働き方改革でVDIを導入する企業が急増

働き方改革の一環として、VDI(仮想デスクトップ環境)を導入する日本企業が急増している。インターネット回線があれば、いつでもどこでもオフィス内のPCと同じデスクトップ環境を利用できるからだ。ユーザーが扱うデータやファイルはVDI側で一括管理されるので、万が一、端末が紛失や盗難に遭っても情報が外部に流出する恐れがないという利点もある。

ヴイエムウェア株式会社
ソリューションビジネス本部
エンドユーザコンピューティング技術部
シニアスペシャリスト SE
井本 玲雄 氏

日本マイクロソフトによると、VDIの仮想マシン上で Windows を使うためのライセンス「 VDA(Virtual Desktop Access )」を年に1500~2000社に発行しているという。デスクトップおよびアプリケーションの仮想化ソリューションの最大手であるヴイエムウェアの井本玲雄氏は「一昔前まではセキュリティの観点でVDIを導入するお客様が多かったのですが、最近は多様な働き方の支援や災害時でも安全に働ける環境を実現することを重視しているお客様が増えています」と説明する。

ただし、いち早くオンプレミスでVDIを導入した企業の中には、システムの運用面で大きな課題を抱えているところもある。オンプレミス環境には、要件に合わせたキメの細かい設定やコンフィグが可能など利点はあるのだが、どうしても避けられない課題にあたることがある。それは、VDI環境の運用保守である。ハードウェア障害時の対応、サーバ・ストレージ・ネットワークスイッチなど物理機器のファームウェアのアップグレードやパッチ適用など、ハードウェアなどの日常的な運用保守に大きな負担がのしかかっている。また、サーバーが搭載するCPUの世代が古くなるのに伴って、十分なパフォーマンスを得られなくなるという課題もある。単体でPCを使う場合でも同じ課題はあるが、オンプレミスのVDIでは高額なサーバーマシンをリプレースするか増強しなければ、この課題を解決することはできない。

VDIのクラウドサービスが課題を解決

こうした課題を解決するソリューションとして注目されているのが、「 DaaS(Desktop as a Service)」と呼ばれるクラウドサービスだ。 DaaS を簡単に説明すると、VDIのサーバー環境をオンプレミスからクラウドへ移行したような仕組みのことだ。ただし、 IaaS(Infrastructure as a Service)の上にユーザーがサーバー環境を構築するわけではない。サーバー環境がクラウド上のマネージドサービスとして提供されるので、ハードウエアの保守はもちろんのこと、仮想化環境の運用保守からユーザーは解放されることになる。サーバーのパフォーマンスが劣化する恐れもない。常に最新のプラットフォーム(インスタンス)の上でサービスが提供されるからだ。

新たにVDIの導入を検討している企業にとっては、初期導入費用が極めて安価なことも大きなメリットとなる。オンプレミスの環境でVDIを導入する場合、一般的にはハードウエアの調達費用やソフトウエアのライセンス費用に加えて、ITベンダーに対するコンサル費用やシステム構築費用が必要になる。これに対して DaaS は、基本的にサービスを使った時間や期間に対する従量課金なので、これらの初期導入費用を大幅に抑えることができる。

日本マイクロソフトの石橋俊孝氏は、「ITインフラのモダナイゼーションの一環として、オンプレミスのVDIから DaaS へと移行するお客様も増えてきています」と指摘する。オンプレミスで稼働しているシステムをクラウドへ移行する中で、アジリティとスケーラビリティが高いものを優先した結果、早い段階で DaaS が選定されるケースが多くなっているという。

