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EXPO 2019

AI時代のビジネスを強力に後押しする!後編
日立がインテルの最新メモリーモジュールを採用し、
インメモリデータグリッド製品の
高速アクセス性とデータの永続性を両立

エンタープライズ向けの多様なソリューションを展開する株式会社日立製作所では、その1つとして“インメモリデータグリッド”と呼ばれるソフトウェア製品「Hitachi Elastic Application Data Store(EADS)」を提供している。EADSは、いわゆるNoSQLデータベースで、大量のデータを複数マシンのメモリー上で高速かつリアルタイムに処理することを実現するものだ。同社は、このEADSの基盤に、インテルの最新メモリーモジュールであるインテル® Optane DC パーシステント・メモリーを搭載した日立アドバンストサーバ「HA8000Vシリーズ」を適用することで、データアクセスの高速性とデータの永続性の両立を実現する。2019年内には、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーへのデータ格納に対応したEADSの最新バージョンをリリースする予定だ。

EADSはデータ処理の高速性と耐障害性を兼ね備えた
インメモリデータグリッド製品

株式会社日立製作所(以下日立)が提供するインメモリデータグリッド「Hitachi Elastic Application Data Store(EADS)」は、いわゆるNoSQLデータベースであり、その中でも大量のデータを複数マシンのメモリー上で分散管理するインメモリー型分散KVS(Key-Value Store)に分類されるソフトウェア製品だ。SQLによるデータ操作が必要なリレーショナルデータベース(RDB)とは異なり、データを一意的に識別するための“キー”とその“値”の組み合わせというシンプルなデータ構造を持つ大量のデータ群を、キーの指定によるデータ操作だけで簡単に処理することができる。

EADSの特長について、サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 フローマネジメント本部 システム&データアプリケーション部 主任技師の須藤義之氏は、次のように説明する。

「EADSはインメモリー型分散KVSであり、シンプルな構造のデータを複数マシンのメモリー上で処理することで、高速で低レイテンシなデータアクセスを実現しています。また、マシン上のデータを別のマシンに複製しておき、万一の障害発生時には複製先のマシンに自動的に切り替えるという高い可用性も提供しています。ただしその際に、2つのマシン間でデータの一貫性が失われてしまう恐れがあります。そこで日立では、“Paxos(パクソス)”という分散合意アルゴリズムをソフトウェアの機能としてEADSに実装することで、サーバーやネットワークなどの障害発生時にも、データの一貫性を保証しています」

株式会社日立製作所
サービスプラットフォーム事業本部
IoT・クラウドサービス事業部 フローマネジメント本部
システム&データアプリケーション部 主任技師
須藤 義之氏

分散合意アルゴリズム“Paxos”は、分散システムにおいて一貫性を保つための有名な手法だ。Paxosは、アプリケーションからのリクエストの処理順序をサーバー間で合意形成することで、処理結果の一貫性を保証する。日立では独自にPaxosをソフトウェアの機能としてEADSに取り込むことで、データの一貫性までを保証する可用性を実現した。

「これによってお客様は、重要なデータをより安全に管理できるようになります。こうした観点からEADSは、“高い耐障害性を提供するNoSQLデータベース”だと言うことができ、ミッションクリティカルなシステムでのご利用にも十分適している製品です。実際、電力や通信などの社会インフラを支えるシステムで幅広くご利用いただいており、その他にも高速な取引が求められる証券取引所のシステムや、大量かつ重要なデータを扱うIoTシステムへの導入にも適しています。ただしEADSでは、SQLを使った複雑なデータ操作はできません。そこで大量発生するデータの高速収集にはEADSを、データの複雑な検索・更新にはノンストップデータベースのHiRDB(=RDB製品)を利用していただくなど、用途により製品の使い分けをしていただくのが、最適な選択だと考えています」

また、NoSQLデータベースのEADSでは、スケールアウト型で性能や容量を容易に拡張することが可能だ。スモールスタートし徐々に規模を拡張したい場合や、将来のデータ量の予測が難しい場合でも、サーバー台数の追加によって柔軟に対応できる。このためEADSはユーザー企業に“ITコストの最適化”というメリットも提供してくれる製品だと言える。

EADSの特長

インテルの最新メモリーモジュールの採用で、
高速性と永続性が両立できる

日立は2019年5月、日立アドバンストサーバ「HA8000Vシリーズ」でインテルが同年4月2日にリリースした最新の第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを採用した。この新たなHA8000Vシリーズを“HCIソリューションの基盤”として提供することで、ユーザー企業のビジネス拡大を強力に支援することが目的だ(前編参照)。

そして現在、日立では次のステップとして、第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載のHA8000Vシリーズに、インテルの画期的なメモリーモジュールであるインテル® Optane DC パーシステント・メモリーを組み込み、EADSの動作基盤として提供するための検証を進めている。

インテル® Optane DC パーシステント・メモリーは、インテルがマイクロンと共同開発した不揮発性メモリーの新たな技術“3D Xpoint テクノロジー”を応用して開発された不揮発性のメモリー製品で、大容量のメモリーとして動作する“メモリーモード”と高速なストレージとして動作する“Appダイレクトモード”という2つの動作モードを備えることで、メモリーの高速性と、ストレージと同等レベルの大容量および不揮発性・永続性というメリットをユーザー企業に提供する。いわばメモリーとストレージの“いいとこどり”をした画期的な製品で、今回日立は、このインテル® Optane DC パーシステント・メモリーをAppダイレクトモードで利用する。その狙いについて、須藤氏は「まさにデータアクセスの高速性とデータの永続性が両立できる点にある」と強調する。

