次世代型スパコン・クラウド・プラットフォームで
研究開発の現場に変革を起こす

現在様々な分野でAI活用が進んでいる。その中でより高速な演算処理が求められるのがバイオ・ライフサイエンスの領域だ。特に最近では研究開発の場でシミュレーションとAIを組み合わせて活用するケースがトレンドとなってきている。こうした場面に超高速の演算環境をクラウドサービスとして提供するのがエクストリーム-D株式会社だ。同社は2019年4月2日、“次世代型スパコンクラウドプラットフォーム”と銘打った新サービス「XTREME-Stargate™」の提供を開始した。このXTREME-Stargate™は“オール・インテル・テクノロジー”で実装されているという。XTREME-Stargate™の特徴と提供するユーザメリット、インテルとのパートナーシップについて、同社 CEOの柴田直樹氏、CTOの奥野慎吾氏に話を聞いた。

HPC Cloud Infrastructure

超高速演算環境をクラウドサービスとして提供する
「XTREME-Stargate™」

エクストリーム-Dが2019年4月から提供を開始した「XTREME-Stargate™」は、同社の保有するHPCシステムをベアメタルサービスとして提供する「XTREME-Stargate IaaS」を中心とする次世代のHPC(High Performance Computing)クラウドインフラストラクチャーだ。このXTREME-Stargate™をサービス設計した背景について、CTOの奥野氏は次のように説明する。

エクストリーム-D株式会社
CTO
奥野 慎吾 氏

「これまで研究開発の分野では、特定の専門家が研究に必要なシミュレーションを数多く回していましたが、最近では専門家の代わりにAI技術を活用し、入力データや出力データを学習用データとして与えて機械学習を行い、そこから得られたデータを使ってまた新たなシミュレーションを回していくというやり方がトレンドになってきています。シミュレーションを補完する形でAI技術が取り入れられてきているということで、この両者の組み合わせにより、研究開発の現場ではより高速な演算環境の需要が高まってきています。こうした環境を獲得するためには、まずHPCクラスターを構築し、その後運用していくことが必要ですが、研究機関や企業などのお客様が自分たちでそうした環境を作り上げることは、技術的にもコスト的にも非常に難しい。そこで我々がその課題解決をご支援したいと考えました」(奥野氏)

こうしてリリースされたのが、XTREME-Stargate™だ。冒頭でXTREME-Stargate™をHPCクラウドインフラストラクチャーと紹介したが、厳密にはエクストリーム-Dでは“HPC・HPDA(High Performance Data Analytics)の両軸”で超高速演算環境を提供するHPCaaS(=HPC as a Service)だとしている。これは先に奥野氏が語った研究開発現場におけるシミュレーション×AIのトレンドが大きく関係している。この点について、CEOの柴田直樹氏は、次のように説明する。

エクストリーム-D株式会社
CEO
柴田 直樹 氏

「シミュレーションとAI活用の場面では、求められる要件が少し異なるのです。まずシミュレーションを行う際にはコンピューティングパワー、即ちCPUの処理速度そのものが非常に重要で、これがHPCの世界です。次にディープラーニングやAIによるデータ分析の場面では、データを高速に読み書きするスピードが求められます。こちらがHPDAと呼ばれる世界で、ここでは高速なSSDやサーバー間を繋ぐ高速インターコネクトが重要となります。現在のHPCクラウドインフラストラクチャーは、この2つの世界を共に満足させる必要があるということです」(柴田氏)

こうした2つの要件を満たすために、同社がXTREME-Stargate™で採用したのが、インテルの様々なテクノロジー群だ。

All Intel Technology

“オール・インテル・テクノロジー”による実装が
顧客にとって最もコストパフォーマンスの高い
サービスの提供を可能にする

XTREME-Stargate™には、CPUとしてインテルが2019年4月2日にリリースした最新の第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー(開発コード名:Cascade Lake)を搭載したインテル製サーバーが採用されており、ストレージにはインテル® SSD DC P4510シリーズが、またサーバー間を繋ぐ高速インターコネクトにはインテル® Omni-Path アーキテクチャー(インテル® OPA)が採用されている。

つまりXTREME-Stargate™は“オール・インテル・テクノロジー”で実装された最先端のHPCクラウドインフラストラクチャーで、これによりXTREME-Stargate™は、バイオ・ライフサイエンス分野など研究開発の現場に超高速の演算環境を提供する。

XTREME-Stargate™はHPCとHPDAの両方で高性能演算ができる環境を提供する

「先にも述べたようにHPCの世界では計算の性能、いわゆるコンピューティングパワーが非常に大事で、まずこの機能を提供するものとしてはインテルやAMDが提供するCPUの他、NVIDIAに代表されるGPU(Graphics Processing Unit)や組み込みに近い演算補助装置のFPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられます。またストレージの領域も色んなメーカーが多様な製品を提供しています。我々はこうした構成要素の様々な組み合わせを考えましたが、その中でHPC環境として、“どんなアーキテクチャを利用すれば、お客様にとって一番コストパフォーマンスが高いか”を突き詰めた結果、辿り着いたのが、オール・インテル・テクノロジーによる実装だったということです」(柴田氏)

