NTTデータが2013年9月から定期的に開催するオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」。このほど、2019年度の第1回定例会がNTTドコモ・ベンチャーズのイベントスペースにて行われ、華々しくスタートを切った。次世代ビジネスを牽引する有力ベンチャーと大企業が活発に意見を交わしたイベントの様子をレポートする。
 NTTデータが2013年9月から定期的に開催するオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」。このほど、2019年度の第1回定例会がNTTドコモ・ベンチャーズのイベントスペースにて行われ、華々しくスタートを切った。次世代ビジネスを牽引する有力ベンチャーと大企業が活発に意見を交わしたイベントの様子をレポートする。

ベンチャーと大企業が直接触れ合ってオープンイノベーションを加速

 2019年7月17日、「豊洲の港から」の2019年度第1回定例会が開催された。

 豊洲の港からは、NTTデータが取り組むオープンイノベーションフォーラム。最先端の技術とアイデアを持つ世界のベンチャー企業、同社顧客の大手企業や金融・公共機関、そしてNTTデータの技術とビジネスソリューションを「掛け算」し、3者が「Win-Win-Win」の関係となる持続可能なビジネスの創発を目指すというものだ。

 今年度第1回となる本定例会のテーマは「MaaS(Mobility as a Service)」。テーマに則り、移動や物流にかかわる応募企業によるプレゼンが実施された。また定例会に加え、コンテストを開催中で2019年9月18日まで提案を募集している。東京選考会は2019年12月2日、明けて2020年1月24日にはグランドフィナーレが開催される。

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室 室長 残間光太郎氏

 当初からグローバル展開をにらみ、コンテストは世界16都市で実施される。NTTデータ オープンイノベーション事業創発室 室長 残間光太郎氏は「世界中にNTTデータの拠点が210カ所ある。その各拠点から我々のイノベーター、さらには世界中のベンチャー企業が組んで、どんな新しいビジネスが生まれるかが楽しみだ」と期待を込めた。

 MaaSについて残間氏は「乗り物に注目されるがそれだけではない。さまざまなプラットフォームが統合され、人の移動、モノの移動に関わるデータが今までにない手法で活用されて新たな世界が生まれる。ひいてはそれが、スマートシティに発展すると見ている」と分析した。

 定例会は、招聘した4社のベンチャーによる事業紹介ピッチを第一部、大企業を交えたパネルディスカッションを第二部とした。日頃、NTTドコモ・ベンチャーズで各業界のベンチャーと向き合う同社 投資・ビジネス開発部門シニアディレクター 西本暁洋氏は、「本日登壇する電脳交通にも出資している。我々はベンチャー投資とオープンイノベーション推進の場を提供しており、今後もさまざまな企業や人材をつないでいきたい」と意気込みを述べた。

NTTドコモ・ベンチャーズ 投資・ビジネス開発部門シニアディレクター 西本暁洋氏


空飛ぶバイク、人工衛星、タクシー、配送――バラエティに富む面々が登壇

 第一部に登壇したのは順に、A.L.I. Technologies、アクセルスペース、電脳交通、CBcloudの4社。以下、それぞれのピッチ内容をもとに紹介していく。

●A.L.I. Technologies

 A.L.I. Technologiesは2016年9月に設立したばかりだが、その事業内容は非常に専門性が高い。70人ほどの社員のうち半数を超える40人強がエンジニア、さらにその半数が外国籍との事実からも“技術のベンチャー”であることがうかがい知れる。

 事業はエアモビリティ、ドローン撮影データのAI解析、クラウド型の演算能力シェアリングを3本柱とする。中でもMaaS関連で注目を集めているのが、エアモビリティ事業の公道を走れるホバーバイク(空中浮揚バイク)の開発。2019年3月に日本で初めて有人の飛行実験を実施し、この秋には大型イベントで披露する予定だ。

A.L.I. Technologies 代表取締役社長 片野大輔氏

 同社代表取締役社長 片野大輔氏は「前後2枚のプロペラで全体を制御する構造。既存の4枚プロペラ、6枚プロペラの機体と比べてかなりコンパクトで実用性が高い」と、独自の開発力の高さを訴求した。次世代交通手段としてはもちろんのこと、災害地など悪路での飛行や輸送、エンターテインメント利用などを見込む。

Speederと名付けたホバーバイクのイメージ動画

 片野氏は「2020年には1号機を発売したい」とする。イメージ動画では「Speeder」と名付けたホバーバイクによる空中移動の様子を紹介。見ているこちらはスター・ウォーズの世界がすぐそこまで来ていることに興奮したが、片野氏は「ナンバーをつけて公道を走れるようにするには法整備が重要になる」とし、そのために国に対して積極的に働きかけていきたいと語った。

●アクセルスペース

 アクセルスペースは、ベンチャーながらこれまで5回もの人工衛星を打ち上げた実績を持つ。創業メンバーは、学生時代に秋葉原で部品をかき集めて手作りの人工衛星を作った仲間たち。

アクセルスペース 共同創業者 取締役CTO 宮下直己氏

 現在、衛星データプラットフォームの「AxelGlobe」の構築を進めている。独自開発の超小型衛星「GRUS(グルース)」を数十機打ち上げ、それらが手分けして地球の全表面をスキャン。地表面の撮像データを“毎日更新”して事業者に提供するビッグプロジェクトだ。同社 共同創業者 取締役CTO 宮下直己氏は次のように語る。

