「日本一起業しやすいまち」を目指して
仙台市から独創的なピッチイベントがスタート 海外から多くの人が押し寄せる東京オリンピック・パラリンピックを前に、公共交通を補完する手段としてシェアサイクルに注目が集まっている。そんな中、早くからシェアサイクルに取り組んできたドコモ・バイクシェアの動きが活発だ。ドコモ・バイクシェア担当者、大分市の導入事例、そして自動ワイヤレス給電技術を取材し、MaaS(Mobility as a Service)の担い手としても期待されるシェアサイクルの現在地点と未来を追った。
 海外から多くの人が押し寄せる東京オリンピック・パラリンピックを前に、公共交通を補完する手段としてシェアサイクルに注目が集まっている。そんな中、早くからシェアサイクルに取り組んできたドコモ・バイクシェアの動きが活発だ。ドコモ・バイクシェア担当者、大分市の導入事例、そして自動ワイヤレス給電技術を取材し、MaaS(Mobility as a Service)の担い手としても期待されるシェアサイクルの現在地点と未来を追った。

三位一体となった地域活性化の理想的モデル

 大分市は2018年10月から、ASP方式の1つとしてシェアサイクルサービスを開始した。大分県の中心都市として機能する大分市は、人口約47万8000人を誇る中核市であり、鉄鋼業や化学工業、電子工業などが盛んな工業都市でもある。

大分市の取材にはモデル・タレントの宮越愛恵さんがインタビュアーとして同行

 大分市では、2006年からレンタサイクルを展開してきた。ではなぜ今になってシェアサイクル導入に踏み切ったのか。大分市 都市交通対策課 自転車総合対策担当班 参事補 佐藤洋輔氏は、導入の狙いを次のように語る。

 「レンタサイクルは非常に便利な反面、利用者に乗り捨てしたいニーズが多かったのも事実。乗り捨てなら観光でもビジネスでも自由度が高まる。国をあげて新交通システムを後押しする中で、大分市でも大々的にシェアサイクルを導入して、広く新しい交通手段として活用してほしいとの思いから導入に至った」(佐藤氏)

大分市 都市交通対策課 自転車総合対策担当班 参事補 佐藤洋輔氏

 2018年夏、同市はプロポーザル方式によって全国から運営事業者を募った。その中からE&Hシェアマネジメントとドコモ・バイクシェアによる共同提案を採択。初期段階では市中心部に30カ所のポートを設置し、300台の電動アシスト自転車を配置する。

 E&Hシェアマネジメント 大分支店長 相良潤之介氏は「提案では大分市の中心市街地の活性化、市民の新たな交通手段、観光客やビジネスパーソンなど来街者による活用の3つを目的とした。この循環が上手く回れば人の新しい動きが生まれ、ひいては街全体が元気になると考えたからだ」と説明する。

E&Hシェアマネジメント 大分支店長 相良潤之介氏

 地元に根ざした企業をスポンサーに迎えたことも本事業のポイントだ。メインスポンサーとなったのは、大分市に本社を置き全国にファミリーレストランを展開するジョイフル。ゆえに大分市のシェアサイクルには「Joyfull BIKE(ジョイフルバイク)」の愛称が付いている。

 ドコモ・バイクシェア 法人営業部 法人営業担当 プロジェクトリーダー 三石大門氏は、「シェアサイクル導入には自転車の調達やポートの整備など、少なくないコストがかかる。今回はスポンサーシップを活かした初めてのモデルで、ジョイフルが命名権を購入してくれた。これにより、収益面での安定が見込める。まさに大分市に根を張った“地産地消のビジネスモデル”だ」と話す。

ドコモ・バイクシェア 法人営業部 法人営業担当 プロジェクトリーダー 三石大門氏

 スポンサー獲得にはE&Hシェアマネジメントが尽力した。大分を代表する企業として、落札後、即ジョイフルにアプローチしたのだという。相良氏は「多店舗展開していることも魅力。ゆくゆくは大分市を起点に観光都市である近隣の別府市、由布市に広げたり、さらには九州一円、全国展開も夢ではない」と、ジョイフルと組めたメリットを強調した。

