発想豊かな未来に向けた思考術 人を動かすコツをスペシャリストが実践

最先端技術の“日本代表”が結集!感動が桁違いの8KVRを5Gサービスで実現
 世界で通用するアントレプレナー(起業家)がなかなか育たない日本。原因の1つには、アントレプレナーたちがどのように育ち、成功に導かれていったのかを知る機会が少ないことが上げられる。2019年3月に開催されたビジネスイベントを通じて、“日本のアントレプレナーが成功するために必要なマインドセット”について紹介する。
 世界で通用するアントレプレナー(起業家)がなかなか育たない日本。原因の1つには、アントレプレナーたちがどのように育ち、成功に導かれていったのかを知る機会が少ないことが上げられる。2019年3月に開催されたビジネスイベントを通じて、“日本のアントレプレナーが成功するために必要なマインドセット”について紹介する。

失敗から多くのことを学ぶという気持ちで挑んでほしい

 2019年3月20日、NTTドコモ・ベンチャーズラウンジにて「発想豊かなアントレプレナーの未来思考術 〜ヒトを動かすビジネスモデルの仕組み〜」と題したイベントが開催された。ゲスト講師に招かれたのはピョートル・フェリクス・グジバチ氏。ピョートル氏は現在、日本において組織開発と人材開発のコンサルティング会社、プロノイア・グループを経営する。

 その経歴も興味深い。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て2011年から2015年までの5年間、グーグルの日本支社に在籍した。グーグルでは人材育成と組織開発、リーダーシップ開発に取り組み、大きな成果を上げてきた。

 イベントはピョートル氏による基調講演から始まった。ピョートル氏はまず、アントレプレナーを「世界にとって最大の価値を最低なコストでもたらしてくれる人たち」と定義。そして、アントレプレナーを目指すために重要なことは「好奇心を持つこと」「集中すること」と述べた。

プロノイア・グループのピョートル・フェリクス・グジバチ氏

 これから企業文化がどのように変わっていくのかについては「モノづくりやサービスを提供するだけでビジネスモデルが成立する時代は終わった。これから必要とされるのは、仕組み作り」(ピョートル氏)と説明。そこで求められるのはいかにユーザーの価値を高め、世の中の課題を解決するのかといった仕組み作りである。その上で「クローズドな組織は必要とされず、トップダウンの経営も終わる。社員が各々のポテンシャルを発揮し、ミッション達成につながる個人の意思決定が重要になる」(ピョートル氏)とした。

 一方、世界規模ではすでにユニコーン(評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー)は320社を超えている。そのうちの半分は米国で、中国、インドと続くが、日本には現在1社しか存在しない。ピョートル氏は「ユニコーンを目指すポイントとして重要なのは、最初からマネタイズしないこと。まずは、できるだけ多くの利用者を増やし、新しい行動パターンやルールなどを浸透させる必要がある」と語った。

 既成概念を破っていくこともアントレプレナーの必須条件だ。「ライト兄弟はそれまでの既成概念を無視して、できるだけ操縦しやすい飛行機を作るかに徹していた。そのため、プロトタイプを作っては何度も失敗して墜落させている。その結果ライト兄弟は、ライバルに先駆けて世界初の動力飛行機の開発に成功したのだ」(ピョートル氏)。このように、最初から成功だけを目指して起業するのではなく、「失敗から多くのことを学ぶという気持ちで挑んでほしい」とメッセージを贈った。

 次に「日本のスタートアップの未来」をテーマに、ピョートル氏とNTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長の稲川尚之氏の対談が行われた。モデレーターは、プロノイア・グループ PR兼マーケティングの平原依文氏が務めた。

NTTドコモ・ベンチャーズの稲川氏(左)とピョートル氏

 まず「今、スタートアップ業界ではどんな波が来ているのか?」との質問に対し、ピョートル氏は「シリコンバレーではもうスタートアップは資金集めが難しくなっている」と回答。その理由について「従来型のスタートアップは数が増えすぎ、新しいビジネスモデルでなければ投資する意味がないと思われているから」と説明した。さらに今後は、グローバルなビジネスモデルでなければ投資の対象にはなりにくいとも話した。

 稲川氏もグローバルな展開の重要性について触れ、「日本人はグローバルというと、すぐに英会話が必要だとか、まず米国に行かなければと考える。そうではなく、マーケットベースでグローバルな展開を考えることが重要」と意見を述べた。

 続く「グローバルを見据えたときの日本流の考え方は?」という質問に関してピョートル氏は、「いまの日本にどんなリソースがあって、何が世界中で話題になっているのかを調べるべき。例えばポーランド(ピョートル氏の出身国)では寿司屋が増えてきたが、ほとんどを韓国人が経営している。もっと日本が誇れる文化の良さを認識すべきだ」と語る。

モデレーターを務めたプロノイア・グループの平原依文氏

 稲川氏は「九州のある水産事業者は、日本では需要が少ない養殖のカンパチやブリを米国に輸出している。米国では日本とは逆に、天然物よりも養殖物の方にニーズがあると気がついたからだ。まさに、マーケットベースでグローバル化に成功した例と言える」と、食文化の違いに目をつけることで日本企業がグローバルで成功した例を紹介した。

