2019年はスマート農業が実現する年 NTTドコモがパートナーと歩む農業最前線

最先端技術の“日本代表”が結集!感動が桁違いの8KVRを5Gサービスで実現
 スマート農業に本腰を入れて取り組むNTTドコモ。今回の記事では茨城県つくば市の水耕栽培、北海道更別村の近未来技術社会実装事業の連続取材を通じて新たな挑戦を追った。そこからは、次世代の日本の農業が若きプレーヤーたちによって開拓されようとしている姿が見えてきた。
 スマート農業に本腰を入れて取り組むNTTドコモ。今回の記事では茨城県つくば市の水耕栽培、北海道更別村の近未来技術社会実装事業の連続取材を通じて新たな挑戦を追った。そこからは、次世代の日本の農業が若きプレーヤーたちによって開拓されようとしている姿が見えてきた。

逼迫した日本の農業をICTで救え!

 平成30年における日本の農家人口は418万6千人。対総人口比は3.3%に過ぎない。農業労働力に目を向けると、農業就業人口の平均年齢は66.8歳。これが、平成30年における日本の農業の現実だ(農林水産省統計部 農林業センサス、農業構造動態調査より)。労働力減少があらゆる現場で叫ばれる昨今、農業は高齢化とのダブルパンチを一身に浴びている。

 自然と共存しながら営まなくてはならない農業は、いまでも“人手”こそが至宝の労働力。しかし、このままでは衰退の一途をたどってしまうことも目に見えている。これら課題を解決するため、NTTドコモでは早い段階から第一次産業へのICT活用を進めており、これまでも新潟市での「クラウド型水田管理システム」、大分県での母牛の遠隔監視システム「モバイル牛温恵」などで成果を収めてきた。

 以下に紹介するのはNTTドコモが「+d」の協創精神のもとで展開する茨城県つくば市の水耕栽培、北海道更別村の大規模な畑での社会実装事業である。センサー技術とドローンによって、圧倒的な人材不足に悩む農家の一助となるべく奮闘を続ける。特徴は、どちらの事例も若い世代が中心となっている点。ICTを上手く取り入れながら、未来を開拓していく姿はじつに頼もしい。

画期的な水耕栽培とNTTドコモが協創

 東京から車で約1時間半。まずは茨城県つくば市の農園を訪問した。ここは農業ベンチャーのセプトアグリが生産と商品開発に向けた各種実験を行っているスペース。セプトアグリは2014年に設立され、水耕栽培「EZ水耕」を主力サービスとする。

 セプトアグリ代表取締役 CEOの大社一樹氏はもともと学習塾を経営していたが、「もっと社会の役に立つことをしたい」との思いから同社を立ち上げた。

 「日本の農家は高齢化が激しく、若い人たちも入ってこない。水田も耕作放棄地が増え、荒れ地や獣害などの被害が各地で起きている。この貴重な水田をこれからの世代に活かしていくために、きちんと儲かる農業を開発したいと考えた。それが手間のかからないEZ水耕へとつながった」(大社氏)

左からセプトアグリの大社氏、NTTドコモの大関氏、セプトアグリの岩野氏

 これまでの水耕栽培は液肥(液体肥料)を常時循環させるためのポンプや濃度調整器、pH調整器などが必要だった。大がかりな設備に加え、循環する関係上、一度伝染病にかかるとタンクを介して感染が広がるリスクもある。さらに雨水の侵入により液肥が希釈されて生育に影響を及ぼすことから、ビニールハウスが必須となっていた。

 EZ水耕はこれらの弱点を解決したものだ。専用水耕ポットにゆっくりと溶け出す特殊肥料を注入し、専用水耕パネルを用いた独自の栽培方法によって野菜を育てる仕組みを開発。地下水の源水をそのまま利用するため、循環設備は不要だ。これにより、水田に浮かべるだけの簡易な水耕栽培を可能にした。初期投資額は従来の水耕栽培に比べて約10分の1と、コスト面でもメリットがある。

EZ水耕の専用水耕ポット。じっくりと特殊肥料が溶け出す。これを専用水耕パネルで栽培する

 「液肥もビニールハウスも使わないのが利点。実際にいま導入している農家の方々にきちんと収益を出せるような状況を作っているところだ」と話すのは、セプトアグリ副社長執行役員 COOの岩野修司氏。リーフレタスやハーブ類などを主力とするが「市場で出回っている葉物野菜はほとんど作れる」(岩野氏)という。農家の転作はもちろんのこと、新規就農者、農福連携なども視野に入れる。