 導入検討段階で大分市は、民間事業者から意見を聞くサウンディング調査を実施。そこで佐藤氏は「新たな都市でシェアサイクルを展開するのに最も難しいのがポートの開拓」との意見を何度も耳にした。そのため大分市では運営事業者と協力するとともに、市が率先してポート開拓の交渉を行っている。「ポートが増えれば利用者も二次交通としての利便性が向上する。ポートの設置・整備に関しては運営事業者と協働しながら、大分市が中心になって進める」と佐藤氏は言う。

 取材に伺った2019年1月25日時点では公有地、金融機関などを中心に当初の目標値である市内30カ所に設置済みだった。今年度(2018年度)中には40カ所を目指す。「民間企業の方々には、事業の主旨とともに、地域貢献につながることを説明する。市役所の職員が直接交渉をすると、お互いに地域の発展を考えていることを確認できるメリットもある」(佐藤氏)。

 企業の開拓には、NTTドコモ大分支店が取引先を紹介するなどの下支えもある。「支店には地域創生というミッションがある。NTTドコモグループとして横串を刺し、連携を図れているのもならではの特徴だろう」と三石氏は話す。

 また、今回のサービスには自転車付帯型保険に強みを持つE&Hシェアマネジメントによる「緊急オペレーションサービス」が全台に搭載されている。自転車も車両には相違なく、万が一の場合は自動車と同様、重大な事故につながる可能性もある。そうした緊急時には自転車貼付シール内の二次元バーコードをスマートフォンで読み取り、表示された電話番号を押せば緊急オペレーションセンターへ伝送される。さらに位置情報サービスによって事故現場も特定される。 道路交通法第72条において義務化されている「交通事故が発生した直後の対応」、すなわち119番通報と110番通報は、シェアサイクル利用者にとってかなりハードルが高い。ジョイフルバイクの「緊急オペレーションサービス」は利用者に代わって119番通報と110番通報(本人が通報できない場合)、さらには保険会社への通報も行い初期対応や事故解決サポートを行う。

大分市役所裏のアートプラザに設置されたジョイフルバイクのポート(左)。ポートをバックに三位一体の立役者がポーズ(右)

 「自動車を運転する人ならある程度の対応を知っているが、子どもや外国人観光客は事故時の対応がわからない。今年は大分県でラグビーワールドカップ2019が開催されることもあり、外国人の来街者も増える。それらを見越して、多言語対応を含めてこのサービスを全国で初めて搭載した」(相良氏)。大分市でも利用者の安全・安心面に配慮したこの機能を高く評価している。

 開始から4カ月たち、利用者も徐々に増えてきた。「私の知人も会社の前にポートが設置され、大分駅前のスポーツジムとの行き来に使っている。駅前の駐車場は埋まっていることが多く、健康にもいいので好都合だと。別の知人は飲み会の後に自動車を置いて帰り、翌日に電車で通勤して駅から会社まで利用したそうだ」(相良氏)。

 先に紹介したドコモ・バイクシェアがたどってきた歴史同様、今後は「シェアサイクルの利便性をいかに知ってもらい、利用促進につなげるか」が課題となる。大分市ではレンタサイクル事業で蓄積したアンケートや利用データをもとに、既存のレンタサイクル利用者へのシェアサイクルの周知を図りながら、利用の転換を足がかりとして拡大していきたい構えだ。住民からは市報だけではなく、町内で回覧板を回してはどうかとの逆提案も受けたという。「公的な告知は行政にしか担えない部分。これからも地道にポートを増やし、住民への説明やアピールを続けていきたい」(佐藤氏)。

中心市街地にある大分銀行赤レンガ館前にて(左)。高崎山を望む水族館「うみたまご」の一画にもポートを設置。市街地からの海沿いサイクリングに最適(右)