動画から水まで、多分野のスタートアップが熱いピッチを披露

 休憩を挿んでの第二部は、気鋭のスタートアップ5社によるピッチセッションへ。動画、ファンクラブ、医療、コラボレーション、水とさまざまな分野の起業家たちが熱弁をふるった。

●AMATELUS

 トップバッターはAMATELUS CEO/Founderの下城伸也氏。画面上でスワイプすると自由に視点を変えられる動画システム「スワイプビデオ」を提供する。通常の自由視点映像はデータが重すぎて4G通信には向かないがスワイプビデオは4G環境でも自由視点映像をWeb配信することを可能にする。現在展開している市場は、スポーツ、エンタメ、技術教育で、実際にスポーツトレーナー教育に活用している導入事例もある。

AMATELUS CEO/Founder 下城伸也氏

 今後のビジネスモデルとしては、スワイプビデオ撮影後にすぐに閲覧できる即時変換システム、国内外に映像を配信するクラウド配信システム、自社サーバーからの配信に対応したエンタープライズモデル、さらに出張撮影も想定するという。スワイプビデオのデータは、ARやVRコンテンツとしても展開活用が可能で、従来のARコンテンツ生成コストを10分の1以上下げられ、生成スピードも格段に早くなるとのことだ。

●THE COO

 2番手はTHE COO代表取締役CEOの平良真人氏。エンタメなどにおける、ファンサイトを構築する会員制ファンコミュニティアプリ「fanicon」が主力サービスだ。これによりファンだけが集まれる場所を作り、ファン同士が会話することによって情報交換ができる。

THE COO代表取締役CEO 平良真人氏

 従来型のファンクラブの場合、コンテンツ提供は1対nで一方向になるが、faniconならばn対nのコミュニケーションが実現できることが特徴。すでに1000以上のコミュニティがfaniconで作られている。

●Ubie

 3番手はUbie 代表取締役の久保恒太氏。Ubieが手がけるのは「医療格差をなくす医療アクセスツール」である。病院での患者の待ち時間は長いが、その間、医師は電子カルテを作っている。同社では電子カルテの入力支援を行うことで、患者の待ち時間を減らすシステムを提供。患者は待合室でタブレットの問診票から質問に答え、その回答が電子カルテに送られてデータとして記録される。

Ubie 代表取締役 久保恒太氏

 すでに50件以上の病院で使われているが、実際に導入した結果、外来の待ち時間が3分の1に短縮されたとの実績も上がっている。

●STATION

 4番手はstation共同代表取締役/デザイン最高責任者の三宅高弘氏。コワーキングスペースなどのコミュニティマネージャーが横断的なコラボレーションを促進するためのサービス「station」を提供している。

station共同代表取締役/デザイン最高責任者 三宅高弘氏

 現在、コミュニティスペースの管理コストは高価で、利用者同士のコラボレーションの接点が作りにくく、効果測定がしづらい。これらの課題をstationで解決する。コワーキングスペースだけでなく、企業やイベントスペースでも引き合いがある。将来的には、コミュニティスペースにおけるデータ解析ツールを目指している。

●エバートロン

 最後はエバートロン 代表取締役社長の田中久雄氏。田中氏の歩みは古く、1975年から“1滴の水分子”を徹底的に研究してきたという。その結果、水が腐らない周波数を発見。日本では水を腐らせないために、いろいろなものが添加されているが、そこに腐らない水を使えば、添加物なしで生鮮食品を長持ちさせることができると説明する。

エバートロン 代表取締役社長 田中久雄氏

 食品に含まれる水分にエバートロンの電波振動を与えることで、食品の鮮度を数倍から数十倍維持する技術を、今後は医療分野などさまざまな分野へも可能性を広げていく。

 発表に続いて、ピョートル氏、平原氏が講師となってプレゼンテーション講座が行われた。ピッチは短い時間の中でいろんな感情を動かしたり、さまざまな戦略をもって挑まなければならない。ステージに上がっている間は、演技力が問われる。そして、オーデエンスには投資家もいれば将来のパートナーやエバンジェリストもいる。それらすべてに刺さるプレゼン術とは何かをピョートル氏が解説した。

 重要なポイントは、ビジネスモデルをわかりやすく説明すること。どんなプロダクトで、どんな仕組みになっていて、タイムラインや最終的な目標は何かをきちんと整理する。そして自分のアイデアを、相手にとって覚えやすく、記憶しやすく伝えることが求められる。

 ある研究によれば、他人に情報を伝える際に言葉から伝わることは全体の7%しかないという。それ以外は、体の動きや仕草、顔の表情などの視覚が55%、声のトーンや大きさ、速さなどといった聴覚が38%を占めている。

 このようなことを踏まえたテクニックとして、「ジャスチャーを大きくオーバーにする」「ポイントとなることは1、2、3と指でまとめる」「ポイントを1つ言い終わるごとに立ち位置を変える」「ゆっくり話すことで感情の波に乗せる」「相手に考えさせるために間をおく」「キーワードを繰り返す」といったコツを伝授した。

プレゼンテーション講座を終えてのネットワーキングの様子

テクノロジーのビジネスモデルでも、ユーザーにはアナログで接するべし

 充実したイベントを終え、ピョートル氏、平原氏、稲川氏に改めてイベントの狙いや成果について話を聞いた。

――今回のイベントの目的は?