 この画期的な栽培方法に、NTTドコモはセンサー技術やドローンで協力している。NTTドコモ スマートライフ推進部 ドローンビジネス推進室 ビジネス推進担当課長の大関 優氏は「水耕栽培とセンシングデータによる管理は非常に親和性がある」と語る。水温や気温、照度(明かりの強さ)などを地上のセンサーで計測し、それをアプリ上でグラフによって可視化。そこにドローンの空撮画像と組み合わせて精度の高い栽培データを集約し、ゆくゆくは管理プラットフォームとして確立していきたい構えだ。

NTTドコモが設置したセンサー(左)。専用アプリでデータを管理する

 こうした緻密な管理は、EZ水耕の連作にも効果を発揮する。地域にもよるが1反(1000平米)で生産する場合、年間4回の栽培が可能なため高収益が見込める。大社氏は「農業の新技術として世界中に浸透してほしい。“世の中にあって当然の技術”を目指したい」と力を込める。そして大関氏は次のように続ける。

 「ICTを使った農業は効率化に集約されがちだが、食糧の安定供給という側面も見逃せない。そのために生産段階から供給段階に至るまでのあらゆるデータを一気通貫のICTで正確に収集し、NTTドコモが有する技術やノウハウを駆使しながらデータを活用し、食農分野における社会課題解決に取り組んでいかなくてはならない。通信事業以外のスマートライフ領域、すなわちお客様の生活に密着した部分をサポートしていくのが我々の使命だ」(大関氏)

 水田の有効活用に始まり、簡便さ、コストの低さ、売上の向上までを見据えたEZ水耕は確かに可能性を感じさせるものだ。そこにNTTドコモのソリューションが加われば、さらなる飛躍が望めるだろう。

これからも価値ある協創を続けたいと話す大社氏と大関氏(左)。栽培予定地で試験飛行したドローン

広大な北の大地で壮大な社会実装が動き出す

 碁盤上の広大な畑が見渡す限り続く十勝平野。次なる舞台はその真ん中に位置する北海道更別村である。更別村は農家1戸あたりの農地が東京ドーム約10個分(44.6ヘクタール)を有する大型農業地域だ。主力は小麦、じゃがいも、豆類、ビートだが、キャベツなどの野菜も栽培されている。食料自給率は6400%、22万人をカロリーベースで1年間養える驚異の数値を誇る。

広大な農地が広がる十勝平野

 そのスケール感は日本というより欧米に近い。農業法人が少ない更別村では、その多くが家族で広大な農地を運営する。必然的に大型農機が必要となり、複数台のトラクターを保有する農家がほとんど。いずれにしろ、あらゆる面で効率化・自動化を図らなければこれだけの農地を耕し、収穫することは不可能だ。

 そこで更別村は一段ギアを加速した。2018年8月、内閣府による「近未来技術等社会実装事業」において、「世界トップレベルの『スマート一次産業』の実現に向けた実証フィールド形成による地域創生」のモデル地域に選ばれたのだ。近未来技術等社会実装事業とは、実証実験の先を見据えた新技術の普及事業を指す。農業分野では同じく北海道の岩見沢市と並び唯一の選定となった。核となる技術は岩見沢市が自動トラクター、更別村がドローンとなる。

 NTTドコモはこの事業にドローン分野の推進・実行企業として参加している。NTTドコモ イノベーション統括部 事業創出・投資担当 主査の中川宏氏は昨年から現地に定期的に足を運び、更別村やプロジェクトの協力企業と密な関係を築き上げてきた。

NTTドコモの中川氏

 「ドローンやAIなどの先進技術が出てきてはいるものの、まだ現場で使われている例は少ない。NTTドコモとしてはドローンによるセンシング、農薬散布などが2020年に更別村で当たり前のように使われる世界を支援していく。社会実装事業で農家の人たちに利便性を見てもらい、『この技術を使いたい』と思っていただくのが理想だ」(中川氏)

 NTTドコモは更別村にあるオープンスペース「十勝さらべつ熱中小学校」にサテライトオフィスを構え、地域に密着しながらプロジェクトを進めている。この場所は周辺のあらゆる知恵とノウハウが集まる拠点であり、数々の講座を通じて人脈づくりを後押しする。

十勝さらべつ熱中小学校にはNTTドコモのサテライトオフィスがある

 更別村の西山 猛村長は、社会実装事業や熱中小学校を始め、進歩的な政策を進める人物として知られる。西山村長は「農家の減少が続く中、更別村の大規模農業を持続するためには最先端技術を用いた省力化は避けて通れない。このフィールドは日本一の耕地面積を誇る。そう遠くない未来、畑ではドローンが飛び、自動トラクターが走り、AIがセンシングデータを解析する。だからこそいまから整備しておく必要がある」と強調する。

更別村の西山村長

 自治体の若手も危機意識を強める。更別村役場 企画政策課 政策調整係 係長の今野雅裕氏は「農家の減少、後継者不足をどうやって補うか。そのためにスマート農業はマストだと考えた。だが行政は直接的なプレーヤーにはなれない。NTTドコモをはじめとする民間企業との協調が必須だ」と話す。

