップ

1つめの発見とは、戦略チームが企業の課題を洗い出し、分析する作業だ。「サプライチェーンにAIを組み込んでビジネスのやり方を修正すべき」といったように、現状を評価して目標を定め、問題点を特定する。

「AIの開始段階でもインテルは貢献できます。グローバルパートナーがアライアンスを組んだインテル® AI ビルダーズ・プログラムを展開しており、 登録されている多種多様なパートナー企業の中からコンサルティングファームなどをお客さまに紹介して課題発見を促進します。さらに企業内でAIスキルを向上したいとの要望があったときは、専門家のチームで結成されたインテル® AI デベロッパー プログラムにより、AI人材育成を支援します」(大内山氏)

課題を抽出した後はデータの整備や取り込み、クリーニングが待っている。しかし、取り掛かる前に組織の硬直化が招くタコツボ状の「データサイロ」、不適切なエントリーやデータ収集が引き起こす「価値の低いデータ」の2つの課題が出てくる。

「データの整備やクリーニングは、4つのフローの中で最も時間がかかる部分。インテルは、さまざまな企業に対して技術支援をしてきたノウハウをベースに適切なアドバイスやコンサルテーションを提供できます。かつ、データの集約に関しては柔軟かつ汎用性のあるCPUが これまでの実績から見ても最も適した基盤と言えます」(大内山氏)

3つめの開発は、学習と置き換えたほうがわかりやすい。通常、AIの学習はアクセラレーター(GPGPU)が必須との印象が強いが、「お客さまが望んでいる処理に対して、最初から高額なアクセラレーターが必要なのか。まずは冷静に既存のITリソースを見極めることが重要」と大内山氏は指摘する。

「CPU上でも十分に学習処理は可能。意外とこの事実を知らないお客さまがたくさんいらっしゃいます。仮に処理性能がご要望に満たない際は、クラスタによる分散学習を適用することでスケーラブルに性能を向上させることが期待できます。例えばデータセンターで遊休化しているCPUリソースを有効活用することで強力な学習環境を構築することができるのです。つまり、限られた予算の中でTCO(総保有コスト)に見合うAIのパフォーマンスがほしい場合には、CPUによるAI学習が大きな選択肢となります」(大内山氏)

4つめの導入は、最後の仕上げであるとともに実稼働のスタート地点を兼ねるデリケートな段階だ。苦労して動作モデルを作り上げても、システム構築に失敗しては意味を成さなくなる。「導入ではAIモデルと並行してITシステムとの連携を考慮しなくてはなりません。かなりタフで重要なフェーズになってきます」(大内山氏)

ここで生きてくるのが、インテルの持つ導入に向けての“現実解”である。それを如実に示すのが、インテルが携わった 資源開発企業でのAI導入事例だ。

「掘削システムの異常を検知する仕組みをAIを用いて構築しました。推論のインフラを含め、すべてCPUのみの100台以上のサーバー群で構成されていますが、そのうちAIの学習基盤として活用している十数台のサーバーは普段は他の目的で利用しているものを、アプリケーションが稼働していない時間にこちらで利用しています。周囲の環境との連携、スケーラビリティ、セキュリティ、そしてTCOやROI(費用対効果)までを加味しながら、課題解決に寄与した事例と言えます」(大内山氏)

4つのフローを横断する
ソリューション/製品群

ここまで紹介した4つのフローに対し、インテルでは「エコシステム」「ソフトウエア」「ハードウエア」の3つを柱とし、さまざまなソリューション/製品でAIへの取り組みを加速する。

エコシステムでは、エンドユーザーとなる事業会社の垂直的パートナー、OEM、SIer、コンサルティング、AI開発企業などの水平的パートナーと協力関係を結んでいる。これが先に触れたインテル® AI ビルダーズ・プログラムとなるが、まだまだ日本企業の参加が少ない。大内山氏は「とくに導入フェーズはSIerの力が必要。日本でもCPUのみでAIソリューションを構築できることを広く展開していきたい」と話す。

また、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといったパブリッククラウドも重要なパートナーだ。AIは確率論などをベースにしているため、ファジーな要素が入り込んでくる。言わば不確実性のリスクをはらんでおり、いきなりビジネスへの本格的な適用は慎重になる方が多い。

「そうしたリスクがあるので、例えばPoCやプロトタイピングはクラウドを活用して仮想サーバー数台からスモールスタートし、本格導入のタイミングでビジネス規模やシステム特性などを鑑みてクラウドを継続するか、オンプレミスに切り替えるかの判断を行うなど、ホスティング基盤選択の柔軟性が求められます。その意味でもAIとクラウドは特に重要度の高い初期フェーズにおいて非常に相性が良い組み合わせの1つと考えます 」(大内山氏)

パートナー企業は、AIに最適化された構成のインテル® Select ソリューションも提供する。本ソリューションは厳格なベンチマークテストと検証により、実環境でのパフォーマンスが保証されたソフトウエアとハードウエアのパッケージとなる。「お客さまで開発環境の選定を行う手間が省け、迅速かつ容易な導入を後押しします」(大内山氏)

ソフトウエアでは、マシンラーニングやディープラーニング向けに独自の開発ツールとフレームワークを用意。これにより、インテル製CPUのポテンシャルを可能な限り引き出すことができるという。中でも、ディープラーニングの開発ツールであるOpenVINO ツールキットは、昨今のトレンドである「AIの民主化」を推進するものだと大内山氏は言う。

「多くのAIプレイヤー企業たちが、どこでも誰でも簡単に使えるAIを目指す方向を示しています。インテルもそういった考え方には同調しており、OpenVINO ツールキットはそれを体現しています。例えば事前にトレーニングを施し、かつ、CPUに最適化した様々なモデルを無償で提供しているので、モデル開発に関してそこまで専門的な知識がなくても、すぐに物体検出や骨格推定などのAI機能をアプリケーションに導入いただけます」(大内山氏)

ハードウエアについては、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーが主軸となる。インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーはAIアクセラレーションを搭載した唯一のデータセンター向けCPUであり、AI処理に関しても高い能力を誇る。2020年6月には最新モデルの第3世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーが発表され、今後は開発コード「Ice Lake」、追って「Sapphire Rapids」が登場する見込みだ。Sapphire Rapidsではアーキテクチャが刷新され、さらにAI機能を強化している。

AI処理に高い能力を発揮するインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー

このように課題発見の上流から、失敗のないシステム構築の下流まで、インテルはAIのトータルソリューションを提供することができる。最後に大内山氏は、改めて同社の強みを次のように話してくれた。

「AIは毎月のように精度が更新されるなど進化スピードがとても早いのが特徴です。ハードウエアのビジネスサイクルだけでは、そのスピードに対応するのには必ずしも十分ではない。だからこそインテルはハードウエアと並びソフトウエアの開発・提供にも注力しているのです。良質なソフトウエアのサポートがあってこそAIワークロードの最適化がもたらされます。そこにビジネス視点のAIソリューションを加えることで、ワンストップでお客さまの課題解決に貢献できる――それがインテルの強みなのです」(大内山氏)