General-purpose Platform

速いだけの“F1マシン”は乗りこなせない。
必要なのは“パワーステアリングの付いたスポーツカー”

この点に関連して柴田氏は、「HPC環境、つまりスーパーコンピューターを作り上げるという視点で見れば、実は今回リリースしたXTREME-Stargate™よりもさらに高速な演算環境を作り上げることは可能でした」と続ける。

「パフォーマンスが良いHPC用のアーキテクチャを作ることはいくらでも可能で、車で言えばF1マシンを作るようなものです。しかしそれに乗ってくださいと言われても、普通の人は運転ができません。 我々にはXTREME-Stargate™ を“汎用的に使えるプラットフォーム”にしたいという思いがありました」(柴田氏)

XTREME-Stargate™ をスーパーコンピュータのような専門知識を持った一部の人にしか使えないものではなく、コンピューティングについてあまり詳しくない人でも簡単に利用できるものにしたい。目指したのは“今使っているPCが劇的に速くなる”という世界だ。

「一番速いマシンを作ろうと思えば、インテル以外のものをきれいに組み合わせていけばいいのです。しかしその際には当然コストも高くなりますし、使い勝手の問題も出てきます。また計算パワーが高いコンピューティング環境は消費電力も非常に高くなる。結果、我々のサービス維持管理コストもかさみ、それはさらにまたお客様に提供するサービス料金に跳ね返ることになります。そうまでして速さに拘る必要があるのか。我々はサービスを構成する要素の最適なバランスを十分に考えたということです」(柴田氏)

その意味で、オール・インテル・テクノロジーの車は“パワーステアリングの付いたスポーツカー”のようなイメージだと柴田氏は強調する。

「免許さえ持っていれば誰でも運転できますよ、エアコンも付いていますよ、さあこれでF1マシンを追い抜いていきましょう、という世界です。そして今回、そのオール・インテル・テクノロジーの核となったのが、最新の第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーでした」(柴田氏)

Based on 2nd Gen Intel® Xeon® Scalable Processor

XTREME-Stargate™を支える
多様なインテル・テクノロジー群

HPC・HPDA環境の基盤となるのは、何と言っても高速な演算処理を可能するCPUの処理能力だ。これを提供するのが第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー(*)で、現在のHPC業界で最も利用されている従来のインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーをさらに高速化し、セキュリティ機能を強化したものだ。より広範囲なHPCやAIのワークロードに対応している。

今回エクストリーム-Dでは、XTREME-Stargate™の基盤として、この第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載したインテル製サーバーを採用した。

ここで奥野氏は、CPUのアーキテクチャに合わせて最適化されたソフトウェアのフレームワークもインテル・テクノロジーの大きな魅力だと語る。

「インテルはハードウェアだけでなく、例えば機械学習や深層学習で広く利用されているTensorFlowなどオープンソースのフレームワークも、自社のアーキテクチャに最適化した形で提供しています。これも我々にとっては非常に大きなメリットです」(奥野氏)

さらにソフトウェアの観点からは、今回の第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーには、VNNI(Vector Neural Network Instruction)と呼ばれる命令セットに対応し、ディープラーニングにおけるインファレンスを劇的に高速化する新機能「Intel® Deep Learning Boost」も搭載された。まさに現在求められているHPCクラウドインフラストラクチャーの要件に合致した機能だ。

そしてストレージ領域では、先にも触れたインテル® SSD DC P4510シリーズを採用し、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーに搭載されたインテル® Virtual RAID on CPU(インテル® VROC)を活用することで、ソフトウェアベースのRAID環境を実現した。

さらにサーバー間接続の高速化を実現するために、インテル® OPAのHFI(ホスト・ファブリック・インターフェイス)カードを採用して、48ポートのOmniPath-Switchでのクラスター環境を構築している。

また、運用面では遠隔地のサーバー群を少人数で監視・管理するためにインテル® データセンター・マネージャーを導入、サーバーのコンポーネントレベルの障害検知から、ファームウェアのアップデートまでを可能にしている。

エクストリーム-Dでは、こうした多様なインテル・テクノロジー群を搭載したXTREME-Stargate™ を、第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーのリリースと同時に市場に投入した。その背景にあったのが、インテルとの強いパートナーシップだ。

(*)例えば第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの最上位モデルであるインテル® Xeon® Platinum 9200プロセッサーは、最大112コアに対応し、従来のインテル® Xeon® Platinum 8180プロセッサーと比較して平均2倍のパフォーマンス向上を実現している。