更別村役場の今野氏

 今回の事業では民間企業のほか、“農家でありながらデータや新技術の重要性がわかるリンクマン”として、岡田農場の岡田昌宏氏が中核に加わった。岡田氏は更別村で農業を営む傍ら、自らの畑に各種センサー類を設置し、ドローンの試験飛行場として開放するなど全面的に協力。帯広畜産大学で育種を学んだ岡田氏は、東京の民間企業を経て故郷に戻った。そんな彼は、これからの農業にデータが欠かせないことを肌で感じ取っている。

岡田農場の岡田氏。かつて教師だった西山村長の教え子でもある

 「例えばトラクターの自動走行は現実のものになりつつある。しかし、鍵を握るのは何が必要な情報で、どう動かしていくかということ。絶対に必要なのが農地に関するデータだ。そしてデータをどのように収集・処理していけばいいか――その点もしっかりと考えていかなければならない」(岡田氏)

岡田農場に設置された各種センサー類(左)。自動走行トラクターもあった(右)

 ドローンを飛ばして収集するのはNDVIだ。NDVIとは植生の分布状況や活性度を示す植生指数の指標であり、「これによってまずは植物の状態がしっかりとわかる。それにあわせ、肥料を増やしたり、種の量を変えたりなどの試みができるようになる」(岡田氏)。

試験飛行を行う岡田氏(左)。モニターではNDVIの様子が閲覧できる(中)。ドローンから見た地上の風景。夏には青々とした畑が広がる(右)

 NTTドコモ イノベーション統括部 事業創出・投資担当の山田和宏氏は未来を見据えてこう語る。

 「ドローンは5G時代の重要なIoT機器。本領を発揮するためには単独で取り組んでも成果が出にくい。我々もデータを必要としているし、独自性のあるソフトを提供していきたい。NTTドコモが通信によってパズルのピースをつなぐことで世の中を変えるパワーの役に立てればうれしい」(山田氏)

十勝さらべつ熱中小学校で話を聞いた。最右がNTTドコモの山田氏

 ドローンの本体は、更別村に隣接する帯広市に店舗を構えるAIRSTAGEが提供する。AIRSTAGE農業研究所は熱中小学校に事務所があり、岡田氏は研究所所長も兼任している。AIRSTAGE代表取締役の久保直人氏は「当社のビジョンはドローンによる総合事業。その足がかりとして農業でのドローン活用を想定した。更別村のプロジェクトはその一環だ」と説明する。

AIRSTAGEに展示された産業用ドローンの数々(左)。室内にはデモ飛行空間も(右)

 現状、十勝地方の畑は広大すぎて農薬散布ドローンの連続稼働時間単位では、省力化ツールとしては一概に作業がまかないきれない。ハード面の市場技術が、専用バッテリーの稼働時間を向上させる時期は来るだろうが、効率よく最先端のICTを開発導入することにより、直近の省力化の一助にすることができる。

 久保氏は「センシングから自動飛行など、その先までを一貫して考えることができれば、夢の全自動農業に一歩近づく」という。そして「更別村とのチャレンジは、ひとまず“ゼロから1”にするため第一歩の取り組みとしてきた。近未来技術実装事業が開始された今、その先にある点在する優れた技術を集約したソリューションを各関係者と連携して提供していきたい。同じ方向に向かって加速をさせる機会増幅を得意としているため、構想を現実のものとさせる」と続ける。新しい技術をただ待つだけではなく、なきものは切り開き、優れたものとつなげる。課題は1つ1つをクリアしていくことが実現に近づくとも語る。

AIRSTAGEの久保氏

 事業にはシステム開発で東京大学 特任教授の平藤雅之氏らも名を連ねる。本格的なスタートは雪解けが済んだ2019年の春からだが、産官学が力を合わせて本気でスマート農業を実現しようとしている。西山村長が「農業の最先端を世界に向けて発信する。農業のシリコンバレーを目指す」と言えば、岡田氏が「耕地面積や運用している農機が欧州とさほど変わらないこの地で新しいものを生み出せれば、グローバルにも展開できる」と続く。視線の先には世界の土俵があるのだ。

 更別村の取材にも同行したNTTドコモの大関氏は「2019年は農業が変わる年。そこに役立つのが農業へのICT活用にほかならない。これまでドコモが培ってきた農業ICTのノウハウに新しい農業ICTの領域も網羅させながら、 必ず転機の年にしたい」と語った。いろんな強みを持ったパートナーとの連携を図り、NTTドコモが5G時代にどんなスマート農業を実現していくか。その点にも期待がかかる。

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com