 このように大分市のケースは、行政、運営事業者、システム提供者が三位一体となって推進する地域活性化の優れたモデルでもある。これまでの産官連携モデルは補助金に依存しがちで、初期段階は華々しいものの継続性がないことがたびたび指摘されてきた。しかし、今回の事例では3者が手を取り合って一緒になって“汗をかく”ことをモットーにしている。「中長期的には、自転車に限らず地方都市を舞台にMaaSを実現したい」と三石氏。今のスキームを発展させれば、その希望もかなうはずだ。

運用コストを激減する画期的な自動ワイヤレス給電システム

 次に紹介するのは、電動アシスト自転車の自動ワイヤレス給電システム。システムを開発した陽報はASP方式で神奈川県西を中心にシェアサイクル事業を展開する。現在は「Let’s bike share小田原」「Let's bike share 芦ノ湖」に加え、沖縄県の「ちゅらチャリ」を沖縄観光コンベンションビューローとの共同事業として運営している。

 オペレーションを担当する中で、同社はバッテリー寿命に関する課題を切実に感じていた。陽報 取締役 副社長 木村元氏は「バッテリー自体の耐用年数が通常、約2年~3年。現実には1~2年ほどの段階で2日に1回ぐらい充電しなくてはならない状況になり、その人件費が足かせとなっていた。それに充電されていない自転車が多ければ、お客様も利便性を損なう。ならば返却して自動で充電できればベストだと考えた」と、開発のきっかけを話す。

陽報 取締役 副社長 木村元氏

 しかし、同社に電動アシスト自転車に搭載するユニットのノウハウがあったわけではない。大手に掛け合うなど模索を続ける中、電動アシストのシステムを保有していた大阪のサンスター技研とつながりが生まれ、共同開発をスタートした。その後2018年4月にサンスター技研から事業が譲渡され、陽報製のユニットとしてワイヤレス給電システムが誕生した。

 本システム最大の特徴は「自転車をポートに停めた(駐輪した)だけでワイヤレスで給電できる点」(木村氏)にある。ホテルや観光施設など電源コンセントを確保できる場所なら、自転車を乗せれば自動でバッテリーが充電される。このユニットは運搬が可能で、その日のうちに設置・回収ができるのもメリットだ。実際、小田原、芦ノ湖、沖縄で導入済みで「当然バッテリー交換の人件費がゼロになった」(木村氏)という。

陽報が開発したワイヤレス給電システム

 だがポートは圧倒的に外部が多いため、今度は新たに電源に縛られずに済む方法を考える必要が出てくる。

 「そこで開発したのが太陽光による蓄電システム。パネルで太陽光を一旦蓄電することで、1台の自転車が1日に2回充電できるだけの容量を備えた。これならポートに電源を引く手間とコストが不要になる。ドコモ・バイクシェアのコンセプトである“簡単に乗り降りできる”可能性をぐんと広げるに違いない」(木村氏)

太陽光パネルのプロトタイプ

 例えば沖縄県の事例では、スポーツのキャンプなどで一時的にポートを設置するケースもある。場所を問わず、イベントに即した臨時ポートが実現可能になれば観光客の呼び込みにも活用できる。

 太陽光パネルはまだプロトタイプで、パネルの大きさがネックになっている。木村氏は「今は技術も進んでおり、シート状パネルなども出てきた。大手のパネルメーカーからたくさんの提案をいただいている。より省スペースで給電効率の高いパネルが生まれるのもそう遠くはないだろう。そうなればますます利便性が向上する」と、さらなる飛躍に期待を寄せる。

 取材に同行したドコモ・バイクシェアの清水氏は「再配置とバッテリー交換は避けては通れない運用コスト。我々もAIで再配置の効率化に取り組んでいるので、陽報のバッテリー交換自動化と組み合わせれば劇的なコスト削減につながる」と語る。太陽光の蓄電を活かし、災害時の緊急電源活用なども想定できる。

今後も協創を深めたいとする清水氏と木村氏

 MaaSの一部となり、地方創生を後押しし、ポートが社会貢献の場に変化する――ここまで見てきたように、シェアサイクルは単なる「便利な乗り物」を超えた可能性を秘めている。我々の生活に欠かせない存在になったとき、また違った風景が見えてくるに違いない。

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