タワーレコードが荷物を預かる時代が到来
エクボクロークのシェアリングは予想もしない効果を生むか?

最先端技術の“日本代表”が結集!感動が桁違いの8KVRを5Gサービスで実現
 荷物預かりのシェアリングサービスとして急成長を遂げる「ecbo cloak (エクボクローク)」が、タワーレコード渋谷店に預かり場所をオープンした。いままでは想像もしなかった組み合わせが現実となったわけだが、そこにはどんな理由があったのか。今回、この協業をコーディネートしたNTTドコモ・ベンチャーズ交えた3者の鼎談をお届けしよう。
 荷物預かりのシェアリングサービスとして急成長を遂げる「ecbo cloak (エクボクローク)」が、タワーレコード渋谷店に預かり場所をオープンした。いままでは想像もしなかった組み合わせが現実となったわけだが、そこにはどんな理由があったのか。今回、この協業をコーディネートしたNTTドコモ・ベンチャーズ交えた3者の鼎談をお届けしよう。

世界最大規模の音楽ストアに荷物預かり場所がオープン!

 CVCとして多くのベンチャー企業と接点を持つNTTドコモ・ベンチャーズでは、ベンチャー企業とNTTグループとの協業を積極的に支援し、“化学反応”を起こすべく日々活動を続ける。

 その1つとしてサポートしているのが、ecboが運営する荷物預かりサービスの「エクボクローク」。荷物預かりと聞くと真っ先にコインロッカーを思い浮かべるが、エクボクロークの場合、リアル店舗の空きスペースが荷物の預け先となる。

 ユーザーは、スマホアプリから荷物を預けたい店舗と時間を選択し予約する。あとは指定した日時に店舗を訪れ、荷物を預ければ完了。言わば、店舗側に存在する空きスペースのシェアリングエコノミーである。これによりユーザーは、大きなスーツケースを引きずることなく、存分に旅行先で予定を楽しめる仕組みだ。

 エクボクロークのサービス背景には急増するインバウンド(訪日外国人旅行客)需要がある。2019年2月に行われた「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2019」でピッチを行ったecbo執行役員 井坂陽氏は、「コインロッカーが空いておらず荷物を預けられないユーザーは、毎日17.6万人にも上る。コインロッカーは1964年に誕生して以来、駅周辺を中心に現在22万個あるが、必要とされる数はあと30万個もある」と、荷物の預かりに関する切迫した状況を訴えた。この課題を解決するプラットフォームとしてエクボクロークが生まれたという。

 2017年1月に渋谷のカフェから始まったサービスは順調に成長を続け、いまでは1000店舗以上にまで加盟店が増えた。店舗ばかりではない。JR東日本の山手線エリアでは、東京駅、品川駅、上野駅、池袋駅と主要ターミナルに預かり先があるほか、東京・神奈川エリアの郵便局、京阪神の主要駅内にも展開。公共性の強い場所にも広がりつつある。

 2018年12月には、タワーレコード渋谷店に導入を開始した。地下1階、地上9階(最上階はSKYGARDEN)、売場面積約1550坪、在庫数80万枚を誇る世界でも類を見ない大規模な音楽ソフトストアとして知られる同店は、海外の旅行客からも認知度が高い。黄色と赤の巨大な看板が目印で渋谷のランドマークともなっており、荷物を預けたいユーザーが迷うことなく来客できるのも利点だ。

タワーレコード渋谷店におけるエクボクロークのスペース(ニュースリリースより)

 この取り組みをエクボ、タワーレコード、NTTドコモ・ベンチャーズの担当者はどのように捉えているのか。以下、3者によるインタビューの様子を紹介する。答えてくれたのはecboの井坂氏、タワーレコード リテール事業本部 カフェ事業統括部 統括部長の長谷川真人氏(長谷川氏は導入時の渋谷店店長)、NTTドコモ・ベンチャーズの篠原敏也氏だ。

荷物を預けた人の購買意欲を高める仕掛けが重要に

――改めてエクボクロークについて教えてほしい。

井坂氏 エクボクロークは荷物を預かるスペースを持つ店舗と荷物を預けたい人をつなぐ(マッチングする)シェアリングサービス。近年、インバウンドの増加に伴い荷物が急増しているが、圧倒的にコインロッカーが不足しており、預け場所が足りなくなってきている。

 我々はそこに着目した。エクボクロークでは店舗の空きスペースと預けたいユーザーのニーズをつなぐことで簡単に荷物が預けられる。事前に予約できるので、現地に行ってから探す手間を省くことができ、必ず預けられる安心感もある。

 現在の加盟店数は全国に1000店舗以上で、外国人が7割、国内利用者が3割の比率だ。まずは観光地や娯楽の多い東京を中心に開拓しているが、大阪などの大都市にもさらに広げていきたい。

ecboの井坂氏

――タワーレコードとコラボして発見したことは?

