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インテル・エネルギー・フォーラム 2020
開催レポート分散型社会を見据えた新しい電力ビジネスを模索する

2020年7月に開催された「インテル・エネルギー・フォーラム 2020」は、新型コロナウイルス感染対策を考慮し、オンラインイベントとして実施された。今回は、人と人、企業と人、企業と企業とが相互に助け合って課題を解決する「繋ぐ (TSUNAGU)」をコンセプトに、ユーティリティー企業、エネルギー分野の専門家、その他さまざまな業種を代表する企業との対談によるセッション、パネルディスカッションおよび講演を通じて、今後の重要インフラのあり方や、新たなサービスを生み出すデータ活用などが提言された。

「ニューノーマル」時代において人や企業を繋げる
インテルの役割

インテル株式会社
代表取締役社長
鈴木 国正 氏

開会の挨拶に立ったインテル株式会社 代表取締役社長の鈴木国正氏は、まずは日本におけるデータ社会の現況に触れ、企業間格差としての「データ・デバイド」についての考えを述べた。そこでは、データが爆発的に増加することで、企業における既存の基幹情報システムが拡張の限界を超えてしまい、経産省のDXレポートによると、「デジタル競争についていけない多くの企業が、2025年には崖から落ちてしまう」という事態が憂慮されていると紹介した。一方で、世界から見た日本の「デジタル・デバイド」についても触れ、新型コロナウイルス感染症の拡大によって明らかになったように、「日本はリモートワークにしろ、オンライン教育にしろ、世界のいくつかの国からは大幅に遅れていると感じた」との見解を示した。

次に電力業界の状況について触れた鈴木氏は、「電力消費の低下」「新エネルギーへの対応」「インフラの老朽化及び人材の高齢化」「激しい競争と高いコスト」という4つの事象を上げ、こうした中でデジタル化が果たす役割は重要であり、「業務効率化と全体最適化を図るオープンデータ・プラットフォームが必要になることが共通認識となっている」と述べた。

ここで鈴木氏は、インテルではデータを中心に捉えて価値を最大限引き出し、攻めのビジネスモデルを構築する「DcX(データ・セントリック・トランスフォーメーション)」の推進に注力していることに触れ、DcXにおいてインテルは、AIやIoT、5Gなどあらゆる技術の進化に対応する製品の開発投資を、継続的に行っていると紹介。また、鈴木氏はインテルがあらゆる業種・業態の企業とのネットワークによって集約してきた知識を、「中立的な立場から、企業間を繋いで提供できる」と考えており、DcXを軸に産業界が成長していくこと自体、インテルの事業成長にも繋がる。だからこそインテルは業界の中立的なハブとしてビジネスパートナーも紹介できるし、「インテル自身も戦略構築やサービスに直接携わることができる」と、エネルギー業界におけるインテルの役割を強調した。

一方で、新型コロナウイルスの影響で生活様式が変化する「ニューノーマル」という言葉は、狭義の意味もあるが、より広義な意味で新しい「ノーマル」を創り出していくべき言葉であると述べる鈴木氏。そこで、今回の「インテル・エネルギー・フォーラム」のコンセプト「繋ぐ」という言葉が持つ重要な意味について説明した。

最後に、今回の「インテル・エネルギー・フォーラム」においては、広義な意味での「ニューノーマル」あるいは「ニューソサエティ」という新しい社会に向けたメッセージを、ビジネスに役立てていただきたいと述べて挨拶を締めくくった。

人と人、人と企業、企業と企業が「繋がる」
新たな日常に向けたインテルの役割

インテル株式会社
執行役員 インダストリー事業本部 本部長
張 磊 氏

『垣根をこえた繋がりが生み出すプロジェクト ~新たな日常に向けて』と題された特別対談オープニングで、インテル株式会社 執行役員 インダストリー事業本部 本部長 張磊氏が、人や企業が繋がる意味やその重要性について触れた。張氏は、「人間は、なくして初めて、物事の価値が分かる」と述べ、近年増加してきた災害への対応によって、いかに人と人との繋がりが大事なことなのかを紹介した。

大規模地震や集中豪雨などの災害が頻発している日本は、「これまでは当たり前だと思っていたことを考え直す、きっかけが与えられている」と張氏は述べる。家庭や企業などが当たり前のように繋がっていると思われてきた電力網も、昨年は台風の影響で遮断された。これからの日本では、こうしたことも新たな日常の一部になっていくかもしれない。そこで重要になるのが、「人と人をつなげ、その繋がりを大切にすること」であり、張氏は「一人一人が今までの当たり前にチャレンジし、技術とイノベーションによって、よりよい社会を一緒に創っていきたい」との考えを示した。

