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経済産業省が公開したDXレポート「2025年の崖」では、IT人材分布比率についてユーザー:ベンダー、3:7という現状を示している。7割を占めるベンダー側のIT人材の活用なくしては、日本企業のDXシナリオを実現することはできない。また同レポートにおいて2017年のIT産業の成長率は1%に過ぎず、国内ベンダーがクラウドベースのサービス開発・提供という成長領域を攻めあぐねる状態にあると指摘している。問題が深刻なのはDXを推進したいというユーザー企業の期待に、国内SIベンダーが応えきれていないことだ。SIベンダーがDX実現の足枷になっていないだろうか? グローバル化を進める日本企業が国産SIベンダーを選択する理由はなくなりつつある。選ばれるパートナーになるために、どうビジネスモデルを変革し体制を整えていくべきなのか。オンプレミスをベースとする従来型SIからクラウド時代のベンダーやエンジニアが向かうべき方向性とは? 参考にするべき実践的な示唆とは? アクセンチュアの福井将人氏と、日本マイクロソフトの佐藤久氏が、「2025年の崖」におけるベンダー側の課題とその解決策に迫る。

日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部
パートナー技術統括本部
業務執行役員 統括本部長

アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
アクセンチュア マイクロソフト ビジネスグループ日本統括
マネジング・ディレクター

自らDXを推進しビジネスモデルを変革したパートナーだけが
生き残ることができる

福井 アクセンチュア自身も、組織、人材、それを支えるプロセスやアーキテクチャなどあらゆる面でDXを推進してきました。その結果、現在では半分以上がデジタル関連のビジネスとなっており、自らの経験を活かしDXに取り組むお客様をさまざまなかたちでご支援しています。

お客様がDXを推進する上で、大きく3つの課題があります。1点目は、デジタル人材の不足と、人材を活用する体制が整備されていない、ということです。2点目は、オープンイノベーションです。デジタル時代に新たなサービスを創出するためには、自社だけでなくさまざまな業界とのエコシステムを形成することが必要です。一社でお客様の期待に応えることは難しい時代です。3点目は、強力なリーダーシップです。デジタル人材だけでなく、プロダクトやCX(カスタマー・エクスペリエンス)のデザインなど多種多様な知見を持った人材を集め、混然一体となってアジャイル型で世の中に素早くサービスを提供していくためには、強力なリーダーシップのもと会社全体で取り組むことが必要です。アクセンチュア自身もこの3つの課題を解決することでDXを推進してきました。その経験から、お客様のDXを支援するパートナー自身がDXを体現していくことの重要性を痛感しています。

佐藤 DXによりスマートフォンやセンサーなどデバイスの多様化、通信速度の高速化、クラウドの普及・拡大など急速に技術革新が進むことで、ICTは産業全体を変えるインパクトを持つようになりました。DXにより社会や産業においてパラダイムシフトが進行する中、マイクロソフト自身もDXを推進し、製品の提供方法や販売の仕方などビジネスモデルを変革してきました。その経験からマイクロソフトのパートナー様を見ていると、技術を習得するスピードや手法、考え方が今までとは全く異なることから、そこに適応できるかどうかが、パートナー様の重要な課題になっていると思います。

福井さんがおっしゃったように、一社ですべてお客様の期待に応えることは難しいという点は、パートナー様にも当てはまります。スクラッチで下から上までつくりあげていくシステムインテグレーターの手法は、今やレガシーです。次々と登場するサービスを上手く組み合わせ、お客様に最適なソリューションとして提供することが求められています。パートナー様のビジネスモデルも、システムインテグレーターからクラウドインテグレーターへと変わりつつあると感じています。

デジタル時代にパートナーが求められていること

福井 アクセンチュアでは、お客様に対し「何のためにDXをしたいのか」というところからお話をさせていただくことが多くあります。そこで必ずご説明するのが、ワイズ・ピボット(賢明な事業転換)というフレームワークです。企業がDXを実現していく上で、事業転換の舵取りは非常に難しいテーマとなります。アクセンチュアが提唱するワイズ・ピボットでは、大きく3つのステップがあります。

第1ステップで中核事業を変革し、投資余力や稼働余力を創出する。第2ステップで成長維持の手段として中核事業を強化しつつ、投資余力を活用しいろいろなPoC(概念実証)を繰り返し新規事業の芽を育てていく。第3ステップで新規事業の中から新規成長領域を特定してスケールし、やがてスケールした新規事業が中核事業に変わっていく。それぞれのステップでデジタル技術を組み込みながら、お客様における事業転換を支援していくというのが、アクセンチュアの大きなストーリーとなります。単一の課題ではなく、“面”で捉えるというのがアクセンチュアの特色です。ワイズ・ピボットを実践し、DXを実現しているアクセンチュアだからこそ、お客様におけるDXによる事業転換までしっかりと導いていくことが可能となります。