 「例えば農業分野、港湾のコンテナ監視といった産業用途が考えられる。蓄積した画像のビッグデータをAIを使っていろんな産業のビジネス判断に利用してほしい。1号機のGRUS-1をすでに2018年12月に打ち上げた。これからどんどん増やしていくのが目標だ」(宮下氏)

衛星が撮像した画像データ

 これまでの衛星画像解析は古めの撮像データをもとにしていた。しかし、AxelGlobeはデイリーで画像を更新することから、宮下氏は「もしかしたら火山予報、赤潮予報など、あらゆるジャンルに適用できる可能性がある。日々における都市の交通状況変化もわかるため、MaaSにも利用できるだろう」と、AxelGlobeがもたらす可能性を示唆した。

●電脳交通

 電脳交通は徳島市発のスタートアップ。疲弊する小規模タクシー会社を救うためのクラウド型配車サービス、コールセンター委託業務事業を展開している。2018年6月にはNTTドコモ・ベンチャーズが出資。その後もJR西日本やNTTドコモ中国支社らと実証実験を行うなど、各所から注目を集めつつある。

 同社 取締役COO 北島昇氏は「日本のタクシー業界は6300事業者。都市部では従業員の平均年齢が58.9歳だが、徳島では62.8歳にもなる。70%が15台未満の小規模タクシー会社であり、市場縮小、高齢化に加え、IT化が進まない。地方においては75%が電話配車に頼っている」と、タクシー業界の厳しい実情を明らかにした。

電脳交通 取締役COO 北島昇氏

 昨年は80社が廃業し、4000台のタクシーが消滅した。さらに15〜20台ほどの会社の売上はざっと1億円ほどで、とても大手向けのITシステムが導入できる台所事情ではない。電脳交通の創業者も祖父が営んでいた小規模タクシー会社を継承した人物だが、「米国留学の経験を活かし、債務超過になりそうだった状況を新サービスの立ち上げやテクノロジーの導入によってV字回復させた」(北島氏)。このとき地方のタクシー会社が延命、存命するには“配車の効率化”がポイントだと学んだ。

 クラウドサービスとは言え、電脳交通が提供するのはBtoBモデル。夜中も社長がたった1人で電話番をしているような会社を相手に、リーズナブルな価格で通話機能、GPS機能、カーナビ機能のついた車両システム、配車室用の管理システムをリースで提供する。また、電話番号据え置きで24時間365日対応の配車業務代行サービスも展開しており、4年めにして16都道府県、約2200台の導入実績となっている。

 「人員不足をアウトソースで補う。まずはここから始めないと事業継承もままならない」と北島氏は危機感を強める。しかし、コストダウンだけを見ていては世代を超えた未来像が描けない。そのため、いかにして売上の向上を図るかについても知恵を出していきたいと話す。

電脳交通のサービス概要。タクシー車内の動画広告も収益の1つ

 足がかりになるのが交通過疎地域の住民や、地方を訪れたインバウンドに対する二次交通としてのタクシー活用だ。2019年3月には山口市阿東地域でNTTドコモ中国支社、地元のタクシー会社らと共同で無料のオンデマンドタクシー実証実験を行った。その結果、4.5倍に利用者が増え、確実にニーズがあることが浮き彫りとなった。驚くべきことに住民の41%がタクシーを利用したことがなく、その理由は「高いから」だったそうだ。

 これを受け北島氏は、「各地域でニーズはさまざま。我々は本当のニーズをベースに、そもそものサービスデザインをどうするかも含めて取り組みをしている」と言及。中期的には全国への事業拡大を目標としながら、並行して根本的な地方交通の課題解決に力を入れていく意欲を見せた。

●CBcloud

 電脳交通が“人”ならば、CBcloudが扱う領域は“モノ”である。2013年に設立した同社は、全国の配送ドライバーを支援するサービスを展開している。

 同社も創業者が軽貨物配送業を継いだ人物であり、自身が配送ドライバーの経験者だ。その経験を活かして、Web上で全国の荷主とドライバーを直接つなぐ軽貨物マッチングプラットフォームの「PickGo」を立ち上げた。

 大手通信会社を経て参画した同社 取締役CSO 皆川拓也氏は「国内の実際の物流現場はほとんど中小事業者で支えられている。全国の配送依頼と全国のドライバーを直接つなげることで、中間業者の中抜きを極力少なくしていく」と説明する。

CBcloud 取締役CSO 皆川拓也氏

 現在、登録ドライバーは全国で1万2000人以上で、毎月500〜800人が新規登録する。依頼をしてからドライバーが見つかるまでの平均が56秒と早く、99.2%のマッチング成功率を誇る。

 さらに荷主が顔写真やこれまでの運行評価などをもとに依頼するドライバーを選べるのも特徴だ。運行評価が高ければ、ドライバーは個人名で呼ばれるようになり、「頑張った分だけ高い料金をもらえる仕組みを作れる可能性が出てくる」(皆川氏)。これにより、軽貨物事業者、運送業界に働く人たちの待遇改善、地位向上を目指す。

軽貨物マッチングプラットフォームのPickGo

 「我々の優位性はドライバーの立場にあるシステムであり、ドライバーが本当に必要なものを提供している。どんどん登録者も増えていることも追い風」と皆川氏。年々高まる再配達問題に関しては、ITを駆使したベテランのノウハウ継承システムをテスト中だ。その先には物流クライシスを緩和したいとの思いがある。これらの実現に向け、皆川氏は「アライアンスを組んで一緒にパートナーと成長していきたい」と結んだ。

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ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
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