「これまでEADSでは、メモリー上でデータを管理するために、データの複製数以上のマシン停止に伴いデータが失われてしまうリスクを抱えていました。こうしたリスクに対応するために、我々はデータをSSDやHDDに格納するモードも提供していましたが、データの格納先をSSDやHDDにすれば、EADS本来のメリットである高速性が犠牲になってしまう。つまりデータアクセスの高速性とデータの永続性はトレードオフの関係にあり、どちらかを優先させると、どちらかが落ちてしまうというジレンマがあったのです。その際にインテル® Optane DC パーシステント・メモリーを採用することで、両者を同時に実現することができると考えました」

日立では、2019年12月末までにインテル® Optane DC パーシステント・メモリーへのデータ格納に対応したEADSの最新バージョンをリリースする予定で、現在まさにその検証を進めているところだ。

インテル® Optane DC パーシステント・メモリーの2つの動作モード

「第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載のHA8000Vシリーズに、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーを組み込むことで、ストレージへのアクセスをメモリーに近い高速なスピードで実現することが可能となり、また想定外のマシン停止時にも、データを保持し続けることができるようになります。実際にお客様の中には、メモリーだけにデータを保存する仕組みでは、サーバークラスタが全てダウンした時に何も残らないという状況に陥ることを懸念するお客様もいるので、EADSの最新バージョンは、そうしたお客様のニーズにもきちんと対応できる製品になると考えています」

EADSのインテル® Optane DC パーシステント・メモリー採用による効果

インテルとのパートナーシップにより、
最新テクノロジーの早期検証が可能に

日立では、HA8000Vシリーズに第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載し、さらに今回インテル® Optane DC パーシステント・メモリーを採用することで、EADSにおけるデータアクセスの高速性とデータの永続性を両立した。

須藤氏は、こうした画期的なソリューションの提供を可能にしてくれるのが、インテルとのパートナーシップだと続ける。

「今回について言えば、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーの製品版がリリースされる前の2018年にインテルから評価機を借りて、試用しました。こうした優れたハードウェアやテクノロジーを早期に検証できれば、日立としても、既存製品に適用するためには、どのようなプログラムの変更が必要かという観点で、事前に素早く動くことができます。それはとりもなおさず、日立が最先端の技術をしっかりと検証して取り入れた上で、最新のサービスやソリューションをいち早くお客様にご提供できるということです。その意味で我々とインテルとのパートナーシップは、お客様メリットの向上にも大きく寄与するものだと考えています」

インテルは2019年10月4日に「インテル デベロッパー・カンファレンス 2019」を開催する予定で、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーを搭載したHA8000VシリーズによるEADS最新バージョンの検証状況などについても、この場で紹介される予定だ。

インテル® Optane DC パーシステント・メモリーの
メモリーモードでの利用も検証中

今回紹介したEADSは、大量データの高速処理とデータの永続性の両立が求められる領域で活用することができる。その1つが、電子決済処理システムだ。

「現在、日本のキャッシュレス決済の比率は約20%(2016年)で、キャッシュレス化が進んでいる国の3分の1から2分の1のレベルしかありません。そこで経済産業省は『未来投資戦略2017』の中で、この比率を2027年までに40%に向上させることを目標として掲げており、日立では今後、国内でもキャッシュレス決済の拡大が加速していくと見ています。この時に電子決済処理システムに求められるのは、増加する決済データの処理スピードを維持しつつ、エンドユーザーの決済データをきちんと保持していくことです。我々は、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーを搭載したHA8000VシリーズとEADSを組み合わせることで、こうした要件にも確実にお応えすることができると考えています」

EADSの想定ユースケース:電子決済処理システム

また日立では現在、ユーザー企業のビジネスをブロックチェーンの利用を通して支援するためのサービス「Hitachi Blockchain Service for Hyperledger Fabric」を提供している。これはブロックチェーン環境の提供からブロックチェーン基盤とアプリケーション開発のコンサルテーション、サービスポータルの提供、マネージドサービスなどをワンストップで提供するものだ。このサービスにおいて、ブロックチェーンの取引順序を決定するための重要コンポーネントとして、社会インフラ分野で長期間安定稼働の実績があるEADSを採用しており、取引順序の一貫性保証による高信頼の取引を実現している。

さらに分散環境でのデータの高信頼性を保証するために、Paxosをソフトウェアとして実装したEADSは、日立の先進的なデジタル技術を活用し、ユーザー企業のデータから価値を創出してデジタルイノベーションを加速することを支援する「Lumada(ルマーダ)」のテクノロジーの一つとして利用されている。

「これからもEADSは、高速性と永続性を基本要件として踏まえた上で、AWSなどのクラウドサービスやコンテナ環境への適用に向けた機能拡張を行う予定です。インテルにも、インテル® Optane DC パーシステント・メモリーの各種クラウドサービスやコンテナ環境への対応を期待したいですね」

加えて、HiRDBでインテル® Optane DC パーシステント・メモリーをデータベースのバッファに適用した性能検証も行っている。こちらはメモリーモードでの利用だ。

「インテル® Optane DC パーシステント・メモリーをメモリーモードで活用することで、サーバー搭載のメモリー容量を拡張することが可能となり、複数サーバーで構成するHiRDB/パラレルサーバのDBバッファの総容量を維持しつつ、サーバー集約を図ることで、ITリソースの最適化を実現することができます。このようにハードウェアとソフトウェアを効果的に融合させることができれば、新たな顧客価値を創造することが可能です。今後インテルとのパートナーシップをより強固なものにしていきたいです」と須藤氏は展望を語った。

日立のEADS検証チーム

「Lumada」は株式会社 日立製作所の日本、およびその他の国における商標または登録商標です。