Into the HPC Market

インテルとの強力なパートナーシップが、
XTREME-Stargate™の“Time To Market”を最小化した

XTREME-Stargate™のリリース以前、エクストリーム-Dの提供する代表的なサービスは、顧客の要望に応じてMicrosoft Azureなどのパブリッククラウド上にHPC環境を自動的に構築する「XTREME-DNA」だった。

「要はパブリッククラウドベンダーが用意しているメニューの中から、お客様が求めるHPC環境に最適なスペックの構成を我々で組み上げていくというサービスです。柔軟性が高く、構築までの時間も短くて済むというのがパブリッククラウドを利用するメリットでした。しかしより高速なHPC環境へのニーズが高まってくると、必ずしも我々の希望するスペックが提供されているとは限りませんし、また仮想マシンがベースになるので、どうしてもパフォーマンスが問題になります。そこで弊社のHPCアーキテクトチームがHPC向けに独自にデザインしたHPCシステムをデータセンターに設置し、つまり物理サーバーをお客様に貸し出していくというサービスが必要だと考えたのです」(柴田氏)

そうして様々なハードウェアの組み合わせを検討していく中で、米インテルのHPC部門と話す機会があり、XTREME-Stargate™の開発コンセプトなどを伝えたところ、第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの早期評価を提案されたという。

「我々がXTREME-Stargate™の開発意向を表明したのが2018年10月でしたが、その少し前にインテルから第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを使ってみないかという提案をもらいました。それができれば、我々としては最新のCPUの発売日とほぼ同じタイミングで、XTREME-Stargate™を市場に投入することができます。ベンチャー企業である我々にとって、他社に先駆けて新たなサービスをリリースすることは非常に重要です。インテルにも、今後HPCaaSのようなサービスが必要になるという思いがあり、我々のベクトルがまさに一致した結果だと思います」(柴田氏)

こうして第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの提供開始と同時にXTREME-Stargate™がリリースされた。エクストリーム-Dとインテルとの強力なパートナーシップが、XTREME-Stargate™の“Time To Market”を最小化することに繋がったと言える。

Partnership with Intel

テクノロジーのロードマップが期待に合致し続ける限り、
インテルとのパートナーシップは今後も非常に重要なもの

現在XTREME-Stargate™では、先に紹介したベアメタルサービスの「XTREME-Stargate IaaS」とダッシュボード機能を提供する「XTREME-Stargate Dashboard」がリリースされており、今後ストレージサービスの「XTREME-Stargate Secure Data I/O」の提供が予定されている。また顧客サイトとXTREME-Stargate™のデータセンター間をセキュアに繋ぐハードウェアアプライアンスの「XTREME-Stargate HPC Gateway」も現在開発中だ。

今後の製品強化に向けて、奥野氏は「研究者の皆様を我々の計算環境で支えることで、研究者の皆様が世の中を変えていくことを支援していきたい。それが私のモチベーションの1つにもなっています」と語り、「そういう思いでサービスを成長させていきたいと考えています」と続ける。

そうした方向性にある1つの取り組みとして奥野氏が挙げるのが、ダッシュボード機能の充実だ。

「XTREME-Stargate Dashboardは、XTREME-Stargate™の計算環境を使いやすくするための専用サイトですが、研究者の皆様の計算環境に関するリテラシーは様々です。ご自身で計算環境を使いこなすことができる方もいれば、そのような方が用意してくれた環境に研究データを入れて実行するだけの方もいる。そうした人たちに画一的なユーザインタフェースを提供してしまうと、非常に制限された使い方しかできなかったり、すごく難しい使い方しかできなかったりします。そのどちらにも対応できるように別々のダッシュボードをご提供する。研究者の方にしっかり向き合って開発を進めている段階です」(奥野氏)

そして最後に柴田氏は、今後のインテルとのパートナーシップについて次のように総括する。

「我々はXTREME-Stargate™をHPC・HPDA領域における業界標準のプラットフォームにしていきたいと考えています。そのためには最新のハードウェアで最速のものを追求していく。使い勝手も重要です。その時にインテルは長期的なロードマップを敷いています。それは単にCPUだけでなく、例えばDRAMの機能を補完する3D XPointテクノロジーベースの不揮発性メモリー(=インテル® Optane™ DCパーシステント・メモリー)などHPC環境を作り上げるための構成要素も含めたロードマップになっているので、我々としては、今このテクノロジーを選択すれば、次の世代ではこういう組み合わせで行けばいいというビジョンが非常に描きやすい。それはお客様へのサービス提案のしやすさにも繋がってくるものです。そうした意味でインテル・テクノロジーのロードマップが我々の期待する方向と合致する限り、今後もインテルとのパートナーシップは我々にとって、非常に重要なものであり続けると考えています」(柴田氏)

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