日経 xTECH Special

Case.小柳建設

 デジタルトランスフォーメーション(DX)がさまざまな“現場の課題”を解決するカギとなる。その可能性を探るため、建築・土木現場の課題とDX活用の事例に迫る。人手不足や技能継承などの課題が深刻化しているなか、小柳建設(本社:新潟県)はいち早くデジタル化を推進している。積極的なデジタルの活用でこうした課題を乗り越えつつあり、建設業におけるDXをリードする姿勢を見せている。

人手不足や技能継承という課題に
デジタルで向き合う

 2020年に向けて、活況が続く建築・土木業界では人手不足が深刻化している。人材獲得が難しいことに加えて、需要の波や今後の技術革新も見据えていかなければならない。また、技能継承という課題もある。

「ベテランの頑張りで支えられている現場は多いと思います。そうした人たちの引退が遠くない中で、属人的な技能や知見をいかに次世代に引き継ぐかが大きな課題として浮上しています」と日本マイクロソフトの菅野亜紀氏はいう。

 こうした課題の切実度が増す中、建築・土木業界のDXへの期待が高まっている。デジタルの力を現場に届けることで、働き方を変え生産性を高める。個々人がパワーアップすることで、足元の人手不足に対応するとともに、中長期的に筋肉質な経営体質の構築を目指すのである。

 政策的な後押しもある。国土交通省は「i-Construction」を掲げ、デジタル活用をテコに建築・土木分野における経営や働き方の変革を促している。企業の側でも、これに呼応する動きが活発化している。

DXが拓く建築・土木現場の未来

 小柳建設では、「Holostruction(ホロストラクション)」というプロジェクトが進行中。「Microsoft HoloLens」を導入して、新しい建設業のあり方を模索している。

 同社は、本プロジェクトにより設計~施工、維持メンテナンスまでのすべての建設生産プロセスの可視化、生産性の向上を目指している。橋梁、同社社屋などの実証実験により従来手法と比べ、有用性があることを検証できた。Holostructionに大きな可能性を見ている。

 建築・土木の現場では紙ベースの仕事が多く、コミュニケーションの主たる手段は電話というケースが多い。様々なスケールでの3Dモデルを可視化することで、利用者間の理解度が飛躍的に向上。リモート機能を活用した各拠点間の打ち合わせが可能となり、大幅に移動時間が削減。デジタル化の効果が大きいと実感している。

「Teams」で現場の情報共有、
「Yammer」で一体感醸成

 通常、建築や土木の現場には多くの事業者が関わっている。小柳建設では現場におけるプロジェクト内のコミュニケーションの向上とともに、長期にわたって現場に携わる社員と本社、あるいは現場間をつなぐコミュニケーション環境の構築も求められていた。

 こうした課題を解消するため、小柳建設はOffice 365を活用している。現場のコミュニケーション環境として導入されたのがチャットツール「Microsoft Teams」である。Teamsは日常的な業務連絡の手段として活用されている。形式的なメールよりも、チャットでならば気兼ねなく連絡できる。Teamsにより、円滑なコミュニケーションを実現している。

 また、「Microsoft Yammer」は現場で働く社員と本社や他の現場の社員をつなぎ、仲間意識やモチベーションを醸成することを目指して採用された企業向けソーシャルネットワークだ。Yammerではメディアなどで取り上げられたニュースを紹介するほか、経営者や社員の情報発信の場にもなっている。

 加えて、営業担当者には使いやすいと評判のデバイス「Surface Pro」を提供して、デジタル化による業務の効率化を推進している。

 現場の効率化、それにともなう働き方の変化、そしてコミュニケーションの改善や技能継承により、DXが建築・土木現場の未来を拓いていくといえるのではないだろうか。

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