優れた技術を持つ東京のものづくり企業の新ビジネス創出をデザインの力で実現

今年で8回目を迎える「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業とデザイナーをマッチングさせ、既存の技術や素材の新たな用途開発を図り、最終的には新しいビジネスを創出することを目的としたアワード。現在、企業からの「テーマ」を募集しているが、このアワードに参加する企業が得られるメリットは、思いのほか幅広い。今回は、そのメリットについて、アワードの審査委員長を務める廣田尚子氏に話を聞いた。

日本のものづくり技術は世界に誇れる水準である――

これに異を唱える人は恐らく少数派だろう。また、自社が有する技術についても、そのレベルの高さを自負する中小企業は少なくない。

しかし、その価値を十分に理解し、ビジネスに活かせているかとなると話は別だ。「製造技術」の水準は申し分ないが「製品技術」に欠ける――とは、日本の製造業に対してよく言われることである。

例えば、自社技術を使って「製品メーカー」への転換を図りたいと考える「素材メーカー」や「部品メーカー」の中には、その技術力のレベルが高いものの、市場に求められる製品を生み出せず、事業を拡大できない企業が多い。そんな企業の悩みを解消する手法の1つがデザインの活用である。

デザイナーならではの視点やアイデアで、ある技術や素材の潜在的な価値を掘り起こし、具現化する――これがうまくいけば新事業の創出につながるのは言うまでもない。

だからと言って、闇雲にデザイナーに発注すればそれが実現できるという訳ではない。プロジェクトを成功させるには、企業側にもそれを受け入れる体制やノウハウが必要なのだ。

ではノウハウを持たない中小企業はどうすればよいのか? そんな企業におすすめしたいのが「東京ビジネスデザインアワード」への参加である。

このアワードは、東京都内に本社のある中小規模のものづくり企業が持つ優れた技術や素材を「テーマ」として募集し、審査。そして、選ばれた「テーマ」に対して、新たな用途開発を含めた事業デザインの「提案」をデザイナーから募集するコンペティションである。「アワード」ということで「提案」されたアイデアの中から最優秀賞と優秀賞が選出されるが、マッチングが成立したプロジェクトには、その後も事業化に向けた支援が受けられるのが特徴だ。

その狙いについて、アワードの審査委員長を務める廣田尚子氏は次のように説明する。

「アワードというスタイルを取っていますが、最終的な目的は『企業がデザインを事業の中に取り入れること』です。デザインが企業の成長にいかに役立つのかを実感していただき、意識を変えてもらうことが役割の1つだと考えています」

一般的にデザインというとモノのカタチを決めたり、装飾を行うイメージが強いが、デザインが活用できる領域はそれだけではない。経営やビジネスモデルなどの設計もデザインの範疇。そして、現在、このようなデザイン活用の重要性が高まっているという。

「『グッドデザイン賞』のビジネスモデル部門の審査も担当していますが、その応募件数は年々増加しています。これはモノのデザインだけではなくて、事業全体をデザインすることの重要性に、数多くの企業が気付いた結果だと考えられます。また昨年、経済産業省と特許庁から『デザイン経営』宣言が出されました。これは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用することの重要性を提言するものです。このような動きを考えると、今回8回目を迎えますが、これからがこのアワードの面目躍如といったところでしょうか?」(廣田氏)

先述した通り、「東京ビジネスデザインアワード」では、プロダクトデザインだけでなく、経営やビジネスモデルのデザインを含めた提案が行われ、事業化までの支援が受けられる。そのプロセスの中で、「事業全体のデザイン」や「デザイン経営」を実現するノウハウが身につけられるのも企業がアワードに参加するメリットの1つだと言えるのだ。

さて、このアワードで「テーマ」となる技術や素材は「他に類を見ないような新しく画期的なものでなくても差し支えない。」と廣田氏は説明する。

例えば、2013年度に優秀賞を受賞した「pipegram」は、自動車や医療器具などのパイプ部品を製造してきた企業のパイプ曲げ加工技術がもとになっている。この技術に対し、デザイナーが提案したのが、細い曲げパイプをシリコン部品でつなぎ合わせ様々な形を作ることができる知育玩具。製品化されると1つ1つのパーツの美しさやそのコンセプトが話題になったという。

自動車や医療器具などのパイプ部品を製造してきた技術を活かし、
細い曲げパイプをシリコン部品でつなぎいろいろなかたちをつくることができるパズルのような組み立てキットを製作。

ここで企業が「東京ビジネスデザインアワード」に参加するメリットを改めてまとめておこう。廣田氏によれば参加企業は、次の5つのメリットが得られるという。

「2019年度東京ビジネスデザインアワード」の企業からの「テーマ」応募受付期間は2019年6月21日(金)までである。デザインを導入して、新たなビジネス展開を図りたいと考える製造・素材メーカーは参加を検討しても損はないだろう。

最後に、応募を検討する企業に向けた廣田氏のメッセージを紹介しよう。

「エンジニアであっても、経営者であっても――どのような立場の方でもデザインの視点で物事を考えなければならない時代です。また、デザインマインドがある人がいれば組織やチームは強くなる。これらのことを実現するきっかけとして、ぜひアワードに応募して欲しいと思います。また我々は『東京クオリティ』と言っていますが、東京のものづくり企業の技術水準は非常に高い。毎年、応募書類を見る際に胸躍るほどです。最近ではAIをはじめとした先進のIT技術に目が向きがちですが、従来からあるレベルの高い技術にデザインを活かすことでも新たなビジネスの創出につながります。ぜひものづくり企業の方々は、自信を持って挑戦して欲しいです」

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