2025年の崖を飛び越えるIT戦略とは

vol.2
2020年、アプリ開発環境は大きく変わる
エンタープライズグレードのコンテナ基盤とは

2025年の崖を飛び越えるIT戦略とは
ビジネスや顧客ニーズ、新しい技術など様々な変化に対応したアプリケーションをいち早く開発する──。これは現在多くの企業にとって重要なテーマとなっている。2020年以降、その傾向はさらに加速するだろう。このアプリケーション開発において存在感を増しているのが「コンテナ技術による仮想化」だ。しかし、コンテナを、うまく使いこなすのは容易ではない。ここでは三井情報(以下、MKI)の取り組みを中心に、コンテナ技術による仮想化をフル活用していくための基盤について考えてみたい。

開発・実行環境としてコンテナのニーズが拡大する理由

 アプリケーションをクラウドネイティブ化し、いかに迅速に市場にリリースしていくか。これがますます重要なテーマになってきている。この実現に向け、アジャイルやDevOpsなどの開発・運用手法にシフトする企業が増えている。しかし、開発・リリース基盤がレガシーのままでは、スピードは上がらない。例えば、テスト環境と本番環境が異なれば、事前テストにおける環境差異の影響が十分に把握できず、本番で障害が出るリスクが異なる。その結果アプリケーションの改修作業が発生し、正式なリリースが遅れてしまうわけだ。

 そうした中、注目が高まっているのが「コンテナ技術による仮想化」である。OS、ミドルウエア、アプリケーションまでパッケージングするモノリシックなアーキテクチャに比べ、アプリケーション間をAPIで連携できるように作り上げられるマイクロサービスなアーキテクチャはクラウドネイティブの時代に合っている。コンテナ技術による仮想化なら、そのクラウドネイティブアプリケーションを支えることが可能だ。また、ハードウエアについても専用インタフェースから設定を行うのではなくAPIを備えInfrastructure as Codeを実現できる環境が整い始めている。開発チームとインフラの運用チームさえも協力し合って開発・運用を進めていくアジャイルやDevOpsにも適している。

 加えて、最近ではコンテナでの利用を前提として、イメージファイルのみ提供するアプリケーション製品が出始めている。こうしたアプリケーション製品はコンテナ環境でなければ稼働しない。開発環境だけでなく、今後はビジネスを支えるアプリケーションの実行基盤もコンテナ化が大きなトレンドとなっていくだろう。

 こうしたコンテナに対するニーズの高まりを受け、クラウド事業者もコンテナサービスを強化している。「Kubernetes」はその象徴だ。これはコンテナ技術による仮想化環境を提供するDockerのコンテナ群を管理するオープンソースベースのオーケストレーションツール。コンテナ群の死活監視や環境のアップデートを効率的に行える。

コンテナの技術研究を進め、新ソリューションを開発

三井情報株式会社 ソリューション技術本部 次世代基盤技術部 第二技術室 マネージャー 石原 慎也氏
三井情報株式会社
ソリューション技術本部
次世代基盤技術部
第二技術室
マネージャー
石原 慎也
 クラウドで利用するコンテナはKubernetesで統合管理できるが、企業インフラはクラウドだけで成り立っているわけではない。オンプレミスと複数のクラウドを組み合わせて利用するハイブリッドクラウドやマルチクラウドを選択する企業も多い。ここがコンテナ技術による仮想化の運用においてボトルネックになることが多い。アプリケーションは「クラウド上でのみ動作すればよい」というものばかりではないからだ。

 「オンプレミスでもクラウドネイティブなコンテナを利用できる環境を提供したい──MKIではこの実現に向けた技術研究と実証を進めています」。こう話すのは同社の石原 慎也氏だ。石原氏が所属する次世代基盤技術部は、常に一歩先を見据えた次世代技術の実用化を目指す部署。その一環として、コンテナ型仮想化の技術研究と実証に取り組んでいるという。

 オンプレミスでもエンタープライズグレードのコンテナ環境を実現する。そのソリューションの1つが、Pivotal社とVMware社が提供する「VMware Enterprise PKS」(以下、PKS)だ。しかし、これを利用企業が単独で構築するのは簡単なことではない。「PKSは多くのコンポーネントで構成されており、必要なハードウエアリソースの算出が不可欠。それぞれのコンポーネントの可用性設計、Kubernetesクラスタの動作基盤に対するサイジングも必要です」と同社の武井 伸之氏は説明する。

三井情報株式会社 ソリューション技術本部 次世代基盤技術部 第二技術室 リーダー 武井 伸之氏
三井情報株式会社
ソリューション技術本部
次世代基盤技術部
第二技術室
リーダー
武井 伸之
 PKSには「VMware NSX-T Data Center」も含まれており、これを使えばKubernetesのネットワークに必要とされる様々な機能も統合的に提供できる。「しかし、コンテナ化されたアプリケーションのトラフィックを想定したネットワークデザインが難しい。企業ネットワークとの接続をサポートできるSIベンダーも少ない。そもそもコンテナ型仮想化自体が新しい技術であり、スキル習得のハードルが高いのです」と武井氏は続ける。

 そこでMKIでは、多くの企業が直面するこうした課題をパッケージ化することで解決した。それが「VMware Enterprise PKS on VxRail」と「PKS on VxRail構築サービス」である。

