日本生命「保険会社が考えるヘルスケアビジネス」(クロスヘルスEXPO2019レビュー)

日時 2019年10月9日(水)〜11日(金)会場 東京ビッグサイト(東京国際展示場)

日本生命 営業企画部 ヘルスケア事業開発部長 神谷 佳典 氏

生命保険会社国内最大手の日本生命は、予防と保障の両面から最適なサービスの提供を目指している。公的な保障やサービスだけに頼るのではなく、民間企業が提供するサービス等も活用した自助努力が必要となる中、保険会社である同社が取り組むヘルスケアビジネスについて、営業企画部ヘルスケア事業開発部長の神谷佳典氏が事例を交えて講演した。

公的保険を補完する予防事業

 日本生命は1889年の創業で、全国1500余りの営業拠点に5万2000名余りの営業職員を擁する。約1200万名の個人、約25万社の企業との間でFace to Faceの関係を築き事業を展開している。同社では、世界に冠たる日本の社会保障制度を守りつつ、この公的制度を補完することが使命と位置付けている。

 ヘルスケア事業で予防・健康管理に重点的に取り組み、疾病の早期発見・早期治療の拡大に努めれば、国民の健康増進につながる。また、公的保険外のサービスを担う新たなヘルスケア産業を創出すれば、地域のインフラにもなり、“一石二鳥”のメリットがある。“万が一に備える保険” に加えて “健康寿命延伸に資するサービス” も提供することで生命保険も変わっていく。

 日本生命は2018年4月、健康保険組合などに向けた「ニッセイ健康増進コンサルティングサービス(Wellness-Star☆)」の提供を開始し、ヘルスケア事業に参画している。1年半余りで、約70団体が同社のサービスを活用している。

 本サービスは、経済産業省の健康経営・働き方改革、厚生労働省のデータヘルス計画に立脚し、企業と健保組合が連携しながら進めるコラボヘルスを支援するサービスである。

 企業や健康保険組合における健康増進の取り組みの基盤となるのが、現状把握・データ分析で、健康診断・レセプトのデータから、組織や職制別の医療費・疾患リスクを分析する。疾患別医療費推移、1人当たり医療費、特定健診・特定保健指導の実施状況などを洗い出し、企業や健康保険組合にとって課題を明確にする。

日本生命がヘルスケア事業で目指すこと

デジタル+アナログによる
お客様に寄り添ったサービスの提供

 今後、注力する領域としては、糖尿病を含む生活習慣病、日本人の死因の多くを占めるがん、高齢化社会において対策の重要度が高まる認知症の3点を挙げている。糖尿病の方は、がんや認知症を発症するリスクが高くなることが知られており、生活習慣を改善することが将来の生活の質を改善することにつながる。

 生活習慣病予防に向けては、ウォーキングアプリ「aruku&(あるくと)」を活用した運動促進支援サービスを提供している。毎日歩くと企業内でのランクが分かり、成果に応じてポイントを得られる。ゲーム性にインセンティブを採り入れ、健康無関心層を取り込む。担当者向け管理機能もあり効果検証も容易にできる。翌月の継続率は80%と高く、半年後も過半数が継続している。

 ある地域では、県内の企業・団体を巻き込んだ「バーチャル運動会」を開催し、200 団体から約1500名が参加した。団体別・個人別のランキング表を定期的に配布するなど、ゲーム感覚をプラスした。

 また、糖尿病領域では、日本生命病院(大阪市)を核として、オムロン ヘルスケア、富士フイルムなど多彩なプレーヤーと連携し、糖尿病の発症予防プログラムを開発している。

 全国で1000万名ともされる境界型糖尿病(HbA1c6.0~6.4%)の方は、糖尿病発症の確率が健常者の6~20倍と高率でありながら、自覚が低い。この層に対し、食事・運動指導を中心とした3カ月間の生活習慣改善を促す。保健師による指導(アナログ)と、ICT機器による歩数や血糖のセルフモニタリング(デジタル)を組み合わせる。データは専用ウェブサイトで確認できるだけでなく、保健師と共有される。リアルタイムの状況に応じて保健師が介入することで、行動変容を実現しやすくする。

 使用する血糖モニタリングツールは、24時間、2週間にわたりグルコース値を測定し、血糖スパイク(食後短時間の血糖急上昇)を把握できる。2018年10月から地方自治体職員約1000名を対象にトライアルを実施している。初期参加者81名のデータ分析であがった成果は日本糖尿病学会でも発表した。

 がんに対する取り組みでは、慶應義塾大学先端生命研究所発のベンチャーで、唾液からがんの罹患リスクを検査する技術をもつサリバテックと連携して、早期発見を目指す。侵襲がない検査で、すい臓がんなど複数のがん種のリスクが分かる。日本生命の職員を対象にした大規模トライアルで、キットの改善につなげている。

 さらに、自治体との間で包括的連携協定を結び、健康増進やがん予防に関する告知等の手伝いもしている。

 最後に、認知症に対する取り組みだが、認知症対策は、症状や軽度認知障害(MCI)が現れてからでは遅い。例えばアルツハイマー病では、長期間にわたり原因といわれるアミロイドβが脳内に蓄積していくため、早期の取り組みこそ重要である。

 具体的には、音声で操作できる「Amazon Echo」のスピーカーに「脳トレ」を提供している。1回3分のクイズ形式で、毎日楽しく取り組めるほか、食事、睡眠、運動等に関するアドバイスも得られる。また、アナログとデジタルを融合した取り組みでは、山形県山辺町で、楽しみながら集団で行う脳トレゲームと簡易検査の実証実験を行っている。

 また、人工知能(AI)やビッグデータ解析技術に長ける日本IBMをはじめとした様々な企業と共に、順天堂大学医学部教授の服部信孝氏と産学共同で、共生と予防に貢献するサービスを研究している。

医療費・疾患別リスクを分析 各種ヘルスケアサービスの提供へ

 さらに、同社の関連会社である星和ビジネスリンクが手掛ける定年後研究所は、「自走人倶楽部」を運営し、定年後の生き甲斐をみつけてもらう合宿なども行っている。

予防と保障の両面で最適サービス

 日本生命では、ヘルスケア産業発展を目指し、産官学との連携にも熱心だ。大阪大学との共同研究や、理化学研究所が中核機関となる「保険イノベーション創出研究会」等にも参画している。子会社のニッセイキャピタルには、ヘルスケア以外の領域を含めたベンチャーを発掘・育成し、約6カ月で最大5000万円投資するプログラムもある。

 神谷氏は、「あらゆる健康状態の方に対し、予防と保障の両面から最適なサービスの提供を目指したい」と結んだ。

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