人工知能サミット2019

REVIEW

〜新時代を迎えたAI経営の展望と課題〜

KPMGコンサルティング株式会社

コンサルティング企業が考える
企業価値に変革をもたらすAI活用

企業のAI活用が浸透しつつあるなか、経営そのものに大きなインパクトを与える活用法はまだ数少ない。では、経営を変革し、企業価値を向上させるAI活用とは、一体どのようなものなのだろうか?

KPMGコンサルティング ディレクター 山本 直人 氏

KPMGコンサルティング

ディレクター

山本 直人

“暗黙知”が企業の競争力低下を招く要因になっている?

 AIのビジネス活用については様々なユースケースが生まれているが、そのほとんどが単純作業を代替するものだ──と、KPMGコンサルティングの山本氏は指摘。

 企業活動においてAIの価値を最大化するためには「表層的な活用の仕方ではなく、経営戦略にAIを突き刺すことが必要だ」と語る。

 AIを経営戦略に活用するために、同社では、人が経験的に知っているが言葉では説明することが難しい知識である「暗黙知」に着目しているという。

 企業活動において、高度な領域になるほど、また経営に近いほど、高いスキルやノウハウを有する人材の「暗黙知」が重要になるが、「暗黙知」に依存した意思決定により失敗した際の経営へのインパクトは大きい。

 山本氏は「暗黙知」が経営にどのような影響をもたらすかを、製造業を例に解説。

 「製品開発プロセスにおいて発生した課題などの情報が『暗黙知』の中にしか存在しないため、同じ失敗を繰り返してしまう」ことや「生産ラインのトラブル発生時、対応できる熟練者が不在で生産が停止してしまう」ケース、「複雑な規制に係る業務の影響分析の課題」などが紹介された。

 また、製品や製造プロセスの管理を「暗黙知」に依存してしまうことで、品質リスクが生じることにも言及。例えば、一部の素材に問題があることが判明した際、「暗黙知」頼みにその影響を把握しようにも、その範囲は限定的なものになるのは言うまでもない。つまり、このような状況は製品のリコールにつながりかねないのである。

 「製品開発のプロセスにおいて手戻りが発生するとコストが増えるのは当たり前です。それに加えて、経営の意思決定に沿った製品の市場投入ができない事態が起こったり、品質に起因した市場での信用失墜こそが企業にとっては致命的な問題なのです」(山本氏)

 そして、このようなリスクは今後一層企業に深刻な影響を及ぼすことになると山本氏は強調する。スピード感や信用の低下は、エコシステム型が進む産業構造の中で存在感を失う要因になりかねないからだ。消費者を中心に様々なモノやサービスが複雑につながっていくエコシステムの中で存在感を示せないということが、企業にとって死活問題になるのは言うまでもないだろう。

KPMGの考える暗黙知の活用アプローチ

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AIのビジネス活用の肝は暗黙知の再現にあり

 このような状況を打破するために、同社が展開しているのが、AIによる自然言語処理や画像・映像処理を活用して「暗黙知」を「形式知」化する取り組みである。

 「例えば、製造業の場合、開発プロセスにおける試行錯誤の過程で得られた様々な知見は、製品の最終形を示す図面ではなく、その都度作成される報告書の中にある」という。

 KPMGコンサルティングでは、自然言語処理技術で報告書内の文字情報をトピックの依存関係を含めて分析するソリューションを開発したという。

 例えば「樹脂バルブ」「ストレス耐性」というキーワードを入力すれば、過去の企業活動の中で蓄積された知見の中から、キーワードに合う関連するトピックとともに示されるという。

 さらに現場の課題を報告書から抽出して現場状況を可視化したり、社外のデータと掛け合わせることで自社にない観点を取り入れた研究・開発の高度化など、活用範囲は多岐にわたる。日々作成される大量の自然文データの内容すべてを把握し、さらにトピック間の依存関係までの情報を把握することは人間では不可能だが、AIを活用し、複雑に絡み合う大量の情報の中から関連するトピックをジャストインタイムで引き出せるようにするという考え方だ。

 続いて、AIの画像・映像処理技術を活用したソリューションとして、ウェアラブル端末である「Microsoft HoloLens」を活用した同社のサービスツールも紹介。「HoloLens」のカメラが捉えた映像をAIが解析し、その結果を「HoloLens」のモニターに返すというもの。

 このソリューションを活用すれば、経験の浅い作業員でも熟練者と同様の作業が可能になるのだ。

 「暗黙知」を「形式知」化するソリューションによって、「調査」「検証」「評価」「確認」などの業務の精度が向上することは言うまでもないが、それにより「専門性の高い業務における意思決定精度が向上」し「意思決定精度を高めることによる『スピード』と『信頼』が獲得」でき、「実行力に『スピード』と『信頼』を伴わせることで、エコシステムにおける競争力を強化」できると山本氏は言う。

自然言語活用の観点

AI活用で人の限界を超えて自然文データを活用する

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AI単独では役立たず ──AI活用企業が知っておくべきこと

 講演の最後、山本氏は「AIは人の脳に該当する技術。手足が伴わないことには企業の中では活用できない」と語り、セキュリティ、可用性、拡張性、運用・保守・点検といった要素を備えた適切なアーキテクチャーの構築が必要不可欠だと強調。そして、「データアーキテクチャーの全体的な設計を含めて、AIをいかに企業活動の中で使っていくのか?セキュリティポリシーやデータ収集の方法という細かい部分についても検討していくことが重要だ」と結論付けたが、だからこそトータルな支援を行う同社のサービスは数多くの企業から信頼を得ているのだろう。

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