単一の課題ではなく、“面”で捉えるとはどういうことか。アクセンチュアが支援したDXの事例を2つご紹介します。1つめはグローバルでプラント事業を展開している会社様の取り組みです。長年蓄積してきたプラントのメンテナンスやオペレーションなどのデータをベースに、 Microsoft Azure の機械学習を利用することで、これまでのオペレーションの延長線上ではなく、故障を予測しメンテナンスを行うという業務改革を実現しました。アクセンチュアでは、この事例をベースにメンテナンスのパターンを3,000種類ほどつくり、様々なお客様にご提供しています。

2つめは、九州地域で金融事業を展開するふくおかフィナンシャルグループ様のモバイル化の取り組みです。アクセンチュアはゼロから一緒にモバイルアプリの開発を行い、サービスイン後も継続してサポートを続けています。PoCからスタートしたモバイル化は、今やふくおかフィナンシャルグループ様の中核となるサービスに成長し、それをベースとするプラットフォームをふくおかフィナンシャルグループ様と提携する地方銀行様にもご利用いただいています。アクセンチュアでは日本のバンキングのオペレーション全体を変革するべく、全国の地方銀行様のモバイル化を支援しています(関連リンクを文末で掲載中)。

佐藤 DXはAI導入などの“点”ではなく、新事業を創出し事業転換を図っていくといった“面”で捉えるべきものだと、私も思います。DXを“面”で考えた時、クラウドなくしてDX戦略を描くことは不可能といっても過言ではないでしょう。マイクロソフトのビジネスも、 Microsoft Azure はもとより、 Office 365 、クラウド型ERP/CRMの Dynamics 365など、クラウドを軸とした事業展開を進めています。

マイクロソフトがパートナー様に期待する観点も、従来はチャネルを通じた大量のライセンス販売でしたが、クラウドの場合は従量課金となるため、消費量の増大がポイントとなります。消費量の増大では、パートナー様がお客様の業務に寄り添い、課題解決に向けてクラウドを活用したシナリオを提案できるかどうかが非常に重要です。

マイクロソフトとパートナー様との関係も、製品やサービスの提供者と販売者というだけではなく、ビジネスやソリューションを一緒に創造し事業を展開する、真の意味でのビジネスパートナーへと変わります。マイクロソフトの製品を販売する従来型ビジネスモデルではなく、マイクロソフトが提供するクラウドサービスを、パートナー様のクラウドサービスやDX関連サービスに組み込み、付加価値の高いサービスに一緒につくりあげ、マイクロソフトの商材としてパートナー様と共に販売していきます。

マイクロソフトとの共創ビジネスにおいて急成長しているのがアクセンチュアです。他にもグローバルリーチはもとより、クラウドの特徴を活かし、お客様の事業変革に向けた提案ができるパートナー様は非常に伸びています。また中堅企業やスタートアップ企業のパートナー様もデジタル技術やクラウドに対するアドバンテージがあれば、大きなチャンスとなります。

マイクロソフトが「2025年の崖」で課題に感じているのは、DX推進を支えるクラウド人材の不足です。2019年、マイクロソフトでは、お客様、パートナー様、マイクロソフトの社員に対し、クラウド人材の育成を目的とする教育専門チーム「 Enterprise Skilling Team 」を新設しました。日本ではパートナー様のクラウド人材の育成を支援するべく、今年度で5,000名の認定技術者の増強を目指す活動が始まっています。

互いを補完し合う関係の中で、
ソリューションやビジネスを一緒に創る

福井 2019年2月、マイクロソフトとアクセンチュア、そして両社により2000年に設立されたアバナードの3社は、アライアンスを一層強化するべくビジネスを推進する組織としてAMBG(Accenture Microsoft Business Group)を立ち上げました。新組織のミッションは、アクセンチュアのデジタルコンサルティングやソリューションと、 マイクロソフトが持つ多様なサービスやテクノロジーを融合し、お客様のDXを実現していくということです。

AMBGを推進していく上で大きく4つのテーマがあります。

1つめは、Journey to Cloud+モダナイゼーションです。アクセンチュアはSAP on Azure アワードを2年連続(2018年、2019年)で受賞しています。導入実績が豊富なSAP HANAを Microsoft Azure で実行する取り組みは、今後も引き続き行っていきます。また、「2025年の崖」を乗り越えるために、旧来型のホストの仕組みをどんどんクラウドに移行していかなければならない中で、 Microsoft Azure を活用して、お客様のモダナイゼーションを実現するための具体的なツールの整備・提供にも力を注いでいきます。

なぜ Microsoft Azure なのか。長年エンタープライズ分野で技術やサービスを磨いてきたマイクロソフトが提供するMicrosoft Azureは、セキュリティやデータベースエンジンなどに秀でています。Journey to Cloudを進める企業に対し、Microsoft Azure を活用したDXの実現をアクセンチュアは支援しています。