井坂氏 まず、タワーレコード渋谷店が渋谷のシンボル的な存在であることが魅力だった。信頼性が高く、預け先として安心できるからだ。新たな発見としてはタワーレコードに預けて音楽イベントに出かけるアーティストや観客がいること。これまでインバウンドがメインターゲットだったが、タワーレコードと組んだことで日本人の音楽好きにもリーチできたのは非常に良かった。

――音楽ソフトのストアが荷物を預かるのは画期的。タワーレコードとしても新たな集客モデルを考えていたということか。

長谷川氏 おっしゃる通りだ。世界的にみるとCDなどのパッケージ市場は厳しい状況にある。単純にほしい音楽ソフトを買うだけなら、利便性、価格も含めてECで事足りてしまう。そうした中、我々はリアル店舗に足を運んでもらい、楽しんでもらうトライを続けている。幸い、モノ消費からコト消費へと時代は移りつつある。イベントを日常的に開催するなどいろんな仕掛けを施して、集客を強化してきた。

一方、渋谷エリアは外国人観光客がどんどん増えている。観光客が買い物しやすい状況を作ることが1つの課題であり、今後の成長領域でもあった。そこで今回、エクボクロークと組んで外国人の集客につなげられる取り組みをしていきたいとの思いからスタートした。

タワレコードの長谷川氏

――導入に際しての苦労はあったか。

井坂氏 普段は登録から、加盟店として掲載されるまでの一連の流れをすべてオンライン上で済ませている。だがタワーレコード渋谷店の場合はスタッフへの負担などを危惧されていたため、 直接、具体的な懸念点などをヒアリングし、その場で実際の荷物預かりのデモをしながらスタッフに説明した。こうして簡単なオペレーションだと理解してもらった上で、心理的な負担を軽減しながら導入に至った。

篠原氏  オペレーションが非常に簡単な点はエクボクロークの特徴だ。店舗側は、預かる荷物をスマホで撮影し、引き取り時にその写真を確認してユーザーに荷物を返却するだけ。英語が苦手な従業員も外国人との対話をせず対応することが可能。導入のハードルが低いこともあり加盟店数が増えている。

長谷川氏 確かにオペレーションは簡単。導入時には業務負荷が大きいと伝えていた。そこに囚われて本業のサービスが低下してしまうのは本末転倒だからだ。しかし導入までサポートしていただいて、実際に始まってみたら本当にスムーズに対応できている。その点は継続性が高いサービスだと感じる。

 受け取り場所は外国人が来やすい洋楽フロアに設置した。預かり数などはある程度リスクを鑑みてスタートしたが、ここまでの経過を見ると、拡大・成長していくイメージがある。いまのところ、月の利用数は数十件と推移している。

井坂氏 現状ではほぼ想定数だが、まだまだ伸びしろはある。より簡単なオペレーションを確立していきたい。

――タワーレコードに聞く。導入後の反応はどうか。

長谷川氏 実は、スマホ充電サービス、各種クーポンの配布など、他にもいくつかインバウンド向けの取り組みを走らせている。その中でもエクボクロークは最初から一定の認知度があり、一般消費者にもシェアリングのクロークビジネスが浸透していることに驚いた。

 外国人より日本人の利用客が多かったのも気づきの1つだ。渋谷界隈で行われるイベントやライブなど、コト消費にあわせて荷物を預けに来ている。そういったニーズは当初の想定より多かった。そこにチャンスの糸口があるのかもしれない。

――篠原氏は両者をつなぐ立場。どんなビジョンを持っているのか。

篠原氏 リアル店舗を持っている企業が顧客の獲得で苦戦していることは肌で感じていた。多くの消費者が企業からの広告に慣れ始めていることもあり、今回の取り組みは、まさにその消費者の心理を逆手にとった取り組みである。エクボクロークのユーザーは、とりあえず荷物を預ける目的で店舗に来てくれさえすれば、タワーレコードとしては、購買に意識が向くような仕掛けをうつことが可能となる。実際にタワーレコード渋谷店では、エクボクローク経由で荷物を預けに来た外国人に対し、5%クーポンを渡しており、既にこの施策による成果が出始めている。この取り組みにより、消費者へのプロモーションコストをかけずに新規顧客を獲得できることになる。

NTTドコモ・ベンチャーズの篠原氏

――これからの展望について一言。

井坂氏 タワーレコードをはじめ、登録店舗には隠れたカフェの名店など良質な店が多い。なのでユーザーには荷物を預けるだけではなく、店も利用してほしい気持ちも強い。そこはサービスを充実させてサポートしていきたい。

長谷川氏 社内でもエクボクロークは評判になっているので、他のタワーレコードの店舗での横展開も考えられる。物理的なスペースの問題が最もネックになるが、そこがクリアできて、どの街でもエクボクロークへのニーズが高いようであれば可能性はある。いまの5倍、10倍の集客数になったときにどれだけのインパクトがあるのか。その点も楽しみだ。

篠原氏 この取り組みは、消費者の意識や行動をいかに自然に、無理なく変えるかを実践している協業であり、タワーレコードにとっては、他社サービスを活用した新しいO2Oの仕組みともいえる。荷物預かりによる課題解決から、店舗への集客も可能としたエクボクロークは、連携先として今後もさまざまな展開が考えられる。荷物の預け先だけでなく、そこにクーポンなどのお得情報が加われば、リアル店舗を持つ企業にとっては、強力な集客ツールになることは間違いない。エクボクロークは、多くの消費者をさりげなく誘導し、セレンディピティを提供できる唯一のサービスなのかもしれない。

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com