 PKSの基盤にはDell EMCとVMwareが共同開発したHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)アプライアンス「VxRail」を採用し、ハードウエアデザインをシンプル化した。企業ネットワークにコンテナのトラフィックを導くネットワークは、MKIがデザインと構築、アップデートなどのライフサイクル管理をサポートする。基盤としてのPKS利用ガイドもMKIが提供し、早期の立ち上げと運用定着を支援する(図1)。
図1 VMware Enterprise PKSの利用イメージ 図1VMware Enterprise PKSの利用イメージ 「PKS on VxRail構築サービス」により、企業ネットワークとVMware Enterprise PKSとの接続はMKIがサポートする。ユーザーはVMware NSX-T Data Centerを意識することなく、コンテナ群を統合的に運用管理することが可能だ。開発したアプリをすぐに本番環境に移植することもシームレスに行える
 パブリッククラウドでKubernetesクラスタを利用する場合は、数分で立ち上げが可能だ。「このソリューションを活用することで、オンプレミスでも同等の環境を実現し、クラウドネイティブなコンテナの利用が可能になります」と石原氏はメリットを述べる(図2)。
図2 VMware Enterprise PKS on VxRailの構成概要 図2VMware Enterprise PKS on VxRailの構成概要 ハードウエアおよびコンテナ型仮想化基盤の設計・構築やサポートはMKIが担う。インフラの運用管理の手間を大幅に軽減できるため、ユーザーはコンテナの作成、アプリケーション開発に注力できるようになる
 MKIが目指すのは、インフラの違いを意識させないエンタープライズインフラの実現、つまり、オンプレミスもパブリッククラウドも同じ操作性で運用できるようにすることだという。

 「例えば、パブリッククラウドでアプリケーションを開発し、それをオンプレミスの本番環境で素早くリリースする。インフラの違いを意識せずコンテナの移植が可能になれば、リリースサイクルは大幅に短縮できるでしょう。オンプレミスに存在する企業のデータ資産をコンテナから利用できれば、様々なデータを組み合わせたAI分析もやりやすくなり、新たな価値創出が加速します」(石原氏)

 そんな世界観の実現に向けて、MKIではVMware Enterprise PKS on VxRailにおける多様なパブリッククラウドとの連携やその性能、データベースアクセス時のパフォーマンス検証などに継続的に取り組んでいる。

“チームMKI”でコンテナ活用できる
クラウドネイティブインフラストラクチャをサポート

 なぜMKIはこうした先進的な取り組みが行えるのか。それは、MKIがこれまで幅広い分野にわたり豊富な技術知見を蓄積してきたからだ。

 例えば、官公庁を中心に仮想化基盤の構築・運用を数多く担い、仮想化技術に関して豊富なノウハウがあることもその1つ。また、自治体情報セキュリティクラウドや防災システム、交通情報基盤など高信頼が求められる社会インフラの構築も数多く手掛けてきた。

 さらに多くの企業ネットワークの構築・運用を担った実績を持つ。次世代ネットワークとして期待されるSDN(Software Defined Network)についても、早くから技術検証に取り組み、既にソリューションの提供を行っている。この知見とノウハウがコンテナの運用を支えるネットワーク構築につながっている。

 「Kubernetesのコンテナ間の通信はCNI(Container Network Interface)というインタフェースをベースに、アクセス方法やセキュリティ確保の仕組みを定義しなければなりません。これまでのネットワークに関する豊富な構築・運用実績が、コンテナの運用を支えるCNIベースの最適なネットワーク構築技術を支えています」(石原氏)

 コンテナ技術の研究・実証作業の拠点となるのは、東京・東中野にあるMKI IDEA Lab.(アイデアラボ)である。ここに約20ノードからなるマルチベンダー環境のコンテナ型仮想化基盤を整備。「外部ストレージに保持されているデータを無駄にせずコンテナからどう利用できるか。ネットワーク構築でボトルネックとなるパフォーマンスをどう改善すべきか。様々な利用環境を想定した相互接続性や性能評価を重ねていきました」と武井氏は話す。こうした集大成が、VMware Enterprise PKS on VxRailというわけだ。

 新たな技術のベネフィットを顧客のビジネスに取り入れる。そのためには技術の最新情報やユースケースをいち早くキャッチアップするだけでなく、既存環境との融合や効果の最大化を図る必要がある。コンテナをはじめとする最新技術の研究や実証に専念する体制が整っていることはMKIの大きな強みだ。

 研究・実証作業は、ほかの技術分野に取り組む部署とも密に連携して進めている。こうした作業を通じて、異なる目線やノウハウが組み合わさり、MKI全体として最適なコンテナ活用手法が支援できるようになったわけだ。

 コンテナの普及を見据え、その研究と実証は現在も続いている。「具体的な想定ケースを基に実践的な検証を行っています。例えば、既存データがどこにあってもコンテナからアクセスできるようにする。技術的には既に可能ですが、ストレージをはじめとする既存環境によってパフォーマンスに違いが生じることがあります。何がボトルネックになるのか。パフォーマンスを上げるためには、どういう対策が効果的か。検証を重ねています」(武井氏)。さらにコンテナ環境をハイブリッド/マルチクラウドで利用する仕組み、GPUを活用した大容量データの高速処理などを支援する技術・ノウハウの蓄積にも努めているという。

 今後もMKIは多くの実績を積み上げ、それをコンテナの運用メソッドとして顧客にフィードバックし、クラウドネイティブなインフラの実現を目指していく考えだ。
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三井情報株式会社 E-mail:press-dg@mki.co.jp