稲川氏 アントレプレナーにとって、投資家に出資をお願いするのは敷居が高い。彼らにしてみれば、NTTドコモのような大企業が、本当に自分たちのようなスタートアップに投資してくれるのかと不安に思っているはずだ。私自身、2013年から3年間シリコンバレーで仕事をしていた頃、アンドリーセン・ホロウィッツやアクセル・パートナーズといった大手ベンチャーキャピタルのオフィスを訪問するときには大変緊張したものだ。

 そうしたアントレプレナーが抱える不安を、今回のようなイベントを開催することで取り除いてあげたい。我々にとってもスタートアップコミュニティの中に身を投じることで、投資をする側と受ける側でお互いの距離感を詰め、関係を深めていけるメリットがある。

 今回はそのきっかけを作る意味もあり、人材開発のプロフェッショナルとして未来の力を創造するノウハウを持つプロノイア・グループさんに力をお借りした。

インタビューに答える稲川氏、ピョートル氏、平原氏

――イベントを開催して、どんな成果を感じたか。

平原氏 最後、参加者や登壇者が交流するネットワーキングで印象に残った言葉がある。ピョートルが基調講演の中で「スタートアップは失敗してもいい」と話したが、それについてある参加者が「起業家が失敗してもいいことを初めて知った。これまでずっと起業したら必ず成功させなければならないと思っていた。しかし、起業にはさまざまなプロセスが含まれていて、そのプロセスの中に前向きな失敗があることを今回参加して学ぶことができた」と話してくれた。それを聞き、イベントに参加したアントレプレナーの方々に、今回伝えたかった思いがきちんと伝わっていると感じた。

ピョートル氏 日本語の「失敗」という言葉には、強い意味がある。だが英語で「失敗は成功のもと」の意味で使われる「failure」は、日本語の「失敗」よりもっと柔らかい。例えば、挑戦したけどうまくいかなかったというようなニュアンスだ。

 もちろん、戦略的に許される失敗と、許されない失敗がある。法を犯してまで強引に進めようとした場合は問題があるが、とりあえず挑戦して、うまくいかなかったからビジネスモデルを変えて挑戦し直すのは大歓迎。とはいえ、失敗を重ねられるのも3回くらいまでだが。

 米国の場合、プロダクトやプロトタイプだけを見て投資するのではなく、“この人に投資すれば何とかなる、途中でビジネスモデルを変えても大丈夫”と、特にエンゼル投資家は人を見て投資を判断している。

平原氏は参加者の言葉を聞き、イベントの成果を実感したという

――改めてアントレプレナーの方々には、どんなことを伝えたいか

ピョートル氏 日本人のアントレプレナーは、どうしても常識にこだわってしまう傾向がある。しかし、スタートアップは、常識を破らなければ価値がない。それを踏まえた上で、ユーザーの抱える課題をどのように解決し、さらにはSDGsのような社会に対する課題をどのように解決するかが大きなポイントになってくる。

 とにかく外に出てユーザーと接し、課題を肌で感じてほしい。アイデアは決して机上からは生まれない。テクノロジーのビジネスモデルであっても、ユーザーにはアナログで接すること。ユーザー分析のための分析は必要がない。

 そして、何らかのインスピレーションが得られたら、できる限りスピードを上げてプロトタイプを作ってみること。まずは、スモールスタートで始めてほしい。PDCAではなくDCAでプロトタイプを回して、何らかの実証が得られれば、その価値を次のプロトタイプに役立てていく。そうやって自分の常識や固定概念にこだわらない脱皮型マインドセットを身につけてもらいたい。

稲川氏 例えばスマホなどにプリインストールされる、デファクトのアプリやサービスになることを夢見ている人もいるかもしれない。そのためには、私たちのパートナーになってもらい、もっとモバイルインフラのことを知ってほしい。中にはモバイルアプリでもパソコンと同様にインターネットのインフラが利用できると考えている方がいる。その場合、モバイル通信をつなぎっぱなしにすることを前提にアプリやサービスを構築してしまう。それでは、モバイルインフラに負担がかかりすぎる。ぜひ、無線のネットワークインフラと有線のネットワークインフラの違いを理解してもらいたい。

 その一方、これが5Gになるとさらに状況が変わってくる。基本的に5Gは、有線に匹敵するほどの高速大容量のモバイルインフラが構築できるため、通信がつながりっぱなしでも負担は減る。これによって、動画も常にネットワークに送り続けることができるようになる。そうなれば、これまで実現できなかった全く新しいアプリやサービスも開発できるだろう。このような最新テクノロジーに関する情報が伝えられることも、場作りの重要な役割。逆にこの場を通じて、我々がアントレプレナーから学ぶことも多くなるはずだ。

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com