マイクロソフトとヴイエムウェアが協業して新サービスを投入

クラウド事業者の大手であるマイクロソフトと、デスクトップおよびアプリケーションの仮想化ソリューションの大手であるヴイエムウェアが協業で提供する DaaS が「 VMware Horizon® Cloud Service™ on Microsoft Azure 」(以下、Horizon Cloud on Microsoft Azure)である。これは、金融や公共などあらゆる業種で利用されているデスクトップおよびアプリケーションの仮想化の代表製品である「VMware Horizon®」をマイクロソフトのクラウドサービス「 Microsoft Azure 」上で提供するマネージドサービスだ。クラウド上のサーバーからクライアントのPCへの画面転送には、「 VMware Blast Extreme」「 PCoIP(PC over IP) 」という最新技術を採用しているため、インターネット回線でも快適にデスクトップ環境を利用できる。Wi-Fiやモバイルルーターを利用するリモートワークでも快適な操作環境を実現できる。

Azure 上で Horizon Cloud を利用するメリットは、マイクロソフトが提供している各種のクラウドサービスと連携できる点だ。なかでも、企業のオフィスソフトとしてデファクトスタンダードとなったクラウドサービス「 Office 365 」との親和性が高いことが大きなメリットだろう。例えば、 Office 365 からファイルをダウンロードまたはアップロードする場合、オンプレミスの環境では回線の帯域や品質によってはレスポンスが遅くなることもある。これに対してHorizon Cloud on Microsoft Azureでは、このアクセス経路がマイクロソフトのグローバルWAN内に完結しているので遅延が発生する恐れはない。オフィスソフトでは頻繁にファイル操作を行うので、このスピードは生産性の向上に直結する。

耐障害性に優れた環境を構築できる点も、 Horizon Cloud on Microsoft Azure の大きな特徴だ。Azure上の全てのリソースに対する組み込み型バックアップソリューション「 Azure Backup 」を活用すれば、現在使っている環境を自動的にバックアップできる。 Azure はグローバルに50以上のリージョンを備えており、複数のリージョンを利用すればDR(ディザスタリカバリー)の体制を築くことも可能だ。 Azure のサービスとしてのドメインコントローラーである「 Azure Active Directory Domain Services 」で、Horizon Cloud on Microsoft Azure を利用でき、またVMware の「Workspace ONE Access (旧VMware Identity Manager)」を組み合わせることで柔軟な認証要件にも対応できる。オンプレミスのVDIで、これらの環境を構築するには巨額の投資と膨大な構築期間が必要になるだろう。 Horizon Cloud on Microsoft Azure であれば、画面上のクリック操作だけで、こうした環境が構築できるのだ。

マイクロソフトが9月30日に日本を含む全世界で一般提供を開始したシンプルな独自DaaSである「 Windows Virtual Desktop(WVD) 」のマルチセッション機能にも対応する予定だという。通常、 Windows 10 のクライアントOSでVDIを利用するときはユーザーごとに仮想マシンを割り当てることが必要になる。しかし、マルチセッション機能では1台の仮想マシンで複数のユーザーにVDIを提供できる。仮想マシンのリソースを共用できる分だけコストを削減できる。

1000人規模の環境を数時間で構築可能

日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部
パートナー技術統括本部
クライドアーキテクト本部
クラウドソリューションアーキテクト
石橋 俊孝 氏

日本マイクロソフトの石橋氏は「クラウドサービスは、オンプレミスと異なってスモールスタートで後にスケールアウトすることが可能なので、気軽にPoC(概念実証)に取り組めることも大きなメリットです」と強調する。 Horizon Cloud on Microsoft Azure では、数時間で1000人規模の環境を構築できるという。

その後の拡張も容易だ。オンプレミスVDIの拡張では、サーバーやストレージといったハードウエア単位での拡張となる。そのため、時として拡張コストを最適化するのが難しい場合がある。 Horizon Cloud on Microsoft Azure の場合は、ポータル画面で数クリックの操作を行うだけで仮想マシンの追加展開や変更が可能になっている。現在、日商エレクトロニクスや日本ビジネスシステムズなどのパートナー企業が、 Horizon Cloud on Microsoft Azure の導入を検討するユーザー向けにキャンペーンを実施中だ。

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