2つめは、 Dynamics 365 に、アクセンチュアで培われたインダストリー別のソリューションやテンプレートを融合し、導入期間の短縮やコストの抑制とともに即戦力としての利用を可能にしていきます。「2025年の崖」に対し、迅速にERPをクラウドに移行し、その先に展開するビジネスを早期に立ち上げたいというお客様には、 Dynamics 365 は最適解となります。今やERPは導入することがゴールではなく、データの集約と活用に大きな意義があります。ユーザーが業務で利用するラストワンマイルは、 Office 365 などのマイクロソフト製品が主流です。ERPとして Dynamics 365 を導入することで、ERPと業務アプリケーションのインテグレーションがより円滑となり、オペレーションの簡素化・自動化、データ活用の高度化など、DXの推進を加速することができます。

3つめは、働き方改革のプラットフォームとして、人・組織にセキュリティを加えた、さまざまなソリューションを一緒に構築していきます。4つめは、所謂インダストリー4.0をテーマとし、Microsoft Azure をプラットフォームとしてバリューチェーンをデジタル化していく取り組みを始めています。

佐藤 アクセンチュアは Office 365 の世界最大規模のお客様であるとともに、マイクロソフトの定型業務におけるアウトソーシングの依頼先でもあります。マイクロソフトとアクセンチュアは互いに補完し合う関係の中で、戦略的というよりは自然の流れで協業が進んできたと感じています。マイクロソフトとしては、福井さんが4つのテーマでお話いただいたように、ソリューションやビジネスを一緒に創っていくパートナーとしてアクセンチュアを捉えています。

福井さんから、DXを推進する上で「事業転換の舵取り」が難しいというお話がありました。20年前のビジネスプロセスを未だに行っている状況の中で、いかにDXを推進していくか。既存のシステムを守るのではなく、お客様の業務プロセスを変革するために、既存のシステムを刷新していくマインドで提案できるというのが、アクセンチュアの大きな強みだと思います。上流コンサルティングとSI(システムインテグレーション)、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を有し、企画から構築、運用までend-to-end(エンドツーエンド)でサービスを提供できるアクセンチュアは、お客様はもとよりマイクロソフトにとってもベストパートナーなのです。 AMBGの取り組みの一環として、全世界のマイクロソフトの支社において、ローカルのアクセンチュアの人材に対し教育支援活動を強力に進めています。国内においては、 Microsoft Azure 、 Dynamics 365 の両方で1,000人規模の技術教育を行っていく計画となっています。

AMBGの取り組みの一環として、全世界のマイクロソフトの支社において、ローカルのアクセンチュアの人材に対し教育支援活動を強力に進めています。国内においては、 Microsoft Azure 、 Dynamics 365 の両方で1,000人規模の技術教育を行っていく計画となっています。

イノベーション創出を支援するアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京でマイクロソフトのテクノロジーを活用したDXの事例が紹介されるなど、アライアンスから生まれる新たな価値創造がさまざまなシーンに広がっています。

今まで培ってきた技術を捨てる決断が必要に

福井 製品や機能によって付加価値を生み出す時代は終わりました。これからはデジタル技術によって大半の利益が生み出される時代になります。今後も多彩な技術が乱立し、最新技術も続々と誕生する中で、テクノロジーの多様性=人材の多様性がますます深まっていくと思います。エンジニアの専門性が進み、技術的な垣根が高くなるその一方で、お客様にDXの価値を提供するという視点では、垣根があってはなりません。組織も個人も多様性にどう対応していくかが、重要なテーマとなります。お客様と共に、多様な人材と協業し付加価値を高めていく上で、アクセンチュアはその扇の要としての役割を担っていきたいと考えています。

日本のアクセンチュアも従業員数が1万人を超えました。働き方改革、労働人口の減少、地方創生などの社会課題に対し、アクセンチュアのデジタルコンサルティングの知見や総合力を活かし、課題解決のサポートを行うことで日本の社会や産業の発展に貢献していくことが、これからの大きなミッションになってくると考えています。

佐藤 次の5年間でITの売り方も買い方も大きく変わります。マイクロソフト自身もビジネスモデルを変えたというお話を冒頭でいたしました。パートナー様も、デジタル化により激変していく環境の中で、今後の自社のあるべき姿を描き、自らもDXによりビジネスモデルを変革していく、その一歩を踏み出していただきたいと思います。マイクロソフトも含め、いろいろなテクノロジープロバイダーと有機的につながることで、パートナー様におけるビジネスの可能性は大きく広がります。

最後にエンジニアの方に、果敢に新しいことにチャレンジしていくことが未来を拓くというメッセージをお送りします。この5年間、マイクロソフトにおいて非注力領域のエンジニアは、会社を去るか、自身のスキルセットをトランスフォームするかの二者択一を迫られ、自分の人生で大きな拠り所となってきた技術や知識をアップデートしてきました。DX時代に向けてエンジニアは今まで培ってきた技術を捨てる決断をし、新しいテクノロジーの習熟に自分の時間とパッションを注がなければいけない時期にきています。デジタル技術を有するエンジニアの需要は今後高まるばかりです。マイクロソフトではさまざまな認定トレーニングを用意しておりますので、新しいキャリアを築く選択肢の1つとして、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

関連リンク
▼Accenture Microsoft Business Group (AMBG)

▼ふくおかフィナンシャルグループ様 事例

▼アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京