また張氏は、災害復興の現場では「支援者に提供される情報が足りない、もしくは情報に繋がらないことが問題になる」との意見に対し、「膨大なデータが集まってくる組織の側からは、それらの情報の活用の仕方がわからないと言われる」と述べる。そうした現場に天気や地形などさまざまな情報を提供し、復旧・復興を効率化させることが重要と述べた。

さまざまな再生可能エネルギーの管理に対応する
インテルのグリッド向けソリューション

基調講演ではインテル・コーポレーション IoT事業部 副社長 ジェネラルマネージャー クリスティーン・ボールズ氏が、『データ主導型グリッドに向けて』と題してインテルが推奨するグリッド向けソリューションに関する詳細を紹介した。

インテル・コーポレーション
IoT事業部 副社長 ジェネラルマネージャー
クリスティーン・ボールズ 氏

ボールズ氏はまず、さまざまな業界セグメントにおけるIoTの方向性について触れ、最近ではエッジ・デバイスやIoTデバイスなどから発生する情報量の多さが、エッジコンピューティングの懸念につながっていると紹介した。ボールズ氏は2019年のガートナーの調査結果を参考に、IoTで生成されたデータの45%以上がエッジで保存、処理、分析、実行されており、「今後数年間、50%を越えるデータが、グラウドやデータセンターの外側で生成、実行、保存されると予測されている」と述べた。

現在エッジコンピューティングはデータの増加によって、レイテンシー対応と帯域制御に課題を抱えているという。こうした課題の解決を目指し、インテルはさまざまな業界において、エッジコンピューティングの機能向上に取り組んでおり、「今では幅広いエコシステムパートナーとの協力の下、エッジにこだわらず必要な場所でコンピューティングを実現している」と述べた。

次にボールズ氏は電力業界が直面している課題に触れ、その1つは太陽光や風力をはじめ、さまざまな再生可能エネルギー源が系統に取り込まれていることだと指摘する。これらのエネルギー源の導入コストはここ数年で大きく削減されており、さらに多くの再生可能エネルギーが系統に入ってくる。そうなれば、エネルギー資源が分散し、ユーティリティー企業にとっては管理がより複雑になってくるだろう。

そもそも、再生可能エネルギーは発電量が安定しないため、系統の管理が不安定になり「発電面だけでなく企業や消費者の需要パターンにも変化が起きるだろう」とボールズ氏は推察する。必要とされるエネルギー源の需要パターンが変化することで、ユーティリティー企業が対処しなければならない需要特性も変わってくる。

さらに、再生可能エネルギーがマイクログリッドに接続されれば、系統インフラ全体で再生可能エネルギーが貯蔵できるように、蓄電ソリューションが活用されるようになる。このような需要や発電エネルギー源の変動及び変化は、系統インフラにストレスを生み出す。そうしたストレスを解消するには、全体的な系統インフラからレガシーシステムを取り除き、モダナイゼーションできるソリューションでの対処が求められる。

ここでボールズ氏は、インテルがKalkitechと共同で開発した、センサー技術を搭載した電力会社向けゲートウェイを、インドの変電所に導入した事例を紹介した。インテルが提供する新しいワークロードは、ピーク需要を緩和するため、「より高度な負荷制御が可能になり、先進的な電圧/無効電力制御によって電力品質が向上し、変電所の全体効率の向上が図れる」と、その効果を紹介し講演を終えた。

電力関連会社が
取り組む新事業

フォーラム後半の「ユーティリティセッション」では、日本を代表するさまざまな電力関連会社が進めている、新サービスへの取り組みなどが発表された。

具体的な取り組みの内容としては、自らがユーザーとして求める要件を満たしたクラウドサービスの外部ユーザーへの提供や、スマート社会の実現に向けたサービスの提供、データ・プラットフォームの構築、ヘルスケア分野に関する取り組み、電柱位置情報の提供、児童の登下校見守りサービスの提供、架線検査記録アプリの開発、ダム流入量予測など、デジタル技術を活用した多岐に渡るソリューションやサービスが紹介された。

今回開催されたインテル エネルギーフォーラム及び、追加インタビューセッションもライブ後にオンデマンド配信されている。エネルギー業界と関連するさまざまな企業や専門家の講演をこの機会にぜひ視聴してみてはいかがだろうか。